ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

星組『柳生忍法帖』『モア―・ダンディズム!』感想2

星組公演

kageki.hankyu.co.jp

宝塚剣豪秘録『柳生忍法帖
原作/山田風太郎柳生忍法帖」(KADOKAWA 角川文庫刊)
脚本・演出/大野拓史

ロマンチック・レビュー『モアー・ダンディズム!』
作・演出/岡田敬二

最初の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

星組、東京千秋楽、おめでとうございました。
無事に幕が下りて何よりです。
愛ちゃん(愛月ひかる)もとても格好良かったです。サヨナラショー、素敵でした。
ルドルフ、すばらしかったです。オーラの輝きが最後まで美しかったです。
うたかたの恋』見たかったな。しめさん(紫苑ゆう)のルドルフが見たい母親と永遠に語れるな。
今まで素敵な夢を見せてくれて、本当にありがとうございました。
卒業後はまず、ゆっくり休んでください。寝てください。

柳生忍法帖』は、改めてあの水戸黄門は宝塚とマッチするのだなあ、と。
私は大劇場公演しか見ていませんが、東京ではもうちょっと洗練されていることを期待していたのですが、まあそういうこともあるでしょう。
十兵衛の優しさもたまりません。
私は天丸が傷を負いながらも、屋敷に戻ろうとしている姿を見て、堀一族の女たちが「先生、どうしたら」というのに対して、「行かせてやれ。あの子にはあの子で守らなければならぬものがあるのであろう」と答える十兵衛が素敵だなと思っています。
重ねて、村々から連れてこられ娘たちと一緒に捕らえられることになった十兵衛はわらべ歌をうたう女性に、弟たちについて「何かご存じなのでしょうか」と聞かれ、「きっと、姉様のお帰りを、心待ちにしておられよう」と嘘をつく十兵衛威がたまらなく優しいと思うのですよ。この二つの場面がぐっとくる。たまらん。
堀一族の女たちに優しいのはもちろんなのですが、その他の女子どもにも優しい。
いいよなあ、素敵だよなあ。
自分の身近な人間には優しいけれども、初対面の人にはいまいち人が変わったようになる男性って残念ながらたくさんいると思うんですよ。
レストランの店員にやたらと文句をいう男性の話とか、定期的にツイッターなんかでも話題になりますが、十兵衛はそうではない。最高だわ。

あと、ラストも好きなんですよ、やっぱり。
堀一族の女が東慶寺に戻り、亡き者たちの菩提を弔うというラスト、いいじゃないですか。
お千絵なんかは、誰かと結婚して堀一族の再興を目指すこともできるはずなのに、そうしない。
素敵じゃないですか。
そして東慶寺に戻る女たちの決心の前に、十兵衛がゆらの弔いを頼まないのも素敵。
十兵衛自身はこれからも剣豪として生きていく。坊さんにはならない。
だから堀一族の女たちに自分の代わりに弔ってくれということもできるはずだけど、ゆらと堀一族の女たちの関係を考えたら、とてもではないけれども頼めない。
頼めないけれども、現実の男はそういう無神経なことを平気で頼んでくるじゃないですか。
お前は何もしないのに、義理の家族の世話なんかできるかよ、みたいな地獄は、これまた残念ながらありふれた話なわけですよ。
十兵衛はそういう図々しいことをしない。ちゃんと堀一族の女の立場をわかってあげるし、尊重する。
十兵衛のキャラクター、本当にいいわ。
たぶん原作者の山田風太郎がみたら、びっくりするくらい戦隊ヒーローものになっているのだろうけれども、でもそれが宝塚には良かった。

もっとも個人的な好みを言えば、本公演の琴ちゃん(礼真琴)よりも、新人公演のかのんくん(天飛華音)の方が十兵衛としていいなと思いました。
「100年たったら敵もよぼよぼのじいさんになっているな」とかそういう、ちょっとふざけた感じのニュアンスが、かのんくんの方が本当にそう思っている感じで嫌味がなかったのが、いかにも痛快時代劇っぽくて私は好みでした。
新人公演といえば、なんといっても千姫のあまねちゃん(澄華あまね)が良かったですね。
どうして退団してしまうの……っ!とジタバタしていまいます。
あの愛らしい顔にいかついメイクをして、普段はあーちゃん(綺咲愛里)のような声なのに、どこから出ているのかわからないような低い声を出して、本公演とは異なり、いまだ大坂の陣の苦しみを消化しきれない千姫の像を見事に演じていたと思います。
新人公演のライブ配信、本当にありがとうございます。

本作品で唯一もったいないなあというのは、やはりひっとん(舞空瞳)演ずるゆらでしょう。
あまりにも出番が少ないのと十兵衛とのラブが少ないのは、作品全体の仕上がりとは別にやはり残念でした。
これが本公演でなかったらまた別だったのでしょうけれども。
別箱だったら『サパ』や『出島』もおもしろいと思えるけれども、やっぱり本公演にはラブが欲しい……私は作品重視タイプだと思っていたので、自分でもこう思うのは意外でした。
もちろんひっとんが好き!というのもあるのでしょうけれども、やっぱりラブが欲しいのよ。
それから「天台相承」という行事について、もうちょっと説明がないと、おういう儀式で、どれくらい大切な儀式なのかわからない人もいるかなあ。
個人的にはかりんたん(極美慎)の銀四郎がやはりツボすぎて、配信でもずっと見ていました。
会津七本槍はもう少し「魔性」っぽさ、「魔界」っぽさ、極悪人っぽさが加わるといいなと思っていましたが、いかんせん美しい人間の集団だから、それも難しかったのでしょう。
ここがもう少し強くなると、最後に十兵衛が「俺は人でいい」と歌い上げるところがグッとくると思いました。
十兵衛は剣豪だけど、人間の心の痛みに共感できない化け物にはならないってことですからね。

さて、ひっとん好きとしてはショーの方も実は物足りなくて、歌うのはオープニングとパレードだけなんですよね。
彼女がダンスの人であることは周知の事実ですが、でも別に歌えないというわけでは全くないじゃないですか。
登場する場面としてはオープニング、レジスタンス、キャリオカ、テンプテーション、デュエットダンス、パレードと決して少なくはない。
けれども彼女の声が聴けるのは最初と最後だけなんですよね。レジスタンスでもちょっとだけありますが。
宝塚は男役が中心になるのはわかっているけれども、それにしてもあまりにうたう場面が少なくはないですか、と。
これは岡田先生の他にイケコにもいえることなんですけど、もっと娘役の出番を増やしてくれてもいいんですよ? 頼みますよ?と。

ひっとんは琴ちゃんと踊っているとき、もう95%くらいは琴ちゃんを見ている。
「もうずっと琴さんハアト」という甘い瞳で見つめている。
テンプテーションのときはエビのようになっているドレスの裾裁きもあるから大変。
何が言いたいかっていうと、もっと観客席見てくれよ! あなたのことが大好きな観客もいっぱいおるで!!という気持ちになるのです。
そしてずっと見つめられている琴ちゃんは、わりと客席見ているし、そうでないときは愛ちゃんを見ている(笑)。いや、あんまり笑えないんだけど。
芝居でもいまいち一方通行だった思いが、こんなところにまで影響していなくていいよってなる。
トップコンビの一方通行はつらすぎるよってなる。
琴ちゃんはあんまりべたべたしない人なんだろうけれども、それを差し引いてもね。
ひっとんが好きすぎるから、ひっとんに幸せになって欲しいのです。
花組から星組に組替えまでして相手役になったのに、報われなかったら辛すぎるじゃないですか。
前任の紅あーの糖分までは高めろとは思わないけどさ……しくしく。

あと、ショーは銀橋を使う機会が少なかったのもちょっと残念かな。
銀橋をうたいながらスターが渡るのが大好物なので。銀橋ってもっと軽率に使っていいと思うんですよ。
燕尾愛ちゃんはキャリオカだけで終わってしまうのか!?と思ったら、ちゃんとサヨナラショーでもあったのが良かったです。
あれで終わったら悲しすぎるから。燕尾のセンターに立ってくれて本当にありがとう。
立派なタカラジェンヌでした。素敵なタカラジェンヌでした。たくさんの夢をありがとう。
ラスプーチン、エロール、プガチョフ、忘れないよ。
最初に公演が発表されたときは正直「これで退団で大丈夫かな?」とも思ったけれども、これで良かったです。これから一緒にヅカオタができるのが楽しみです。
今まで本当にありがとうございました。