ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

雪組『炎のボレロ』『Music Revolution! -New Spirit-』感想

雪組公演

kageki.hankyu.co.jp

ミュージカル・ロマン『炎のボレロ
作/柴田 侑宏  演出/中村 暁

ネオダイナミック・ショー『Music Revolution! -New Spirit-』
作・演出/中村 一徳

今日が千秋楽ですね。おめでとうございます。
無事にできそうで何よりです。本当に、すばらしいことです。ありがとう!

個人的な話なのですが、『炎のボレロ』は母親がとにかく紫苑ゆうの大ファンで、今でもコンサートに行っているくらいで。
そういうわけで主人公のアルベルト、カテリーナのコンビよりもジェラール、モニカのコンビの話しか知らなくて、しかもその中でも耳にタコができるほど聞くわけですよ、「お前はいい女だが、聞き分けのないのが玉に瑕だ。勝手にしろ!」「勝手にするもん!」のやりとりを、ね。
なんでも当時のシメさんの会では、入出の合言葉にもなっていたようですし、私も昨年の秋のシメさんのコンサートに連れていっていただき、ちょうどその場面を再現したところも生で見ていたので、おお!これを朝美彩で観られるのか!と感動していたところなのですが、聞くところによると、スカステで放映されたバージョンではそのやりとりがカットされているとかなんとか。
おや? 今回はどうなるのかな? と思っていたのですが、ありましたね。無事に被弾しました。お疲れ様でした。ありがとうございました。

上記の理由というよりは、個人的に咲ちゃんと潤花がささらないこともあり、もうずっとジェラールとモニカについて考えていましたし、このコンビの視点から物語を追っていたのですが、脚本としてみると1番戦っているのはカテリーナの父ドロレス伯爵なのではないかなと。
家族のために祖国メキシコを売って、フランス側についたものの、反乱軍が力を増してきたら当然立場は危うくなる。
しかも娘はフランス人貴族との婚約が決まっていながら、メキシコの人間の恋に落ちてしまう。めちゃめちゃ戦っている。1人で戦っている。
むしろ彼が主人公なのではないかと思うほど。組長、ありがとうございました。脚本としてはイマイチその戦いぶりが弱いかなとも思いましたが、とても素敵な演技でした。
でも脚本でももっと書いてやれよという感じはありました。

ジェラール朝美は何度もお着替えします。どれもともても素敵です。
プロローグの黒い軍服、モニカに看病された後の淡いブルーというかグレーのベスト、くすみブルーの軍服、酒場のフランス貴族としてのネイビーの私服、ネイビーの軍服とまあどれも本当に最高なんですけれども、個人的にベスト大好きマンということもあり(旦那にも着せているくらいである)、モニカをキスで黙らせるという2次元でしか通用しないアレをやるお洋服が大好きです。
良い子は真似しちゃダメなやつだよなあ、あれ。でもささるのよねぇ、すいません。

出てきて最初からこんな感じの2人ですが、ラストはラストで「お前はいい女だが、聞き分けのないのが玉に瑕だ。勝手にしろ」「勝手にするわよ」のやり取りが、待っているのだから、本当にこのコンビの妄想が捗って仕方がない。尊い

そもそもスペインの酒場の踊り子のモニカとフランス貴族で軍人のジェラールは本来なら出会うはずのない2人で、しかも出会ったとしても敵同士だし、どうして恋に落ちることになったのか、もうそのあたりだけでも相当いろいろ考えてしまいますよね。
きっとアルベルトを酒場で誘ったときのように酒場に来たジェラールを誘って踊って、という感じなのでしょうけれども、最初こそ見た目が好みだったとかそういう理由だとしても、惹かれ合う何かがあったのだろうし、敵国の踊り子なんかにうつつを抜かすのは本来だったら遊びでしかないのに、結構本気でジェラールもモニカを愛してしまったからこそ、病気のことを言わなかったのだろうし。
だからまなはるタイロンがモニカに裏路地でこっそりジェラールの病について教えたことをジェラールは怒りをあらわにする。
いや、病気がなんであるかくらいは観客には教えてくれてもいいのよとも思いましたが。沖田総司みたいに白血病か何かかなあ。そういえば朝美氏は沖田を演じたことはありませんね。
病を負いながらも職務に専念する姿に惚れたか、酒場の踊り子でありながら一途で純情な姿に惚れたか、とにかくジェラールとモニカがよかったです。
朝美彩のコンビも大変息ぴったりでしたね。
オープニングから素敵でした。

オープニングといえば、プロローグのダンスシーンが長いという人もあるようですが、私はそんなことはないかなと思いましたよ。
ダンスのみでゆっくりと情熱的な世界にじわじわと入り込むことができてむしろよかったかなとさえ思っているくらいです。
いや、なんせ今回のメンバーはダンスがうりな人間が多いですし、まあこれくらい許してあげてね?って思うし、むしろ許せないのはその叙情的で素敵なダンスの後の第一声が、完全に事故ではないか?と思われるレベルであることだと思われます。
あの第一声がどなただったのかはわかりませんが、ビックリしてしまいました。

主題歌がジェラールとモニカのバージョン「2人で過ごす季節は〜♪」もありましたが、この二人こそ「二人で生きて♪」欲しい。
彼らのこれまでも気になるけれども、彼らにとってはこれからが問題で、むしろここからがスタート。
おそらくメキシコに残るだろうジェラールはメキシコでどんな扱いをされるのだろう。
モニカはどうやって支えるのだろう。
ジェラールはもう働かないで、ゆっくりと余生を送るのかな。それくらいの退職金がもらえるといいけれども。
そもそも働き口もなさそうだし。
酒場で働くジェラールはあまり想像できない(笑)。

もっとも、あの酒場のシーンでジェラールはどうしてアルベルトを逮捕しなかったのかという問題は、ずっと付き纏いそうですね。
私はあの「対決」の場面は、そりゃもう大好き好物もっとやらんか!というタイプなのですが、最後に胸を押さえてその場でジェラールがふらついても良かったかもしれません。
そして「クレマン大尉!」と呼びかけながらアルベルトが近づいて暗転、みたいな。
この2人は出会い方が違えばよい友人にもなっただろうし。
歌もダンスもこの場面は大好きです。
もっともここからしばらくジェラールは出番がないのが寂しい。

暗転といえば、セットも出ている役者も大して変わらないのに数日経ったことを示すためだけに暗転が一度ありましたが、あそこの場転はもっと他に方法がなかったのか。
暗転は場転の最終手段だよ。

朝美ジェラールは口元を歪めて笑う仕草が多く、いかにも辛気臭い軍人という感じでしたが(好き)、『サパ』の「その口元を歪めた笑い、何人の男を虜にしてきたのか」みたいなオバクからイエレナに対する台詞を思い出しました。
本当にもうどれくらいの人間を虜にしてきたのよ、朝美ジェラール!
悪い男です。フランスには婚約者がいるのでしょうか。社交界ではさぞ花形だったことでしょう。

思えば、ダンスが非常にダイナミックでしたね。足の縦の動きも横の動きも充分にありました。
足を上げるときもただ上げるというより弧を描きながらあげることが多く、迫力がありました。
すごい、雪組を見ているとは思えない!とも思いましたが、反対に歌については残念なことに同じことを思いました。
みちるちゃんはともかく(彼女も以前はだいぶ危うかったですが)りさと潤花の歌は、さ……あがちんも踊りの人だしさ…さすがに咲ちゃんとあーさは安定していました。
新生雪組は今までとは異なるカラーの組になるやもしれませんが、そうするとダントツ歌えるコンビは星組トップコンビということになりそうですね。
彼女たちもむしろダンスの方が得意な方たちですが。
もっともだいきほと歌唱力を比べて対抗できるのなんてとうあすコンビくらいではないかという疑惑もある。
ひらめちゃんが戻ってきますが、咲ちゃんのご指名なのか、劇団の思惑か、とにかく大人っぽいコンビの誕生は喜ばしいことです。みりゆきコンビのような夢を見させてください。
組替えが頻繁すぎて少しばかりかわいそうな気もしますが。

みちるちゃんは歌が上手くなっていただけでなく、とにかく男役をたてることがとても上手で丁寧な演技をするなと改めて思いました。
そういう娘役芸みたいなのは宝塚でしか求められないものだから、見ていてとても宝塚を見ているぞ!という気分になりました。
だからこそ、ひらめちゃんの娘役1就任はめでたいと思うけれども、みちるちゃんのことも大切にしてあげてね……娘役2番手格に据えてあげてね、朝美氏と組ませてあげてね。
わたし、ちょっと夢白さん、苦手なのよ……しょんぼりーぬ。
ひまりちゃんも大切に扱ってね。彼女のことも大好きよ。

ブラッスールはなぜああも簡単にマクシミリアン皇帝を敵に売るような形を取るのか、ということについてですが、これは世界史的な知識があると楽しいかもしれません。
ヅカオタとしてはお馴染みのエリザベートの夫であるフランツ・ヨーゼフの弟が今回、おとりにされそうになったマクシミリアンです。
ルドルフの叔父さんにあたるわけですね。
このマクシミリアンの出生が結構いわくつきで、もちろんゾフィの腹から生まれてきたのですが、父親がフランツとは異なり、フランツ・カール大公ではなく、ライヒシュタット公爵という噂が当時からあったらしく。
父親が違う、つまりハプスブルクの直系の血を引いていないというだけでもかなりスキャンダラスですが、このライヒシュタット公爵というのがいわゆるナポレオン2世にあたるわけでして。
父親がナポレオン1世、そして正当な血族とのつながりが欲しくてナポレオンがジョセフィーヌと離婚して再婚した相手がマリー・ルイーズ。彼女はローマ皇帝フランツ2世を父に持つ正当な皇女様。
だからマクシミリアンがローマ帝国の正当な血を継いでいないわけではないのですが、まあ事情はややこしい。
だからブラッスールも心の中ではナポレオン3世の傀儡であるマクシミリアンのことを侮っていた可能性はあるわけですよね。
そういう描写はなかったけれども、ただ単にブラッスールが自分勝手というだけでもなかったのかもしれません。
もっともドロレス伯爵との対比としてはおもしろいかもしれませんが。
歴史としてはマクシミリアンはメキシコで処刑されてしまいます。
本当、あすくんのブラッスールはよいブラッスールでした。

息子のローランは叶ゆうりでしたが、ショーで見るバリバリの男役!というよりは王子様みたいな役で、カテリーナだけでなく、周りの誰にでも優しそうな人でしたね。
なんだかちょっと新鮮でした。
父親の行為がやりすぎだと気がついていても、自分にとっては父親で、それなりに思い出もあり、政治的なこととなるとなかなか口を挟めない。
交渉の場において父に対してものを言おうとするジェラールを止めるのは、やっぱりそういうことかな、と。
ただ、ここでジェラールが何かを言おうとしたその姿勢はとても大切だと考えています。
もともと上司を鼻でせせら笑うようなキャラクターで、「さすがに炎のようなあの男のことは怖いらしい」みたいな台詞も最初にありました。
けれども、目の前で意見しようとしたのはここが初めてでしたし、だからこそ、ああいうラストになるのでしょう。

ところでこの「炎のような男」というのはいかがでしたかね。
最初の喧嘩をどんぱちチャンバラではなくお金で解決したり(殴ってはいましたが)、無血撤退の交渉の場でも仇を目の前にえらく冷静でしたし、復讐や祖国のために燃え上がる情熱はあったかもしれませんが、どちらかといえば冷静に対処している場面が多く、言葉だけが上滑りしているように感じました。
アルベルトとカテリーナのダンスはそれなりに炎のようだったかもしれませんが、あんまりときめきがないので、ちょっとこの「炎のような」という語には違和感がありました。

古き良き宝塚の脚本、という感じで、もう少し演出の方法はあろうけれども、それほど嫌いではなかったです。
ただやはり公爵を殺すところまでの盛り上がりに比べて、ちょっとラストがあっさりめかな。
国を取り戻すとかそういう系統の話だとああいうふうに大きな風呂敷を広げざるを得ないのかな、どうかな。
『追憶のバルセロナ』がまさにそうですよね。
だからこそ私は『琥珀色の雨』や『メランコリック・ジゴロ』といった個人にフューチャーした作品の方が好きなのかもしれません。

 

そして噂の『MRNS』は想像以上にオリジナル版とは異なっており、しかもそれが想像以上にショッキングだったみたいで、最初の音程から違ったのには「うわお!」と思わず声をあげてしまいました。
配信でよかったです。
とりあえず、何より朝美氏の白い羽根、おめでとうございます。白なのがとてもよい。
ただ羽根はともかく、朝美氏がセンターの新パートはとても嬉しかったものの、前回もそういう場面があってもよかったではないかと思っている身としては、嬉しかっただけに、なぜ前回は無かったのか?と終始考えてしまう。
前回の全国ツアーだって2番手だったからね?

主題歌の歌詞も振付けも新しくて、「お、おう?」と戸惑ってしまい、やはりセンターコンビに対する愛情やときめきって大事なのだなと再認識した限りでございます。
いや、本当ごめんね、咲ちゃん……。
みちるちゃんは大変好みなのですが。

タンゴの場面はそりゃもう眼福だったのですが、『義経』でシズカ役として朝美氏と絡んだ希良々うみちゃんとのコンビが復活していましたね。
あの頃よりだいぶ垢抜けたのでしょうか。
綺麗な娘役さんとして、朝美氏の隣に並んでくれてありがとうございます。
中詰なんかでもよく目に入ってきました。
革命が終わって若者たちのフレッシュなタンゴが素敵でした。

ただでさえ大好きな「サッチャナイ」ですが、もうこれを朝美氏が1人で歌いつないでいくというのは感動以外の何ものでもなくてですね……あの、本当にありがとうございました。
お衣装も爽やかな水色のキラキラストーンがたくさんついた燕尾でよかったです。
お色味は爽やかなのにセクシーさや色気が際立つのはなんででしょうね。最高でした。はあ、好き。
あやなちゃんもせらくん&みちるちゃんの「サッチャナイ」も大好きなのですが、そこのフレッシュさとはなんだか違う夜でした。

ありすちゃんはお歌で大活躍でしたね。フランス貴族のような輪っかのドレスも素敵でした。
デュエダンではカゲソロ、フィナーレはエトワールと美声を響かせてくれて本当にありがとうございます。
できればだいきほ作品の新人公演ヒロインを演じて欲しかったのですが……叶わぬ夢なのかなあ……。
1回くらいチャンスをあげたいところですが。

後半は新場面ジャズはまさかの『THE ENTERTAINER』のお衣装でしたね。私、あのお衣装がとても好きだから嬉しかったです。
何重にもなっているスカート、きらめく白黒金色、ピアノの鍵盤の模様、どれも素敵。みちるちゃん、可愛かったね〜!朝美氏もきまっていましたね〜!

ライブ配信、本当にありがとう。ありがたい、のだが、やはり劇場で見る時と集中力が全然違って、芝居を見た!という気分にあんまりなれないのがつらいところ。
部屋を暗くすればいいのかしら。どうやってみても家だと「ながら」になりがち。
円盤を流すときも同じだけど。

今回の円盤は11月発売ということで、軍服朝美氏とマーキューシオ朝美氏とたまきちと対談する朝美氏がいっぺんに家に来るわけですが。
一週間くらい休みを取らないと追いつかないのでは???という気が今からしている。休みたい。
ずっと見ていたい。見ていられる。