星組『VERDAD!!』感想
星組公演
REY’S Special Show Time『VERDAD(ヴェルダッド)!!』—真実の音—
作・演出/藤井 大介
私はあんまりタカラジェンヌのコンサート形式の出し物は得意な方ではなくて、さらに言えば今回の会場のすぐ近くにあるらしい(こちらもまた興味がなさすぎて実際どれくらい近いのか、行ったこともなく、距離感がわからない)鼠の国も得意ではないので、ライブ配信とはいえ、あまりいい観客ではなかったかなと。
ただ、どうしてもなこ姫を見たくて、ひっとんに会いたくて配信を見たのですが、なんせひたすら目的が舞空瞳だったので「え、せおっちより紹介があとなの?」とか「え、1幕終わりでようやく紹介なの?」とか「え、人魚姫とアナ雪で同じ衣装なの?」とかとにかくそんなことばかりが気になってしまいました。すいません。白いドレスにティアラは最高に可愛かったです。
いや、大きな娘役のせおっち(瀬央ゆりや)もドレス姿が美しかったので、それはそれでよかったのですが、なんていうか、なこ姫が置いてけぼりすぎやしないか?と気になりました。娘役トップスターやで。
それでも琴ちゃん(礼真琴)に愛情ビーム送りまくりななこちゃんはすごいなあ……と、そんなところで感慨深くなってしまった。
どの目線なのか、もはや自分でもまるでわからない。
1幕は宝塚編。衣装はずっと白黒でした。
コンサート形式にしては珍しく、最初に黒燕尾。
円形の舞台にいきなり黒燕尾ってシュールだな、と。
新しくて良かったと思いますが、1幕の最初はやっぱり主題歌でも良かったかなとは思います。
2幕の冒頭で歌われる主題歌、どちらも良い曲でした。だからこそ、せめてどちらかだけでも1幕の冒頭でも良かったのではないかしらん、と思ってしまう。欲張りでごめんね、ダイスケ先生。
ただ、1幕にがっつり宝塚の曲を歌い繋いでくれるのはとても嬉しいのです。
星組88周年おめでとう!私の星組はとうあすが至高なので『アビヤント』はちょっと泣きそうになったし、懐かしい曲がいっぱいで嬉しかったなあ。
聞いていて、とても楽しかった。
みっきー(天寿光希)の『セマニフィーク』も聞けて良かった。やはりあの曲はテンション上がるわ。
なんなら、2幕もずっと宝塚の曲がよいと思っているくらいなのです。
JPOPも韓流も別に詳しくない私は、ずっとミュージカルソングとヅカソングでいいと思っているくらい。過激派だな。
というかヅカファンの皆さんはいつ宝塚以外の曲を聴いているのだろう。私は通勤も宝塚やミュージカルばかりだからな。
ミュージカルならドイツ語でもいいが、JPOPだと日本語でも全くわからんというていたらく。
話外れるけれども、こういう円形だったり、アリーナ形式だったりする箱で宝塚を折角やるなら、レヴュー2幕ものがいいなと常日頃から思っていて。
イメージとしては『パッションダムール』に近いのですが、ショーの1本物を見てみたいのです。
と、いうのも芝居をする劇団は日本にも世界にもたくさんあるけれども、レヴューを今、魅せられる劇団って少ないと思うのです。
宝塚もショー作家が枯渇しているイメージがあって心配なのですが(若手の先生、頑張れ〜!)、大劇場で公演されている『デリシュー』やみりゆきのお披露目公演の『サンテ』、だいきほサヨナラ公演の『シルクロード』は、2幕ものの潜在能力を勝手に感じています。
ヨシマサは軽率にJPOPを使う傾向があるからあまり信用できないとも思いますが、構成は悪くない。おっさん臭のする部分だけ剥ぎ取れば、『キラル』も可能性あるかな、と。何様だよって感じで申し訳ありません。
だから宝塚やミュージカル以外の曲をタカラジェンヌが楽しそうに歌って踊っていても「まあこの人たちにとっては朝飯前だよね」くらいにしか思えなくて。
実際、2幕の娘役ちゃんたちのNiziUという曲も、おちゃのこさいさい感が漂っていましたよね。超余裕。
なこちゃんセンターの曲がこれしかないのも違和感。もっと歌って踊ってよくないですかね?
いや、踊ってはいたけれども。
こういうコンサートにはつきものなのか、コントも相変わらずいらないなあ。
冷めた気持ちになる。
『NZM』のときはだいもんだからなんでもいい!と言っていた友人も、さすがに今回は「いらないわ……」と言っていた。
「セクハラです!」と注意される演出も、「あ、僕たちこれがイケナイコトってわかっていてあえてやっているんで、そこんとこヨロシク!」みたいな軽いノリが見え隠れするし、歌が上手い琴ちゃんに歌が下手な役をやらせる意味もわからないし、あかない5でグリーンが好きだったというのもゴマスリに見えてしまうし、ちょっといろいろ辛かったわけですよ。
私は本当に芸能界に無知で、せおっちのやっていたローラというのが何なのかも実はよくわかっていない。
女優でモデルのローラではないよね?あとはホストのローランドという人くらいしか浮かばない。
何にせよ元ネタがわからなくて、一生懸命演じてくれているのが逆に申し訳なくなるくらいでした。
とにかくせおっちが勢いよく歌い出してセットもはけたから、ようやくこのしょうもないコントが終わったかと思ったら、最後にまた出てくるじゃないですか。『スカピン』の曲で。
え、なにこれ、琴ちゃんが歌上手くなる旅でもしていたの? 全然そんな感じしなかったけれども。
『THE ENTERTAINER』みたいにタップはうまいけれども雰囲気が読めない少年が妖しい魔女からレッスンの先生を紹介されて、洗練されていく、みたいな物語性は、別に最初からなかったよ、ね……?
私が見逃していただけかな。それなら、その方がよっぽどいいんだけど。
なんせコントが始まった瞬間、脳がわかりやすく集中を切ったものだから……いや、寝てはないけれども。見ていたけれども。でもなんだかね。
2幕は夢の国の曲も多くて、さすがに歌詞を聞けば作品くらいはわかるのですが、『アナ雪』の「ありのままの〜♪」や『美女と野獣』のデュエットソングは今まで何度も歌われてきたから、思い入れのあるジェンヌが歌った過去がある人はそちらに意識をもっていかれてしまうし、なこちゃんは『人魚姫』と『アナ雪』の間で着替えてこないし(2回目)、『アナ雪』は何故か2回歌われるしで、何が何だかもうツッコミが追いつかなくて。
「Let It Be」に罪はありませんが、あの日本語歌詞も違和感あるなと思っていて。
「ありのままの姿見せるのよ」「これでいいの自分を好きになって」というのは、自分が恐れていたもう1人の自分、圧倒的な魔力をもった自分を恐れず、避けず、向かい合って受け入れたエルサだからこそいえる言葉であり、怠けの限りを尽くし、努力しない、気遣いしない人間に向けられた言葉ではない。
そこのところを履き違えている人が多いのではないかと疑念のある私にとって、日本語歌詞のこの曲は恐ろしいほど何も響かない。
タカラジェンヌはもちろん努力の人が多いのはわかっているから、そんなこと言うなよと思う人があるのもわかるけれども、なんだかね……。
『アナ雪2』のラストは秀逸だと思っているくらいなんですよ。
脱げた靴を自分で拾いに行くアナは、誰かが靴を履かせてくれることを期待するシンデレラとは違う。幸せは自分の手で掴む。そういうメッセージを受け取ったから。
そもそもみんなそんなありのままの自分でいたいの?
私、ありのままの自分になんぞなったら他者に気遣いできない暴君になる自信しかないから、ちゃんと理性を保っていたいとさえ思うよ。
とはいえ『レミゼ』のジャベールや『オペラ座の怪人』はさすがだと思ったし、基本的にカラオケに来たというコンセプトもいいとは思っているんだよ。
あーちゃん(綺咲愛里)のミュージックサロンはそういう構成だったものね。
だからあとは中身の問題で、コンテンツの流れかな……ダイスケ先生、頼むよ。
今回星組が3チームに分かれたこともあって、こちらのチームの下級生は驚くほどわからなかったのでプログラムを買っておくべきだったー!とは思いました。素敵な下級生ちゃんたちもありがとう。
なこちゃんは大好きでも、私は星担ではないんだなということ思い知った作品でした。
星担の方が楽しかったなら、それでのいいのです。
コンサート形式の作品は、配信より現場の方がやはり楽しいのだろうなあ。