ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

月組『桜嵐記』『Dream Chaser』感想

月組公演

kageki.hankyu.co.jp

ロマン・トラジック『桜嵐記(おうらんき)』
作・演出/上田久美子
スーパー・ファンタジー『Dream Chaser』
作・演出/中村暁

『桜嵐記』の一つ目の感想記事はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

こちらはショーの感想を、と思ったのですが、その前に『桜嵐記』と『fff』の共通点について。
とても同じ演出家が描いた脚本とは思えないくらいタイプが違って、私はどちらも好きなのですが、やはり前者がザ!宝塚!であるのに対して、後者は外部でもできるのでは……?という声はよく聞きますし、まあその通りかなとも思います。もっとも「不幸」の役を女性が演じる必然性がなくなるので、ちょっと難しいのでは?とも思っていますが。
ただ、『fff』で「勉強は好きか?」とルイはナポレオンに聞く。人間の時代としての近代の幕開けを生きた人々は勉強を、学問を、学ぶことをそのものを愛した。一生懸命自分の頭の、心の畑を耕した。
晴耕雨読」という言葉はよくできた言葉で、晴れた日は畑を耕し、雨の日は書を読む。書を読むことは己の頭や心を耕すことに通じる。なるほど、と膝を打つ。
『桜嵐記』も学問の大切さが描かれている、ような気がする。というか学がなければ、兵糧がなくなったときに略奪するだろうな。それをしない時点ですでに学がある、というような気がする。
北畠顕家は奥州から京に神業の速さで戻ってくるのですが、これ、実は補給を考えておらず、現地で略奪しているからなんですよね。そんなこと、作中には描かれておりませんが。
古語の「しる」には「領地を治める」の意味があって、主が目で見て知っている土地はそのまま主人が治めている土地であった。領地内を歩くというのは、散歩の意味だけでなく、領民の生活ぶりを観察するためでもあった。
そう考えると正成が賀名生まで三兄弟と出かけて行ったことにはとても意味があると思うし、土地を目で見て知ることはそのまま学問につながっていたのではないでしょうか。
正時は猪を狩るけれども、『神々の土地』でも冒頭では狩猟をしているし、フェリックスが貴族の意義を語るときも人々が田畑を耕していた時代から語る。
うえくみ先生の講演会で、たしかおばあさまが大きな魚を見事に3枚におろしていたり、おじいさまが野鳥を狩ってきたりという野生みある雄々しい話を聞いたような気がするのですが、生きることと狩り、農業が固く結びついているような気はします。
『金色の砂漠』では娯楽としてですが、鳥を狩っています。「生きること」が本来持っているある種の凶暴性や暴力性を感じます。

まあそもそも学がない人間に「歴史の流れ」なんてものは見えないでしょう。そう考えれば、やはり正行には学があったなと思うし、学ぶことの大切さを説いているとも見えます。
作中には和歌が3首出てきますが、正行の詠んだ和歌しか解釈がつかない。こういうところにもうえくみ先生の「わからなければ自分で調べてね?」という声が聞こえる気がする。それほど難しい和歌ではありませんでしたが。
モノが溢れすぎて、大抵のことがお金で解決してしまい、人間の底力といいますか、生きるパワーみたいなものが現代には決定的に欠けているのでしょう。

さて、ようやくショーの感想。
よくある中村Aショーだとは思いましたが、『エクレールブリアン』でも『シルクロード』でも、次期トップコンビに1つの場面が与えられていたにもかかわらず、今回はそれがなく、大変悲しい気持ちになりました。
れいこ(月城かなと)とうみちゃん(海乃美月)が組んで踊るのは、プロローグと中詰のほんの少しだけ。一緒に歌いもしない。
もっともこっとん(礼真琴、舞空瞳)コンビは歌いはしなかった。ただ、一緒に踊っただけだった。それでも彼らがメインの場面だったことは疑いようもなく、ダンスがウリの2人にとっては、トップになる前の立場としては、願ってもない場面だっただろう。
どうしてれいうみの場面はないのだろう。
こっとんやさききわ(彩風咲奈、朝月希和)のコンビのように祝福されていないのではないか、コンビの発表も遅かったし、実は劇団側があんまりよく思っていないのではないか、とうがってしまう。なんせ、性格が悪いから。
もちろん次期トップコンビに場面が与えられて当然!とは思っていないし、今までもそういう場面があるサヨナラ公演ばかりではなかったけれども、なんせ、そういうショーが続いたこともあって、しんみりしてしまったのです……。
賛否あるのはわかっていますが、やっぱり私はれいうみコンビが好きなんだな、と改めて思いました。
『瑠璃色の刻』『ラストパーティー』『アンナ・カレーニナ』『ダル・レークの恋』、今まで大変よい組み合わせだと思い知らされてきたんだな。

できればスパニッシュのありちゃん(暁千星)の役をれいこちゃん、さくら(美園さくら)の役をうみちゃんにして、ちなつ(鳳月杏)との三角関係にして、続くミロンガの場面のうみちゃんの役をさくらにしてはいかがでしょうか、ね。
たまきち(珠城りょう)とうみちゃんがミロンガで踊るの、とても嬉しいし、たまきちがラストだからいろいろな人と組んで踊るのもわかるのですが、でも、たまきちにうみちゃんの組み合わせはない、と劇団が判断したからさくらがちゃぴちゃん(愛希れいか)のあとを継いだのではないの?とも思ってしまう。
今更ここで組んで踊られても、何も感じることができないのです。悲しすぎて。
スパニッシュの場面もミロンガの場面も好きなんですけれどもね。
ありちゃんとちなつがひたすら忙しいし、れいこちゃんは出番少なすぎだし、なんだかなあ……。

れいこちゃんはプロローグで101期以下、かな?下級生男役を連れて大階段から登場。これは貫禄があってすごくよかった。次期トップです!て感じもした。
「空の青さに全てが溶けて見えた」という歌詞は『カルーセル輪舞曲』の「海と空の蒼が結ぶ遥かな国へ」という歌詞を連想させる。たまきちの船は、ここまで来たんだなと思わせてくれる。
れいこちゃんが引き連れているのは、『カルーセル』のときにはまだ月組にいなかった学年の組子たちなのね……たぶん。

スパニッシュの場面は、ちなつの銀橋渡のあとは、後ろの娘役ちゃんたちばかりをオペラで追っていて、実は正直いつありちゃんがはけたのか、いまだによくわかっていないのですが、さち花姉さん(白雪さち花)、はーちゃん(晴音アキ)、たんちゃん(楓ゆき)、こありちゃん(菜々野あり)、おはねちゃん(きよら羽龍)とまあ後ろが豪華でね。最高に豪華でね。好き。
こありちゃん、時々困り眉みたいになるのが気になるけれども、キリッとした表情もできるようになったのね〜!可愛いだけじゃないのね〜!と嬉しくなる。
困り眉、苦手なんですよね。それこそ夢白さんが困り眉なんだ……。

ミロンガも最高だよね。
ありちゃんから始まったときには、ええ?!分身!?ってなったけれども、あの早着替え、すごいなあ。
銀橋でかれんちゃん(結愛かれん)と蘭世ちゃん(蘭世惠翔)を侍らせて、まあ色男ですこと。
蘭世ちゃん、マジでキュートだな。あの体の大きさであの目の大きさは本当に反則。
彼女にしかできない、彼女のためのピッタリのお役があるはず!って思わせる個性。すばらしい。
どこにいてもわかるものなー。
芝居で活躍する日が楽しみです。
下級生ではそらちゃん(美海そら)に注目。青いドレスがよく似合うし、体の柔らかさをこれでもかと見せつけられております。可愛いなあ。
おはねちゃんは前場面に続いて登場。こちらもお着替えが忙しそうですね。
ミロンガの場面の何が最高って、男女のダンスなんだけど、主導権が女にあるように見えることです。
男役の帽子を奪って前に出て踊る娘役ちゃんたちのスタイリッシュさよ……っ!
格好いい。可愛く愛らしい娘役も、もちろんそりゃいいんだけど、それだけじゃないのがよい。
男役同士で踊るのも躍動感があってよいし、銀橋に出てきてずらっと並ぶのも壮観。
お衣装も好み。曲も好み。気がつくと脳内再生している。
ちなつとからんちゃん(千海華蘭)の絡みも良い。じゅりちゃん(天紫珠李)がちなつを振ってたまきちのところに向かうと、「なんだよ、あいつ」ってからんちゃんに言うんですよ。で、からんちゃんは「ほっとけ」って返すんですよ。言葉がなくてもわかるやりとり。楽しい。

お次の男役だけの場面はれいこがセンター。その脇をるねぴ(夢奈瑠音)とおだちん(風間柚乃)が固める。
この3人の並びの何がすごいって、女性の好みの9割はこの3人でまかなえているのではないか?と思わせてくれるところです。
『炎のボレロ』のときの、咲ちゃん、あーさ(朝美絢)、あがち(縣千)の3人も相当網羅しているな、と思ったのですが、今回も綺麗系、ベビーフェイス、男前と見事なまでに全員タイプが違う。すごい。
この3人でセンターをやらせたのは大正解。
まあ『エストレージャス』で見たことがある場面だなとは思ったのですが。

中詰は決めポーズがカンフーのようななんと言うか、まあ格好いい系に振りたかったのはわかりました。
最初にありちゃん!ちなつ!たまきち!の登場は『All for One』の三銃士のようでもありました。
ちなみに久しぶりに『AfO』見たのですが、『ホテルスヴィッツラハウス』を見た後だと、同性カップルへの反応があまりにもあまりで、ちょっと見るに堪えなかった。アップデートするというのはこういうことなのね……。
まさかのアフロ祭りにも遭遇しまして。
私、音に聞くアフロ祭りとは集団幻覚なのではないか?とさえ思っていたクチなので(ひどい)そりゃもうビックリしましたし、オペラどころの騒ぎではなかった。手拍子をせずにはいられなかった。
いや、ありちゃんのシルエット、おかしかったしね?最初から。ライトついてもやけに青いし。衣装が青とはいえ、と思っていたらアフロだった。笑った。
ちなみにアフロはこんな感じでした。

たまきち→黄緑に黄色の二段重ね。さくらとデュエットのときはシルバーに大きな三日月の飾り。
さくら→白に紫のリボン。キティちゃんのようだった。
れいこ→蛍光ピンクに小さな三日月の飾り。そのピンク、似合ってしまうんですか?!
ちなつ→紫。大人の色〜でもアフロ〜!
ありちゃん→青。お衣装と同じ感じの色の青。
おだちん→蛍光黄緑。そんな色のアフロ、あるんかーい!って感じで、なぜか似合っていた。その色、似合うの?
退団者→白アフロ
その他→黒アフロ
まゆぽん(輝月ゆうま)→デカ黒アフロ

アフロかぶっているのに、超真剣にデュエットダンスするたまきちとさくらに時折笑い声が入ったのは、もはや致し方ないことだと思いましたね。
ちなみに蘭尚樹くんのこの場面の髪型がイカしているわ〜と思ったのに、アフロで出てきたときにはやはり噴き出さざるを得なかったのだよ……。
まゆぽんの1人だけ大きなアフロもすごかった。
思えばまゆぽんもゆりちゃん(紫門ゆりや)はこれで専科に行ってしまうのだから、もっと彼女たちの出番があっても良さそうなものなのに、とも思いました。欲張りなんですね、すいません。
階段降りは対称で降りてきましたが、あれだけでは足りないよね。
せめてもう一つ場面を作って、彼女たちの餞別みたいな形にはできなかったのでしょうか。
専科に行くとあんまりショーにも出ないし、出ても群舞にはいないことが多いし、なんだかなあ。もっとショーで活躍する彼女たちを期待していたんだな、私。

エストレージャス』でショートカットあーちゃん(綺咲愛里)が娘役を引き連れてやってくる場面が大好きなので、さくらの真紅のドレスに娘役ちゃんたちの赤いドレスの場面はそりゃもう大好きなんですが、その直前のおだちんの真紅の衣装の場面もいいですね……すごい昭和歌謡の香りがするのですが、昭和なんて少しも生きていないはずのおだちんが、なぜかこれまたよく似合う。なぜ。
銀橋渡ってさくらと踊って娘役ちゃんたちがずらっと出てくるの!これは!たぎる!好きなやつ!
うみちゃんのポニーテールが健康的で赤いお衣装が情熱的で、言うまでもなく最高に美しい。
こありちゃんも回を重ねていく毎に成長していて、上級生の娘役についていっているのがわかって、大変良い。いいぞ〜!頑張れ〜!応援しているぞ〜!
ここのこありちゃんの髪飾りもとても豪華で好きなんだ。
おはねちゃんもいますね。劇団からの期待大なのでしょう。
博多座ではどうなるのでしょう、この場面。うみちゃんが深紅のドレスをまとってセンターで踊るのが、今から楽しみでなりません。

ロケットではうみちゃんが可愛いー!
ちづるちゃん(詩ちづる)も見つけました。愛らしい。パレードでは歌手も担っていましたね。これからまたどんどん頭角を表してくるでしょう。楽しみでなりません。

群舞、デュエダンと続き、たまきちがさくらと一緒にはけないな?と思ったらもう一場面。
月組の神7(るうさん、れいこ、ちなつ、ありちゃん、おだちん、ゆりちゃん、からんちゃん)に囲まれて、というか、たまきちがそれぞれのところに行って、踊る。
るうさん(光月るう)はたまきちの汗を拭ってあげる。優しい。涙を拭ってあげているようにさえ見える。
だって雪組では次にようやく93期のトップスターですからね?!山あり谷ありのトップ就任で、現在サヨナラ公演をやっているたまきちは94期。泣きたくても泣けないことなんて、たくさんあったろうに……ぐすん。組長、優しい。
たまきちが近づくのそれぞれのスターが動き出す。この演出もニクイ。
7人がはけたあと、舞台上にあったライトがたまきちに集まるのも大変良い。
混沌としたカオスのようなものが、トップスター珠城りょうのものでコスモス、秩序だったものになる、という感じがして、とてもよい。この演出だけで泣ける。

欲を言えばもう一つ場面を作って欲しい、ということですかね。
個人的にショーの醍醐味は光る下級生を新しく見つけることにあるので、みんながずらっ!と出てくる場面ばかりでは、それがしにくいかなと。全員出てくるとどうしても下級生は後ろや隅に追いやられてしまいますからね。それはスターシステム上、仕方がない。
だから、もう少し人数減らして、場面を増やして、下級生にも見せ場を作って欲しい。
今でさえ月組は上級生男役と下級生娘役を追いかけるのに必死なのに、全員集合したら、好きな人を追いかけるのに時間も足りないのだ〜!

博多座でどう生まれ変わるのか、構成は変わらないだろうけれども、れいうみトップコンビの作品として楽しみにしています。