ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

花組『TOP HAT』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp

ミュージカル『TOP HAT』
脚本・演出/齋藤吉正

何を今更、という感じですが『TOP HAT』の感想です。運良く宙組版も円盤を借りて見ることができました。

れいちゃんはしばしば娘役にひっぱたかれる役に当たりがちですが、『ナイスワーク』と違って、今回はデイルの勘違いで二度も頬をぶたれて、あらあらという感じでしたね。
しかしそれでもまあ様(朝夏まなと)ほど、おかわいそうに……と思えないのはなぜでしょう(笑)。まあ様から感じられた根の部分は誠実なんだよ、という香りがしなかったからでしょうか。
愛嬌はあるのだけれども、ダメな男という役がぴったりはまっていますね。本人やファンがそれでいいのかどうかはまた別の問題ですが。

デイルのまどか(星風まどか)も愛らしかった。私はあんまりみりおん(実咲凜音)が得意でなかったこともあって、とてもキュートなデイルにきゅんきゅんでした。
ジェリーが気になっているからこそ、早とちりをしてしまったのでしょう。乙女心は世界共通ですね。
しかしジェリーは言うほど有名ではないのか?とも思いました。ファッションモデルなら、アメリカの有名ダンサーを知っていてもよさそうなものですが。ここのあたり、原作はどうなのでしょう……。
デイルの友人マッジはくりすちゃん(音くり寿)。同期であることも手伝って、ここの息投合ぶりはバッチリでしたね。『はいからさん』の華ちゃん(華優希)とくりすちゃんを連想させました。
マッジは初演がせーこ(純矢ちとせ)だったことからプレッシャーもあったかもしれませんが、くりすちゃんが出てきたら、もうそこは「くりす・オン・ステージ!」で、歌唱力や演技力で観客を魅了していました。
ホレスからお金を巻き上げるところは、札束ではなく、財布の方を取り上げる大胆さは天晴れでした。
くりすちゃんは次の本公演での退団が発表され、脂の乗りに乗っている時期だけに惜しまれますが、とにかく最後まで無事に幕が上がることを祈っています。

ジェリーとはまた別の意味でダメダメなマッジの夫ホレスはまいてぃ(水美舞斗)。こちらもれいちゃんと同期ということで息ピッタリ。
2幕冒頭の飛行機の場面なんかは、さながら男子高校生の会話やノリそのもので、すばらしかったです。
前回のショーでの扱いが気がかりだったり、『冬霞』が円盤化されることだったり、彼女の立場がいよいよ難しくなってきているのがヒシヒシと伝わってきて、ひたすらに辛いですが、納得のいくところまで踊り切って欲しいと思います。
本当に頼むよ、劇団さん……っ!
初演はかいちゃん(七海ひろき)。マッジとホレスが同期で、こちらはこちらにしか出せない味わいもありましたが、ホレスとジェリーの距離が近く感じられたのが良かったです。

ほってぃ(帆純まひろ)も良かった。多少の贔屓目は認めるとしても、例えば『CASANOVA』の新人公演の頃と比べると、ぐんと大きくなったなと思う。
次回ははなこ(一之瀬航季)と『殉情』の主演。楽しみです。私は『春琴抄』オタクなので、映像化された作品はビデオを含め、全部持っていますよ!
ただ、演出には問題があるかなと思っています。外国人にカタコトを喋らせるの、辞めようよ、ヨシマサ。そういうとこだぞ。
歌詞も英語が多くて、何を言っているのかわからないところが多かったのは残念だな。もちろん役者は調べて、理解してやっているでしょうけれども、観客の中には英語がちんぷんかんぷんな人もいるのよ……もっともこれは私の英語力のなさも悪いのですが。
メロディーは楽しくて覚えやすいのに、歌詞が英語でわからないので、歌えない〜! にゃーにゃー歌っています(笑)。

あと、わからなかったのは1幕終わりのジョージのあれもよくわからなかったなあ……。毎回台詞が違うのかな?
最後は怒り気味にカツラを撮る場面で笑いが起こっていましたが、何が面白いのか、私にはよくわからなかったな……。

嬉しかったのはまゆぽん(輝月ゆうま)があわちゃん(美羽愛)と組んで踊る場面があったことです。
そもそも専科に行った人のクラシカルな燕尾やハットを見る機会がなかなかないので、それだけでも嬉しくて1幕終わりは喜んだのですが、それだけでなく、あわちゃんと!向かい合って!踊っているではありませんか〜! これはもう最高でしたね。
一瞬幻かと思いましたし、幸せすぎて命日近いかな?とさえ思いました。何のご褒美ですか? 嬉しすぎます。

そのあわちゃんも1幕は板付きスタート。ピンクと紫のお衣装がよくお似合いで。
初演のオレンジ×青の衣装よりもこちらの方がずっと可愛いと思うので、私はひたすら眼福でした。レビューの場面も衣装が変わっていましたが、私はこちらも今回のバージョンの方が好きでした。お衣装さん、ありがとう。
ジェニーの取り巻きみたいな形でも出てきて、不躾な質問をする記者に対して「ちょっとあなた失礼じゃない?」という台詞もあって「しゃ、しゃべった!」となりました。ありがとう。
この台詞、初演では取り巻きの女の子の台詞ではなかったみたいなので、あわちゃんの台詞として書かれたのでしょう。嬉しい限りです。

メイドとして出てくるあわちゃんも実にキュート。メイド服は『ナイスワーク』と同じかな?
あわちゃんは『POR』組だったから不思議な感じでしたけど、ホテルのロビー、エレベーター前でベティーニに投げキッスされて喜んでいる姿はしっかりこの目に収めましまたよ! かーわーいーいー! みさこちゃん(美里玲菜)も一緒にメイドをやっておりましたね。身長高いなーよく飛ぶなー。
このときのポーターのお衣装は『ダル・レークの恋』のものかな?
ここちゃんはこのときお客様のアリス。なかなか渋い色のドレスでしたが、マダム感を出そうと一生懸命頑張っておりました。

2幕はイタリアが舞台で、あわちゃんはお客さん。まさかの水着姿に「あー! お客様! お客様! そんなに肌を出してはいけません! 行けませんってばー!」となりました。し、しんぞうにわるいぜ……。お腹が出ていたからな……。
その後は薄いピンクのドレスで登場。いかにも宝塚の娘役って感じですよね。素敵だわ……っ!
後ろのバーカウンターでもしっかりお芝居していました。次の作品が楽しみだ~い!

最後に苦言を呈しますが、劇団や。
ブロードウェイミュージカルを持ってくるのはいいのだけれども、このパターンが多いすぎやしませんか? そろそろこれくらいのレベルのオリジナル作品を書ける演出家を育てませんか?
原田先生も多いじゃないですか、このパターン。
ブロードウェイものは、やっぱりキャラクターが少ないから宝塚でやるならどうしても別箱向きでしょう。
しかし別箱だとトップが主演であっても著作権の関係でライブ配信ができなかったり、円盤化されなかったりする。それはあまりにももったいないことではないでしょうか。
もちろん内部では映像が残るでしょうけれども、商品にできるかどうかは劇団の経営にも関わってくることかと思います。
コロナよりこちら、別箱や全ツが再演ものばかりなのも、結局はお金がないからなのかな、と穿った目で見てしまいます。そういう中でブロードウェイに著作権料を支払っている場合なのか、と疑問にも思います。
宝塚だからこそ、当て書きオリジナル脚本を楽しみにしています。よろしくお願いします。