ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

宙組『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』感想

宙組公演

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Musical『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』
作・演出/植田景子

アー! もう! どうして! 誰も教えてくれなかったのですか! ビリヤードの場面!!!
私はあの場面が一番萌えましたね、最高でしたね。
1幕S4「The first night-はじまりの夜ー(Dining Bar)」ですってよ、奥さん!
はちゃめちゃにすごかった。あれだけで1時間見ていられる。最高だ。格好良かった。
一緒に見ていた夫は「ビリヤード台はないんだね?」と言っていたけれども、キューだけで十分!
ビリヤードやっているのわかるんだから大丈夫!
あのキューの使い方も神がかっていた。振付を考えた人は天才だな!
大石裕香先生、天才だよ!
みんなベスト姿で、ビリヤード特有の音もあって、サイコーだった。すばらしいタンゴだった。
ライブ配信だったから、「格好良くない?」「格好良い!」「すんばらC~!」と三段活用を声に出してしまいました。
もちろんクレッシェンドです。
『ダル・レークの恋』の2幕のサイコロを使った賭けを思い出しました。あれも好きだったが、今回の方が好き。
私自身は全くビリヤードなんかできないだろうが(そもそもやったことがない)、あの格好良さはわかるぞ。
ロベルトとヘルマンがビリヤードに強いことくらいはわかるぞ。
もう本当に頭抱えるほどみんな格好良かった。本当に、好き……ああいうの……たまらん……。
あの高身長の人たちがベスト姿でキューもってダンスするってそれだけで優勝だろうに。
まあ、どちらが勝ったのかはよくわからなかったんですけどね!
いいんです、格好良ければ。

まかぜさん(真風涼帆)は本当にスーツのよくお似合いになる方で……なんといったらいいのかわからないくらい似合っている。
前世はスーツを最初に発明した人なんじゃないかくらいいには思っている。
自分に似合う服を探究していたんでしょ? そうでしょ?って詰め寄りたい(迷惑)。
オーシャンズ11』のときはジャケットの中がてろんとしていましたが、今回はYシャツにネクタイとカチッとしているのも個人的にはポイントが高い。すごい。スーツ似合う。足長い。
好みだけでいうなら、濃いブルーというか明るいネービーに白のストライプの三つ揃えが一番好きだったよ、好き好き大好き。
ききちゃん(芹香斗亜)のベージュもよく似合っていた。
そうか、こういう色味もあるのかとはっ!とさせられたくらいです。
民間人が二重スパイをやるというのもすごい話ですが、彼ならやってくれるでしょう。
出てきたときからそういう説得力もありました。

ららちゃん(遥羽らら)のアルマはさすがでしたね~!
昔の想い人であるラディックの話をするときだけ、まるで別人のようであったけれども、むしろアルマにとってはこちらが本当の気持ちなんですよね、わかるよ、わかる。
アルマもある意味「人生という舞台を生きている人」という感じがしましたね。
本当のアルマは、大学でヴァイオリンを弾いて、ラディックと共にあった時代で時が止まっているのかもしれません。
ヘルマンもそれをよくわかっている。だから深追いしない。
二人には幸せになってほしいと思う。
思うけれども「芸術を愛する同士」になってしまった以上、この先ロマンはない、と夫は言う。
なんて夢のない話。でも、どこかでアルマの時間が動き出して、固い氷が解けて、ヘルマンと手を取り合ってもいいんじゃないかなと思いました。
あとアルマの素敵だったところは、娘役には珍しいパンツスタイルを美しくはきこなしていたところですね!
オープニングではヘルマンと一緒に歌も歌いましたし(潤花ちゃんはなかったね……)、重要な役どころをすばらしく演じてくれました。ありがとう。貴重な娘役です。劇団さん、頼むよ!

ラディックといえば、しどりゅー(紫藤りゅう)。
出てきたのは2幕で、1幕では仕事の上でロベルトを導いてくれたネイサン・ヒューズとして登場。
顔が美しいあまり、おひげがなんとなく悩ましかったですが、ラディックとしての登場は、亡命者ということもあり、もっとおひげがすごかった。
いっそあれくらいやると、別物になるのでしょう。
ヘルマンとアルマの回想シーンのラディックは大学時代のお姿で、これが一番美しさを余すところなく発揮している場面でした。素敵。

ロベルトは、アムスベルク伯爵と愛人バレエダンサーとの間の子供で、7歳で母が亡くなるまでは母親のもとで生活していた様子でした。
出産後、ダンサーには戻れなかった母親はそれでもダンスに関わる仕事がしたいと思い、バレエの舞台裏の仕事をする。
だからロベルトの遊び場はそのバレエの舞台裏だったと、ニーナに語る。
7歳までの生活費を伯爵は母親に送金していたのでしょうか。
こういうのって、ありがちな話だと、父親はまともに養育費を払っていないですよね。
でも母親が死んですぐに伯爵のもとに引き取られたから、この父親は少しは送金していたのでしょうか。
生活のあまりの違いに、ロベルトは父親に反感をもたなかったのでしょうか。
7歳って難しいよな……まだ子供だからわからないというほどではないし、明確に「母を愛人にした人」と憎むには大人ではないだろうし。
でも伯爵はよく面倒みてくれたらしく(おそらく正妻に男の子が生まれなかったからだろうと想像されますが)、避暑地としてホテルスヴィッツラハウスには来ていたようで。
ペーターと父の話をするときもそれほど嫌ではなさそうなのがちょっと気になりました。
もっとも大学に行く頃には、すでに家のことを気にしている場合ではなく、戦争の影が色濃くなっていたでしょうから、そんなことを気に掛ける暇もなかったのかもしれません。
ひょっとすると祖国がなくなるかもしれない、というところまで来ていたはずですし、実際舞台上での時間軸ではオランダはドイツに占領されていた。
イギリスのオランダ大使館に勤めているということですが、言ってみれば存在しない国の大使館ですからね。
これはなかなかキツイ。父親が嫌だと言っていられる状態ではないことは、頭のいいロベルトならわかったことでしょう。

というか、ペーターのまっぷぅさん(松風輝)、良かったですよね。
前回の梅田公演『サパ』に引き続き、安心安定でした。
その場で何かが起こっても、まっぷぅさんがいれば、とりあえずなんとかしてくれそう!という気持ちになります。
月組ではやす(佳城葵)がそのタイプですね。
各組に一人はそういう人がいてくださると、見ているこちらも安心します。
シーソーもびっくりの抜群の安定感。バランス感覚が優れている。
配役の妙ですね。

登場した瞬間から相変わらずスタイルお化け!と思わせるもえこ(瑠風輝)はロベルトの助手のエーリク役。
以前にもロベルトと一緒に仕事をしたことがあるようで、ロベルトを尊敬している。
そのあたりの話、もうちょっとお姉さんに聞かせて欲しい、番外編が欲しいとも思わせるほど魅力的。
チューリヒに向かったことをロベルトがリチャードに話したときは「消されるのでは?」と思いましたが、無事に戻ってきてくれましたね、ありがとうございます。
エーリクにはぜひ仕事もなにもかも投げ出したくなるような恋をしてもらおうではないですか!
こちらもまた続きが気になる人です。
余白のある人といえば出てきませんが、エヴァの恋人もいい人ですよね。
「子供のおじいちゃんを犯罪者にしてはいけない」ってなかなか言えるものではないですよ。
出てこなかったのが惜しいくらいすばらしい人物だと思いました。

瀬戸花まりもさすがのジャズシンガーでしたね。プロローグでは戦争説明のアナウンスもやっていました。
なんとなく『サパ』を思い出したのは私だけでしょうか。
スウェーデン大使夫人として出てくるときはかつらを変えても良かったのでは?と思いましたが、時間がなかったのでしょうか。
また歌声にほれぼれさせてくれるのかと思ってしまいました。
でもああいうちょっとした客の役でも魅せられるのはうまいよなあ、と。雪組あいみちゃんもそうですが。

ユーリ―が最初にジョルジュに電話している場面は、舞台の一体どこで行われているのかが、気になってしまい(カメラがアップになっていて、そのあとすぐに舞台がホテルのフロントだったような)内容がいまいち頭に入ってこなかったのですが、ジョルジュを助け出したかったんだな、と2幕でようやく気が付きました。
このユーリ―とジョルジュの描き方が秀逸でしたね。
ツイッターでもポロっとつぶやいたらお二方からリプライをいただき、やはりすばらしかったのだな、と再確認しました。
バレエダンサーというよりも芸術家には比較的に同性愛者は多いのでしょう。
その二人がラブラブで、いちゃついていたとしても、周りが冷やかすことなかったのが印象的でした。
ユーリ―に相手にされなくてふくれている女性ダンサーはいましたが(笑)、これは男女のカップルでもよくあることでしょう。
描き過ぎていないし、茶化してもいない。すばらしい演出だったと思います。

その一方で、やはり景子先生、説明的だなと思うところがいくつか……。
個人的には、父親の話をするエヴァの台詞(国家権力の前に個人の抵抗が虚しいのはわかった)、捕まった後のリチャードの台詞(権力を失うのが怖かったのはわかった)、バレエ団にお礼を言うマダム・マーサの台詞(息子が死んだ世界で生きている意味が見つけられないのはわかった)なんかが説明的だったな、と。
演者の芝居で十分わかっているよ! 大丈夫だよ! 演者と観客をもっと信頼してあげて!
あと西暦の年号がたくさん出てきたのもちょっと違和感でした。
日常会話であんまり西暦で「2020年」とか言わないですからね。
イリアム・テルが誰あるか、ということも、話の肝かもしれませんが、スターシステムを取っている以上、誰であるかということは明白では?と思ってしまったので、そこもちょっとカットしてもいいのではないかと思いますが、スターシステムを取っているからこそ、見せ場として必要だという意見もあるだろうなと。
このあたりはバランスが難しいですね。
ただやはり全体的にはやや台詞が多いように感じられ、もうちょっと余韻に浸りたいな、と。
あと、このメンバーだから、もうちょっと豪華なフィナーレが見たいな!!と強く思ったわけですよ。
これまた『ダル・レークの恋』のときにはたくさんフィナーレを頂戴して、うれしかった身なもので。
もっとも『ダル・レークの恋』はもともと1幕だったものを2幕ものにした、ということで時間に余裕があるというのはわかるのですけれども。
踊るとよくわかるあの高身長とあの長い足を堪能したいじゃないですか(真顔)。
抜けがないあたりはプロットがしっかりしているんだな、さすがだなと思わせますし、『アナスタシア』や『PRINCE OF ROSES』のように台詞が足りない!と感じるよりはいくらかマシなのですが、いい塩梅というのは難しいのでしょう。
今のコロナパンデミックの時代だからこそ、あらゆる台詞が刺さった!という人がいるのもわかります。
だから好みの問題もあるのでしょう。

その他に気になったのは、海外ミュージカルではないわりに英語が多いなあ、と。
プログラムのシーン別タイトルは世界観の統一もあるからわかるのですが、主題歌はサビに入ると逐一英語が出てきましたよね。
そういう点で『神々の土地』なんかは全部日本語で、でもちゃんとロシアということがわかって、すごいなあと。
個人的に英語が苦手ということもあるのかもしれませんが、プログラムに書いてある曲のタイトルも前部英語で、歌詞のサビが全部英語っていうのはなあ……なんだかもやりました。
それから「Chase the Truth(真実を追え)」は戦隊モノのようなメロディーでしたね。
「All for One」というフレーズも出てきたので、つい月組を思い出しました。

下級生では、シルヴィ役の春乃さくらちゃん、ジョルジュ役の泉堂成さん、客の女の愛未サラちゃんあたりが検討していましたね。
シルヴィは、それもニーナが歌ったわりとすぐあとにシルヴィの歌があるから、ニーナよりも歌がうまいのが目立ってしまったような気もしますが、こちらは潤花ちゃんの課題、のびしろということになりそうですね。
さくらちゃんの歌唱力、宙組のコーラス隊の力になって欲しいものです。
ジョルジュはもう一回跳んだだけで、なにその跳躍力!? え!?と目を丸くしてしまいましたよね。
期待のダンス力です。すごかったわ~。
サラちゃんは客の女という名前のないお役でしたが、台詞はちゃんとありましたね。
ユーリ―にサインを求めるときなんか、それほど高いヒールではなかったのに、並んだずんちゃん(桜木みなと)とほぼ同じくらいで、身長高いなあと感心しました。
あと画面のどこにいてもわかるあの美しいお顔。すばらしい。
これからの成長が楽しみな3人です。

何はともあれ、ビリヤードが素敵でした。思い返すのはその場面ばかり。