雪組『ODYSSEY-The Age of Discovery-』感想
雪組公演
雪組公演 『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ
Midsummer Spectacular『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』
作・演出/野口幸作
雨の影響で朝から新幹線が100分以上遅延をしているわ、なんとか乗った満員の新幹線の中でまさかの『心中・恋の大和路』の休演を知るわ、キャトルでは浴衣を着たお嬢さんたちが大きな声でお話をされているわで、驚きがドミノのように倒れていく中、最下手ではあるものの、一桁の列のお席で観劇いたしました『ODYSSEY』。
ショー2幕ということでワクテカ!しつつも、ノグチくんに一抹の不安を覚えながら開演前の波音を聞きました。
思えばこれも正月に座礁した船でしたね……。正月版のプログラムと比較するとこれまた興味深いですが、あやなちゃん(綾凰華)を失ったのがつらすぎて、あんまり正面からは見られないという罠。初日、号泣して観劇したそうですが、そらそうだろうよ、自分が出演するはずだった作品を観客として見るとは、一体どういう気持ちなのだろう。
個人的に楽しかったところから。
まずはかりあん(星加梨杏)です。なんといっても彼女です。
最近なぜか『本物の魔法使い』を観劇したときの彼女に関するツイートがよくいいねされたり、リツイートされたりしていて、不思議には思っていたのですが、いやはやこれは世界に見つかっちゃいますね、猪崎先生。どんどん皆さん知ってもらいましょう。
どの場面でもオペラから覗いちゃったわよ! なにがそんなに目を引くのか、今のところよくわかりませんが、とにかく見ちゃうんですよ! ひゅ~! 格好いい~!ってね。
大体どの場面にもいますが、わりと目の前に来てくれることもあって、ウキウキでした。淡い恋心を抱いている女子高生のようでした。あらやだ、恥ずかしいわ。
特に「中華の美男(歌手)」は最高でしたね。っていうか白峰ゆりが美人すぎる件について。いや、知っていたけどな、あのチャイナもすごかったけど、次の「捕虜の女」のお腹もすごかったな。何も食べていないのかというお腹だったな、夢やかすみを食べているのか、タカラジェンヌよ……。踊れる美人のゆり姉さんでした。
あとはありきたりですが、かりあん、ウィーンの紳士もよかったな。銀の軍服。あれは、みんな、反則や……。
夢やかすみを食べているタカラジェンヌですが、あーさ(朝美絢)もまたほっそりしてきて、おいおいそれ以上痩せてくれるなよ、ダイナミックなダンスや演技ができなくなるぞい……と心配になりますが、美しかったですね、アポロン。
メインの金色お衣装はさることながら、中国の美男もすばらしかったわ……っ!
プログラムを見たときは『シルクロード』で果たせなかったあーさのチャイナ服リベンジ!と期待したわけですが(私だけじゃないですよね?)、実際に出てきてみると、『眩耀の谷』のような、中国の皇帝のラクチンルックみたいな感じで、まあ、もちろんそれはそれで大変に似合っていたので良いのですが、私たちは一体いつになったら彼女のチャイナ服は見られるんだという気持ちにはなりました。『蒼穹の昴』もいわゆるチャイナ服って感じではないだろうしなあ。じらされている。
それはともかく、すばらしいビジュアルでした。ダンスも素敵でした。でもこの場面、相手役はなぜはいちゃん(眞ノ宮るい)だったのか。はいちゃんに罪はないけれども、ひまり(野々花ひまり)で見たかったなあと思いました。
そもそも娘役がいるんだから、女性の役は娘役にちゃんとやらせないと、娘役に場数を踏ませないと、アップするスキルもアップしないよ。経験積ませてあげて(後述)。
あと、あーさはさきちゃん(彩風咲奈)ときわちゃん(朝月希和)の夢のように甘く美しいデュエットダンスで歌も担当していましたね。だいもん(望海風斗)に歌い方が似てきたのかな。すごく良かったです。なんでもできる頼もしい男役さんになったよね、本当……っ!
ビジュアルでいえば、もちろんウィーンの紳士の銀の軍服も良かったですし、メフィストフェレスも最高によかった。なんだ、あのメフィストフェレス。今すぐ『銀の狼』できるやん、シルバじゃん、ヒロインはひまりでよろしくって思いましたね。
この悪魔の写真はぜひ欲しい……欲しいけど、場面としては短かったしな、どうだろう。ちゃんとシャッター押してね、頼むよ!
雪祭男子にあったようなイケメンジャニーズみたいな売り出し方はもういいから、とりあえず一回闇の深いキャラクターを主演でやらせてあげて欲しい。栗田優香先生、マジで頼みます。
そして「お前にマジ」の歌詞は、ごめんなさい、笑ってしまいました。
カルメン場面のエスかミールヨはあーさではいけなかったのだろうか。白軍服のあーさ、見たかったな。
ところで赤茶みたいなカラコンしてましたかね、彼女。ええ、そんなところまで見えるくらいには席が近かったんですよ、わたくし。
大活躍のはばまい(音彩唯)。誰だって美穂圭子の代役といわれたら緊張で足がすくんで声も出ないようなところを、新人公演主演も経たはばまいちゃんがしっかりこなしましたね、めでたい。
プログラムを読んだときには「なぜ……なぜ美穂圭子の代役はすべてはばまいちゃんなの……他にも歌姫がいるでしょ、ともか(希良々うみ)とかありすちゃん(有栖妃華)とか。そもそもきわちゃんの出番もいまいち少ないような気がするのだけど」みたいな感じだったのですが、やってくれました。通し役ですし、見てみれば、彼女が全部代役をするので正解なのでしょう。他の歌姫のファンは多少もやるでしょうが、それははばまいちゃんの責任ではありません。
どのドレスも素敵でしたが、プロローグの青いドレスとエトワールの白いドレスは群を抜いて良かったです。美しかったよ、はばまいちゃん。彼女もどこかに組替えしてしまうのでしょうか、と一瞬淋しいことが脳裏を過りました。円盤は残らないにしろ、スカステではどうにかならんかな。はばまいティティスを世に残したい。
しかし、正月があったとはいえ、座付きの作家なのだから、無理にAとBのパターンを作らなくても良かったのではないかなという気もします。これは劇団側の問題ですが。
もちろん実際に見てみれば美穂圭子しかできる人はいないキャラクターだというのはわかるんですけどね、コロナがあったとはいえ、全日程こなせるメンバーでどうにかならなかったのかな、という気はします(後述)。
どこにいても可愛いヒロイン! 別格扱いが嬉しいひまりちゃん!
プログラムを見ると、ちゃんと別格扱いなのがわかるけれども、舞台だけ見ているといまいちかなー。きちんと舞台の上でも別格であることがわかるようになってくれるといいのですけれども。
ニューヨークの場面なんかは埋もれがちだったような気がします。もちろん私はすぐに見つけるのですが。
大勢が出てくる場面が多すぎるのも問題ですが、大勢の中で真ん中にいる、だけではない何かが欲しいなと思います。いや、私の見落としの可能性もあるけどね。
ミカエラもマチルドもあったじゃん!と言われればそうなんですが、なんか単に色違いの衣装を着せられているだけな感じがして、歌のワンフレーズでもよこさんかい、とか、一人で踊る場面ばかりではなく男役と絡ませんかい、とかそんなことばかり思ってしまいました。
そして娘役を使ってくれ! 彼女が中国の美女ではダメだったのか! 『ほんまほ』の再来で、あさひまコンビが見たかったよ、私は!!
大人格好いい娘役代表ともか! もっとガンガン起用してやってくれよ!
冒頭の波のお役なんかはさ、誰よりも頭を後ろにそらせるし、ニューヨークの場面では、誰よりも高く足を上げて色っぽく組むし、ちょっとこの娘役芸をもっている人を、どうしてもっと活躍させてくれないんだあああああと心の底から思いましたね、ええ。
かろうじてウィーンの淑女のソロ場面はありましたが、それだけかーい! もっと歌えるやんけ、彼女! 場数を踏ませてやってくれー!と机をバンバン叩きたい。
あれですね、別箱あたりで、悪役令嬢みたいな役が回ってくると本領を発揮してくれるのではないかな、と勝手に期待しています。うう、貴重なんだよ、セクシーで格好良い大人の娘役さん! カルメンは彼女ではダメだったのですか。
トップ娘役だというのに、きわちゃんの出番もなんだか少なかったように思えて残念です。色っぽい大人の娘役からウィーンの淑女Sのようなキャラクターまでできる芸の幅の広い娘役さんなのに! それを余すところなく使いこなしてくれよ!
出番といえば、1幕はプロローグとニューヨークと最後にちょっとだけだよ。2幕はお祭り場面以外は出ていたけれどもさ……。
さききわのコンビファンとしてはなんだか物足りないよぅううう。
もちろんこれも本当は正月に行われる公演だったという弊害でしょう。退団を公表してからの公演のわりに、コンビの場面が少なかったのが解せぬ。囚われた王妃の役はきわちゃんではダメだったのですか。
そのあとすぐにセレネが出てくるけれども、それは場面の入れ替えでどうにでもなるでしょう。さききわコンビが見たかったよ。
あとはすわん(麻花すわん)が蛇使いの子供として登場しましたね。今後が楽しみなスターさんです。
友人が大好きなせいみくん(聖海由侑)もばっちり発見。ソロもありましたね。今回は金髪ではなく黒髪で登場。
カセキョー(華世京)は赤い髪が新鮮! ちょっとお化粧も変わって、ぐっと垢抜けてきた感じがします。
ありすちゃんも美声を轟かせてくれました。もっとお歌の出番があってもよかったのにー!><
と、まあショーでしたからスターを探すのに忙しいし、大変だし、楽しかったです。
楽しかったんだけど、ねえ……。男役さんがドレスを着る場面があまりにも多すぎて……。
いや、そういうのが好きなファンがいることは知っていますし、演出家でも例えばダイスケ先生(藤井大介)も好きですよね。
でも私は個人的にはとてもとても苦手で。物語の都合上、大きくてガタイのよい女性である必要がない限り、女性の役は娘役さんに回して欲しいんですよ、ええ。
宝塚歌劇団が男役中心なのはわかるけれども、男役さんにもドレスを着せてトップスターの相手をさせてしまうと、娘役の意味とは???となってしまう。
もちろん男役さんの作り出す女性像と娘役さんの描き出す女性像は異なる。異なるけれどもさ、男役さんのいわゆる女装(あんまりこの言い方も好きではないけれども)を許容したら、ではそもそも女性だけで演じている意味とは???となってしまう。
私は娘役の強火ファンということもあるから、路線でなくても娘役をきちんと育てて欲しいと思うし、それには今回のような別箱での場数を踏むことが鍵になってくるとさえ思っているから、ちょっとね苦い。
先日退団されたはるこさん(音波みのり)みたいな娘役さんを各組に配置したいじゃない。経験を重ねても磨き上げられる娘役力ってあるじゃない。雪組だったら、ひめさん(舞咲りん)だってある種の見本だったと思うのです。
それなのに3つの場面続けて男役さんが女性のキャラクターを演じ、あまつさえ2幕でも「また……」となり、私は正直辟易してしまったよ。好みもあるけれども、劇団が娘役をどういうふうに考えているのか、真剣に問いただしたい気分だよ。
トップコンビについても、この絆をどう考えているのかはちょっと謎でした。先にも書いたけれども、あまりにもきわちゃんの出番が少なくないですか?
そりゃ出てくれば目を引くし、色っぽいし、格好良いし、でも可憐にもなれるし、変幻自在の美しい娘役さんなんだけど、コンビとしての売り出し方に疑問を感じざるを得ない。次の大劇場作品で退団なのに、そして次の作品だってあまり咲ちゃんとの絡みは並一通りな感じでドラマティックにしようがないのに、なぜ……いっそ、きわちゃんがセンターの場面が『センセーショナル』のときみたいにあってもいいくらいなのに。
これは、正月に公演されることが想定されていたから、そのときにはまだ退団が発表されていなかったから、仕方がないという味方も一方でできますが、それじゃあ座付き作家の役割ってなんだよ、もっと柔軟に対応してくれよ、と私はわがままなので思ってしまう。
ショー2幕ということでしたが、ほぼ全員が全部の場面に出ているという恐ろしい有様で、一体裏には何着衣装があるんだよ、すごいことになっているなと思うわけですが、もう少し小出しでいいんだよ、ショーなんだから、レビューなんだから。せっかくだから下級生をセンターにする場面をもっと作ろうよ。別箱なんだし、覚えてもらおうよ。目当ての下級生さんをすぐに見つけてもらおうよ。
2幕の後半にはわりと少ない3人4人程度の小グループで出てきて踊る場面がありましたが、それだよそれと思いました。後半ではなくて前半に欲しいし、むしろ全体をそんな感じで頼みたい。
なんでいつも全員集合なの、8時じゃないんだからさ……なんていうか、もっとこう、観客に見つけてもらおう? せっかくもともとのメンバーが少ないんだからさ???
もっともこれも好みといえば、そうなのかもしれません。私はその意味で中村B先生のショーも苦手な側面があるからな。すぐに全員出してくるの、勘弁してくれ~!ってなる。だって目は二つしかついてないんだよ!?!? 別箱は期間が短いから何度も見られるわけではないし、配信で映るのはセンターが中心ですからね!?
野口センセは『THE ENTERTAINER』はおもしろかったけど、個人的には一歩ずつ下がって、冷めた目で見てしまう……次の宙組も心配なんだよな。いや、実はここに来てまだチケットが一枚もないんだけどね……いやはや、どうなるのかな。
ショーは気になるから、見に行きたいし、下級生ウォチのためには現場に足を踏むより他に仕方がないんだけどね。とにもかくにも1回は見たいなあ。
この作品が8月7日の千秋楽まで無事に公演できることを祈っています!