ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

宙組『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』『Délicieux!-甘美なる巴里-』感想

宙組公演

kageki.hankyu.co.jp

Musical『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』
~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~
作・演出/生田 大和

タカラヅカ・スペクタキュラー『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』
作・演出/野口 幸作

あ~! とっても! とっても!! とーっても楽しかったですうううううう!!!!!
劇団宙組ありがとう。やはり私は当て書きオリジナル脚本が好きなんだなということを再認識しました。しみじみ。
幸運にも初日の翌日に観劇できました。幸運すぎるだろ。後からとったチケットなのに。それでこんなに満足しているなんて。ああ、すばらしきかな人生。
もともとあまり通う予定の演目ではなかったのですが、なんとなーくずっと気にはなっていて(今思えばそれもオリジナル脚本だったからでしょう)、月組観劇の興奮が冷めやらないまま、ホームページにちょうどアップされたばかりの生田先生の公演解説を読み、そのままするするーとチケットを追加していました。なんでだよ。
あまりいい席ではなかったのですが、これ、SS席なんかで見た日にゃ、もうその日が私の命日でもいいわ。いや、だめです。もっと見たいもん!
見に行って大正解でしたわ。遠征組ですので、マチソワダブル観劇が基本なのですが、上記の理由でマチネのみ。ソワレも見たかったー! 残念><

とはいえ、やはり当て書きオリジナル脚本っていいですね……。思えば真風さん(真風涼帆)は大劇場のオリジナル脚本は『異人たちのルネサンス』『エルハポン』とありますが、今回のホームズが一番よかったなあ。もう群を抜いてよかったわ。
個人的には前の2つがいまいちだったので、今回は楽しく観劇できてよかったです。いや、もう本当に。

もっとも原点のホームズは自分のことを「名もなきヒーロー」とは、絶対に言わないだろうなとは思うのですが、でも真風ホームならそれが許されるし、言いそうだし、言ってもらいたいのでしょう、生田先生が(笑)。本当に心が乙女なんだからもう、この人は……。
ディープなシャーロキアンにとっては、ラストの台詞が賛否大きく分かれそうだなとは思うのですが、私は真風ホームズならありだなと思いました。いい塩梅で変人の名探偵と市民のヒーローの両方の面をもっていましたから。

あと、これは芝居でもショーでも同じなのですが、観劇している最中は少なくとも一度も「これがまどかだったら……」と潤花のことを思わなかったのも幸せでした。これだよ、これ。当て書きオリジナル脚本の醍醐味はこれでしょう! やっぱり!
ありがとう、劇団さん。
個人的な話をすれば、あんまり潤花ちゃんは得意ではないのですが(台詞の言い回しとか・あくまで好みの問題です)、『HSH』のときよりも歌がうまくなっているなあとは思いましたし、『HSH』に引き続きお芝居も頑張っている様子が見られました。
まだまだ成長してくれることでしょう。楽しみなファンも多いことかと。

だから、というわけではないけれども、やはり夏から秋にかけての花組の全国ツアー公演のショーはやっぱり心配です。
私はまどかも好きだけど、華ちゃんも大好きだから、ショーを見ているときに「これが華ちゃんのときは」と思ってしまいそう。いっそトップコンビが二人とも別の人に変わったなら、新しいトップコンビのために調整したのね、と思えるのですけれども、そうでないのがキツイ。今からキツイ。いや、もうチケットは確保してあるのですが。
いや、でもそれにしてもあんまりな演目だろうと思ってしまう。
お芝居も、柴田先生がやりたいのはわかるし、『コルドバ』は好きな作品でもあるけれども、ちと再演のペースが速いのも気になる。
それ、ちぎみゆでやったばかりでしょう、と思ってしまいました。すいません。

話がずれましたが、そんなわけで『SH』も『D!』もとても楽しかったです。
漫画『憂国のモリアーティ』がアニメ化されているろことですし、舞台にもなり、ちょうどアイリーン・アドラー/ジェームズ・ボンドの役は大湖せしるが演じてしまいしたね。ツイッターで流れてきたビジュアルを見た瞬間はうっかり変な声がでました。夫に心配されましたw
アイリーンが美女なのは間違いないのですが、あの美女があのイケメンのボンドになるってすごいな。
しかし言ってみればボンドって宝塚の男役のようなものだし、配役としては天才的だったかとも思います。
大正解。ビジュアルだけで優勝できるわ。
私は原作漫画のウィリアムの容姿がダントツ好み過ぎて(目つきの悪い金髪)わりと初期から読んでいるのですが、ディープなシャーロキアンである夫に言わせると「ホームズを不良という設定にした時点で優勝確定」ということだそうです。言われてみれば、あくまでも身なりは英国紳士として描かれることが多いですからね、ホームズって。
雑にまとめた髪、常に裾が出ているシャツ、品なくくわえられたタバコ、という出で立ちは、汚い部屋で怪しい化学実験を繰り返ししているホームズには、むしろぴったりだったのではないでしょうか。
というか、今までなぜ紳士として描かれてきたのか、逆に疑問の持ってしまうほどです。
書いているのが、ホームズ贔屓のワトソンであることを差し引いても、ホームズの行動って不良とあんまり区別がないなというところは確かに多い。
ちなみに三谷幸喜の舞台『愛と哀しみのシャーロック』で、ホームズは不良ではないものの、発達障害というかADHDというか、そういうキャラクターとして描いていたのが興味深く、おもしろかったです。再演してくれないかな。

とはいえ、宝塚のトップスターが不良ホームズや発達障害ホームズを演じるわけにはいかないだろう、と踏んでいたので、キャラ作りはまっとうにしてくるだろうし、それよりも気になるのはモリアーティだな、と思っていたところで、あのキキアーティでした。
これはなんていうか予想と全然違って、いい意味で裏切られたので、大変満足しております。ありがとうキキちゃん。ありがとう生田先生。
モリアーティのキャラ作りのお礼だけで生田先生に手紙が書けそうです(やめなさい)。
『異人たちのルネサンス』のメディチのように「俺がエライ! 俺が正義! 俺が法律!」みたいな感じではなく、無邪気で赤子がそのまま大きくなったような素直さで「みてー! ぼくのなかまがつくったじゅうだよ! すごいでしょ! これをいろいろなくににうってほろんだどころで、ぼくがきゅーせーしゅとなってあらわれるよー!」みたいな方向でイっちゃっている役作りだった。すごいな。
つか、チームモリアーティは武器なんか使わなくても、その美貌で村里の一つや二つはすぐに手に入りそうだけどな。だってキキちゃん、しどりゅう、まっぷう(松風輝)、もえこ(瑠風輝)、こってぃ(鷹翔千空)だよ?
世界を今すぐに手に入れるのはちょっと難しいかもしれないけれども、それがやりたいのか、そうか、それならば致し方あるまい。
っていうかもえこおおおお!!!!!
なんてこった、あのメガネ。おかしいな、『SAPA』では何も響かなかったのに、今回のメガネはたいへんによろしい。なんでだよ。
その顔の小ささに似合うメガネをよく探してきてくれました、衣装部さん、小道具さんありがとう。グッジョブ!
ショーでもまさかのメガネシーンがあるし、そんなの聞いてないよ~!ってなりました。ごちそうさまでした。
あれ、おかしいな、別に私、今までもえこにそこまで意識したことなかったんだけどな……どうしようと思っているところです。
動悸息切れ養命酒かよって感じです。

モリアーティの純粋さの一方で、勝手に拾った美少女を手塩にかけて(意味深)女スパイとして育てたのだから、もう本当にどういう趣味してるの?って感じ。きち〇いの所業やで?
アイリーンは「救ってもらった」というようなことを言いますし、モリアーティも救ったつもりかもしれませんが、常識的な意味での「救った」ではないのでしょうね……怖い。バウホールあたりで番外編はいかがですか?
完全にイっちゃっている人だから、仕方ないのかな。自然にそう思えてしまうモリアーティの役作りがすごいわ。
しかもアイリーンからしたら元カレに命を狙われた上に、その元カレと好きな人を奪う羽目になるのだから、これが本当のトライアングル・インフェルノって感じですよね。地獄だな。
もっともボヘミア貴族を強請るのに失敗したのにモリアーティのもとからどうやって逃げたのか?とか、そもそもなんで大臣から船の設計図を奪ったのか?とか、そもそも船の設計図だって知っていて盗んだのか?とか、せっかくモリアーティから逃げ出したのに、また危ないことにクビを突っ込んでいるのか?とか、少なくとも作中では語られていなかったような気がするのですが、とりあえずボヘミアンの事件で敵として知り合ったはずのホームズに、自分の命である船の設計図を預けるくらいにはアイリーンはホームズを信頼しているということがわかれば話は進みます。
進みますが、ちょっと雑ではないか?と思わないでもない。ライブ中継で初めて見ていたら、こんなに楽しめなかったかもしれないと思うので、劇場のありがたさを痛感。やはり生の舞台っていいわ。
そういうわけで、ディープなシャーロキアンである夫をどうやって巻き込むか、それが思案のしどころです。

ともあれ、アイリーンの衣装もどれもいいんですよ。よりどりみどりで目が幸せなんですよねー。
ポスターにある異素材を組み合わせた青いドレスは、アイリーンのちぐはぐな心をよく表しているし、オペラ座での舞台衣装の白いは言うまでもなく素敵だし、スイス行きのカントリー風のドレスなんかはいくつの設定!?とは思うものの、まあ変装の名人だしとも思えたし(もっともその設定は今回の作品では生かされていない)、喪服も良かったです。あー眼福。帽子もどれもかわいかった。
まじでもえこといい、衣装さんがよい。小道具さんがよい。

ホームズはアイリーンの過去に嫉妬する一方で、女嫌いだといわれているのに自分にもちゃっかりかつての恋人がいて、なんなんだよ、もう!と思うし、しかもその名前で送られてきた手紙に動揺しまくっているんだから、もうなんなんだよ、と思いますけどね。キキアーティからだってすぐに気が付くけれども、最初の一瞬は本気で信じたでしょう? ねえ、信じたでしょう?
でもこれがあるからヅカのホームズとしては人間味があって、キャラクターが成立して、最後の「名もなきヒーロー」につながるわけですね。
かつての恋人を脅迫するモリアーティといい、本当男ってロクでもないなって思っちゃいますよね。
でもそれを女性が演じているから、私は安心して見ることができます。
本当に劇場で見ることができてよかった。家で見ていたらめっちゃツッコミ入れまくっていたわ。

ラストはホームズとモリアーティの一騎打ち。原典にもあったライヘンバッハの滝ですよ!! うはうはです。
ホームズが人殺しをしない以上、あの結末は仕方がないし、でもちゃっかり、生き残っているのもわかるし、キキアーティだってもちろんそんなことでは死なないのはあきらかだから、なんていうかひたすらワトソンが不憫で可哀想でしたね……いや、そんなことで僕の名探偵が死ぬはずがないって思ってやってよ~!とは思うけれども。

ところでポスターの鎖、生田先生の趣味か?とこれまた多くの人が思っていたように私も思ったのですが、インタヴューでは「物語の鍵になる」と生田先生は仰っておりました。
で、実際に作品を見てみるとどうかっていうか「生田先生の趣味だな」という結論にいたりました。いやだってそうでしょうw
最初の鎖の暗号の意味も観客は教えてもらえず、最後のホームズとモリアーティが滝に飛び込む場面は鎖というかちょっと鎖が長い手錠のように見えたし、中盤でモリアーティがホームズを鎖で絡めとるのはもう趣味以外の何物でもないなwと。趣味の真骨頂やんけー!
まあ、観客も楽しく見たことでしょう。これもオリジナル脚本のいいところです。
おかげでショーの群舞で二人がタンゴを踊り始めたときに「ホームズとモリアーティ?」と錯覚しました。おもしろかった。

メアリーのじゅっちゃん(天彩峰里)も良かったです。
ワトソンの二人で夜会の後の夜道を歩いているときにアイリーンに出会いますが、気が立っているアイリーンからワトソンがかばうようにするものの、メアリーは大丈夫、と答えて前に出る。
続けてアイリーンに「重そうな荷物をもっているから」という。
もちろん実際にもっている物理的な荷物の話をしているのではない。
精神的に背負っているものの話をしているのである。それとなく優しいのがいい。
221Bの部屋にいるときも、ハドソン夫人がホームズに命じられて鍵を閉めに行くときについていってあげる。
メアリーが優しい。いい奥さんになるよ。ワトソンとメアリー、いいカップルだわ。

今回が退団公演となるハドソン夫人役のららちゃん(遥羽らら)もよかったです。
『fff』の家政婦を思い出しました。これからまだまだ進化していくでしょう。楽しい場面になりそうです。
イレギュラーズを最初は汚い子供たちとして嫌がっていましたが、いつの間にか仲良くなっていて、ホームズの葬式では一緒にいる。
ホームズが事件を解決していく中で、イレギュラーズが役に立っていることを認めたってことですよね。
ただの汚い子供ではないってわかってもらえたイレギュラーズたちもよかったね。

そらくん(和希そら)のレストレーブ警部はちょっと、役不足のような気もしましたが、真風との学年差を考えると、きっちり警部を演じることも難しかったのかもしれません。
同じくしどりゅう(紫藤りゅう)のモリアーティ大佐も、キキアーティの兄というのは学年差を考えると、やはり難しかったのかもしれません。
そういう意味で、りんきら(凛城きら)はすばらしかった。
ちゃんとホームズの兄だった。これで専科にいっちゃのか……淋しいな……。
『夢千鳥』でもいい味を出していたのに。
娘役ちゃんたちは『夢千鳥』で見つけたしほちゃん(水音志保)やひばりちゃん(山吹ひばり)を追いかけていました。
愛未サラちゃんも可愛かったなあ。これからが楽しみな娘役ちゃんたちです。

ショーは、プロローグ(豪華なカンカン付)、王妃のお茶会(一から十からコメディ)、SM(危険なスパイス)、中詰(ターバン)、キャンディ・ケーン(きらきらのききらら)、虹色(退団者……涙)、ロケット(おいしそう~!)、3色旗の男役(格好いい~!)、2番手と上級生娘役(最高、大好き)、男役群舞(まさかのタンゴ)、デュエダン(めろめろ)、パレード(おなかいっぱい)という構成で、詰め込み過ぎ~!という声もちらほら聞こえますが、私はむしろこれくらいの方が退屈しないし、飽きないし、超楽しいし、たまらなかった。特に中詰のあと。ここが退屈~!となることが多いから、すごい楽しかった。
何より少人数ずつで出てきてくれるから、下級生も探しやすい、見つけやすい。いや、別に『DC』に恨みがあるわけではありませんが……。
やはり隅から隅まで見ることができるのが、ショーの醍醐味です。

今回は特に中詰めではららちゃんとじゅっちゃんが娘役二人だけで銀橋を渡ります。
最高。私はもっと銀橋を軽率にみんな渡るべき!と思っている人間なので、とても嬉しかったし、娘役だけというのもたまらなかった。
そのうえキャンディ・ケーンで、ららちゃんがセンターでまた娘役ちゃんたちを引き連れてセンターで銀橋渡るし、渡り終わった後、男役さんたちと合流して、またデュエダンするし、最高だった。
娘役ちゃんたちの場面がただのつなぎではなくて、ちゃんと一つの大きな場面につながっているのがとても嬉しかった。
そしてこのキャンディ・ケーン、超絶可愛いね?! やばい可愛いね!? 語彙力死んだ。

王妃のお茶会は、実はあんまり男役の女装(言い方)って得意ではないのですが、もうあの場面はまるっとコメディだからよいでしょう。
キキちゃん、あなたって人はスカーレット・オハラマリー・アントワネットの両方を演じたのね。すごいわ。
うわさに聞くところによると、トップ娘役でこの2つを演じたのは花總まり星奈優里だけ。
スカーレットⅡまで含めると、白羽ゆりも演じましたし、新人公演まで含めても花乃まりあの4人だけ。
ここに入るのだからすごいぜ、芹香斗亜。万歳。
ドレスが二段形態になっているのも気合が入っている。主に野口先生の(笑)。
すっしーさんとかまっぷーさんとかりんきらの輪っかのドレス姿が見られるなんて思いもしなかったよね。すごい。

問題のSM場面は、まあすみれコードはギリギリだろうなという気はしましたし、「清く正しく美しく」に反している~!と思っている観客もいるかなと思いますが、あれはあれで楽しかったです。他の場面とのメリハリもあったし、たまにはこんなのもいいよね~!という感じでした。
千秋楽のころにはダンスがおとなしくなってしまうのでしょうか? それはそれでスパイスの役割~!と思ってしまうのですが。
ずんちゃんのファンがいいかどうかは結構きわどいかな。
真風さんのファンはどうかな。危険だけどOK!って感じなのかな。
美少年に運ばれてくる潤花のあの勝ち誇った笑みよ……。
SM場面が終わって、中詰の始まり、上手奥から下手手前に向かって男役と娘役が一列ずつに並ぶところは「おや、四条畷の合戦か?」と思いました。失礼しました。

ロケットも可愛かったな~おいしそうだったな~!
衣装もベリ-キュートだし、3段ケーキの舞台装置も素敵だし、107期生、本当におめでとうございます!
男役群舞もまさかのタンゴだし、『HSH』のビリヤード、『夢千鳥』SM、からのタンゴ、楽しめました。ありがとうございました。ちょっと風変わりなのがおもしろかったなあ。
今回はわりと全体を見ていたので、次は細かいところ、下級生の活躍なんかを追いかけようと思います。楽しみ!