ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

月組『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』感想

月組公演

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JAPAN TRADITIONAL REVUE『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』
監修/坂東 玉三郎  作・演出/植田 紳爾

ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜
作・演出/原田 諒

 

大変良いものを見せていただきました。
ショーもお芝居もどちらも一定水準を超える作、演出となっており、満足しております。
ツイッターでは、こんな多幸感、『ひかりふる路』『SV』以来なのでは?と呟いたのですが、よく考えたら『エルベ』『エストレ』も2本ともすばらしかったです。
とにかく『雪月花』『ピガール』ともにすばらしく、見終わった後、すぐにチケットを増やしました。
こうやってチケットが増やせるって幸せですね。
前売りで売り切れないのは劇団としては不安かもしれませんが、私にとってはラッキーでした。

『雪月花』、世間では『WTT』と略すそうですが、シンプルな構成、番手に合わせたわかりやすい色違いのお衣装、有名なクラッシック音楽の日本舞踊のためにアレンジなど、どれもよかったです。
特にクラッシック音楽のアレンジはもう玉様の十八番ですから、ベタではあるけれども、ヨシキタ!という感じでした。
ベタな感じが宝塚にも合っているのでしょう。
まあ、私の好みの問題もあるのでしょうけれども、好きなんですよね。玉様も好きなんですよねー。
監修されるというお話を聞いたとき、飛び上がって喜びました。
観劇できて幸せです。
歌が少なかったり、娘役の見せ場が少なかったりすることは残念ですが、飛沫を飛ばさないため、楽屋でソーシャルディスタンスを確保するための対策でもあるのかもしれません。

プロローグでは番手を一気に詰めてきたじゅりちゃん(天紫珠李)、背が高くてどこにいてもすぐに見つけられるまゆぽん(輝月ゆうま)、和物のお化粧が美しすぎるれいこちゃん(月城かなと)、立っているだけで存在感を示すちなつ(鳳月杏)、傍にいるけれども一際輝くゆりちゃん(紫門ゆりや)と、まあどこを見たらいいのやら。
最初からこんな感じでしたが、最後までこんな感じです。
縦一列で並ぶ場面ではまゆぽんの前がアキちゃん(晴音アキ)、後ろがからんちゃん(千風華蘭)ということで、アキちゃんの顔の上からまゆぽんの顔がちゃんと見えるし、まゆぽんがいなくならないとからんちゃんは全く見えないという、なぜその並びにした……という気もしましたが、誰だってまゆぽんの後ろにいたら見えないですよね。

その後の口上はいつもの緑の袴ではなく藤色の和服でした。
こういうのもいいですね。組長がひっぱって歌舞伎さながらの挨拶をしてくれました。
いや、本当にこれ、歌舞伎のまんまなのよね。
玉様がどういう気持ちで見ていたのか、助言をしたのか、気になるところです。

雪の場面では歌舞伎の舞踊「鷺娘」を連想させるようなところもあって、とても好みでした。
玉様の「鷺娘」が好きなんですよね。舞踊の中で一番好きかもしれない。
この公演がサヨナラ公演となる松本先生のすばらしさは言うまでもないですね。
もう少し影の役(昔の恋人? 思い人?)と絡んでもいいかもしれません。
退団したら玉様と組んで、何かやってくれたら、日本舞踊の世界にまた新しい扉が開かれるかもしれません。
ずらりと並んだ赤鳥居に宙組『白鷺の城』を思い出した人は少なくないでしょうが(まるで伏見稲荷のよう)、あの場面にせーこ(純矢ちとせ)が出ていたことは今思うととても貴重ですな。
ダンスも種類が増えてきて、新しいダンスを踊れるようになろうとすると、きっと日本舞踊の時間は音楽学校でも短くなってしまうのだろうな。
音楽学校で、かつては教えていたお琴も、今は時間がなくてカットされたとか。ゆきちゃん(仙名彩世)の三味線もいかにすごかったかということが思い出されます。

月の場面ではずらりと出てきて、冒頭のチョンパとともに圧巻でした。
月の満ち欠けの形はあれでいいのか?という疑問は残りますが、演者たちはすばらしかったです。
出ている人数の割に見せ場のある役者が完全に固定されて、ちょっともったいないような気もしました。
当初の演出からどれくらい変更があったかはわかりませんが、久しぶりの宝塚でコテコテな和物のショーということなのかもしれません。
世界の人間を「ウエルカム」するにはこれくらいコテコテでもいいのかしら。

花の場面では、村上春樹「鏡」を思い出しました。
鏡の向こう側にいる人間が、鏡のこちら側にいる人間を支配しようとするお話です。
鏡というのはそれだけで不思議な存在ですからね。
最初はなんとなく自信なさげな役者、れいこちゃんが鏡に向かって芸事の練習に励んでいると、いつの間にか鏡の方が先に動き出す。
この場面に「くるみ割り人形」がものすごくマッチしている!と個人的には思っていて、印象深い場面となりました。
おだちん(風間柚乃)は『出島小宇宙戦争』でのシーボルトを経て、2回りも3回りも大きくなりましたね。すごい。
これは化けるな、と今更ながら思いました。
認識したのは『AfO』のジョルジュあたりからだったと思われます。
これからの成長が楽しみです。

そして、れいこちゃんが早変わりをしたところで、プロローグと同じ場面に。
もう一度松本先生が登場。尊いですわ、本当に。背中に翼が生えたようなお着物がすばらしかったです。サモトラケのニケのよう。
数えた人がいるようですが、本作品は「ウエルカム」と104回言っているとか。すごいですな、言う方も言われる方も、もちろん数えた方も。
でもどうせならあと2回、106回だと学年と同じになったのでは?と思いました。

 

そして『ピガール狂騒曲』。
シェイクスピアが原作で、原田が脚本ということであまり期待はしていなかったのですが(シェイクスピアは現代では翻案しにくいものも結構ある)(原田は言うまでもない)、とても楽しかったです。
もっともシェイクスピアから拝借したのは生き別れの兄妹がそれぞれ恋に落ちて、出会う(原作は再会する)というところだけだったような気もしますが、読んだのが昔すぎるのでなんとも。
とにかく月組は脇が固い。目が足りない。
ゆりちゃん、れいこちゃん、ちなつ、るうさん(光月るう)、れんこん(蓮つかさ)、まゆぽん、からんちゃん、るねぴ(夢奈瑠音)、やす(佳城葵)ともう芝居心に溢れた人が男役だけでこれだけいる。
さすが芝居の月組と言われるだけはある。
私が男役の群舞で目が足りないと思うのは、月組だけである。これはすごい。

からんちゃんロートレックは、もう本当にロートレックでした。ロートレックなんか絵を描いているか酒を飲んでいるかのどちらかだと思っているので(もちろん両方ということもある)(ロートレックは絵画界の李白)、本当にその2つの演技しかしていないのに、めちゃめちゃおもしろい。
酔っ払っているからの勘違いもあるのだけれども、やはりうまい。
背が小さく見えるようにしていますが、酔っ払っているから真っ直ぐ立てないかのようにも見える。
ムーラン・ルージュのカンカンの場面の後、客が入っていないことをれいこシャルルに指摘されて、「本当だ、空いてる……」と大劇場SS席5列目までに人が入っていない空席を見つめる。
ここ、これからちゃんと人が入るようになったら「嘘つけ! ちゃんと入ってるじゃねぇか!」とか一回言ってくれないかな。そんでもって大きな拍手をしたい。

「お望みのままに」の場面は、本当に芸達者しか出ていないんですよ。おもしろくて当然ですわ。
突然早口で歌い出すれいこシャルル、早口なのに歌詞は全くラップになっていないれいこシャルル、すごい濃厚なオレンジ色のロングコートに負けていないキャラクターがすばらしかった。
そして、それに続く振付師るうさん、衣装部ゆりちゃん、音楽担当ぐっさん(春海ゆう)っていうのがね。
芝居で笑わせてくる。はちゃめちゃに楽しい。
たまきち(珠城りょう)ジャックを捕まえて、わちゃわちゃするところなんかはこれからもっとアドリブが増えていくことでしょう。マジで天才だわ、この配役。
もう君たちがムーラン・ルージュの舞台に立てばいいのでは?
がっぽり稼げるよ?と思いました。
るうさんが初めてジャックを見たときのシーンも大変に印象的でした。憧憬や親愛に性別は関係ないのです。

ちなつのウィリーもものすごーく良かった。
難しい役だと思うのですが、チャーミングに演じてくれて本当に良かった。
ガブリエルの言葉に説得力を持たせるためにはある程度嫌な男、モラハラ男としての言動をしなければならない。
けれどもそれだけだと観客としてはただ不愉快になってしまうだけになってしまう。
やはり、観客は女性が多いですしね。
ちなつのウィリーはその不愉快な気持ちに一切させない。
モラハラ言動がコミカルな場面につながるようになっているからでしょう。
「あいつ、またあんなこと言ってやがるw」みたいな感じで見ることができるから、観客は全く不快にならない。
すばらしい。口で言うのは簡単だけど、きちんとそれをコミカルに演じきれるのはさすがだなと思いました。

まゆぽんマルセルは、ちなつとはまた違った意味で「悪役」を演じなければならないキャラクター。
この「悪役」の種類分けがきちんとできているのもすごい。
彼女たちの持ち味の違いといえば、それもそうなのでしょうけれども、ジャックの敵役となるまゆぽんとガブリエルの敵役となるちなつと悪の分類ができている。
芝居が上手くないとこうはならない。拍手。
本当に面白い空回りだったなあ。
ちゃんと部下の分のチケットも買ってあげるのだろうか。ここもアドリブが進化しそうなところですね。
楽屋のお掃除おばさんヴァネッサ役の夏月都も笑わせてくる。最高。

ムーラン・ルージュの支配人であるシャルルもよかった。
こういう役の場合、踊り子たちを金のなる木くらいにしか思っていないような嫌な人になりがちだけど、そしてあのひげはいかにも悪い人っぽいのですが、シャルルはそうではなくて、ムーラン・ルージュという場所もそこで踊る踊り子たちのことも大切にしているのが伝わってくる。
シャルルとジャック(ジャンヌ)は恋愛だったのか?という声もあるみたいですが、最初は敬愛や親愛だったものが恋愛に変わることはあるだろうし、恋愛にならなかったとしても敬愛や親愛で結ばれているカップルもありかなとは思います。
宝塚ではもっと理想的な男女のラブがみたい!大恋愛が見たい!という人には少し物足りなかったかもしれませんが。
ジャックとしては、最初はちょっと怖いおじさんだった人が、少年のようにひたむきに舞台を愛するシャルルを尊敬していったのだろうし、シャルルとしても、ここで終わりだもうダメだと思ったところで自分の死を引き留めてくれたのがジャックの言葉であったというのは大きいと思います。
2人が歩み寄る様子は、私はちゃんと描かれていたと思っているので満足です。
まあ気になるのは年齢差くらいですかね。
一体ジャンヌはいくつくらいなのだろう。

一方でヴィクトールとガブリエルの方が「お前ら、結局顔が好みだったんかい」みたいな話になりかねないなとも。
ウィリーとしっかりケリをつけて別れることのできるガブリエルですから、たとえ顔が好みであっても性格に難があればすぐに別れる選択肢を選べるだろうことは予想できるので、安心といえば安心です。ガブリエルの女性自立の言葉は今の世にも響きます。嬉しいのやら悲しいのやら。
彼女にウィリーの二の舞になって欲しくないという観客の心もわかりますが、ガブリエルの方が問題ないならヴィクトールをなんとかしなければいけない。
けれども、そもそもヴィクトールの出番が少ない。これが惜しい。
たまきちの男役としての出番が少ないのはね、やっぱり寂しいではないですか。
だからオープニング曲はジャックではなく、いっそヴィクトールとして出て来てもよかったかもしれないです。
からんちゃんロートレックもわりと序盤から出て来ているのだから、2人の会話で『クロディール』に言及したら、ヴィクトールは少なくともガブリエルに対して顔だけではないということがわかるかもしれません。

オープニング曲の前、ウィリー夫妻がムーラン・ルージュから出てくる場面で見たガブリエルのストライプのドレスはすごかったですね。
なんていうかもう本当にさくら(美園さくら)のために作られたドレスであることが一目瞭然。
チラシでは上半身しか見えなかったのですが、全身の姿を見たら震えるね。
顔のパーツがわりと直線が多いので、大変よく似合っておりました。
あれが似合う娘1はあまりいないかもしれない。
みんな、どちらかというと顔のパーツは曲線が多いから。

あとの場面で、ムーラン・ルージュに来ていたウィリーの奥方がとんでもない美貌の持ち主だ!とシャルルが舞台裏で話題にしますが、それなら記者に「相変わらず美人な奥さんですね!」とか言わせたらどうだろうか。
いや、ジェンヌはみんな美人なんだけどね。だからこそ芝居の設定を教えてね、と。
そこでガブリエルが「ありがとう」と応えて、続けて言葉を発しようとすること、自分よりも妻が目立っていることにいらだっているウィリーが「もう、このあたりで!」と切り上げれば、冒頭のキャラクター演出としてはうまい具合に進むのではないかと思われます。
まあ素人目線ですがね。

シャルルれいこちゃんが「この中に真ん中に立てるスターの踊り子がいたらムーラン・ルージュはこんな風になっていない!」みたいなことを言う場面があるのですが、ちょ、おま、それをくらげ姫(海乃美月)の前でのたまうか!と、演技だと分かっていても目を見開いてしまったよ。
うん、わかっているよ、演技だよ。
『ラスパ』大好きです。

おだちん弁護士は、まあすごいよね。パンチ力っていうの?破壊力っていうの?
ショーでも思ったけれども、すごい。
バッカンバッカン会場を沸かせてくれる。ありゃ、本人も楽しいだろうなあ。
どうしてムーラン・ルージュへの潜入捜査で女装をしたのかは謎だけど(そのまま男として入り込むこともできただろうに)(ガブリエルに近づくために女になったのかな?)、それが物語を動かす鍵になる。
別箱ではなく本公演であれだけ重要な役を任されるのだから、別箱で真ん中にくる日もそう遠くないかもしれません。
スターだなあ、本当に。

じゅりちゃんも『夢幻無双』で新人公演ヒロイン、『赤と黒』のマチルドときて、またひと回り大きくなって大劇場に戻って来ましたね。
るうさんに注意されているじゅりちゃんは、『ワンス』の潤花のようでもありました。
月組のこれからの人事も気になりますが、誰がトップでも応援したい。
くらげちゃんの出番がその分減ったかなと思われるのが辛いのですが、じゅりちゃんにも頑張って欲しい。
くらげちゃんも応援しています。
彼女がセンターなのにムーラン・ルージュに客が入らないのはなぜだ。
美しくてどこにいても芝居していてすぐわかる。

下級生はらんぜくん(蘭世惠翔)もいい。すごく目を引く。赤っぽい茶髪のカツラにくるくる丸いお目目が実にキュート。
そしてデカイ。大きい。でもキュート。
フィナーレのありちゃん(暁千星)歌唱場面でもダンサーとして活躍(ありちゃん、歌が上手くなっていましたね)。これからが楽しみな娘役の一人ですな。
どうなるのかなあ、わくわく。
新人公演がないのが辛い。
ちづるちゃん(詩ちづる)もこありちゃん(菜々野あり)もBバージョンに出演のため、舞台上にいないのが残念ですが、やはり初舞台生を全員舞台に上げるためには人数を制限するしかなかったのかなあ。寂しいでござる。
どちらのバージョンが円盤になるのか、東京も下級生は半分に分けるみたいですし、全員が舞台上に立てないのはやはり寂しいですね。
オーケストラも早く復活して欲しいな!

そして見つけた新しい期待の下級生は美海そらちゃん。気がつくと彼女をオペラで追っていることが多かったです。
とても楽しみな104期生です。

星組において金髪の天寿光希、黒髪の瀬央ゆりあならば、月組においては金髪の紫門ゆりや、黒髪の輝月ゆうまで決まりだな、と思いました。すてき!
金髪はロイヤル繋がりで、黒髪は95期つながりですな。
そして私はロイヤルに弱い。
雪組の黒髪は彩凪翔かな。

ちなみに覚えいるアドリブ。
ゆりちゃんがたまきちのサイズを測る場面「足、長っ!」
からんちゃんが墓地でちなつにからむ場面「おめぇ、あし、なげぇな!」
るねぴに近道を教えてもらったちなつ「早く言う!でも大丈夫、足長いから」
あしながまつりでした。みんなあしながおじさん(物理)な感じですかね。

フィナーレの羽はトップがピンク、白、水色でフランス国旗。トップ娘役が水色で2番手がピンク。
こういうとき、娘役がピンクになるところを水色をあてているところがすばらしい。
こういうところからジェンダーフリーにしたいところ。
確か花組の『BG』のパレードも、みりお(明日海りお)がピンクで、ゆきちゃんが紫でしたね。すばらしい。
しかし銀橋挨拶はやはりトップと2番手が最後だった。なぜだ……?
最後にトップコンビを2人銀橋に残して欲しいのだが。あれかな、歩くスピードの問題か?
ドレスは歩くスピードが遅いから最後舞台の真ん中に戻るのが遅れるということなのか?
では、曲をゆっくりめに演奏したらええのではないか?などとぐるぐる考えてしまう。

Aパターン観劇日は、コンプレックスビズとのコラボレーション商品、星組バージョンを髪飾りとしているのですが、キャトルレーヴの店長さんに「素敵ですね」って褒められてしまったのです!
ありがとうございます! ありがとうございます!涙
『グラフ』に掲載されていたトップ娘役のようなアレンジはできませんが。
コテ苦手! 何種類も使い分けているまどか(星風まどか)を初めとする娘役さんたちは心底すごいと思います。

そんなわけで月組、チケットを増やしました。
次の雪組に備えてちょっと控えに、と思っていたのが嘘のようです。
Bパターンも楽しんできます!