花組『はいからさんが通る』感想
花組公演
ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る』
原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート) (c)大和 和紀/講談社
脚本・演出/小柳 奈穂子
ようやく、よーやく! 私のはいからさんが通り明日。
本来だったら3月の初日あけてすぐに見に行っていたはずなのに、そのあとも何度もチケットをとっても、7月の再開のときの分のチケットさえも、すべて払戻されてしまった私のはいからさん。
私の幻の新人公演チケット。ああ、初の新人公演だったはずなのに。
しかし、とうとう観劇できました。ありがとう、劇団。ありがとう、花組。ありがとう、紅緒さん。
気持ちとしては『BADDY』のスイートハートさんでしたね。「邪魔よ、どいて!」って。
新幹線も地元の電車も終電でしたが、気にしません。
前半はあわちゃん語り、後半が全体の感想です。
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7月の大劇場再開2日目の配信も、大劇場千秋楽の配信ももれなく見ましたので、初演との変更点はなんとなく頭に入っていたのですが、やはり生で見るのは違う。本当に違う。
何が一番違うかっていうと、やっぱり下級生を見ることができる、中心ではないお芝居を見ることができるということでしょう。
今回のMVPはあわちゃんこと美羽愛ちゃんです。
『恋するARENA』のときに見つけて以来、ずっと注目している生徒です。
これがまたとてもよかった。あわちゃんが良かった。
女学生でもメイドでもモダンガールでも何をやっていてもどこにいてもすぐにわかる。
マチネ公演は2階席からとにかくもうずっと彼女を見ていました。
すばらしかった。愛らしかった。キュートだった。最高でした。
どうして彼女のはいからさんが通らないのか、わからない(いや、わかるけど)。
しんどいです。でも一番つらいのはきっと彼女です。
下級生と周縁のお芝居を見よう!と思っていたのに、マチネ公演はうっかりずっとあわちゃんを見ていました。
あんまり他のことは覚えていないくらい彼女のことをずっとオペラグラスで見つめていました。
文字にすると変態みたいで気持ち悪いですね、すいません。
東京公演のプログラムは買わなくていいかな、3月分と7月分の大劇場公演のプログラムをもっているし、と思っていたのですが、あわちゃんが出てきているところを答え合わせするために、マチネ公演の幕間にあわてて買いました。3冊目をお迎えしましたよ。
あわちゃんは、オープニングの女学生では薄いピンク色の振袖に袴姿、頭には紅緒さんばりの大きなリボン、色はすみれ色、浅草の場面や2幕の冒頭のモダンガールではクレリック襟のワンピース(私の大好物)に、丈の長めの上着をはおって、赤いベレー帽をかぶっています。
その他、伊集院家のメイド、雪の精もやっています。
狸小路伯爵低のメイドとしては上手側に出てきます。
ロケットでは上手から登場、一列になったときは下手から三番目です。
パレードのラストでは、大階段一番下、真ん中にいます。
みなさん! ぜひ! ぜひとも! 注目してくださいませ!
バリバリに踊れる娘役です。思いのほか、お着替えが大変そうです。
B日程ではみさこちゃん(美里玲菜)が演じるのでしょうか。こちらも楽しみです。
大劇場のプログラムを見ると、あわちゃんは当初女学生を演じる予定はなかったようなので、日程がわかれたことではいからさんのスタイルができてよかったかなと思います(だって新人公演ないんだもーん><)。
オープニングの女学生はもうとにかくべらぼうに可愛くて、「ああ、彼女が紅緒さんをやるのだったらこんな感じだったのか……」と幻を見せてくれます。
紅緒さんが真ん中で怒られているときも、上手で「ああ、先生の話なんか聞いてられない」って感じであくびしたり、一人だけ列から飛び出したり、後ろでもやんちゃをしております。かわいい。
このとき持っている巾着(当世風にいうとカゴバック?)をずっと両手でもっているのも愛しい。
他の女学生は片手で持ったり、持ち替えたりしているのですが、基本的にあわちゃんは両手もち。
きっと中には大切なものが入っているのでしょう。
例えばご贔屓の写真とかw
女学生にはありがちですよね。今でも職場の机が舞台写真ばかりの私がいうのもあれですが。
はあー! もうー! すごくかわいいんです。
浅草の場面はライブ中継のときにはあまりわかりませんでしたが、思っていた以上に舞台に役者がいましたし、それぞれががいろいろなお芝居をしていて、とても楽しかったです。
あわちゃんはモダンガールとしてモダンボーイのボーイフレンドとおぼしき人と一緒に田谷力三、原信子のオペラを観劇しております。
これまた田谷力三の大ファンのようで、握手をしている時間が長かったです。
そしてそれをモダンボーイにとがめられているようでした。
困らせながら下手にはけるあわちゃんがとてもかわいかったです。紅緒さんやんけ。すてき。
ラスト、紅緒さんと少尉が桜を見上げている場面でも女学生たちは後ろに出てきます。
いちゃついている二人を思わず見てしまうあわちゃん、二人がキスをしたときに「あー!」みたいな顔をするあわちゃん、そしてそれを「見ちゃダメ!」と引き留める都姫ここちゃん、もう二人のやりとりが可愛くてたまらない。
はちゃめちゃに可愛いよ。語彙力がなくなる勢いです。
この二人のシンメトリーとか見てみたいな。
劇団のえらい人! 頼むよ!
伊集院家のメイドはたくさんいるから見つけられない!と思う人もいるかもしれませんが、前髪がある子です。
ここでもとても可愛かったのは、如月が紅緒さんの言動に対して取り乱しているとき、周りの執事やメイドは慌てて如月に近づいて手であおぐのですが、あわちゃんメイドはちゃっかり自分のこともあおいでいます。
そうね、メイドも驚いちゃうよね、あんなもんぺの娘が突然やってきたらね、って感じ。
こういうところを見ると、あわちゃんの紅緒さんも見たかったと思う。
彼女はどうやってもんぺを着たのだろう……(そこかよ)。
1幕終わりの方。ロシアに出兵することを新聞売りの少年が「号外!」と教えてくれる場面では、モダンガールとして登場。
ここではさおた組長と一緒に新聞を見ています。
組長、2幕ではバリバリの悪役なのに、ここではまるであわちゃんと父娘のよう。
ところで新聞売りの少年は宝塚の芝居によく出てくるというツイートを見て、なるほど花売り娘もだな、と思うなどいたしました。
あわちゃんがとても可愛かったです。これからも応援していきたいと思います。
さて、その他に気になるところです。
オープニングの「大正浪漫恋歌」には催涙ガスでも入っているのでしょうか。
「風の誓い」もそうですが、この場面はいつも泣く。涙失くしてこのオープニングは見られない。すごい。
2番の編集長(瀬戸かずや)、鬼島(水美舞斗)、高屋敷(永久輝せあ)、蘭丸(聖乃あすか)、環(音くり寿)のところは戦隊もののようでしたね。
真ん中が女嫌い、けれども一番環が強いというグループになります。
肉弾戦は鬼島で、知力を編集長と高屋敷でわけあい、蘭丸と環が色仕掛要員でしょうか。
おもしろそうです。これはラスボスが紅緒さんのパターンや。
これはもう最初から好きな演出なのですが、環と蘭丸との間に同盟が成立する場面において、徳利をもっているのが環、お猪口をもっているのが蘭丸というのがいいですね。
女性が大きい方をもっているというのが。
実際原作でも環はかなりの酒乱ですし(笑)。べろんべろんになっている姿が見たい人はぜひ漫画を読んでください。
環に関して言えば、初演のしろきみちゃん(城妃美玲)の環が高屋敷をかるーくあしらう感じの扱いをしていたのに対して、おとくりちゃんの環は、ちょっと引いているという感じに変わっていますね。
環に対して「すげー美人!」という編集部員の台詞もカットされていたし(まだいう)、原作に近い演出をしているのは初演なのだろうなあ。なぜ変えたのだろう。
再演版は鬼島とくっつくのも早いですよね。紅緒さんと編集長の結婚式のときにはもすでに仲良しでした。
結婚式といえば、紅緒さんのお父さんと吉次さんが、地震のときに一緒にいましたね。
まったくもう! ちゃっかりさんめ!
父親が吉次さんを先導していて、吉次さんもそれに小さく頭を下げて付き従っているという様子がもう……。
原作好きとしてはたまん。
ありがとう、小柳先生。にくいわね。素敵です。
果たして初演からこういう演出だったのでしょうか。
少尉がシベリアで紅緒さんの写真をみんなに見せて、鬼島が「こ、これはなんというか……」と言葉を濁したときに、「実物はかわいいんだ」という少尉の台詞がありますね。
この台詞を余裕たっぷりに言うのか、それともムキになって言うのか、解釈や好みがわかれるところかなと思われます。
個人的には余裕たっぷりに言ってくれると嬉しいのだけれども。
初演はそうでしたが、今回はちょっとムキになって、しかもそのあと早口になっていましたね。まあ、オタクあるあるですがw
それにしても少尉はいったいどんな写真を見せたのか。
次回の花組の宝塚の殿堂が楽しみで仕方がありません。
話には聞いていた大劇場公演との変更点。園遊会の場面で、蘭丸に怒りをぶつける伊集院伯爵から紅緒さんを守ろうと遠ざけようとする少尉の努力もむなしく、当の本人である紅緒さんは、少尉の足を踏んで「邪魔だ、どけ!」という感じになっていました。
さすが紅緒さん、はいからさんはそうでなくてはいけないね。
まるでバッディでした。素敵です。
それかららいとくん(希波らいと)の力量はすごいですね。下級生の中でもA日程、B日程両方出ているのですが、お芝居がちゃんとできているな、かたいな、という印象を受けました。
将来が楽しみな役者ですね。期待できる子がいるのはよいことであるだけに、新人公演がないのが残念です。
郡舞でもすぐに見つかるというスタイルお化け。
下級生といえばもう一人、都姫ここちゃんもとても愛らしい。
オレンジの振袖はまぶしいばかりで、髪形も大変工夫されている。
おさげやハーフアップの髪形が多い中、まとめ髪をしているので、大変目立つ。
芸者さん、記者さんのところもすぐに見つけることができました。
前回、新人公演もやりましたし、期待の下級生です。あわちゃんと同じ104期!
2幕狸小路伯爵邸では、一番上手にいるのですが、「ほんと、狸の話なんて聞いてられない!」と列からはぐれていくのを、おそらく同社の男の記者だと思われる人に、こらこらと止められています。
あわちゃんの女学生を連想させておもしろい。
1幕終わり、白い喪服で出てきた紅緒さんと黒いドレスの環の対照がとてもいい。
言葉はないけれども、「大丈夫? 無理しないでね」「うん、ありがとう」と話をしているだろうことがジェスチャーだけでわかる。すごい。
環から紅緒さんを抱きしめに行くのもよい。胸アツ。激アツ。同期愛。
このとき下手花道では倒れている少尉をラリサが発見しているのです。
いつせりあがって来たのか、結局わからなかったぜ……。
2幕、少尉が反政府主義者のたまり場になっているカフェの場所を、なぜか監視のついていない高屋敷に聞き出す場面。
いろいろなところに反政府主義者が隠れていますし、上からはさおた組長がじっと二人を見つめています。
もう目で殺すってこういうことをいうのねって感じ。
ここは映像には映らないだろうなあ。
大道具の関係もあり、隠れている反政府主義者たちもいい仕事をしていました。
デュエットダンスも本当にいつ見ても素敵。可愛らしくてこっちがはげそう。
華ちゃん(華優希)が先にしかけて悪戯をして、それをおいかけるれいちゃん(柚香光)みたいな構図が最高すぎてだな……。
先を行く華ちゃんの手を引いて抱きしめるとか本当にもう紅緒さんそのまんまじゃないですか、少尉そのままじゃないですか。貴すぎる……。
こういうデュエットダンスって今まであんまり見たことがなかったような気がするのですが、どうでしょう。
娘役が先に動き出す、というか、男役主導ではないというか。
ちょっと気になるのはれいちゃんが濃い赤リップであるということかな。
少尉と紅緒さんの結婚式だという話だからなあ。
でも郡舞のあとだし、そのあとパレードもあるし、忙しいから、そこまで手が回らないのかもしれません。
高屋敷は自分のことを「大正時代の森鴎外か、夏目漱石か」と言うけれども、この二人の文豪はまったく作風の異なる人なので、一体高屋敷がどういう作風を得意としているのかわからないのですが、書き上げたのが『はいからさんが通る』というのだから、もう完全に大衆小説なのでは?という気もしないではない。
結局二人とは全然違う作品を作り上げる。まあ、これもいいでしょう。
はいからさんの挿絵のあった『魔風恋風』という新聞連載小説は小杉天外、ゾライズムのフランス系と考えれば、ドイツ系の森鴎外とイギリス系の夏目漱石とは確かに違うな、という感じです。
娘役オンリーのダンスシーンがあるのも超絶嬉しいフィナーレ。
男役も出ては来るけれども、娘役のダンスのお相手というよりは、支え程度ですね。
『はいからさんが通る』という少女漫画が原作の作品だからこそできることなのかもしれませんが、こういうのが増えるといいなあ。
『Ray』にもありましたよね、ブルーのドレスで娘役が銀橋ずらりというのが。
しかしその一方で、男役1人が娘役をずらーっとはべらせているショーも好きなので、悩ましい。
1本ものだと両方をショーに盛り込むのは難しいのでしょう。
郡舞はみなさん、どちらがお好きなのでしょうか。
タキシードはTHE正統派って感じ。ダンスの花組らしく、そして踊りを得意とするれいちゃんによるクラシカルな宝塚の男役の群舞です。
軍服はなんていうか、もうこれ完全にオタクの好きなやつやなって感じ。
きっと小柳先生が見たいと思うものを詰め込んだのでしょうw
性癖に刺さる人はものすごく刺さると思う。刺さって病むレベルだとさえ思う。
私は映像で見たときはどちらともそれほど刺さらなかったのですが(もともとあまり群舞で刺さらない人)、マチネでタキシードを見たときに「おお! これは!」と気持ちが前のめりになりまして、ぐっと迫るものがあったのですが、軍服はとにかく音楽が改めて心に刺さり、ヴィジュアルも最高で、私は結局どちらかを選ぶことができませぬ……。
ラフマニノフって反則やろって思うし、でも帽子だとお顔が見えないとも思うし、ああ幸せな悩みである。
残りの公演も無事にできることを全力でお祈りいたします……っ!