ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

雪組『はばたけ黄金の翼よ』『Music Revolution!』感想

雪組全国ツアー公演

宝塚ロマン『はばたけ黄金の翼よ』
~原作「風のゆくえ」粕谷紀子(集英社クイーンズコミックスDIGITAL刊)~
オリジナル脚本/阿古 健
 脚本・演出/小柳 奈穂子

ダイナミック・ショー『Music Revolution!』
作・演出/中村 一徳

公式ホームページはこちら。

kageki.hankyu.co.jp

原作漫画は未読。

昨年もっとも観劇回数が多かった作品の一つです。
今月末にブルーレイが発売するので、それを記念してツイッターの感想を拾い、手直ししました。


●ファルコ・ルッカという人

プロローグ、あーさ(朝美絢)はファルコ名義で登場していますが、あーさがお芝居の中で笑っているのは、この場面とクラリーチェの首を絞めているときくらいなんですよね……他は基本的にプンプンしている。ショーブラウンみたいですな。
だからいっそ、ファルコ名義でなくてもよいのでは?と思ったのですが、ポルツァーノ当主の暗殺に成功した後の喜びの凱旋だから、これでいいのかもしれないとも。
「笑顔の凱旋」といえば、『王家に捧ぐ歌』アムネリス様のお言葉でございます。
ところで、銀髪も素敵だったので『銀の狼』とかいかがですかね?(言うのはただ)

なぜ主人公のヴィットリオでもなく、ヒロインのクラリーチェでもなく、ファルコの話から始めなければならないのだろうと個人的には思っていますが、この人の視点で私は物語をずっと追いかけていたような気がするので、仕方があるまい。
なんていうかね、「主人公の影」という設定が、もうそれだけで、はい、好きですって感じなのもありますが。
そういう設定であることをわかった上で見ていたけれども、それにしてもファルコがヴィットリオを裏切るのがちょっと早いような気もしました。
「ヴィットリオのために」という、あのズチャズチャという古式ゆかしいメロディーの曲も(一度聞いたらなかなか忘れられないw)、クラリーチェを誘拐する前に歌ったほうが、あるいは二人の関係性がわかったかもしれません。
もっとも、訓練されたファンは『ひかりふる路』『20世紀号に乗って』『壬生義士伝』でだいもんへの重すぎるあーさの愛には慣れているが。
どうせだったら、ヴィットリオとファルコのデュエットソングがあってもよかったと思いますが、全体的にストーリー重視で歌そのものが多くなかった印象なので仕方がないのかしら。

最後、ファルコは「俺のことは忘れてくれ」というジャンヌへの伝言とともに、助けたばかりのクラリーチェにネックレスを渡すけど、これって残酷だよね?
「俺は死んだと伝えてくれ」ならまだわかるんだ。俺のこと断ち切れよってことになるから。
でもそうじゃない。未練たらたらなの。ジャンヌに対して。
本当にすごくどうしようもない奴だな!という感じ。
でも、あの国で過ごした日々がファルコにはやっぱり忘れられないし、忘れたくもないのだろう。

一時期は本当に「ヴィットリオのために」「女を愛せない」と思っていた時期があるのだと思う。
書いていて、それもすごい話だなと思うけれども。
でも国のことを考えたら君主が婚姻し、子を作るのは当然で、それはファルコにもわかっていただろう。
けれども、まさか心まで奪う女が現れるとは計算外だったのか。
自分が彼の片翼でないことへの絶望があまりにも深い。
自分は「ヴィットリオの影」であるはずなのに。
でもヴィットリオに「俺の影」と言われている時点で、ヴィットリオがファルコを対等な立場と考えているようには思えなくて、とても片翼にはなれまいと客観的には思ってしまう。
ファルコ自身はどうだったのだろう。
もしくはファルコにとってヴィットリオは最初から両翼をもった存在だったのかも。
そうするとヴィットリオが実は片翼であったことに気がつかされたことにも、それを気づかせてあげたのが自分でないことにも、さらにはそのもう片方が自分でないことにも絶望せざるを得ない。
すごい。三重苦ってやつ。

もっとも、上記のことは普通ヴィットリオの目線で、「両翼だと思っていた俺様は実は片翼で、もう一つの翼を得るまでの話」と解釈するのがストレートなのだろうけれども、なぜか私はファルコの目線でそれに気が付いた。
ヴィットリオは見ていておもしろい人だけど、考察する対象でないのはなぜなんだw

ラストはヴィットリオとクラリーチェで「2人で一対の翼をはためかせ、どこまでも飛んで行こう」という感じ。
国は違えど「比翼の鳥」の思想はどこにでもあるのだなと思いました。
連理の枝」はあんまり聞かないかな? 圧倒的に鳥の比喩の方が多い気がする。
これも文化というやつなのでしょう。

余談ですが、ファルコに助けだされたクラリーチェがヴィットリオが救いに行く場面について。

クラリーチェ「ファルコが助けてくれたの」
ヴィットリオ「……ファルコ」
クラリーチェ「馬車の中で出会った人に宝石と子供の服を替えてもらったの」
ヴィットリオ「ファルコ……!」

こんな感じの台詞があったと思うのですが、これ、コミュニケーションがいまいちとれていませんよね?
と、いうか、ヴィットリオも相当ファルコのこと好きですね?と、ここでものすごく得心がいった。
そういうの、もっと前半からあってもよかったんだぞ!とも思ったけれども、この会話があって救いだった。
ちなみにあまりにもヴィットリオとファルコが相思相愛なので、ロドミアとジャンヌで薄い本を作っていても怒らないよ。


●ストーリーはおおむね満足

手の加えられたオープニングはすごくよかったなあ。
ちゃんと出会う場面、霧の十字路の芝居があって、本当に良かった。
だいもん(望海風斗)ときぃちゃん(真彩希帆)の歌があるのもよかった。
きぃちゃんが先陣切って歌い始めるのも良かった。
娘役から歌うってなかなかないですよね? だからすごく嬉しかったなあ。
だいあさの歌も欲しかったと思いますが(まだ言う)。

「おもしろい女」「体で教えてやる」ってもうこれ、跡部景吾(『テニスの王子様』より)の夢小説でしか聞いたことないやつやで?って世界が言っている。
すごい。懐かしさが半端なかった。しかもそれをだいもんのいい声で言われてしまった。
もちろん諏訪部もいい声ですが、また別のベクトルや。
かいちゃん(七海ひろき)と対談していましたね、そういえば。
とにもかくにも、感動をありがとう、なほたん!

ロドミアのひらめちゃん(朝月希和)はすごく良かったー!
歌もお芝居も佇まいもさすがでございますね!という感じ。
花組に行っても応援します><
隣のお客さんは「なんでわざわざ毒飲んだ?」と言っていたけれども、飲まないと毒が入っていることの証明にならないものね。
そしてヴィットリオのために命を投げ出すことを厭わない覚悟の演技がすばらしかった。
貴族の令嬢と酒場の女の違いも良かったです。いい感じにスレていくというか、地に足がついていくという感じ。
こういう娘役を大切にしてあげてね、劇団さん。いや、まじで(急に真顔)。

ジュリオひとこちゃん(永久輝せあ)に関しては、決闘の場面よりもクラリーチェに嘘をつく場面が印象に残っています。
「妹に嘘をついてまで敵を呼び出して陥れるのが政治なのか、それで本当にいいのか」と迷っている姿が非常に良かった。
聞いた話によると、原作にはこういう場面はなく、むしろジュリオが積極的に妹を出しに使おうとしているらしいので、この演出はよかったなあ。
そして、そういう良心をヴィットリオは見抜いていたから、ああいうラストなのね。
豪快ないいやつだな!
故国に戻ったクラリーチェが楽しそうに他人と喋ったり踊ったりしている姿を見て機嫌が悪くなるヴィットリオ様も最高だったぞ!

宝塚初演時は、ヴィットリオに対して、ファルコが鞭、ジュリオが目を傷つける役でしたが、今回は反対でした。
賛否両論あるよですが、ヴィットリオを殺そうと生き生きとしているファルコが殺そうと思って殺せなくて、仕方なく目を傷つけるのは演出としては正解だったのかも。
鞭で人はそう簡単に死なないよね?
まあだいもんを鞭打つあーさが見たかったかと聞かれれば、見たかったのですが。

もっとも一番気になるのはヴィットリオがビアンカと寝たのかどうかという品のない話で申し訳ないところですが。
クラリーチェが「一緒にいるところ見た」というのは、わかる。
一緒にいて、話くらいするだろう。
でも、ヴィットリオはジュリオに鞭で打たれている中「床の中でジュリオの名前を呼んだ」って言うし。
エッ、ビアンカの意識がそんなに朦朧とするようなことしたの?
一緒の布団に入って寝るのはいいけど(いいのか)、手を出したらいかんだろう。
だってヴィットリオ様はもう見つけたじゃない!>< 運命の人を!
少女漫画にありがちかもしれませんが、やっぱり運命の人を見つけたら、もうその人以外とは関係をもっちゃダメだと思うよ、私は……それが誠実な心ってもんでしょ。
アレ、漫画の読みすぎか?
もうとにかくビアンカがひたすら不憫でならないし、ラストも「ジュリオ様も大変で」みたいことを言うけれども、いやいや、本当に大変だったのは貴女ではなくて?!という感じでした。
どんだけ聖女マリア様なんだ、ビアンカ
いっそ、ジュリオから離れた方が幸せになれるのではないかとか、そんな宝塚らしからぬことまで考えてしまったではないか。
ビアンカが道具扱いされていたのが非常に気がかりでした><

さて、ラスト。
国を出て行くというクラリーチェを止めないヴィットリオ。
なぜならば、彼は自分の意思で自分の人生を切り開く女が好きになったから。でも待っているよ、と言う。
ありがたいそのお言葉に思わずヴィットリオの背中に抱き着くというロマンあふれるラスト。
白黒コントラストのお衣装もよき。ここでデュエット曲がまた入るのもよき。
クラリーチェがヴィットリオに止められないまま、国を出ていくというラストも、まあありといえばありなのでしょうけれども、宝塚としてはこれでいいのだ!と思わずバカボンのパパになる。
演出や曲調もザ☆宝塚という感じでしたので、脚本もおのずとそうなるでしょう。
全国ツアーとしてはこれで正解だと思います。

そんなわけで、「ヴィットリオとファルコの仲が曖昧であること」「歌が少ないこと」「ビアンカの扱い」以外は、さほど気にならず、大変楽しく観劇しました。

「ババア」という台詞が不用意に出てきたり、男が女をひっぱたく場面があったりすることなく、安心して見られました。
ブルーレイはもちろんすでに予約したよ!
お家に届くのが楽しみでございます。


●静岡公演のあれこれ

まずは、組長によるだいもんの紹介文の数々をば。

初日マチネ「晴れて綺麗に富士山が見えることに朝からテンションが上がりっぱなしの望海風斗がご挨拶いたします」
初日ソワレ「静岡でなにがしたい?と言う質問に、茶摘み!と元気よく答えた望海風斗がご挨拶いたします」
2日目マチネ「本番前まで真彩希帆を巻き込んでちびまるこちゃんのものまねの練習をしていた望海風斗がご挨拶いたします」
千秋楽「同期である静岡出身の明日海りおへの愛が止まらない望海風斗がご挨拶いたします」

毎回違うネタを考える組長(奏乃はると)もすごいけれども、それだけのネタを自然体で提供できるだいもんもすごい。

ちなみにショーの中詰、みんなが客席降りをしているとき、だいもん、きぃちゃん、あーさ、ひとこちゃん、あやなちゃん(綾凰華)の五人で「ふじさんー!」は毎回やっていました。
富士山くらいしかネタにするものがなくて本当にごめん……という感じではありますが。
きっとみかんはネタにしにくいのだろいな。だからといってちびまる子ちゃんが出てくるとは思いませんでしたが。

岡千秋楽のショー、中詰の階段降りでも、「静岡出身のタカラジェンヌといえばー?」と客席を煽り、客席からは「明日海りおー!」という声が響きました。同期愛。
舞台に戻り、きぃちゃんとデュエットダンスしながら「明日海りおさん、知ってる?」とさらに聞いていた。
本当に愛が止まらない。すさまじい同期愛。
それに対してきぃちゃんも「もちろん。だーいすき♡」と返答しておりました。
だが、私は聞き逃さなかったぞ!
でも望海風斗さんのほうがもーっとすき♡っ心の声で言っていましたよね?
大丈夫だよね? 間違ってないよね?

願わくば、全国ツアー公演、静岡か愛知かどちらかは必ず来てほしいし、静岡でやるならこの箱がいい。
多少古びたところではあるけれども、交通アクセスも悪くないし、私はここならいくらでも通える。
そもそも全国ツアーで愛知県が入っていないことが多すぎるのが謎だし、名古屋の箱はどんどん潰れていく。切ない。


●お衣装と大道具

クラリーチェのお衣装はどれも可愛かったなあ。
着せ替え人形まあやって感じで、惜しみなくきぃちゃんの可愛さが堪能できる感じ。
若干時代背景の怪しいお衣装もありますが、きぃちゃんの可愛さでプライスレスになる魔法。
鬘も可愛かったし、ショートカットもボリュームがあってキュートだった。

あやなちゃんは『PR』のときも思ったけれども、長い髪よりもジャズのときみたいな短い髪の方が好みだなあ。
あくまでこれは好みの問題で、別に似合っていないとは思わないし、むしろあのロン毛が似合う人はそうそういねぇと思っているのですが。
ちなみに、あーさに関しては銀髪ロン毛も素敵でしたが、やっぱり黒髪が好きです。
これはまあ好みの問題ですな。
だいもんも黒髪が好き。
きぃちゃんは何色でも好きだなあ。茶髪~金髪あたりが多いのかな。でも『壬生義士伝』の黒髪もよかったぞ。
真彩希帆、最強説、ここに爆誕やな。知っていたけれども。

ところで気になったのは、クラリーチェの寝室に飾ってある2枚の絵画。
あれは一体何のメタファーなのだろう。最後までわからなかったわ。
農業をする人たちの絵であるように見えたけれども、タッチは中世っぽくなかったし、色彩がヒエロニムス・ボスか?という気もしたが、あまりに前衛的すぎるから、それはないだろうし。
この絵画のことを考えてもよくわからないのですが、これになんか意味がある!と思いながら出口のない思考をぐるぐるしていると、趣深いことがどこかにあるのではないかと常に血眼になって探している姿はもう全然ダメと紫式部に揶揄された清少納言の気持ちがわからないでもない。なんか違うか。


●『Music Revolution!』

ひらめちゃんと星南のぞみが中詰でシンメトリーになるのですが、こういう娘役のシンメとかペアとかもっとやってくれてもいいのよ!という気になる。
娘役同士のイチャイチャっていうかデュエットダンスとかそういうの、たくさんもっと見てみたいよ!
もっとやってくれてもいいのよ、劇団さん! ばんばん! 需要はあるわ。間違いなくある。

「Music is My Life」で岐阜公演では、まさかの郡上踊り再び。
しかも今回は全員で。一体いつ練習したのだろう。
全国ツアーは移動もあって、精神的な負荷も大きかろうに、その地方ごとに楽しみを見つけていて、だいもんってすごいなあと改めて思いました。
紹介してくれる組長にも感謝。雪組全員でお祭りで踊りたいって。

「On My Love」うつくしいトップ娘役が、うつくしい娘役のダンスを背に、美声を披露するスーパービューティータイム。
またの名をうつくしい娘役を侍らす真彩希帆。
これ、男役を目指していたきぃちゃんとしてはかなり本望なのでは?
「遊びの愛は楽しいもの〜♪」と高らかに歌い上げている。美。

「新世界」がなくなったことで、あーさは中詰でソロなし。
「Love Revolution」もかちゃさんありきの場面だし、せっかく2番手でキラキラお衣装をフィナーレでも着るのだから、新しい場面があってもよかったと思うのですが、友人からは「贅沢!」と言われました。そういうものかね。

岐阜公演の中詰では、だいもん、きぃちゃん、あーさ、ひとこちゃんなど舞台に残っている多数のスターに手を振っていただけて感謝の極みでした。
しかし何度見てもあのお衣装はちょっとね……あんまり可愛くないなあと思うのは果たしてわたしだけなのだろうか、もにょもにょ。
動きやしいかもしれませんがね。
だいたい『MR』にはドレスが少ないのが不満といえば不満。
プロローグ、中詰、「MiML」と大きな場面の娘役はスパッツ仕様。
かろうじて「TicoTico」はドレスですが、きぃちゃんがデュエダン待機でいないのよねぇ……。
「On My Love」の場面があるとはいえ、本当にもったいない。

ジャスの場面。
あやなちゃんも手足が長すぎて、舞台写真に全身が映っていません。一体何等身なの。
中詰では、きぃちゃんの歌の後ろで踊る場面もあって、よかったね><
かつての星組っ子がたった二人で、舞台を埋めていることに感動した。好き。

話をジャズの場面に戻しますと、下手から階段を登ってくる叶ゆうりがマジいけめん。
なんですか、あのオーラは。やばくないですか?
ひめちゃん(舞咲りん)と対等に渡り合っているってすごくないですか?
スチール写真では手が大きすぎやしませんか?
客席降りでは、通路席のおばあさまを完全にロックオンしていましたね?
跪いていたの、わたし、見ていてよ!
おばさま、きっとメロメロになっただろうな。

岐阜羽島の会場がすばらしい。
綺麗なのはもちろん、音響も大変良い。何より座席の段差があるのがよい。
2階席は気持ち遠いかな?と思うこともありますが、オペラグラスを使えば大丈夫。
舞台が低くて役者を近くに感じることもできる。
バルコニー席は多少見切れるけれども場所によってはオペラ不要。
こういう劇場が増えるといいのですが。

 


そんなわけで、ブルーレイが届くのが待ち遠しいですな!
あの華やかなオープニングから始まるかと思うと、届いてもいないのに今すぐにでも封を切りたい気分です。