ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

星組『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』感想

星組公演

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宝塚剣豪秘録『柳生忍法帖
原作/山田風太郎柳生忍法帖」(KADOKAWA 角川文庫刊)
脚本・演出/大野拓史

ロマンチック・レビュー『モアー・ダンディズム!』
作・演出/岡田 敬二

どこを切ってもセクハラしかない原作を、そのまま宝塚の舞台に乗せてくれちゃったヨシマサへの恨みが募りすぎて、今度はどこを切ってもエログロナンセンスしかない原作が、そのまま舞台に乗っちゃったらどうしようという悩みがつきなかったのですが、そんなことは全くありませんでしたね。
むしろ大野先生、疑って申し訳ありませんでした!
大野先生といえば『エドワード8世』や『白鷺の城』は大好きですが、一方で『NOBUNAGA』や『Bandito』はよくわからんなーと思ってしまい、『阿弖流為』『シラノ』はその中間、好きそうな人がいたら見せてあげたいなという感じですかね。
あんまり期待していなかったのに友会が友達になってくれてSS席なんて当ててくれたもんだから、いそいそと出かけたのがもう2週間前の話。
慌ただしくて感想も書けたものではなかった。仕事が恨めしい。

そんなわけで、良かったですねー。
何が良かったって、あくまで十兵衛は堀一族の女たちの復讐の手助けをする「だけ」なんですよ。
最後は女達に手を下させる。それは千姫の願いでもありましたし、しびれたなあ。
てっきり虹七郎は十兵衛が殺しちゃうかも?と思ったけれども、足の腱を切って動けなくなったところを、堀一族の女たちに斬られまくる。いっそ、爽快。
七本槍のメンバーは一人一人は強いかもしれないけれども、七人の女が作戦をもって力と知恵を出し合って戦う前には倒れ行くしかない。これがシスターフッドってやつや……おばあちゃんが言ってた……と思いましたね。感動。

その七本槍はせおっち(瀬央ゆりあ)演じる虹七郎がセンターなわけですが、このお衣装、私には『BLEACH』の死神の衣装にしか見えなくてですね……いや、あのポニーテールもよかったです。
残忍な人殺しなのに、花まで挿しちゃってまー可愛いことw
で、ビジュアル的にずるいなーと思ったのがかりかりんたん(極美慎)演じる銀四郎の衣装ですよ。
何、あの義経の幼少期みたいな衣装!? 一人だけカラフルだし、平安時代かよ!とツッコミが入りそうな優雅なお衣装だし。
お顔に入っている傷だけが、その残忍さの唯一の証みたいになっているの、ずるくないですか? ずるいですよね?
そんなのずっと見ていたくなるからやめてー!? 惚れてまうやろー!?という感じでした。
ああいう衣装、駄目なの、私、弱いの、好きなの……。くっそ!!
一人で十兵衛が乗り込んできたときも、銀四郎は怖い顔してないんですよね。冷たくせせら笑っている。
隣で虹七郎が厳つい、難しそうな顔をしている横で、白い歯を見せて笑っている。完全に相手を見下していて、相手にする気もさらさらないって感じ。たまらんわ~~~!
おかげでショーもかりんたんを割と見ていました。時すでに遅し、という気もする。

あかさん(綺城ひか理)の廉助は、あんなボタンの着物、めっちゃ目立つでしょー!?と最初に思わず笑ってしまった。
そしてまさかの気孔使い。武器が無くても戦える。歌ったら当然うまい。なるほど、武器がなくても戦えるわけだ。
虹七郎や廉助にとって、自分たちの「真の主」とはゆらの子であるのに、その子を母体ともども斬ってしまうのが銀四郎という皮肉よ……七本槍は決して一枚岩ではない。
七本槍は、衣装替えがなかったのは残念だったかもしれませんが、あれと同じモチーフでもう一着それぞれに作るのは、それはそれで難しいかも……となりました。

さて、そんな七本槍を束ねるのが愛ちゃん(愛月ひかる)の芦名銅伯。
自分の顔よりも大きいのでは?と思うような骸骨を縫い付けた着物は、ヨッ!厨二の頭領!という感じなのですが(やめなさい)、彼が十兵衛に殺されるのなくて、本当によかった……っ! GJ大野先生!
もうね、二番手が退団する作品で、トップに斬られるってめっちゃ辛いんですよ、個人的に。
夢現無双』も『アウグストゥス』も辛かった。みやちゃん(美弥るりか)もあきら(瀬戸かずや)も最後なのにそれえええ?!という感じだった。
もっとも琴ちゃん(礼真琴)と愛ちゃんはずっとそういう敵対するお役が多かったとは言え、その集大成だから斬られてもいっか☆とは思えなくてですね……だから、愛ちゃんが双子の片割れと共に滅んでいくのは美しかった。
美しいといえば、回想に出てくる銅伯黒髪ヴァージョンも大変に美しかった。

第十一場Aにおいて、千姫は、銅伯の命運が天海大僧正と同じであるならば、徳川幕府安泰のために復讐を諦めてくれ、というようなことをお千絵に言う。そしてまた後から出てきた天海大僧正も同じようにお千絵を諭す。
けれども次の場面で、天海大僧正は自らの手で自らの命を絶つ決意をし、実行に移す。
この間に何があったのか、深くは描かれていないけれども、きっと諦めきれなかったお千絵が説得を試みたのではないかなーと勝手に思っています(原作を読んでいないのでわかりませんが)。
そのお千絵の説得に千姫天海大僧正の心が動いたのなら、いいな、って。

私はあんまり宝塚にラブを求めないタイプだと思っていたのですが(それよりも脚本の善し悪しが気になるタイプ)、今回思いの他琴ちゃんとひっとん(舞空瞳)の絡みが少ないのはやはり気になって仕方がない。
もっともチャンバラよりもラブが見たいというのはあるのかもしれませんが。
『出島小宇宙戦争』はラブはないけれども、大劇場公演でなかったからあまり気にならなかったのかもしれません。そういう意味で次の『元禄バロックロック』はちゃんとラブがあるといいのですけれども。
ひっとんもお衣装は一着だけだったしなあ……淋しい。
あとひっとんのキュートな丸顔が失われつつあるような気がするのが辛い。もっと食べていいのよ。
ラスト、舞台上でゆらが舞い、十兵衛が銀橋で「俺だけが弔える女がいる」と言うのは良かったですねー!? あれは痺れた。
ああいう痺れがもう少し作中で欲しかったのやもしれません。
ゆらがスコーンと十兵衛に落ちたことに違和感のある人もいるようですが、私はあんまり気になりませんでした。
そりゃ自分のことを手駒としか思っていない父親や元恋人なんかに囲まれて育ったら、他者のためにあれだけ無我で尽くせる十兵衛に落ちるのもわかるような感じがするのよ、私には。
自分を損得勘定で見ない男、それが十兵衛だけだった。それは彼女にとっては悲劇だけれども、だからこそ彼女は十兵衛に恋する。
で、十兵衛の方はどうなのさ?という感じはある。

沢庵和尚と多聞坊のコンビ、良かったですね~。まさか『龍の宮物語』の竜神とその弟がこんなコメディコンビになるなんて、一体だれが夢見たでしょうか!
みっきー(天寿光希)もかのんちゃん(天飛華音)もおもしろかったです。
沢庵は銅伯と天海大僧正の命運が同じであることを知り、やはり千姫と同じように十兵衛を説得しようとする。するのだけれども、あの言い方がなんていうかもう……w
自分の説得なんて聞かないことがわかりきっているあの諭し方、なんなんですかね? おもしろくなっちゃうじゃないですか。
後から「きっとお前はそう言うだろうと思った」みたいなこと言いますが、クサいのよ、芝居がw
一方で、一生懸命十兵衛の影武者を演じる多聞坊。涙ぐましい努力よ……。さぞ怖かっただろうね、虹七郎にあんなに睨まれて……よく頑張ったね、坊や、という感じでした。
かのんちゃんはこちら側の路線で行くのでしょうか。紅さんの香りがしますが、『食聖』の新人公演も良かったもんね。
今回は今までのキャラクターとは違う十兵衛ですし、はてさて新人公演、どうなることやら。楽しみです。チケットないけど。

主題歌はほぼ十兵衛一人で歌うのですが、十兵衛が歌っている後ろに七本槍がくると、十兵衛が七本槍のラスボスに見えるのもおもしろい上に、「叫べ 叫べ」とか「燃やせ 燃やせ」とか2回目のフレーズは影ソロだったり、別の人が歌ったりしそうなものなのに、全部琴ちゃん一人で歌っているのは笑った。要は歌がうまいんだな、納得。

なっちゃん(白妙なつ)の千姫はさすがだし、その養女くらっち(有沙瞳)の天秀尼も良かったです。
ずっと尼の格好というのは淋しい気もしますが、他のキャラクターもわりと衣装少ないしね。歌もあったし、良かったでしょう。
最後に堀一族の女たちがこの天秀尼の東慶寺で亡き一族の男たちを弔いたいと言ったのも良かったです。
これで「このまま会津を乗っ取ろう!」という話にならないのは、さすが女たちよ……と涙ぐみました。

さて、お次はショーの感想。
まあね、歌がね、うまいんだよね、うん、わかっていたよ。さすがです、琴ちゃん。
プロローグ、四食カラー一列で、動きは体育の集団行動を連想させながらも、表情はもうみんなにっこにこで、この舞台の下はもちろんだけど、上にもヅカオタしかいないな!と思いましたね。すごいわ。みんな憧れのあのシーンに出られるのが嬉しくてたまらんのやね。
そういう感情がビシバシ伝わってくる。おめでとう。みんなよかったね。

愛ちゃんの全てがよい。最初のオレンジもいいし、薄紫もいいし、キャリオカもいいし、ルドルフのような白い軍服もいい。
ことなこのデュエットダンスで「アシナヨ」を歌うときのお衣装もよい。愛ちゃん! 愛ちゃん!となる。
銀橋にもたくさん出る。私はあんまりロマンチック・レビューが得意ではないのだけれども、今回は愛ちゃんのためにそれで良かったと心の底から思える。
もういっそのことサヨナラショーで『うたかたの恋』をやればいいと思うんだ、私。
別にあれは「今までやってきた作品」だけではなくて「憧れのあの曲」も歌ってもいい場所でしょ、彼女の宝塚人生がわかればいいんだからさ。

かのんくんがこれまたイイ。
この子、本当に踊っているときの表情や身体のキレが抜群にイイのよねー!
ほのちゃん(小桜ほのか)との並びも良かった。すごく良かった。うわわあああ!ってなってしまった。
レヴュー本見たときは「もうちょっとなんか、言葉のセンスはどうにかならんのかいw」と思ったけれども、このダンス力と引き換えに失ったものがあるんだな、と素直に思いました。
ほら、タカラジェンヌって画伯が多いし、画力と交換で光るものがあるよね、って思うからさ。

ひっとんも可愛いの連続で幸せでした。
ピンクのスーツっぽい衣装(しかしあの襟はなんとかならんのかな)、ちょっと民族っぽいドレス(ダンディズムとは?とは思いましいたが)、キャリオカのファー付きドレス(最高だな! 天才だな!)、ラテンの赤のドレス(舞台写真、絶対に欲しい)、デュエットダンスの青のドレス!(しかしなぜひっとんだけ歌わせないのだ!?)どれも良かった……ハア!素敵!

間奏曲(1)の愛ちゃんの場面はさ、もう涙なしでは見られないよね……あの薄紫の衣装もいいし、歌詞もいいし、愛ちゃんもいいし、銀橋渡るし、私はSS席に座っているし……で、もう最高のオンパレードだった。
間奏曲(2)の「ビューティフル・ラブ」は娘役ちゃんたちの場面。シトラスかよ!みたいな衣装でくらっち(有沙瞳)とほのちゃんがダブルセンターでやってくる。ここで見つけたかわいこちゃん、澄華あまねちゃんを、どうぞよろしくお願いします!
ピンクのドレス、はちゃめちゃに似合っていたなあ……。
間奏曲(3)はせおっち!オン・ステージ!って感じでしたね。生き生きとしていました。あのパステルのグリーンが似合うってすごいな。パーソナルカラー? なにそれ? 色がこっち来い!みたいね。素敵。

「ゴールデン・デイズ」は、白い愛ちゃんも素敵だったのですが、娘役ちゃんたちのドレスも良かったですね。
別にオリジナルってことはないんですが、「これは『ファントム』、あれは『はいからさん』、こっちは『壬生義士伝』」とかドレスをオペラで追いかけるのが、楽しかったです。
そしてみんなバッスルドレスを着ているけれども、一際目立つくらっち。さすがである。オーラが違う。
「ハード・ボイルド」は『ダンディズム!』といったらこれだろ!という場面ですからね。
そりゃ楽しく見ましたよ。堪能しましたよ。何度も言うけれどもSS席、ありがとうございました。毎回当ててくれてもいいんだよって思いましたね。
稽古場でひっとんが歌っていたりしないかしら。「俺が抱き お前が抱く 一瞬の永遠」って。ひっとんにも歌ってもらいたい歌詞ですね。

私はショーにおいて、一つの場面が長いのはあんまり得意ではないのですが、今回はあんまり気にならなかったかな。
星組はあんまり気になる下級生がいないということもあるのかもしれません。
少人数で見たいのは、やっぱり下級生に注目したいからなのでしょう。
あとは、岡田先生はそろそろロマンチック・レビュー決定版みたいなのを出したらどうだろうか。
オリジナルはもうしんどいのはわかっているからさ。なんか新しいのが出る度に「でもこれってつぎはぎ?」と思うのも、なんだか淋しいので、お元気なうちによろしく!

ホイホイされて追いチケしましたので、今週末も行ってきます。
今度こそ殿堂にも行ってくるぞ!