ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

花組『PRINCE OF ROSESー王冠に導かれし男ー』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp


バウ・ミュージカル『PRINCE OF ROSESー王冠に導かれし男ー』
作・演出/竹田悠一郎

1幕が終わったときには「スゴワルリチャード3世が描きたいのか」と思ったけれども、2幕まで見終わると「いや、これはヘンリー7世とイザベルのラブが描きたかったのでは?」と思うようになり、そうならそうでものすごく宝塚向きだし、1幕からもっとヘンリー7世とイザベルをいちゃらぶ(死語)させたらよかったのでは???とも思いました。
個人的にはヘンリー7世って物語のない人だなあと思っていて(なんせツイッターではヘンリー7世をヘンリー8世と間違えていたくらいだわ)(ヘンリー8世は離婚しまくりのメアリーやエリザベスの父親ですな)、そりゃヘンリー6世やリチャード3世が濃すぎるからだろう(そもそもシェイクスピアが描いているというのも大きい)って話ももちろんあるのですけれども、あれよあれよとみんなに持ち上げられて、結局敵から妻をもらうというウィーンハプスブルクに非常によくある手段で、薔薇戦争を終わらせた人というくらいのイメージしかなかったのです。
けれども、いやそんなことない!この薔薇戦争を終わらせた人間は、政治的な器が大きいだけでなく、個人としての自由恋愛もちゃんと楽しんだ人なんだ!という妄想は、とても宝塚らしくて面白いと思うのです。
だからこそ、もっと作品を温めてから世に送り出しても良かったかなあ、とは思いました。
でもきっと竹田先生は自分のデビュー作品として、どうしてもこの題材を扱いたかったのよね。
その意気込みだけはとても感じられました。
デビュー作品の題材としてはちとばかり重かった、難しかったことが災いして、脚本としてまとめきれなかったというところがネックですが、描きたい方向としてはとても宝塚向きだと思ったので、次の作品も楽しみです。
公演プログラムには自分で家系図を書いたというくらいだから、この作品への意気込みは並のものではないと思うのですが、いやだからこそ、その家系図をプログラムに掲載してくれよ、と。
あの若干読みにくい公演挨拶の文章(失礼)をカットするなり、レイアウトを工夫するなりして、その家系図を載せる場所を作りましょうよ。
劇団側もかなり脚本のブラッシュアップに協力したようだから、そこも抑えてくださいよ〜!と叫びだすところでした。

薔薇戦争を宝塚で扱うということで、イメージとしては、赤バラモチーフの衣装を着た軍団と白薔薇モチーフの衣装を着た軍団が踊りまくって戦いに明け暮れるというような、非常にベタな、いってみれば『ロミジュリ』のような場面を期待したのですが(そして他にもそれを期待していた人もいたよう)、それはありませんでした。
ショルダータイトルは「バウ・ミュージカル」でしたが、ミュージカルというわりには歌の入る位置が???というところもあり、脚本としては芝居に重きを置いたのでしょう。
ただ、プロローグやフィナーレを見ていると、むしろ竹田先生はショーを作ってみたらいかがかしらん?と思いました。
それくらいプロローグ、フィナーレは最高でした。
特にフィナーレはみんな水を得た魚のようでした。
衣装も良かった。赤バラボタンの燕尾服に赤バラドレス、最高だよ。

公演前、プログラムを見て「らいとくんの赤髪はキルヒアイスなのでは?」「あわちゃんのお化粧が進化している!」「稽古写真ではなく、あすかヘンリー7世の写真集なのでは?」「プログラムの裏表紙、最高だな!」などと興奮しながら望んだ5列。
バウ自体、全然当たらないというのに、こんな良席どうしたらいいんだと困惑してしまう。
生徒さん経由だったので、本当にもう感謝しかない。ありがとうございました。

1幕はゴリゴリの悪役であったリチャード3世は、そりゃもう悪い顔で悪いお衣装で悪い歌を歌うのですが、1幕で彼が主人公のように見えてしまうのは、やはりヘンリー7世のドラマが足りないなと感じました。
らいとヘンリーに出会ったときに「君は何がしたい?」と聞きますが、私としては、お前さんは何がしたいのだ?と思いました。
ヘンリー7世は王冠を望んでいるようにも見えますが、それはあくまで母であるうららマーガレットの願いかなとも。
ヘンリー6世との謁見の場面でも、彼が王冠を何がなんでも望んでいるようには見えなくて、もしかしたらむしろそういうところに周りは「こいつは王冠を抱く男だ!」と思ったのかもしれませんが(あすかの美貌でそう思ったのでしょうかw)、本人の意思があんまりよくわからないなあと。
この場面、あんまりあすか、喋らないし……。

ヘンリー7世が変わったなと思ったのは、らいとヘンリーが亡くなってからでしょうか。
2幕の最初でリチャード3世によって処刑されてしまうので、おいおい早いな?もうらいとくんの出番はないのか?と思ってしまいましたが(無事にありました)あの事件を契機にようやくヘンリー7世自身が王冠にこだわるようになったのだなと思いながら見ていました。
だから2人は出会いの場面から描かれるわけですね。
ヘンリー7世が自分の意志で立ち上がるためにはらいとヘンリーが死ななければならない。
らいとヘンリーが死ぬのが早いか遅いかという問題は何を描きたかったかにもよるのでしょう。
リチャード3世との対立軸を明らかにすることがメインなら、もっと早くてもいいのかもしれません。

リチャード3世は会ったこともない間からずっと傍系であるヘンリー7世をマークしていて、そんなに驚異的な存在に見えないのだが……?と思ってしまう(失礼)。
イザベルとのラブを描きたいのなら、リチャード3世の場面がおそらく長いからでしょう。
化粧ドン!衣装ドン!音楽ドン!で迫力のあるリチャード3世で、とてもよかったのですが、1幕は彼がかっさらっていたとも思えてしまいます。
もっとも2幕ではむしろ滑稽で、戦いの場においてさえずっと王冠を被っているから、その執着ぶりは明らかで、ヘンリー7世の、言ってしまえば清く明るく淡白な(!)王冠への想いとの対照的でありました。
そのリチャード3世から王冠をゆっくり外すのが亡霊になったらいとヘンリーというのは、とてもいい演出でした。
1幕終わりで自分で自分につけた王冠を他人の手で奪われるという悔しさはいかほどのものでしょうか。

ヘンリー7世が逃亡生活に突然現れたイザベルと、そりゃ恋に落ちるのだろうことは宝塚を見慣れた人なら誰でもわかりますが、1回目は割とつっけんどんというか、何者かわならない不穏さみたいなのはありましたが、1幕の終わりあたりに出てきたときには、もちろんお互いに言えないこともあるのだろうけれども、なんだかもうすっかり仲良くなっているようで、おお?と置いていかれるところでした。
一緒に城下町歩いたり、庭を見て散歩をしたりしちゃいかんのかな……でもまあ逃亡の身だし仕方ないのかな……せめて2人きりでなんかもう少し見せてくれないと、なぜ2人が想いを寄せ合うのかがわからないなあ、と。
せっかく宝塚で上演するのだから、どうせ争いを止めるための手段として結婚した2人が実は政略結婚の前に出会っていて、しかも恋においていました!というのはとても宝塚らしい発想ですし、おもしろい設定だとも思うからこそ!だからこそ!もっとヘンリー7世とイザベルの恋愛を見たかったです。何度でも言う。

わからないといえば、イザベルはフランス国王の使いと言いますが、ヘンリー6世の妻である柚長マーガレットがフランス人だと考えれば、ヘンリー7世に近づくために「フランス」を持ち出すのはわかります。
でもこれってヘンリー7世が調べたらきっとすぐにわかることですよね?
劇中では「あの従者のフランス語はかなり怪しかった」と言って、あまり「フランス国王の使い」ということを信じている様子ではなかったですが。
すぐに見破られるような嘘をついてまで彼女がヘンリー7世に近づいた理由はなんだったのでしょう。
彼女にとって敵の敵であるフランスをもってきたことのリスクはなかったのでしょうか。
そして本当は誰の思惑で彼女は動いていたのでしょうか。
イザベルの母親であるりりかエリザベスは、自分の娘が不在のことをようやく2幕あたりでもらし、最後には抱き合っていますから、少なくとも母親の陰謀で彼女が単独でヘンリー7世に近づいていたわけではなさそう。
では、いったい誰の差金でイザベルはヘンリー7世の隠遁場所に現れたのだろうか。
イザベル自身が紅緒さん並のお転婆やじゃじゃ馬根性を発揮して、「敵の皇子とやらはどんな腑抜けやろうかしら?この目で見定めてやるわ!」みたいな感情から、誰からも命令も受けず、家で同然でヘンリー7世の元にやってきたというのなら、それはそれでおもしろい!と思うのですが、そうするとイザベルのもとに必死に手紙を書いてよこしていたのはどなた?という疑問も生まれる。
やはりここのあたりの書き込みをしないことには、イザベルというキャラクターになかなか観客はついていけないかなと思いました。

そういえば、1幕が終わってから「この王宮はどうなっているのだ?」と思いました。
と、いうのも囚われているはずの柚長マーガレットがわりと自由に出歩いている様子が見られたり、リチャード4世が倒れたことに気が動転しているりりかエリザベスにうららマーガレットが簡単に近づいたりしている様子があったりして、ランカスターとヨークの対立とは?とも思いましたが、でもよく見るとこのメンバーは全員女性で。
戦いやしがらみ、王位継承から完全に自由とは言えないかもしれないけれども、そういうところが男性よりも女性の方が自由であることを示しているのかもしれないと思いました。
たとえ敵であっても、愛する人が病に倒れたらどうしよう!と慌てるのは当然だよね、寄り添いますよ、というようなメッセージが込められているのかな。
『月雲の皇子』でも兄と弟の争いを止めようとしたのは母と妹でした。
今回もそれと似たようなことが起こっているのかもしれません。

あわちゃんのアン・ネヴィルとしてのお役は1幕終わりくらいまで待たなければならないのですが、すでに夫を殺された経験のある彼女の運命を悟り切った感がたまらなかったです。
というか、プロローグの魂のダンスもすばらしかったです。羽が生えているよう。
美咲ちゃんと対でしたが、贔屓目もありましょう、あわちゃんの方が伸びやかのように見えました。
かつての夫とは敵対しているリチャード3世と結婚することの葛藤はもちろんあったでしょうが(描かれていませんが、父親もリチャード3世に殺されたようなもの)、そこはすでに悟りを開いた女性という設定にすることで、バッサリカット。
見たかったような気もしますが(笑)、時間を考慮するならば致し方ないでしょう。

2幕の中盤のリチャード3世の夢でしょうか、幻でしょうか、現実世界ではキリッと冷たい表情ばかりしていたアンが彼に膝を貸して休ませる場面は、リチャード3世自身の願いが込められていたのかもしれません。
しかしその願いが現実世界で叶うことはなく、そのままアンは亡くなります。
この場面の演出は秀逸だった。すばらしかった。
唯一戦いの場において死なない人物がアンなのですが、処刑の残虐さを強調するのとは裏腹に優しく穏やかに流れるように死んでゆく。最初の魂のお役に繋がっていくようなイメージが感動的でした。
リチャード3世が目覚めると既にアンはこの世のものではない。
ゆったりと静かな演出でしたが、とても好きな場面です。

アンはいつの間にかできていた子供を、これまたいつの間にか亡くし、リチャード3世に「あなたが殺した人間の命と私たちの子供の命の重さは同じである」と訴えます。
もっともその言葉は、最後までリチャード3世には届かなかったように思います。
しかしその思いは出会いはしないものの、ヘンリー7世には届いていて、だからリチャード3世を戦の場においてむごたらしく殺そうとはしない。むしろ「彼もまた犠牲者だ」という。
最後の最後で命の重みというテーマもぶっこんできたか!という感じでした。
デビュー作品ですし、もう少し削っても良かったのでしょうけれども、野心は十分に感じられました。

さて、キャスト別の感想。
ヘンリー7世のあすか(聖乃あすか)は真ん中に立っていて安心感がありますね。
竹田先生が惚れ込んでいるのも脚本から伝わってきます。
自分で「プリンスオブロージーズ」って、あ、歌っちゃうんだ……とは思いましたが、きっとそれがやりたかったのでしょう。
実質2番手にあたるリチャード3世のゆーなみくん(優波慧)は、お化粧の迫力がすごかったです。
軽妙な役のイメージが強かったですが、こういう悪い側面も見ることができてよかったです。
らいとヘンリーは、本当に身長が高いですね。
宙組のスタイルお化け軍団に混じるといいのかもしれませんが、折角ですし花組で育って欲しいところです。
こういうときにタカスペが恋しくなるなあ。しどりゅう(紫藤りゅう)とかもえこ(瑠風輝)とかとの並びを見たい気もする。
はなこ(一之瀬航季)はなかなか食えない役に挑戦。
あすかヘンリーとのやりとりは同期ということもあって、にまにま。
新人公演の少尉、見たかったなあ。一生言う気がする。
今回は新人公演の紅緒も編集長も鬼島も出ているから余計に思うのかもしれません。

ヒロイン格のイザベルを演じたみさきちゃん(星空美咲)は、新人公演ヒロインなしのバウヒロインということで抜擢だったと思うのですが、芝居、歌、ダンスともにこじんまりとはしていますが、安定している印象を受けました。
プログラムのお化粧の様子を見ると、こちらも伸び代がありそうです。
ちゃぴ(愛希れいか)に似ているという話がありますが、私はあんまりそうは思わなかったかなあ。

2番手ヒロインはあわちゃん(美羽愛)。舞台化粧が進化していましたが、もっとよくなるぞー!とめっちゃ応援しています。
お衣装はプロローグの象徴的なグレーのドレス、1幕アンのブルーグリーンのようなドレス、2幕の王妃としてのダルメシアンみたいなファーがついた青いドレス、フィナーレの深紅のバラモチーフのドレス。
プログラムのお衣装は美咲ちゃんもあわちゃんも出てきませんでした。
フィナーレはダイナミックに踊る!最高!
8期上のゆーなみくんによくくらいついていたと思います。

りりか(華雅りりか)エリザベスは最初に出てきたオレンジ色(柿色?)のドレスをしっかりと着こなしていた。
あのドレスの色、似合う人、なかなかいないよ……。
このエリザベスもかなり物語がある人なので、こちらのお話もまた見てみたいなあ。

うらら(春妃うらら)マーガレットも、始終尼さんのような姿で、とてもよかった。
見るたびにべーちゃん(桜咲彩花)に似てくるような気がいたします。

リチャード3世の従者であるゲイツビーを演じたとわちゃん(峰果とわ)がすごいうまい。
『はいからさん』のときにも思ったけれども、すごいなあ。
リチャード3世が主役に見えるのも彼の果たした役割が大きく感じます。

千秋楽まで無事に幕が開くことをお祈りいたします。

外部『ポーの一族』感想

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族

www.umegei.com

原作/萩尾望都ポーの一族』(小学館「フラワーコミックス」刊)
脚本・演出/小池修一郎宝塚歌劇団
主演/明日海りお

宝塚版も見に行きましたが、今回は、まず幕が違うというところがおもしろいなと思いました。
開演前、席について驚いたのです。
舞台の幕というのは上下で開閉する布というイメージが強いですが、今回は左右に動くプラスチックの板?か何かでしょうか。
しかも切れ目がまっすぐではなくて、なんだかゴツゴツした感じの創りになっていて、上手に2枚、下手に2枚でなんとか舞台全体を隠している形でした。
斬新だなあ、新しいなあ、おしゃれだなあと思いながら見ていました。
開演前は薔薇の映像が映し出されていましたが、芝居中はいろいろな映像に変わっていました。
いかにも「ミュージカル・ゴシック」という感じでしたね。
せっかく外部でやるんだもの。やっぱり宝塚と違うものを見たい。
そういう期待に応えてくれる幕でした。

生オーケストラも久しぶりで良かったです。
開演前や幕間に練習しているのが聞こえて、そうそうこれが普通だったんだよ。
自由に練習している音をBGMにプログラムで予習するのが常だったんだよ、となんだか日常に戻った気分でした。
見に来ているのは「ミュージカル・ゴシック」なのにw
宝塚にも早くオーケストラが戻って来るといいのですけれども、今度の星組『ロミジュリ』も録音のようですね。

エドガーのみりお(明日海りお)は、宝塚版で『ポーの一族』を上演していた頃も、そりゃ痩せていましたが、今回はなんだかそれよりも痩せてしまっているように見えてしまい……大丈夫なのでしょうか。
みりおも外食、していないのかな。
もっとお肉食べて欲しいな。
もちろん相変わらずの歌唱力、演技力には全く問題がないし、文句もないのですが、頬が痩せこけているように見えるのが始終気になりました。

私がとにかくよかったと思うのはかなめさん(涼風真世)です。
なんといっても宝塚で初めてできたご贔屓ですからね!(まだほんの子供でしたがw)
還暦過ぎてもあの歌唱力って化け物だな。
宝塚でも四季でも歌唱力に定評がある人が、年齢とともに筋肉の衰えでしょうか、次第に元気がなくなっていく様子は今まで何人もみてきましたが、かなめさんは違う。
びっくりする。どこから声が出ているの?って感じ。
みんなで歌う曲も、一人だけ違う歌詞、メロディーで歌っていても、ちゃんとわかる。
これ、相当すごいことだと思います。
プロローグからひっくり返るかと思いました。

老ハンナ、とても素敵でした。
さおた組長(高翔みず希)の老ハンナも好きでしたが、かなめさんの老ハンナもまた違った風体であり、大変すばらしかったです。
声がだいぶ低いようでしたね。プログラムにもそういう指示があったらしいことが書いてありました。
とにかく圧巻だった。右に出る者はいない。役者だわ~。
キング・ポーの福井晶一さんもすばらしかったですが、これはやはり山口祐一郎で見たかったなという気がいたします。
『貴婦人の訪問』コンビの山口・涼風が好きすぎるんです、私!

かなめさんのエドガーも見てみたいなあ。古い『歌劇』は母親のところにあるはずだけど、もう捨ててしまった可能性が高いですし。淋しい。
かなめエドガー、ゆりちゃん(天海祐希)のアラン、のんちゃん(久世星佳)のポーツネル男爵ってよくないですか? みつえちゃん(若央りさ)がクリフォードです!
この場合よしこ(麻乃佳世)はシーラというよりもメリーベルでしょうか。
シーラは紫ともも捨てがたいですが、羽根千里も見て見たいです。
ジェインは朝凪鈴、マーゴットは上のお二方のどちらか、という感じでしょうか。
私はもうなんだか見た気さえしてきました。

かなめさんのもう一つのお役であるマダム・ブラヴァツキーはもはや怪演の域。
最初に出てきたビジュアルにも驚かされましたが(お腹周りに何か入れているのかな?)、顔の輪郭をゆがめてるにもかかわらず、ちゃんと声が通るんだよー! すごーい!
乃木坂のジェインにはぜひ見習ってほしい(清楚で気弱な感じは出ていたのですが、あれは演技なのですかね……?)。

顔の輪郭が何か、こうとにかく歪んで見えたので、てっきり口の中に何かいれているのかと思ったんですけれども、声を聴いている限りはそうではない様子。
だからただ単純に顎をひいているだけなのかもしれないですけれども、見た目は老ハンナと同一人物には見えないなあと思いました。
そして1幕終わりには老ハンナに戻っていたので、着替え、化粧の速さも求められるからあんまり手の込んだことはできないのだろうけれども、それにしてもすごい変わりようだった。
ブラボー!

レイチェルせーこ(純矢ちとせ)もすばらしかったです。
1幕に1回しか出てこないのがもったいないくらいでした。
2幕はもう少し出番がありましたが、なんだかちょっともったいないような気もしたくらいです。
もっとせーこが見たかったよおおおお!
じゅりあ(花野じゅりあ)のレイチェルも素敵でしたが、せーこも最高でした。絶品!

あーちゃん(綺咲愛里)メリーベルは、すごい可愛い髪形で、左右それぞれに薔薇のモチーフでしょうか、三つ編みしたらしき髪をくるくると巻きつけているようですが、その上からさらにリボンだったりヘッドドレスだったりがくっつくので、かわいらしさてんこもりでもう大変!
かわいい丼みたいな感じだった。もうやめて! かわいいはお腹に入らないわよ!って感じ。
あの金髪がまた似合うのよね、彼女……すごい。
みりおエドガーとあーちゃんメリーベルの二人の場面は、そりゃもうまんま宝塚でしたよ。
まさかこんな耽美な場面に出合えるなんて……という感じ。
華ちゃんメリーベルと並んで、双子やってほしい。

話の流れはおおむね宝塚版を踏襲していましたが、メリーベルは曲が増えていましたね。
ユーシスが亡くなった場面の後にソロ曲がありました。
ユーシスが亡くなった悲しいという歌ではなく、エドガーが恋しいという歌詞で驚きました。それでいいんかい、それでいいのよね。現実にはいないタイプですものね。
オズワルドは、まあ現実にてもおかしくはないかな。

ユーシスは生身の男性が演じるには少し無理があるのかもしれないな、と思いました。
あのはかなげな少年、目がうつろで、でも美しくて、現実に足が付いているのかついていないのか、ちょっと危うい感じって、なかなかでないものね。
もしかしたら少年だったらできるのかもしれませんが、ユーシスは少年という年頃でもないですし、難しいところです。

アンサンブルはレダ役の七瀬りりこさんは本当にどこにいても歌声がわかる。
神から授かったものに違いない。
美麗たんもどこにいてもわかるあの身長の高さ! スタイルのよさ! 町娘でもすぐわかる。
オープニングのドレスも素敵でしたけれども、ホテルのドレスの仕立て屋のお衣装もすばらしかったです。
ブルーと紫で大人な感じですが、リボンもついていて愛らしかった。
今回は台詞もありましたね。

しかしドレスを着為れていないアンサンブルの方もいらっしゃるのでしょうか。
後ろの階段を上る際、ドレスをもちあげるのは良いのですが、せめて後ろを向いてからもちあげてくれ~!
客席をむいたままガッ!ともちあげている人がいて、きゃー!という感じでした。
マダムの役どころだったと思うのですが、品がなくてよ、マダム。

ねねちゃん(夢咲ねね)のシーラが個人的にはいまいちだったのですが、これはもうねねちゃんがどうこうというよりは、ゆきちゃん(仙名彩世)のシーラが完璧だったということでしょうね。
あれは本当にすばらしかった、最高だった。歌とか物腰とか台詞の言い方とか。
ゆきちゃんのシーラが始終恋しかった。
あの完成度は高かったもんなー本当に。
ねねちゃんも雰囲気は良かったです。

マーゴットもいまいちピンと来なかったのですが、これは宝塚のしろきみちゃん(城妃美怜)のマーゴットが好きというのもありますが、そもそも原作のマーゴットが好きすぎるという問題もあるかと(笑)。
妹と弟がいなくなったせいで、マーゴットをちゃかす存在がいなくなったのも大きいかもしれません。
なんせ、私、万が一自分が演じるなら絶対にマーゴットがいいからなあ……シーラやメリーベルではない。

ユーシスのところで生身の男性が演じるのは難しいと思ったのですが、そういえばセントウィンザーの制服も、生身の男性が着こなすのは難しいファッションなんですね、きっと。
宝塚版を見たときは何の違和感もなかったのですが、今回は「ん?」と思うことが多くて。
その中で、もちろんエドガーは着こなしているので、余計に違いが目立つなと思いました。
よく見ると、おそらくベルトの位置がエドガーと他の生徒では違うんですね。
エドガーの方がちょっと高い。
ベルトから下のボタンがエドガーは3つ見えるのに、他の生徒たちは2つしか見えない。
ただ生身の男性のベルトの位置を高くすると、またちょっと違う感じになってしまうんだろうなあということは容易に予想がつく。
難しいな……。

最後のドイツのギムナジウムの衣装は宝塚版では緑でしたが、今回は青になっていました。
緑よりも青の方が似合う人、多そうですものね。
バスケットボールのように見えるもので、サッカーのようなことをしていたと思いますが、下手奥の男の子はいつも蹴り損ねる。芸が細かいなあ。
男性アンサンブルの跳躍力にひたすら驚いてばかりでした。
ここのギムナジウムの生徒もそうですし、セントウィンザーの生徒およく跳ねていました。
学生たちが飛び跳ねるのはわかるのですが、ホテルマンやエドガーの影(白いブラウスが紫になっていましたね)までもがよく跳ねる。
しかしあれだけの跳躍力があれば、そりゃ跳ばせたい気持ちにもなる。
羽が生えているのかと思うほど。

千葉雄大が演じたアランは、初めてのミュージカルにもかかわらず、れいちゃん(柚香光)の物まねになっていないところはすごかった。
まだまだ今から進化していくでしょう。
個人的にもっとも足りなかったなーと思ったのは、ラストの場面です。
アランが人間でない場面はここしかないのですが、れいちゃんは「エドガー!」の一言だけで、あとは佇まいだけで「もうすでに人間ではないこと」を十分に表現できていたと思うのですが、ちばアランはそこがいまいちで、個人的にはもうちょっと頑張ってほしい場面でした。
御園座で進化した姿を見られることを祈っております。

アランといえば、エドガーと一緒に家を出ていく場面。
まずはお衣装が変わっていましたね。
宝塚版ではエドガーがシルバーのブラウスに黒リボン、アランがゴールドのブラウスに黒リボンだったのが、今回は、エドガーが白ブラウスにベロアの紫リボン、アランがグレーブラウス黒リボンでした。
役者が変わりますから、衣装が変わるのは納得です。
エドガーもベルベットの緑がボルドーに変わっていましたね。

ところでアランは、執事が「ハロルド様は生きていらっしゃいますー!」と聞いてから出て行ったのか、もしかしたら自分は人殺しかもしれないと思ったまま出て行ったのか。
ここ、結構大事なポイントだと思うのですが、今回は後者でした。
宝塚版は前者だったような気もしますが、どうだったでしょうか。
原作も確認してみる必要がありそうです。
伯父が生きていることに安心して、もう未練はないと考えて、ポーの一族に加わったという流れの方が私は好きだなと思いました。
このあとゴンドラに乗るのですが、上下するだけなので、ゴンドラ感はなかったかな……。

はしふぉーども(中村橋之助)はちょっとまだ固かったかな。
もうちょっと柔らかくなるといいのだけれども。
クリフォードのおおらかさみたいなのがもう少し個人的には欲しい。
ミュージカル発声ではないけれども、ちゃんと聞こえるからまあよしとします。

カテコのみりおさん。
「ありがとうございます。今日はライブ配信ということで……(きょろきょろ)あれの向こうの方、見えてらっしゃいますか〜?」
おそらく「画面」という言葉が出てこなかったのかと思われますが、「あれ」と言いました笑。
拍手のパン!パンパンパン!もやりました。
「みなさん息ぴったりですごい」鍛えられていますからー^^
その他、「じゅんばんこに退場してください」とな。
規制退場のアナウンス、もはやみりおが案内した方が良かったのでは?と思うくらいには自由退場でしたが、最近の宝塚よりはマシだったかな。
「ガラガラも忘れずに」と。ガラガラとうがいのことを言っていると思われますが、動作は手洗いのようにも見え、一度で「手洗い・うがい」の大切さを知らしめるこのすばらしさよ!(単なるボケとは言わない)
ライブ配信が23日もあるので「おかわり」してください、と2回目のことを「おかわり」と言ったり自由人でした。
しかし、そもそも花組ポーの一族』の千秋楽のときも「エドガーに会えなくて寂しくなるかもしれませんが、その気持ちは自分でどうにかしてください」(大意)とのたまっておりましたので、昔から自由人だったことを再認識しました。

ところで幕間客席。
マスクをしつつも周りにはっきり聞こえる声で公演について力説している客がいました。
スタッフに直接「お話は控えてください」と注意されたにもかかわらず、その直後にまた同じテンションで話し始めて、続けて注意されていました。
ようやくそれで黙ったけれども、マスクは鼻が隠れていないし、なんで見にきたのだろうって感じで、なんだかなあと……。
せめて一度目の注意で聞いてくれないかね。

今後もまだまだ気を引き締めていかなければならないと思いますが、感染症対策をしっかり行った上で観劇したいと思いました。

雪組『シルクロード~盗賊と宝石~』感想

雪組公演

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ミュージカル・シンフォニア『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出/上田 久美子
レビュー・アラベスクシルクロード~盗賊と宝石~』
作・演出/生田 大和

お芝居の『fff』の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com


ものすごい反響をいただいて、ビックリしました。
でもこれが唯一絶対の解答ではありませんし、それこそ「ただ一つの正解」を求める行為は、完全に上田先生の術中にはまっているような気もいたしますので、あくまで一個人の感想だと思っていただければ幸いです。

一つ書き忘れた感想としては照明ですかね。
きぃちゃんにずっとブルーがあたり、人外であることを示す手法としてはありがちなのですが、「ブルー」ってまさに「悩み」「苦しみ」つまり「不幸」につながっているんですよね。
こんなにもありがちな手法なのに、すごい意味が込められている……と呆然としてしまった。
それからルイが難聴であることを示すユガミの表現も不気味だったなあ。
初日の舞台を見て、上田先生は真っ先に調光室に向かったらしいので、おそらく照明に関する何らかのダメ出しをしたのでしょう。
一体どんな話をしたのでしょうか。気になるところです。

あとは2階席からでも充分に楽しめる役者の配置になっているのがいいですね。
気になる下級生がいる人は上から見た方が、最初の楽隊の場面や最後の大団円は見やすいかもしれません。
私も花組はいからさんが通る』を7列目で観劇したとき、美羽愛ちゃんを上級生と重なって見つけるのが大変でしたが、2階席のときはすぐに見つけられました。
どこでもS席!と思えるのが大劇場のいいところですね。
もちろんこれはショーにも当てはまります。

さて、今回はショーの感想です。
前回の最後にも書きましたけどね、「宝石である真彩希帆を盗賊である望海風斗が追いかける」っていう筋書きがもう最高なんですよ。
ハズレなわけないんですよ、個人的にね。
「盗賊と宝石」の歌詞に「君の最後を俺が奪おう」とありますが、生田先生は「望海の最後」どころか「望海の最初」つまりお披露目公演だって担当しているんだから、「最後も」の方が正しいのでは?と思ったくらい。
生田先生の望海こじらせ具合は皆さんもご存じの通りですが、「どうして! 望海のショーを! 1回しか担当できないんだ!!!」という根強い響きが聞こえてきました。あれ、私だけか。真彩のお衣装に関しても「俺が着せたいお衣装、全部着せたったで!」という感じでしたね。ブルーダイヤモンドですが、お衣装がブルーだけでなく、赤、黒、白と彩り溢れていて良かったです。
どうでもいいですけど、生田先生は朝美もこじらせている疑惑があるので、ぜひ朝美主演の作演出も担当して欲しい。オリジナル作品で。頼む。見たい。

芝居仕立てのショーということで、そういうのが好きでない人もいますよね。
正確にいうと、歌と踊りの出し物の中でも、ストーリー性のあるものを「ショー」といい、一つずつ場面がわかれていて、全体としてゆるっとテーマがある程度のものを「レヴュー」というとか。
『BADDY』のときに何かで読んだ気がしますが、『シルクロード』も『BADDY』もその定義でいえば「ショー」ですよね。

お芝居も過去作品への壮大なリスペクトがありましたが、こちらも同じような気持ちが見え隠れしました。
第五章の中国が『BUND/NEON上海』はリスペクトというよりは、もはやオマージュですが、砂の演出や「黄金の奴隷」という役名は上田先生の『金色の砂漠』を思い出させますし、真彩が空中ブランコで出てくるところは「野口先生に教えてもらったの?」って思うし、第六章は「大介先生の宗教場面ですね!」と思うし、青い薔薇を受け渡すところは「明日海りお……」ってなる。
手錠でつながられたまま踊るところは「金の花」ですしね……。
配役でも、望海率いるスリが諏訪さき、彩海せらっていうのはさ、『ONCE』と『壬生義士伝』の新人公演主演をした二人ね……あとを継ぐのね……とか考えてもう涙がさ……うう。

シルクロードといっても世界を西へ東へという形になっているので、黒塗りのお化粧でなかったのも個人的にはよかったです。
多少いつもよりも暗めかな~という程度。
プログラムの生田先生の講演挨拶は、まさに二人のためのアイデアだったと心の底から思っているのがよくわかりました。
でももう少し簡潔にまとめてくれてもいいのよw
シーン別の説明も今回はショーの中では長い方でしたね。語りすぎ!
でもきっと説明せずにはいられないのでしょう。

こちらもお芝居ほどではないですが、よく盆が回るなと思いました。
盆はどちらか一方の回りだけでは不具合が生じやすくなるらしく、幕が降りているときに反対の向きに回すらしいという話を聞いたことがありますが、お芝居とショーの盆の回るムキってどうなんですかね。
これで右回転と左回転の帳尻がぴったり合うようだったら、それはそれですごい。

第一章、ストーリーの語り手であるキャラバンの登場。
翔くん(彩凪翔)の赤い髪にときめいた人が多いようでしたね。
あとキャラバンの女のはおりん(羽織夕夏)とありすちゃん(有栖妃華)、めっちゃ可愛いです。
砂のお役でもすぐに見つかるカレン副組長(千風カレン)とすみれ姉さん(愛すみれ)、ひまりちゃん(野々花ひまり)も素敵でした。
そして影ソロというか、声だけ先に登場するきぃちゃん(真彩希帆)。
お芝居もそんな感じでしたね、声が先に聞こえてくる。それだけの美声の持ち主。なんてったって「稀代の歌姫」。
盗賊がずらっと出てきても、すぐに見つかるのはあみちゃん(彩海せら)。すごい、どこにいても、端にいても、オペラグラスがぴたっと止まるんだ。
私のオペラグラスにはあみちゃんセンサーがついているかのよう。

ターバンの巻き方って難しいな、と思うのですよ。
だいもん(望海風斗)はターバンがお好きらしいですが、巻く位置がとっても難しいと思う衣装なんですよね。
上過ぎても下過ぎてもダメ。どれだけおでこが見えるか、眉との間隔のバランスはよいか。
『シャルム!』のときも下級生はターバンに慣れていないんだろうな、と思う生徒が何人かいました。
上級生見て! 自分見て! なんかちょっとおかしいと思いませんか?
もっとも今回ターバンを巻くのは男役だけでしたが。

きぃちゃん登場は空中ブランコに座って、ブルーのドレス。
降りるとものすごく後ろを引きずる長いドレス。『ONCE』の地上の天国のピンクのお衣装のよう。
その裾を肩に掛けてあげる翔くん。これ、最高。最高なんですよ。
何度見ても鼻血が出るかと思うレベルで好き。キャー><ってなる。
翔くんときぃちゃんのデュエットもよかったですよね~!
銀橋渡りは翔くん→あやなちゃん(綾凰華)・みちるちゃん(彩みちる)・あがち(縣千)→あーさ(朝美)・夢白→咲ちゃん(彩風咲奈)・ひらめちゃん(朝月希和)→きぃちゃんの順番だったかな。
とにかく「え、みちるちゃん、そこなんだ……」と思ってしまった(みちるちゃんの出番がショーのわりに少なくなってしまったような気もして淋しい……)。
夢白と反対でもよかったのではないかしらん……中詰ではあーさとみちるちゃんがシンメでしたが。
朝美主演の次のヒロインはみちるちゃんでは駄目なのかしら……。あう。

第二章はさききわコンビのプレプレお披露目。
「いつまでも一緒にいようね」というお手紙を咲ちゃんがひらめちゃんに書いたというお話。
これ、どこまで本当なんでしょう。
すごくドキドキします。
お衣装も素敵でした。ダンス映えするお衣装でしたね。ちょっと重そうでしたが、好みのお衣装でした。
すごく、イイ!!!
こういうクラシカルなお芝居や表現がすばらしい二人なんだから、この雰囲気を生かした作品を、オリジナル作品を作ってくださいね、劇団! 頼むよ! 本当に……。
本当こういうお衣装もよく似合うよね、ひまりちゃん。好き。

第三章のペルシャ
生田先生が朝美をこじらせている場面。
すごいよ、あーさ、だいもんのことを蹴り飛ばすし、きぃちゃんのことビンタするからね。
なんなの? 退団者に対して何させているの? 『ひかりふる路』でロベスピエールを後ろから抱きしめるサンジュストも相当強烈だったけれど、今回も相当インパクト強いですからね? すごいよ???
もうビックリしちゃったよ、私。
歌の技量とか男役としての立ち居振る舞いは本当にもうどこから見てもすばらしい男役になったと思うんですけど、その人にホント何させてんの……すごいね……。
褒めているのか、褒めていないのか、自分でもよくわからないのですが、とにかく作演出生田朝美主演作品が見たい。
千夜一夜のシェヘラザードというわりには、シャフリヤールに物語を聞かせる場面は一瞬で終わってしまったな、淋しい。
きぃちゃんと翔くんのデュエットソングはあったのだから、あーさともあっていいじゃない。欲張りかな、ダメかな。

娘役の宝石、目が足りないわ! どこ見ろってんだよ。
オペラグラス迷子だよ、とにかくみちるちゃんが可愛いよ。髪型、素敵ね! それにしてもあーさは娘役を侍らすのに定評がある。『ガトボニ』にもそんな場面ありましたしね……。
娘役で目が足りないのは「大世界」の場面でも同じなんですけど、チャイナ~!

第四章はインドでロケット。
『Ray』でもそうでしたが、ロケットちゃんたちが一度出てきたらそれで終わりではなく、もう一度出てくるというのがおもしろいですね。
クラシカルなロケットがお好きな人もいるでしょうけれども、時折こういうのがあるといいですね。
ここはインドの神様がたくさん出てきて大変だぞ〜!
プログラムには辛うじてあなやちゃん扮するスーリヤが太陽の神、あがち扮するチャンドラが月の神ということはわかりますが、それぞれとシンメになっているウシャス、ターラーは説明がありません。
星南のぞみ演じるウシャスはスーリヤの恋人、ないしは母。暁紅の女神。98期同期で素敵なシンメトリーです。
夢白あや演じるターラーはインド神話において創造神ともいわれるブリバスパティの妻。
ロケットのスカンダたちは軍神、シヴァ(朝美)とパールヴァイティー(彩)の子供。
それにしても夢白はもうロケット卒業したんですかね。『アクアヴィーテ』でも出てませんでした。103期生かあ……。

後から出てくるだいもんのヴィシュヌはヒンドゥー教の神。
翔くんのブラフマーとあーさのシヴァと3つの最高神
ちなみにヴィシュヌ派、シヴァ派において、それぞれは3つの神の中でもキング・オブ・最高神
シヴァの妻の一人はカーリー(笙乃茅桜)。血と殺戮の女神。
シヴァの別名であるナタラージャはカリ様(煌羽レオ)。舞踊の神。
さっきまであーさは「自分のために歌い、踊れ」と言っているシャフリヤールだったのにw
インドに限らないけれども、神話の世界はややこしいですね。

きぃちゃん演じるラクシュミーは美と富と豊穣と幸運の女神。欲張りすぎるだろ!詰め込みすぎだろ!というくらいですが、きぃちゃんだもよねー。
ヴィシュヌの妻であります。神々のレベルでも夫婦。最高だな。
ところどころ歌詞でもサンスクリット語が出てきているようですね。
もっとも私は「ワン・ツー・スリー」という翔くんの歌詞しかわからなかったけど。無学。

咲ちゃんのラーヴァナはブラフマーに認められてスゴツヨの特権を得たり、ヴィシュヌに助けてもらって転生したりする羅刹の王。
そのほか大勢の男役ガンダルヴァは、奏楽神団。
神々の宮廷で美しい音楽を奏でる仕事についている。ここでもまた音楽モチーフ! さすがだいきほ。
大勢の娘役アプサラスは水の精。宮廷内での接待係。ガンダルヴァの奏でる音楽に合わせて踊ることもあったのでしょう。
ヒンドゥーサンスクリットが入り交じっているのはいいのだろうか、よくわからないですが。
パズドラでよく出てくるので、詳しい人もいるかもしれません。
極彩色がめまぐるしい中詰でした。『カルーセル輪舞曲』を思い出した人も多いでしょう。

第五章の中国は言わずとしれた『BUND/NEON上海』のオマージュ。
すごい。すごいデジャブだった。もう既視感が半端なかった。すごい。格好いい。
あのチャイナが好きな人はたまらんだろうなあ。
私はお帽子は顔が見えにくくなるので、あんまり得意ではないのですが、カリ様はすぐにわかったわ……動きって大事……。
歌姫が出てくるともう大変。どこを見たらいいかわからない。
ひらめちゃんもひまりちゃんもみちるちゃんもいますからね。でもやっぱり歌姫を見てしまう。
だって後ろに控えているのもはおりんとありすちゃんだよ。豪華なコーラスだな、本当。

このきぃちゃんの曲を「真彩ラップ」と言う人もあるようですが、あれはただ早口なだけでラップとは違うかなと個人的には思っております。
ラップだったら歌詞は脚韻もしくは頭韻が必要になってきますから(私が聞き取っていないだけで韻を踏んでいるようだったらゴメンナサイ/この場面、歌詞どころの騒ぎではない興奮がやってくる)。
おそらく高校の漢詩の授業でやったはずですよ、忘れているかもしれませんが。洋曲なら今でもよくある。
私はJ-popなるものをまるで聞かないのでよくわからないのですが、最近の曲は韻を踏んでいないのかしらね。
曲そのものはオリジナルではないので(エレクトルスイングとしてはわりと有名なキャラバンパレスの「LoneDigger」)、版権が気になるところです。
これは差し替えたらいかんよ。
生田先生が観劇なさったとき、ここは身体がリズムにのっていたとか。差し替えたらあかんよ。
頼むから差し替えないでね。これがこのショーにおける2番目のお願いです。
三人のタンゴはさながら『あかねさす紫の花』の中国マフィア版といったところでしょうか。
ダンスは苦手といっているきぃちゃんですが、そんな風にはとても見えなかったです。すばらしい。

第六章。これはちょっと私は注文がありまして。
異素材の布を組み合わせてできた黒い軍服、ダブルボタン、赤い腕章、これはアウトなのはないでしょうか。
もちろん腕章は無地ではあるけれども、嫌でも思い出すものがある。
ナチスを礼賛している場面では当然ないし、むしろ悪の象徴として「争いのコロス」として描かれている。
かろうじて娘役は軍服でもないし、ダブルボタンでもないのだけれども、黒いドレスに赤い腕章。
けれども、タカラジェンヌがそれをやると「格好良く」見えてしまう。これが問題なのではないでしょうか。
だからせめて腕章の色だけでも変えて欲しい。
さききわの鳩が出てくることで改心したことを示すために腕章はとれるのですが、頼むから、この腕章はよくない。
銃を持って、隊列組んで、そろったダンスを見せられると全体主義めいたものを連想してしまう。
金とか銀とか白とか、とにかく腕章の色だけでいいから変えて欲しい。円盤化する前に。頼む。
これがこのショーにおける1番のお願いです。

それにしても平和の象徴の白い鳩は咲ちゃん、ひらめちゃんでここでもプレプレお披露目感。
いや、よく似合っていましたし、ダイナミックなダンスはとても素敵でしたけどね。
白いお衣装ということもあって、せっかちな私は結婚式か!と思いましたね。
早すぎるわ。まだ前任者退団してませんって感じです。
ここまでプレプレお披露目!という具合を前面に出されると、退団するときには添い遂げで!という人も現れそうです。
私は添い遂げを強要したくないタイプだからなんとも言えないですが、気持ちはわからないでもないとうっかり思ってしまった。

第七章フィナーレ。ホープダイヤモンドを連想させる青い薔薇をもって銀橋0番だいもん登場。
上級生娘役との場面。ちょっと時間が短すぎて、一人ひとりを見ている時間が短くなってしまうのが惜しい。
もうちょっと、もうちょっと、引き延ばしてくれてもいいのよ。
あとせっかくだから全員がだいもんと少しずつ絡んでくれていいのよ。せっかくなんだから……っ!><
そして郡舞で青い薔薇は咲ちゃんへと手渡される。「俺は星はいらない」といった『食聖』を思い出しますね。バトンたっち! あみちゃんが後ろの列とはいえ、ほぼセンターにいることにもビックリしました。ありがとう、ありがとう。
雪組のスターの思い、希望といったところでしょう。
デュエットダンス、プログラムには「共に旅をした、最良のパートナーと共に、男は踊る。」ってすごい。
もうこれだけで涙が出てくるレベル。花組時代のあれやこれやから思い出される。走馬灯のように。


銀橋の並びは、下手から朝美・真彩・望海・彩風・彩凪で、彩彩コンビで並んだのは、好きな人にはたまらなかったことでしょう。
銀橋渡りも上手は望海が率いてやってきて、下手は真彩が率いて並んで、トップコンビが先頭になるのもよかったし、挨拶順も「朝美・真彩」「望海・彩風」からの「真彩・望海」とトップコンビになって、とてもよかったです。
やっぱりこういう順番はお作法として大切だと思う。

雪組『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~感想

雪組公演

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ミュージカル・シンフォニア『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出/上田 久美子
レビュー・アラベスクシルクロード~盗賊と宝石~』
作・演出/生田 大和

実は最初に見たときには「おもしろい! すごい! しかしどうやって解釈すればいいのか?」と思い、各所でコメディタッチなところや印象に残ったところなど部分的な感想はいくらでも思いつくのだけれども、全体としてどういう作品だと考えるかというのが難しいなあ、なんといったらいいんだろうなあ、語彙力ないなあ……なんて途方に暮れていました。
けれども、その日の夜にお風呂で考えがまとまりました。
そうか、これは一つの「シンフォニー(交響曲)」なのか、と。
「ミュージカル・シンフォニア」というショルダータイトルはそういうわけか、なるほど。
私が観劇したのは芝居というよりもむしろ交響曲だと考えると、全体としてスッキリまとまりをもって腑に落ちました。
だから普通の「物語」としての文法を照らし合わせて、あれはこことつながっているとか、フラグを回収したな、とかそういう見方をしない方が私は楽しめました。
交響曲にもそれなりの「文法」があって、むしろそれを作り出したのが今回の主人公であるルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(ルイ)なのですが、今回は細かい音楽のカテゴリ(スケルツォとかメヌエットとかソナタとか)はともかくとして、交響曲にはガッツリ「序破急」「起承転結」の作り方の他に、「同一テーマの反復」という作り方があり、それと照らし合わせて今回の作品を読んでいくとおもしろいなと思った次第です。
だから多少観念的な話にはなるかと。

ここからはネタバレがありますので未見の方は注意です。

では、本作における「反復」される「同一テーマ」とはなんなのか、それが謎の女の正体なんだと思います。
本人は「誰のそばにもいる」「人生の不幸」と名乗ります。
ナポレオンの言葉を借りれば、「人間の苦しみ」とも言い換えられるでしょう。
ゲーテの言葉で言うなら「悩み」というところでしょうか。
そしてそれにルイは「運命」と名付ける。
厳密にいえば「不幸=運命」ではない。だからルイのやったことは「ラベルの張り替え」だ。新しい名前をつけた。
だから彼女は最後に白いお衣装に「生まれ変わる」。新しい概念として彼女を捉え直したから、彼女も変わった。

ルイは失恋、難聴、孤独といった「不幸な運命」を背負いながらも、それでも抗って、戦って、魂を込めて作った音楽で戦ってきた。
その音楽は確かに不幸の中から生まれたかも知れないけれども、その音楽は人々に不幸をもたらしたわけではない。
上田先生の講演会で「何が嫌いかわからなければ、何が好きかもわからない。感覚というのは相対的なものだ」というフレーズが印象に残っていますが、まさにそういうころなのではないでしょうか。
「何が不幸かわからなければ、何が幸い(歓喜・喜び)なのかもわからない」
だからルイは「不幸」という概念とともに「歓喜の歌」を作る。

天界という人知を超えた存在が大きな枠組みとしてあり、その中で、ナポレオンの苦しみ、ゲーテの苦しみ、現在のルイの苦しみ、過去のルイの苦しみといった「人々の苦しみ」が繰り返し描かれる。
これこそが「同一テーマの反復」であり、音楽(芝居)として「苦しみ」のクライマックスはナポレオンの苦しみだろう。
ここに描かれるナポレオンは史実のナポレオンではない。
百日天下を成功させたナポレオンの見る影もないが、それでいいのだろう。
ここに描かれているのはあくまでも「ルイが思い描くナポレオン」なのである。
「ルイが思い描くゲーテ」は政治家としてのゲーテ当人によって否定されてしまった。
「ルイが思い描くナポレオン」も皇帝となったナポレオンによって否定されてしまったが、ルイの夢の中に現れるナポレオンは「人は苦しむために生きる」と説く。
そんなのあんまりである、という反動をバネに自分の「苦悩」を人類の「不幸」とともに「歓喜」に変える「運命」を選ぶ。
すごいな、壮大だな。ビックリするわ。こんなの、見てすぐには気がつかないよ。
観劇したその日にゆっくり振り返る時間がとれてよかった。

大団円は見事である。
白いお衣装を着てみんなでぐるぐる回ってジャンプする。第九の完成である。
自身を「不幸」と名乗った謎の女は「運命」という新しい名前をつけられたことによって、白いお衣装に着替えて女神のようにルイのそばで微笑む。
なお、ルイは第十の交響曲も執筆中であったというが、完成する前に亡くなる。
だから第九の「歓喜の歌」が本当に最期の作品となる。

私たちはあらゆる「不幸」とともにある。
いや、なんていうかこの未曾有のウイルスが跋扈する世界でこの国の対応なんてのは、多少知恵のある人ならわかる通り「不幸」だと思うんですよ。
あんな支配者がいる国に生まれるなんて。
私たちはその「不幸」にどうやって戦ったらいいのだろう、抗うべきなのだろう。
そう考えずにはいられませんでした。

それから、作品全体が、過去の作品へのリスペクトにあふれている。
彩凪翔演じるゲーテが『春雷』であることは言うまでもなく(そのゲーテに携帯電話の存在を予見させたのはうまいなあ、しかもその携帯電話が悪しきSNSを生み出すのだから、思わず考え込んでしまう)、他にも例えば、望海風斗演じるルイの少年時代を演じるのが野々花ひまりであることは『ドン・ジュアン』を思い出させる。
真彩が銃口を望海に向けるところはさながら『ひかりふる路』だろうか。
中盤、第五交響曲を捧げることから、謎の女の正体がチラリとわかるあのコメディたっちな二人の会話は『20世紀号に乗って』のようでもある。
「ペンよりもパン!」って最高だな。あの真面目な声のトーンで言われたらねえ……笑。
しかしルイはそのパンも投げ捨てるわけですが。毎回そのパンの行方が変わりそうですね、あの軌道。
望海に対して「は?」と本気で、低い声で真彩が言うのもおもしろい。
ルイが体が密着するほど近づいてきたときのやりとりもよく似ていたな、と。
円盤化されないことに落胆しているファンへのやさしさ。ありがとう、上田先生。

また、本人たちは演じていませんが、謎の女がピストルを手渡すところは『エリザベート』のトートやトートダンサーのようでもあるし、『うたかたの恋』を連想する人もいるだろう。
ナポレオンの戴冠式のお衣装は『眠らない男』のものだった。
上田先生ってすごいな。天才か? これを『サパ』とほぼ同時並行しようとしていたというのがすごい。頭の中、どうなっているのだろう。情緒不安定になりそうだけど。
『サパ』はゴリゴリ「物語」の読み解きを必要とすると思っているし、次の『桜嵐記』もおそらくはそちらのタイプであろうから、少し違うタイプの物語を作ってみたくなったのでしょうか。いやはや、すばらしい。

すばらしいといえば、空のオーケストラピットの使い方ももはや神業レベル。
誰だって空のオケピを見るのが辛いと思った。
『アナスタシア』のときは御崎先生が指揮者として立ってくれたことがどれだけ心強かっただろう。
でも上田先生は「何ができないか」ではなく、「何ができるか」という発想で、オケピを十二分に舞台として使ってくれた。
とても嬉しかった。だから最初の場面は涙なしでは見ることができない。

よく回る盆、よく動くセリ、という印象もありますが、これも舞台上の人数を減らすのに効果的なのでしょう。
少々うるさい(物理的にというよりも精神的に気が散るとか)と感じる人もいるかもしれませんが、私はめまぐるしく変わるのがおもしろかったです。
それにしても大道具さんは、これは大忙しだろうなとは思いました。
裏方さんもどうか、最後まで無事でいてください。
銃に見立てたトランペットの大道具もすばらしかったです。

配役の小さな炎と黒炎の妙も効いていました。
小さな炎、それはルイの生きる希望。だから楽隊たちとベースの色は同じ。ルイにとって音楽とは生きる希望。
一度は黒炎に消されかけますが、ルイは「不幸」を乗り越え、再び音楽を作る。
黒炎こそトートダンサーのようなものでしょうか。
「ひとかけらの不幸」といいますか、まあ二人いるので「ふたかけらの不幸」とでもしておきましょう。

役者別の感想としては、まずはだいもん(望海風斗)もルイはもうミュージカル役者としての一つの完成形だと思います。
これを普通の男性が演じたら、暑苦しくなってしまいそうだなと。
ルイは重苦しくこそあれ、暑苦しくはないかなと思うのです。
音楽にまつわる話を最後に演じられる喜びもあるのかもしれません。
だいもんのご実家では父親がクラッシック曲を好んで聴いていたというので、喜びもひとしおではなかったことでしょう。
人格は別として、あの偉大な楽聖ベートーヴェンを演じることができる喜びをひしを感じました。
「サヨナラ公演に名作なし」という言葉を見事に覆してくれました。
上田先生も彼女にこそベートーヴェンを演じて欲しかったのでしょう。

指揮者が指揮棒を振ることは今でこそ当たり前になっていますが、ルイの時代はそういう習慣ができるかできないかギリギリのところ。
でもやっぱり指揮棒をもっていてくれると嬉しいよね。
ファンとしては『ファントム』も思い出すからさ。
ありがとう、上田先生。
ちなみに「fff(フォルテシッシモ)」なる記号を最初に用いたのはルイだとか、なんとか。私も何かで読みました。
最初、楽譜を見た人たちは「ff(フォルテッシモ)」の間違いでは?と思ったくらいだそうです。
ルイは楽譜の字も読みやすいとはいえなかったのでしょうね。

上田先生に「稀代の歌姫」と言われるきぃちゃん(真彩希帆)の謎の女もすばらしかった。
サヨナラ公演なのに、概念としてのお役で、しかもルイにしか見えないという設定だから、他の役者との絡みは確かに少ないのだけれども、その分濃厚にだいもんと絡んでくれて、本当に嬉しかったです。
しかも絡み方が今までになかったようなタイプで、もうなんていうか本当に新しい一面をありがとう。
ショーでも思いましたが、今回はやたらと高笑いが多いので、喉を大切になさってください。
上田先生と生田先生はきぃちゃんに高笑いして欲しかったんですね……笑。
あとは銀橋での演技は裸足でもありましたので、足下にもご注意ください。
突然ピンクのお衣装になったときは驚きましたが、それもルイの妄想ですしね! 愛らしかった。
ついでに大きな黒いリボンにピンクのお帽子?髪飾り?も素敵でした。
ルイが常に重苦しい「fff」であるのに対して、「ppp」の姿勢を貫くというだいきほの新しい関係もすばらしかったです。

次世代を引っ張っていくナポレオン役の咲ちゃん(彩風咲奈)はそつなくなんでもこなすという感じでしたね。
ひらめちゃん(朝月希和)との絡みがないのは残念でしたが、ショーではこれでもか!というくらいプレプレお披露目感が漂っていましたね。
素敵なコンビになってくれることを祈ります。

メッテルニヒのカリ様(煌羽レオ)は『N!ZM!!』のピンク髪+半袖腕まくりという出で立ちがうっかり性癖に刺さって大変なことになりましたが、今回のメッテルニヒもすごくよいー!
セリ上がりしているメッテルニヒと花道から銀橋にむかって歩きながら歌うルイの二人の曲が私はとても好きです。
あー早く『ル・サンク』でないかなー。正しい歌詞が早く知りたい。とても知りたい。
本当に完璧にメッテルニヒだよ? 私の想像通りだよ?
伊東甲子太郎のときもそうだったんだけど、本当に想像通りの甲子太郎だったんだよ?
拍手するしかねー! あとダーティーLEOも好きでした。要は悪役ってことか。

あすくん(久城あす)のサリエリは、どの媒体でもなかなかお目にかかれないほどの陽キャぶりを発揮して、新しいサリエリ像ができました。すばらしい。
映画『アマデウス』の印象が強い人も多く、サリエリモーツァルトに嫉妬していたという話もありますが、実際はモーツァルトの方がサリエリをうらやましがったという話もありますね。
宝塚で言えば星組ロックオペラモーツァルト』のサリエリ(凪七瑠海)とは全く違うサリエリに出会うことができました。
いや、これは目からうろこでした。すごい楽しいよ、あのサリエリ
みちるモーツァルトには「まだ宮廷楽長なんてやって! 実力ないくせに!」みたいな悪口を言われていますが、聞こえていてもにこにこしていそうなサリエリでした。

ゲルハルト役のあーさ(朝美絢)は、ルイが「少年」「青年」「大人」と役がわかれているのに対して、すべてを一人で担っておりましたので(もっともここをわけるとあーさの出番がさらに減るので仕方が無いかもしれません)、早変わりもあって大変だったと思いましたが、演じ分けもよかったですね。
少年時代の第一声なんかは月組時代を思い出すほどでした。
青年ルイ役のあみちゃん(彩海せら)との並びはうっとりでした。舞台写真欲しいくらいです。
あまり出番がなかったのは残念ですが、あれが最大限でしょう。

ルイの少年役を演じたひまりちゃん(野々花ひまり)、天国にも地獄にもいけないモーツァルトを演じたみちるちゃん(彩みちる)、オーストリア皇后を演じたカレンさん(千風カレン)、ブロイニング夫人を演じたすみれ姉さん(愛すみれ)、大好きな娘役ちゃんたちは何を演じていてもどこにいてもすぐに見つけました。
ひたすらに愛らしかったです。ありがとう。
でもひまりちゃんを何回もぶたないで~!>< 見ているこっちが痛い。
それくらい組長(奏乃はると)の演技もすばらしかったです。
あやなちゃん(綾凰華)にもちゃんと歌う場面がありました。
出番はそれほど多くないけれども、ルイの後ろ盾になっていてくれて本当にありがとう、ルドルフ大公。

最初に「同一テーマの反復」が主軸にある作品だと考察しましたが、これってうっかりすると眠くなるんですよね。
なんせ同じことが繰り返し起こるから。「人間の不幸・苦悩」がずっと続くから。
けれどもそうならないのは一重に役者の技量でしょう。本当に組子たちの芝居に支えられた(上田先生に鍛えられた)作品でした。

まあね、そもそも「だいもんがきぃちゃんと一緒に第九を作る」っていう筋書きだけで大優勝なんですよ、御託なんてどうでもいいんですよ。『SV』を思い出さずにはいられませんからね、ファンは。上田先生は本当に過去作品へのリスペクトがあるな。

今まで私が触れてきた多くの作品とタイプが違うので、良さをかみしめるのに時間がかかりそうな作品ですが、とてもとても良かったです。
ショーと合わせると、本当に胃もたれしそうです(笑)。
でも出会えて良かった作品です。
しばらくベートーヴェン関連の書籍をあさって読みながら、この作品に出会えた幸せもかみしめます。
ショーの感想はまた後で! 長くなりすぎた!

こちらも「宝石に扮したきぃちゃんを盗賊であるだいもんがシルクロードを渡って追いかける」という筋書きだけで大優勝で、今回は芝居もショーも大変満足でした。

2020年観劇振り返り

今日が仕事納めの人も多いのでしょうか。お疲れ様です。
私は一足先に仕事を納め、ぐーたら過ごしています。
ぐーたらついでに今年の観劇を振り返りました。
ちなみに、2019年観劇振り返りはこちら。

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花組 Grand Festival 『DANCE OLYMPIA』-Welcome to 2020-(作・演出/稲葉 太地) 1回
月組 デジタル・マジカル・ミュージカル 『出島小宇宙戦争』(作・演出/谷 貴矢) 1回
星組 幻想歌舞録 『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』(作・演出・振付/謝 珠栄)、Show Stars『Ray -星の光線-』(作・演出/中村 一徳) 5回
月組 ミュージカル・ロマン 『赤と黒』-原作 スタンダール-(脚本/柴田 侑宏、演出/中村 暁) 1回
雪組 ミュージカル 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』(脚本・演出/小池 修一郎 ) 4回
宙組 『FLYING SAPA -フライング サパ-』(作・演出/上田 久美子) 3回
宙組 オリエンタル・テイル 『壮麗帝』(作・演出/樫畑 亜依子) 1回
雪組 ミュージカル・ロマン『炎のボレロ』(作/柴田 侑宏、演出/中村 暁)、ネオダイナミック・ショー『Music Revolution! -New Spirit-』(作・演出/中村 一徳) 1回
雪組 望海風斗 MEGA LIVE TOUR 『NOW! ZOOM ME!!』(作・演出/齋藤 吉正) 3回
専科・雪組公演 凪七瑠海コンサートロマンチック・ステージ『パッション・ダムール -愛の夢-』(作・演出/岡田 敬二) 1回
花組 ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』(原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート)(c)大和 和紀/講談社)(脚本・演出/小柳 奈穂子) 7回
月組 JAPAN TRADITIONAL REVUE 『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』(監修/坂東 玉三郎、作・演出/植田 紳爾)、ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜(作・演出/原田 諒) 4回
星組 『エル・アルコン-鷹-』~青池保子原作「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より~(原作:青池 保子(秋田書店))( 脚本・演出/齋藤 吉正)、Show Stars『Ray -星の光線-』(作・演出/中村 一徳) 1回
星組 ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック』(脚本・演出/大野 拓史) 1回
宙組 三井住友カードミュージカル『アナスタシア』(潤色・演出/稲葉 太地) 2回
※ライブ中継を含めた回数

※宝塚以外
『ロカビリー☆ジャック』(作・作詞・楽曲プロデュース/森雪之丞)(演出/岸谷五朗) 1回

37回のうち、宝塚以外が1公演しかないのが嫌でも目立つ。
『ロカビリー☆ジャック』も年の始めの方だったことを考えれば、コロナ以降、宝塚以外の観劇をしていなかったということですね。
ライブ中継が始まったおかげで、回数そのものは去年よりも少ないものの激減!という感じではない。
けれどもなーやっぱり生で観劇したいしなー。
3~7月までの5ヶ月もの間観劇しなかったのなんて、何年ぶりだろう。
少なくとも大学生のときにだってこんなことなかったぞ。

回数としては『はいからさんが通る』が最多の7回ですが、人生初の新人公演がなくなったうつろな気持ちは一生忘れられないだろうなと思っています。
「うらみ」ではなく「うつろ」です。劇団がそう判断したことも、よくわかるから。
オーケストラと新人公演が戻ってくる日が待ち遠しいです。

最近、オシゴトの関係で『はいからさんが通る』を何度も繰り返し見たり、原作を読んだりしているのですが、やはり私は原作が好きなんだなーということをしみじみ感じました。
環と鬼島の番外編『鷺草物語』は是非ともバウホールあたりで見たいです。
編集長の番外編『霧の朝 パリで』も見たいのです。あの美形を女性にはやれないといった作者の言葉が今でも忘れられないのです(笑)。

作品として良かったなあと思うのは、宙組『サパ』と月組『WWT』『ピガール狂騒曲』です。
上記の作品は宝塚初心者にも自信をもって勧められる作品です。

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来年は『fff』『桜嵐記』と退団公演×うえくみ先生の組み合わせが2本もあり、今いる5組のトップスター10人の顔ぶれが夏までに半分以上変わるという激動の年になりそうですが、コロナ、てめぇだけはおとなしくしてろよ?

それではみなさん、ごきげんよう。よいお年を!

星組『シラノ・ド・ベルジュラック』感想

星組公演

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ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック
脚本・演出/大野 拓史

今更な感じですが、とてもおもしろかったので、ライブ中継を見ながらとったメモをもとに、ざっくりした感想をば。
基本的に「みっきー!」としか言っていません。天寿光希の芝居が知っていたけれども、すばらしかった。相変わらず……。
ちなみに併せてこの映画をおすすめしておきます。

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登場早々からいかにも「悪い人」のオーラがぷんぷんのみっきー。
もちろんそれはお衣装もあるのだろうけれども、目つきというか視線というか。ねっとりした目線がね、もうすごーくわかりやすく悪い人。素敵。悪い人エンジン、全開。
画面にうつるみっきーが悪い人で、そしていちいち格好良い。好き。
最近だと『龍の宮物語』もばりばりの「悪い人」でしたね。

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単調すぎだという人もいるようですが、私はとにかく場面転換が少ないのがストレスなく見ることができて、良かったです。
大劇場はともかくとして、別箱で場転が多いのは割と集中力が切れてしまいがちだからダメなのよね、私……。
もともとフランスの喜劇で、全5幕、ほぼ原作通りに進み、ゆったりした感じがフランスの優雅さというかエスプリというか、それらが助長に感じる人もまあいるだろうけれども、私は概ね良かったかなという感想です。
1幕は劇場→菓子屋→バルコニー、2幕は戦場→修道院という見事にわかりやすい5幕ですな。
大道具も工夫が凝らされていて、1幕の終わりのバルコニーの場面で使った階段の向きをかえると、確かに違った場所であるように見えて、2幕では戦地として使われていました。絶妙だな。

いきなり主人公が出てくるのではなく、世界観や周りの状況の提示から始まるタイプのお芝居で、リニエール(朝水りょう)が「皮肉屋の小汚い詩人」として出てくるのですが、うまいなあ……見せ場が序盤しかないのがもったいないくらいです。
「小汚い」ってレベルが難しいですよね、特にタカラジェンヌはみんなきれいな人が多いからさ。

そしてヒロインのロクサーヌ(小桜ほのか)がこれまたすばらしくキュート。
ツイッターでもつぶやいたのですが、時折みゆちゃん(咲妃みゆ)に見えることがあって、「あ、芝居がうまいんだな」と思いました。
ガツンと体育会系の今の星組ですが、丁寧に芝居をつくる人も多いんだな、ということに改めて気がつかされます。
ほのちゃんに関して言えば、圧倒的なヒロイン力とでもいいましょうか、娘役芸といいましょうか、美しかったですね。
本当になぜ次の演目が『ロミオとジュリエット』なのだろう……あの娘役の出番が全然ないことで有名な……寂しい。

菓子屋のきわみくん(極美慎)は、菓子屋なのに踊り出す、踊りがキレキレ。菓子屋なのに……。
ラストの場面は15年後という設定だったと思いますが、お衣装は変わらず。
別は故ということもあり、お衣装にはそれほど時間や予算を割けなかったのでしょうか。
せめてもう1着くらいあってもよかったのでは?と思ってしまいました。まあほのちゃんも喪服入れて4着だから仕方が無いのか。
「パンをつくるしか能が無い」と言われてしまいますが、この「パンを作る能力」が2幕では活躍します。

最初は白いドレスがよく似合っているほのちゃん、全然しゃべらないのね……と思っていたら、2回目に出てきたときには、わりと早々歌い始めて、そしてうたうめえ!ってなった。常識ですね、はい。
シラノと菓子屋で会う場面でお召しになっていたピンクのドレスは『異人たちのルネサンス』でまどか(星風まどか)が着用していたものでしょうか。
ちょっとベロアっぽい感じのあのドレス、とても好きなので、またお目にかかれて嬉しかったです。
3回目に出てきたときはもういきなり歌っていたしな。ブルーのドレス、かわいいな。
真珠のイヤリング、ネックレスと、ブレスレットもよくお似合いでした。部屋に入って出てきたらアクセサリー変わっていてびっくりしたけどな。これぞ娘役魂。
2幕で羽織っていたマントは『1789』でちゃぴトワネットがフェルゼンと密会するときに着ていたものかな。派手。

音寧姉さんはロクサーヌの侍女ということでしたが、ちょっと滑稽な感じでしたね。
どういう役作りなのwと思いながらも、生真面目な感じが愛らしかったです。
ドレスは『ひかりふる路』でみちるちゃんが着ていたお衣装かな。

1から10まで悪い人、格好いい人であるみっきーは目をカッ!と見開いた様子が大変に印象的ですし、マントさばきが美しいですし、本当にため息が出てくるレベル。
「今日はお別れに言いに来た」とか、ほんとうに仕草がまるっと伊達男!
むしろロクサーヌはどうしてあの熱烈な投げキッスをうけても惚れないのだろう……なぞだぞ。
1幕終わりでは無事にクリスチャンと結婚式を挙げる。

2幕ではロクサーヌがただのエスプリ好きのお姫様であるだけではなく、愛する人のためなら危険もおかさないタイプのお姫様であることもわかる。格好良いな。
そしてクリスチャン瀬央にかなり力強い対応をします。ひざまずいていながら、絶対にクリスチャンの手を離さない。
熱烈に語っている手紙を書いたのがクリスチャンでないことを知らずに手紙のお礼を必死に言うロクサーヌ
ここでようやくクリスチャンはシラノの気持ちに気がつく。しかし気がついてすぐに彼は砲弾に倒れる。
原作ものということもあろうが、物語の構造としては無駄がなくて大変よろしい。

夫がなくなったということで、ロクサーヌ修道院へ。
14、5年経った後ということらしいですが、落ち着いたほのちゃんの演技がこれまたすばらしかった。舌を巻く。
俗世のあらゆるしがらみから解き放たれた今のロクサーヌは、ド・ギッシュ伯爵を許すほどの大きな心の持ち主。
「許す」ということに関して、とても器が大きいな、と。こういう女性が描けるのがすばらしい。
そしてロクサーヌが手紙の本当の主に気がついて、シラノの死をもってエンド。
「どうしてその尊い秘密を今になって明かそうと思ったのですか」という台詞が好き。「尊い秘密」っていいな。

理事(もう理事ではないけれどもw)は、やっぱり声がなー><
主演となると台詞も増えるし、今回なんて口から生まれてきたかのようnエスプリ上手な役ということもあって、苦しかったかな。
公演期間が短いのはむしろ幸いだったかと。声はかれていくものですから。

フィナーレのみっきーがまさかの金髪でなくてびっくりしました。
長髪だったということもありましょうが、おお!新鮮!と思いました。最近フィナーレやショーでは金髪が多かったですから。
『龍の宮物語』のときも、え、一体どこに隠していたの?その金髪!!みたいな反応をしてしまったくらいなので。
きわみくんがマジやんちゃなのは再認識したのですが、それにしても娘役が少ないな。
音寧姉さんがセンターなのは、まあそうなるだろうけれども、そうか『エル・アルコン』チームにそんなに娘役をとられていたのか……と唖然。
デュエットダンスのほのちゃんの白いドレス姿は女神でしたね。ちょっと物足りない感じはありましたが、美しかったです。

星組は音波みのり、有沙瞳の両名の活躍も応援したいところですが、今回はほのちゃんのこれからの活躍も同じくらい願っております!

余談ですが、雪組のトップコンビプレお披露目が『ヴェネチアの紋章』『ル・ポァゾン』に決まりましたね。
古き良き宝塚の再現への期待が高まります。咲ちゃんは『炎のボレロ』に続いて柴田作品ですが、似合いそう。
この夏に『ヴェネチアの紋章』を見返して、ちょうど花組のれいはなで見たいなと思っていたところでした。
ええ、はかない夢となりましたがね……。

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一方で朝美氏主演のバウ+東上も決定。東上は故郷に錦の御旗を立てることになりましょう。
しかし朝美主演のバウとかチケット争奪戦がこれまた激しそうですね。
きむしん先生は『アーネスト・イン・ラブ』『蘭陵王』はよかったのですが、個人的に『リッツホテル』で原作との解釈違いを起こしてからちょっと微妙なのですが、うまく行くといいですね。
お相手は誰がつとめるのでしょうか。個人的にはみちるちゃんかひまりちゃんがいいなあ。おとなしく発表を待ちます。

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宙組『アナスタシア』感想

宙組公演

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三井住友カード ミュージカル『アナスタシア』
潤色・演出/稲葉 太地

アーニャ役であるまどか(星風まどか)がとにかくすばらしかった……っ!
さすが、タイトルロールなだけはあるよ!
なんで彼女のソロ曲があんなにも少ないかわからないよ!
お芝居も歌もダンスも、そしてデミトリ役の真風に寄り添うという娘役芸も本当にすばらしかった。
なんでこの二人のデュエットダンスを見るのが最後になるの……?ともう意味がわからなかった。
この二人のデュエットダンスで泣いたことなんて一度もなかったのに、思わず涙がほろりと。
とてもいいコンビに成長したのにね……っ!

海外ミュージカルものということで、初日の幕が開く前から予想できていたことではありますが、やはり役が少なくてもったいない……><と思う役者はたくさんいましたね。
やはり宝塚歌劇団という場所は「誰が演じている」ということも一つの楽しみとして提供されている場所でもありますから。
しかしそんな中でもみねりちゃん(天彩峰里)の少女時代のアナスタシアは幕開きから、もうべらぼうに可愛い。最高に可愛い。
そりゃマリア皇太后の1番のお気に入りになるわけだよ!と納得させられるし、マリア皇太后の威厳がありつつも孫娘を可愛がる様子が本当にすばらしくて……。
『神々の土地』では「兄ではなくアレクサンドラです!」「とにかくアレクサンドラはそう信じているようで……」と冒頭でアレクサンドラを批判しまくっていた副組長(美風舞良)がアレクサンドラ皇后役というのもおもしろくて、冒頭ではくすりと笑ってしまいました。
マリア皇太后との仲も相変わらず悪いようで、アナスタシアにオルゴールがプレゼントされたことを知るやいなやものすごい勢いで「今の時代に必要なのは、オルゴールではなく、お祈りです!」とキッパリと言い放つ姿に「陛下を守るのは神ではない!」と私の中のドミトリーが叫びました。すいません、『神々の土地』オタクなもので……。
父親に向かって「私は大公女、アナスタシア・ニコラエヴァナ・ロマノフよ!」と言い切る少女アナスタシアを演じたみねりちゃんがとにかく愛らしかったです。ラブリー。ソーキュート。

『神々の土地』関連で言うなら、最後に近い場面、マリア皇太后デミトリに「あなたを誤解していたのかもしれません」と言ったとき「そういう人生なんで」みたいな返答をしたときは、フェリックスううううう!!!!!と思いました。
あの人も誤解されやすい人ですよね。とっても友達思いなのに。デミトリ―思いというべきか。
なんといっても麗しのイレーネを救うために「ご自分のレンブラントを全部ボリシュヴィキに渡した」というくらいですから。
冒頭でデミトリがユスポフ家の劇場で暮らしていることがわかったときよりもときめきました。

ららちゃん(遥羽らら)がアレクセイで、そらくん(和希そら)がリリーという発表を見たときは、「なぜ娘役に女性の役を、男役に男性・少年の役を与えないのだ……?」とも思ったのですが、ららちゃんのアレクセイも、リリーのそらくんもすばらしかったです。
ららちゃんは2幕でしゃべったときに大変声が愛らしかったですね。
「秘密を教えてあげるよ。僕、もうすぐ死ぬんだ」「君は誰?」「そんなバカな!自分が誰かわからないなんて」みたいな台詞だったと思います。
台詞の真意はちょっと意味不明だな……と思いながら正直聞いていたのですが、声が大変すばらしかった。可愛い。

デミトリの悪友役である秋音光、紫藤りゅう、瑠依薪世、鷹翔千空の四人は、第1幕第6場でデミトリとアーニャの関係をからかったすぐあとの場面で、ロマノフの男性として早着替えで再び登場するのですが、これがまたすばらしい。
美しい青年貴公子になって白い軍服のお衣装で出てくる。早着替えがすばらいしこともさることながら、すぐに役を変えられる彼女たちもすばらしい。
そしてわかっていたことではありますが、このメンバーだとしどりゅーに目がいく。
しどりゅー、あの、芝居をしているときは「昔から宙組にいました」みたいな感じなのに、どうしてフィナーレのパートだと星男になって観客をあおるのですか……もう……すき。
スチール写真が白い軍服のお衣装でないのが残念だ。残念極まりない。

個人的にはデミトリと一緒にある女の子をアナスタシアに仕立て上げて一攫千金を狙うパートナーが、実はボリシュヴィキのスパイでした、みたいね展開の方が盛り上がるような気もするのですが、そうするとさらに役が少なくなってしまうのがまた難しいところですし、オリジナル版を踏襲している以上、そうできないのは仕方がないのかもしれません。
でもヘラヘラしながらデミトリの相棒やっているききちゃん(芹香斗亜)が実は冷酷なスパイでした、みたいな2面性、見てみたくないですか?
私はとっても見てみたいです。

第1幕、パリ行きの列車に乗る場面はやけにシリアスで、りんきら(凛城きら)演じるイポリトフ伯爵が歌い出す。
時計の針が動く演出は印象的ですが、あまりにもシリアスで、そのままみんなが列車に乗っていくものだから、てっきりここで1幕が終わるのかと思うほどでした。
アナスタシアを見て伯爵が「神のご加護がありますように」と言うのも印象深く、伯爵は一目見ただけで実は彼女がアナスタシアであることを見抜いたのではないかと思うほど。
もっともここで1幕は終わらず、紆余曲折を経て、パリの風景を見下ろして終わるわけですが。
この終わり方も結構好きで、パリの風景を見に行ったはずのアーニャが歌うためだけに戻ってきたように見える演出はなんとかして欲しいのですが、デミトリとアーニャがパリの風景を見下ろしながらせり上がっていく上手からグレブという魔の手が近づいていることを暗示するのは美しかったです。

ダイヤモンドの存在を明かしたことでロシアを出国できることになったのですが、アーニャに「本当に信頼できる人にしかこの存在を教えてはいけない」と言った看護婦はおそらくアーニャの正体を知っていたのだろうなあ、となんとなく思いました。
アーニャという名前を与えたのも彼女でしょう。
個人的にはキーパーソンだと思っているのですが、これ以上話を膨らませるわけにもいかないのかな。

ラストのデミトリの「俺は手を伸ばしても届かない人を愛し続けることはできない」という台詞はとても素敵ですね。少年少女時代に実はパレードで目が合っていた、というエピソードはいかにも宝塚が好きそうな感じですが、あの場面は芝居の中にはないにもかかわらず、目に浮かぶようで……好き。
実は1幕にフラグが立っていたことには2回目に気がついたことでしたが、あのパレードで手を振る美しいアナスタシアとそれを薄汚れた少年デミトリが見ている様子が想像できて、とても好きです。
ここはいい演出でした。

ちょっと残念だったのは舞台装置かな。
第2幕のバレエを見る場面、あの舞台装置はセンターの席からでないとよく見えないかと。
上手と下手のボックス席に座るデミトリとアーニャ、マリア皇太后とリリー、そしてその奥の枠の中で繰り広げられる「白鳥の湖」は上手からはちょっとよく見えない部分が多く、しょぼんとなりました。
とはいえ、本公演だから舞台装置を大がかりにしたい気持ちもわかりますし、難しいですね。
そんなことより優希しおんくんのロットバルトは最高でしたね。ノリノリじゃねぇの!
なんでジークフリートに負けるかがわからんくらい格好良かったです。しびれました。

ただ2幕頭の橋と坂の舞台装置はとてもよくて、後ろにいる生徒もよくわかる。
下級生がよくわかるのはとてもいい。
アーニャが橋の名前を答えるときはブックレット?観光本?を見ずに言って、「昔、聞いたことがある気がする」みたいな台詞が挟まってもいいかなと思いましたが。

そしてだいぶ残念だったのが脚本ですかね……。
細かいこというようで本当に申し訳ないのですが、文章を構造的に読むのが仕事なものでどうしても気になる職業病だと思っていただければ。
2回見たから「アーニャはデミトリたちに会ってから、本当に自分がアナスタシアだと思っていたこと」「デミトリの幼少時代のたった一度のお辞儀の意味」の2つを理解できたのですが、いまいち演出が足りないと思うのです。
ちゃんとその言葉が観客の印象に残るような演出が欲しいかなーそんなに尺はとらなくてもいいからさ。
後者は歌詞にも入っているはずなのに、なんだか印象に残らないんですよね。

2回見てもわからなかったのは「アーニャはいつ自分がアナスタシアだと確信したのか」「マリア皇太后はなぜアーニャの部屋を訪れたのか」の2つですかね。
デミトリもアーニャも、もしかしたら本物のアナスタシアかも?と疑念を抱いたのは、おそらくオルゴールをアーニャが難なく開けたタイミングだと思いますし、デミトリが確信したのは、「皇女様」といって白いお衣装同士でひざまずいた場面だと思うのですが(しかしここの演出もなんか印象に残らない。役者の力量だけでインパクトを残しているような気がする。音楽や照明をカットアウトにしたらどうだろう)、アーニャ自身はいつ確信したのかさっぱりわからず、ホテルでマリア皇太后と対峙しているとき突然アナスタシアだった頃の記憶をぺらぺらと流暢にしゃべりだすから、一瞬私は置いてかれてしまいました。
あ、記憶戻っていたのね、みたいな。

マリア皇太后もそもそもなぜアーニャに会う気になって、わざわざ自分でホテルまで足を運んでのはか全くわからなかったわ。
会う気になったらなら、もう一度呼び寄せればいいのでは? なぜ自分できた? いや、皇太后だよ???みたいな疑問が。
そもそもバレエの時点で「おや?」と思っているわけだし、1度目で会ってあげてもいいような流れでしたが、それを裏切ってくるのはよくある方法かと思うのですが、そのあとのデミトリがマリア皇太后にぶつけた言葉にそれほど説得力があるようにも思えず、マリア皇太后の心変わりの理由もよくわかりませんでした。
「最初はアナスタシアに仕立て上げようと思ったけれども、今は本物のアナスタシアだと確信しています。だから会ってください」とストレートに言えばいいものを、なんだかよくわからないことを長々としゃべって背を向けたという感じになっているのがなんとも。
もちろん現実にそういう場面になったら、あたふたしてよくわからないことを述べるということはあるかもしれませんが、これ、お芝居ですからね……?

ラストはたたみかけるように意味がわかないところが多く、記者会見するといいながら「あなたの彼は?」と言って、マリア皇太后はアナスタシアから離れていくし、突然グレブがどこからともなく現れて「ここの警備はどうなっているんだ?」と思わざるをえないし(少なくともマリア皇太后が近くにいるような場所の警護ですよ?)、グレブは殺せないままなのはわかるとして、「財産を受け継ぐ者としてアナスタシアを発表する日」であるといって、おや、記者会見とは違う日なのか?同じ日なのか?と思って、時間軸が行方不明のまま、橋の場面でアーニャとデミトリが再会、ダンスして完!って、ええええええと思ってしまいました。
おとぎ話だからこれでいのか? ふんわり雰囲気わたがしみたいなラストでした……全くわからんかった……。

台詞でもかみあっているのかないのかよくわからない場所がいくつかありました。
マリア皇太后とアナスタシアの写真撮影のあと「誰もあなたの発言を否定しないようになるわ」「そんなのおかしいわ」「ところであなたの彼は?」というようなやりとりがあったと思うのですが、んんん?どういうこと???と思いましたし、2幕冒頭の橋の場面でも「バスタブのお湯は残しておいてよ!」「気をつけろよ」「うん」というデミトリとアーニャのやりとりも、なんか一言足りないような……ともやもやしました。
壬生義士伝』のときも脚本に赤ペン先生したいわ……と思ったけれども、今回も思ってしまった。
稲葉先生ってショーのイメージが強いからな。
最近の芝居だと『WEST SIDE STORY』もあるけれども、やはり海外ミュージカルなのね。
『WSS』そのものを私はあんまりかってないからな……。

第2幕はリリーが大活躍ですが、ヴラドに再会したリリーの反応も実は私はあんまりよくわかっていないのですよ。
死んだと思っていた元恋人が生きていて、わざわざ会いに来たという事実に対して、「過去の異物」と思っているのか「会いに来てくれて嬉しい」と思っているのか、その両方で揺れ動いていてもいいのですが、芝居野中では変化には要因が必要で、揺れ動いている要因がよくわからないな……と。
うれし恥ずかし、というわけでもないし、完全にコケにしているわけでもなさそうですし。
「あなたが愛したリリーかしら?」というのも突き放すために言っているのか、今の私も愛してくれるかしら?というニュアンスで言っているのか、どっちだろう……。

男女のやりとりでいえば、バレエを見に行くためにきれいに着飾ったデミトリの蝶ネクタイを、これまた大変美しいお衣装に早着替えして出てきたアーニャが直してあげようとしているのを、デミトリは嫌がるけれども、そのすぐあとに腕を組むように示す。
いちゃいちゃしたいのか、したくないのか、どっちやねん。

あと、気になることといえば冒頭でアナスタシアがベッドにオルゴールを取りに来る場面。
完全にゴリンスキーと鉢合わせているのに、アナスタシアは無事なんですよね……。
最初、ゴリンスキーがグレブの父親かと思ったのですが、グレブの父親はロマノフ一家を銃殺した後、「己を蔑んで死んだ」と母親は言ったというくらいですから、違うんでしょうね。
グレブパパとゴリンスキーは同僚で、同じようにロマノフ一家の処刑に立ち会ったけれども、前者は「己を蔑んで」、後者はいまだに新政府の役人として、生き残りのロマノフを追っている、といったところでしょうか。
自分が殺し損ねた娘を自分で片付けるのではなく、かつての同僚の息子に頼むってどういう心境なんでしょう。
ゴリンスキーは繰り返しグレブに「父親の意志を継げ」といいますもんね。
グレブ自身も「信じている彼の誇りを」と歌う。
実は父親、精神でも病んだのでは?と勘ぐってしまうな。

それから宙組に詳しい方にお聞きしたいのですが、本日A日程のフィナーレのパレード、トップスターたちが銀橋挨拶する前の段階で、上手の花道にいる、右から数えて2人目の頭身おばけの男役さんはどなたでしょうか……10秒に一回くらいウインクしていて、私も見事に被弾したのですが……。
マチネ公演でドキドキしたのですが、おもわずソワレ公演でもオペラグラスで見ていたところ、やはりしゃんしゃんを持ちながら、ウインクを飛ばしまくっていたので、これは自分を見ていると思った人には手当たり次第ウインクしているな?と思っていたところ、オペラ越しで再び被弾しました。
プログラムを見ても全くわからない……スタイルで覚えているからか……。

あと気になった下級生は、ネヴァクラブのギャルソンヌのお嬢さんを演じた愛未サラさんとロケットの一番上手で小さい身長ながらも輝いている栞菜ひまりちゃんのお二方の娘役です。
サラさんはもともと美人だなーと思っていたのですが、歌って踊っている姿はとても美しかったです。
ひまりちゃんは、160センチない中、一生懸命なのが大変に愛らしかったです。
個人的には山吹ひばりちゃんも応援しているのですが、今回はA日程だったので、残念ながらお目にかかれませんでした。残念!
AとBにわかれてもプログラムの最後のページの下級生さんたちは本当に少ししか出番がなくてかわいそうだな……。
次の生田先生、頼むよ!

フィナーレの曲は『NZM!!』の第1幕最後の「ノゾミ~♪」に聞こえた気もしますが、私だけかしら。