ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

花組『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp


ドラマ・ヒストリ『アウグストゥス-尊厳ある者-』
作・演出/田渕大輔

パッショネイト・ファンタジー『Cool Beast!!』
作・演出/藤井大介

公演プログラムの都姫ここちゃん、美羽愛ちゃん、美里玲菜ちゃんのお写真が新しくなっていてホクホクしました。
ここちゃんは愛らしい娘役、あわちゃんは明るく元気な娘役、れいなちゃんは可憐な娘役って感じです。
あー可愛い。花娘たちが本当に可愛い。
ついでに公演プログラムといえば、生徒さんたちの文章は一体どなたが編集しているのでしょうか。
今回はとくに読点の位置が気になってしまった……推敲ならするよ、500円でするよ。

そんなわけで華優希のサヨナラ公演。
未だに夢だと思っている節がある上に、なぜか東京では開催されず、ライブ配信の日程さえまで発表されていない華ちゃんのミュージックサロンのチケットがとれなかったことに闇を抱えている人間としては、しんどいことこの上ないのですが、見てまいりました。
ああ、どうして辞めちゃうの。今から取り消してくれてもいいのよ。

ポンペイアというお役が、作品の中でもちゃんと意味のあるポジションにあったことにまずは安堵しました。
そんなことから心配される方がどうかしていると思いたいんだけどね。だって、ほら、たぶち先生だから。
復讐の塊であったポンペイアが、柚香光演じるオクタヴィウスとの出会いを通して、「人間として生きることの大切さ」を知る一連の流れは、繊細な芝居が求められますから、いわゆる宝塚の大袈裟な動きをすると、やりすぎて嘘っぽくなってしまう。
そこをいい塩梅で宝塚の芝居として確立させつつも、観客の心にしみわたる演技だったと思います。

私は特に「アクティウムの海戦」で女神のように現れ、風向きを変え、オクタヴィウスを勝利に導いたポンペイアが、マジ勝利の女神だな!という感じで大好きで、たぶんここを印象的な場面に挙げる人は多いと思うのですが、それと同じくらい好きな場面が、ウェスタ神殿でオクタヴィウスがレオノラから既にポンペイアが亡くなっていることを知らされた後、出てきたポンペイアがオクタヴィウスに「自分を大切に思ってくれる人の存在に気が付けなかった」と後悔している場面も大好きです。
ポンペイアは「自分を愛してくれたのは父親だけだった」と言います。けれども、自分が死んだあと、レオノラがどれだけ自分の死を悲しんだか、怒ったか、それを見て、生きているときには気が付かなかったけれども、自分は彼女にも間違いなく愛されていたんだということに気が付いたのでしょう。
レオノラは出番は2回しかないのですが、ポンペイアにとってとても重要な役で、オクタヴィウスももちろんポンペイアにとって大事な役なんだろうけれども、2回しか出てきていないレオノラが、その2回ともちゃんと意味があって、その2回がちゃんとつながるという意味では、レオノラの方が大きいような気さえする。
この2人の物語がどんどん膨らんでいく。

物語に描かれていない空白の物語を観客が想像して楽しむことができる芝居は、一般的にはいい芝居なのでしょうけれども、描くべきものが描かれていないから想像するしかない芝居との区別は難しいかもしれません。
今回もポンペイアとレオノラのやりとりはとても意味深く、それこそ神聖なものであるかもしれませんが、本来であるならば、主人公であるオクタヴィウスとポンペイアの関係がそうであるべきであって……なんというかそこは足りないのではないかと思ったのが今回の芝居でした。
主人公の描き方が足りない。言葉が足りない。
同じようなことを『アナスタシア』や『PRINCE OF ROSES』でも感じたのですが、物語を作るときのプロットというのは当然主人公を中心に考えていきますから、主人公について描き足りない、なんてことが本当に起こりうるのでしょうか、という疑問もあります。
突き詰めて言えば、プロットから甘かったのではないか、と。

オクタヴィウスがそれまでのカエサルアントニウス、ブルータスらとどう違うのか。
彼らとは一線を隠す存在だったからこそ、彼は「ローマ皇帝」となり「アウグストゥス」の称号をもらえたんですよね。
でも、それが全然伝わってこない。
彼らとどう違ったのか、例えば戦を好まない、ということはわかったけれども、それだけで民衆の支持が得られたとは思えない。
本当はそうであってほしいけれども、現実を見るとそうではないことはわかりきっているし、「パンとサーカス」で騙されていたあの民衆たちが「戦を好まない」という理由だけでオクタヴィウスを選ぶとは考えにくい。
そもそも尊厳者たる称号も一体誰から「与えられた」のかが不明瞭。
これは私の勉強不足もあるかもしれませんが、プログラムやチラシに「与えられた」と書いているにもかかわらず、「誰から」というのは書いていない。
これ、例えば、国語のテストの記述だったら×になるんでしょね。
きちんとその文章だけで完結させて、わかるように書かないといけない。

その一方で、レオノラと同じく出番がたくさんあるわけではないけれども鮮烈な印象を残したのは主人公のオクタヴィウスの姉オクタヴィア(音くり寿)でしょう。
もちろん彼女の演技力もあるのですが、プロットとして、最初は母の言いなりだったけれども、愛する婚約者に愛されない苦悩、遠い地での婚約者の死を経て、母に反抗し、自分のことは自分で決めるという、いわゆる近代的自我を獲得していく一連の流れは美しかった。
本当にすばらしかった。
ポンペイアとレオノラとオクタヴィアがすばらしい作品だったと思っている。
そしてポンペイアに続きはないけれども、オクタヴィアは生きているから続きがあって、アグリッパ(水美舞斗)と幸せになってくれ~!と思わせる。
ああ、まいてぃのアグリッパもとても良かったんだよ。
絶対にオクタヴィウスを裏切らない安定感が半端なかったよ。安心安定の逸材だよ。
「君がアティア様に逆らう日がくるなんて思わなかったよ」みたいなことをアグリッパが言って、そのあとオクタヴィウスの凱旋式に行くのですが、舞台からはけるときは一緒にはけたのに、凱旋式にはオクタヴィウスだけが最初に出てきてあとから遅れてアグリッパも出てくる。
これもよかった。一緒に出てきたら、ちょっと萎えていたかもしれないと思ったほど。
喪服を着ているオクタヴィウスの心をアグリッパが気遣っているのがよくわかる。
ああ、二人に幸あれ。

れいちゃんは演技ができる人だと思っているのですが、そのヴィジュアルから漫画原作ものが多く、ようやくつかんだオリジナル作品なのに、なんかうすぼんやりとしてた人物を与えられて、観客としてはなぜか申し訳ない気持ちにもなる……。
ショーの野獣に関しても同じなんですけれども、そういうのじゃなくて!と思っている観客もいるんですよ。
野性味がある、顔立ちがはっきりしている、それはそれですばらしいのですが、彼女の持ち味ってそれだけではないでしょう、と思ってしまうのです。なぜ劇団側が理解してくれないのか。

カエサル夏美よう)、クレオパトラ(凪七瑠海)、アントニウス(瀬戸かずや)、ブルータス(永久輝せあ)はそりゃもう抜群の安定感だったけれども、芝居の中でキャラクターの立ち位置は本当にそれでいいのだろうかと思うことがなきにしもあらず、という感じです。
特にあきらはこれで退団なのに、これでいいのか? ファンはどういう気持ちで見ているのだろう、と心配になりました。
だいたいにして二番手が、言ってみるならトップにならないのに退団する作品なのにトップスターに敗北するというのはどうなんでしょうね、と思ったところで『夢現無双』もそうだったなと思うなどして微妙な心境になったのですが……。
あのときは公演の客入りがいまいちだったにもかかわらず、みやちゃんのお茶会はものすごい数が集まって同じホテル内でライブ中継されたとかされなかったとかという話もあるくらいですからね。
今回はそのお茶会さえないのだから、ファンは公演に通うしかないんですよね。そういう意味ではなおつらいでしょう。

芝居に関して言えば「神々」というお役がよくわからず。
なんといっても私はあわちゃんが全日程出演な上に固有のお役までいただいたのだから狂喜乱舞してみていたのですが、公演開始前に発表された人物関係図では「神々(実は憎しみの化身)」という大きなネタバレが公式から発表されましたし、出てきたときはむしろ白い衣装の巫女さんたちが神々なのか?と思ったくらいで、あの黒い人たちは一体……。
最初から「憎しみ」というお役ではいけなかったのか。
「神」と崇められていたような人が「憎しみ」に支配されて、瞬く間に転身してしまう悲劇のさまを描きたいのなら、もっと描きようはあっただろうに、とか思ってしまう。
大好きなあわちゃんのお役だし、一生懸命あの強面のメイクを練習して、男役さんにまざって得意な踊りを披露していたのだから、なんとか!とは思うのですが、今のところ私の中ではなんともならないな……。

しかしショー『CoolBeast!!』ではあわちゃんの愛らしさがはじけ飛んでいたわけですが、もうしょっぱなから可愛いですね。
なに、あのミラーボールのようなマイクは。そもそもマイクなのかどうかも微妙ですが。もしかしてマラカスかな。
とにかくベリーキュート。あの髪形も最高。
空美咲ちゃんと一緒に出てくるけれども、やっぱりあわちゃんの方がかつらとか好みだなーと思うのです。
華ちゃんと一緒に舞台にいるときに、もうどっちを見たらいいかわからなくてオペラが迷子。とにかくかわいい。
オープニングで華ちゃんが銀橋センター、あわちゃんが舞台奥センター階段にいるときはどちらも見れて眼福。

美穂圭子さんとくりすちゃんのラヴェルの「水の戯れ」を歌い継ぐところや、中詰歌バトルは最高。こちらは耳福。
中詰のお衣装はもっとどうにかならんのかい、と思うけれども。
私、中詰との相性悪いのではないか?と思うほどなんだけど、ダイスケ先生の『EXCITER!!』の中詰は好きなんだよね。
同じ先生のはずなんだけどな。

ラヴェルの「水の戯れ」の場面の華ちゃん、超かわいい。ソーキュート。ほんとダメ。可愛すぎる。
あのラベンダーのベールもラベンダーのお衣装もかつらも好き。すべてがかわいい。
野獣や、食べてはいけませんよ。
そして人間さえ魅了するあの美しい華よ、われわれの華ちゃんよ。

結婚式の場面は、かわいいけれども、実は全体の流れの中ではポジションがよくわからないな、と思っているけれども、まあとりあえず可愛いからよし!
場面の切り替えやお衣装替えでそういう場面も必要なんだろうからよし!
あわちゃんがかわいいいいいいいいい。
ナイトライフも生死を駆けた食べ物の争いで、なぜその曲wとは思ったけれども、男役さんは格好良かったし、娘役さんは美猫だったからこれもよし!
ポルノグラフィティは世代なものですから、学生時代によく聞いていた。
フィナーレで使われていた「ジョバイロ」あたりまでなら全曲わかる。
そして本家よりも色気のあるジョバイロとは。
まあ、もともと本家は色気で売り出していないからな。あきらや娘役ちゃんたちの色気、やばかった。
あわちゃんの色気……あのドレスも素敵でしたね。

華ちゃんは、たぶん『BEAUTIFUL GARDEN』で仙名のゆきちゃんがデュエットダンスで着ていたドレスを着て銀橋を渡る場面がありましたが、華ちゃんのサヨナラ公演なんだから、もっと華ちゃんの出番があってもいいのではな?と思いながら見ていました。
ダイスケ先生は、なぜか男役に娘役の格好をさせたがりますが、一方でトップ娘役はきちんと起用してくれる先生だったと思っていただけに残念。
れい華のデュエットダンスはそりゃもう素敵だったけれども、もっといろいろな華ちゃんが見たかったよ。
デュエットダンスの後ろで歌っている圭子さんとかちゃさんも素敵でした。絶品。

花組は前楽日を観劇できることになっているのですが、月組はダメでした。
おそるべし、たまきち……たまきちのサヨナラショーも見たかったなあ。
どこからかチケットがわいて出てこないかなあ。