ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

雪組『ヴェネチアの紋章』『ル・ポァゾン 愛の媚薬 -Again-』感想

雪組公演

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ミュージカル・ロマン『ヴェネチアの紋章』
原作/塩野 七生『小説イタリア・ルネサンス1 ヴェネツィア』(新潮文庫刊)
脚本/柴田侑宏  演出/謝珠栄

ロマンチック・レビュー『ル・ポァゾン 愛の媚薬 -Again-』
作・演出/岡田敬二

お前、いつの話してんだよ……と思われそうですが、月組の大劇場ショーの感想よりはこちらが先かな、と。
母親がなつめさん(大浦みずき)も大ファンでしたので、なんとなーく見た記憶はあるのですが、なんとなーくで、よくは覚えておりません。
30年振りの再演ですので、いろいろ改変はあるでしょうなあ、と思っておりましたが、歌詞はそのままで楽曲の変更となるとは思いませんでした。そんなことができるのね、すごいわ。
それにしてもあのラストの改変はいかに……。
謝先生は、「二人の間にできた愛娘の存在」を明かすことで、「二人の愛の未来は存続した」ことになると言いますが、本当にそうですかね?
例えば、うえくみ先生の作品ではギィとタルハーミネの間に、晴興と泉の間に、正行と弁内侍の間に子供はできませんが、二人の愛を観客は感じることができるもではないでしょうか。ええ、トップコンビの間には無慈悲といえるくらい子供がうまれないんですよ、うえくみ先生の作品は。
初演はアルヴィーゼに似た男性とリヴィアに似た女性がカーニバルで踊っているところをマルコが見て、終わり!だったと思うのですが、そっちの方が余韻があったかなーと。

マルコがリヴィアの娘と結婚しようというのも、原作にあるようですが、芝居の中では唐突のように思いました。
もちろん、リヴィアの娘が尼僧院から出るためには結婚しかなく、貴族と結婚すれば、アルヴィーゼが欲しくて欲しくてたまらなくて最後まで手に入らなかった貴族の紋章を与えることができる。
でもそれをリヴィアの娘が望むのだろうか。
リヴィア自身は望まない結婚をして、悶々とした10年を送ったのに、貴族とさえ結婚すれば娘が幸せになると思っているのでしょうか。
カトリックなのに、わりとあっさりとプリウリとリヴィアとは離婚できたなと思ったのですが、カトリックでは基本的には離婚できないですし……。
リヴィアが最期に言うべきだったのは「尼僧院に預けてある娘に、アルヴィーゼから合図としてもらった指輪を渡してほしい」ということで、マルコがリヴィアに会って思うべきだったのは「この子が大人になるころには、好きな人と結婚できる世の中にしよう」ということだったのではないですかね。
アルヴィーゼとリヴィアの二人が望んだことって、まさに「どんな身分であれ好きな人と結婚すること」じゃないですか。
別に貴族の紋章をリヴィアは望んでいない、アルヴィーゼだけだよ。
上記のことがとっても気になってしまい、2回目3回目の観劇でも魚の小骨がのどにひかかったような漢字でいまいち泣けなかった。いや、泣いている人が多かったからさ……。
天国エンドはありがちですし、まるく収めるための定石かとも思いますが、プロローグとの対応も考えるとなあ……やはり全員集合しているところによく似たカップルが出てくるという方が今回については、まとまりがよかったように思います。

もっとも、プロローグはよかったですね~!
抽象的な青い影たちが物語を誘導し、主人公アルヴィーゼが登場して歌い、リヴィアがゴンドラから登場(愛知のホールは奥行きがかなりあって、奥のゴンドラの説得力が増します!)、そこから全員(青い影だったキャラクターの早着替え、お疲れ様! あみちゃんはダンスでわかるで!)舞台に大集合というのは、いかにもいかにも宝塚という感じで、全国ツアー向きだったと思います。
全国ツアーやはり初めて宝塚を見る人もいるでしょうから、掴みって大事ですからね。
どうせだったら、カーニバルという設定で全員集合すればよかったのに~!と思いこそすれ、些末なことです。ラストもカーニバルで対応させれば1年経ったことがわかりますが、そういえば時間軸はよくわかりませんでしたね。
色とりどりのドレス、豪華な大道具、美しいタカラジェンヌたち! たまんね~!
アルヴィーゼ役の咲ちゃん(彩風咲奈)のスタイルお化け具合もすごい。トップスターになってまた足が伸びた?
タカラジェンヌとしての圧倒的な説得力よ。すばらしい。

リヴィアとのモレッカも圧倒的な宝塚の世界の美しさを体現しているように思いました。はあ、すばらしい。ため息が出るわいのう。
もっともモレッカで「情熱的だった」と言われるリヴィアは、それまでにもっと冷静沈着であるという設定を全面に押し出してもよかったとも思いますが、きわちゃん(朝月希和)のドレスさばきもすばらしくてね。
ドレスの裾が前後に揺れず、すすすーと前にだけ進む。すごい。あの輪っかのドレスで。なんでもできる娘役や。オールラウンダーや。頼もしすぎる。系統としては白羽ゆり野々すみ花彩乃かなみあたりでしょうか。
アルヴィーゼとリヴィアは息をするようにチューをして、いちゃいちゃして、それはそれでいいのですが(見ているこっちは恥ずかしいのですがw)、二人とも過去ばかり見ているのがちと気になる。今のお互いをお互いがどう思っているんだよ!とは思いましたね。
二人とも過去に縋り付いているように見える。過去の夢を追っている。亡霊では勝ち目がないことは『桜嵐記』でも同じことである。
コンスタンチノープルに来たリヴィアは「コンスタンチノープル一の商人であるアルヴィーゼの妻であるだけでいい」と言い、ここではちょっと地に足の着いた感じがありますが、アルヴィーゼはそれを振り払って過去の夢を追いかけていってしまうし。
いや、男のロマンは悲劇だな。
もう十分だっていっているじゃないか、人の話を聞いてくれよ。
そう思ってしまうから、アルヴィーゼの後を追い、白い蝶になったリヴィアに共感できないのかな。

マルコは、アルヴィーゼとモレッカを踊るのを見て「あんなに情熱的なプリウリの奥方は見たことがない!」という一方で、アルヴィーゼとの関係には気が付かない。
それより前にオリンピアに、アルヴィーゼに想い人がいるらしいことを聴いていたのに、気が付かない。
モレッカの後のアルヴィーゼの寂寥を見ても、気が付かない。
そもそも10年前にアルヴィーゼがヴェネチアを出た理由にも気が付かない。
とにかくマルコが鈍いというかどんくさいというか、貴族のボンボンにありがちな無神経というか、そう見えてしまうのがちょっともったいないなあ、と。
あやなちゃん(綾凰華)の演技がロイヤルで、これまた美しくて、咲ちゃんとの並びもバランスがいいから、あんまり気にならない人もいるかもしれないけれども、久しぶりに会ったアルヴィーゼに対して「政治家になっていれば」と言ってみたり、はぐれ組に対しても「どれも名門貴族だ~!」と言ってみたり、おい、そりゃちょっと無神経なのでは……?と肝を冷やしたよ。
いかにも貴族のボンという感じはするんですけど、ね~。
それほど鈍ちんのマルコは、これまた息をするようにオリンピアとチューしまくりますが、オリンピアに騙されていないか、不安になりますな。
あとマルコの台詞が説明的すぎるのが、ちと気になる。

まなはるのアルヴィーゼパパもよかった。組長が貴族で一番偉い人ではないというのも新鮮で、あとでまなはるを追い詰めるのも楽しそうでした。
「アルヴィーゼはヴェネチアとは無関係な人間である。無関係な人間のためにヴェネチアは兵を……出せないっ!」というのは苦しかったですね。
最後の「ヴェネチアは兵を出せない(出さない)」だけでもよさそうなのに、前の一文を入れないと、言葉が続かないのでしょう。
息子を自分の国と無関係であると言わねばならぬ父の心境とはいかに。つらかろう。くのうのまなはる。かわいい。

結婚は望まないけれども、貴族の舞踏会には興味があるというオリンピア、あの場面転換は美しかった。
青の影と踊りながら、少しずつ貴族たちが出てきて、舞踏会に変わっている。
思えば『ほんものの魔法使い』では場面転換が気になったというのもあるんだよな。暗転が多すぎた。

咲ちゃんのプレお披露目ということで、新生雪組の新しい歌姫として希良々うみちゃんにも大注目! ともか~!
義経妖狐夢幻桜』のシズカ以来注目していましたが、ここにきてすばらしい歌声、演技、ダンスを見せてくれました。
レミーネ、とてもよかったです。もうレミーネが出てくると、レミーネしか目に入らない。ほかで何が起こっているのか全くわからない。
紫のダンスのお衣装も大変すばらしかったし、2回目に出てきたときの緑のお衣装もエキゾチックでよかった。
「男性が女性を仲間だというときは、その女性に魅力を感じていないということですわ」「ほら、魅力的な方があちらに」「それでもあなたが好きですわ」はあ~! 好き! そろそろスチール写真出してやってくれ~! 劇団、頼む~! 『うたかたの恋』のマリンカとか、『はばたけ黄金の翼』のロドミアとか、そういう役がもっと見てみたいぞ。
100期だし、新人公演はどうなるかな。
仙名の彩世を連想させる格好良さです。好き。クールな娘役トップがいてもいいじゃない~!
今回はエトワールをやってもよかったのでは?と思う。
ありすちゃんとはタイプの違う歌姫であることも心強い。

エトワールを演じたありすちゃん(有栖妃華)も、もちろんすばらしかった。
プロローグの歌姫、よかったわ~。リヴィアの娘もかわいかったわ~。
そしてエンリコのあみちゃん(彩海せら)との並びも、超キュート。最高だった。いくらでも見て居られるわ。緑のカップル、最高だったわ。美しい。うたうま。
ありすちゃんは、ゆきのちゃん(妃華ゆきの)とりさ(星南のぞみ)とともに遊女という設定でしたが、遊女のわりにはわりと軽率に結婚願望があるのは、おや?と。
オリンピアがそのあたりを諦めているのは現実的だなと思いましたが、スパイなら、そりゃそうよね~と。
はぐれ組は貴族の血を継いでいるとはいえ、嫡流ではないのだから、結婚しても貴族にはなれないし、3人は何を求めているのやら、これまた脚本に謎が深まる。
そしてゆきのちゃん、できるんだから劇団側はもっと有効活用してあげて~! こちらもまた頼む~!
はぐれ組のすわっち(諏訪さき)、はいちゃん(眞ノ宮るい)とあみちゃんはうたうま3人組で、もう「そのままYouたちデビューしちゃいなよ~!」と思いました。
下級生が光りまくっている。人数が半分だから、隅々まで眼が行き届く。いいわ。

下級生といえば、ヴェロニカ役の莉奈くるみちゃんもよかった。すごいよかった。
ちゃんと毎回笑いがとれていた。うっかりすると一人芝居みたいになってしらけるところ、ちゃんと回していた。
ショーでも見ていたわ。お相手の一禾あおのカシムもよかった。このカップル、なぜ幸せになれないの……。
音彩唯ちゃんは早くから注目されていましたが、ここでしっかり足場を固めた感じですし、カップルのお相手であった聖海由侑もひときわ輝いて見せました。セバスチャーノとラウドミアはこの話で唯一生き残った幸せなカップルですし、これからの二人にも幸あれ……。
これで『ほんものの魔法使い』組も合流したら、雪組はどうなってしまうのでしょうか。
男役も娘役も豊富ですなあ、安泰ですわ。

ロクサーナのあんこ(杏野このみ)もよかった……っ!
『fff』のナポレオンの后ジョセフィーヌに続く王妃の役でしたが、圧倒的な存在感。強い。
またあのトルコの衣装がまたよく似合う。すごいな。奴隷上がりの王妃よ。喋らなくてもいるだけで威圧感がある。たまらん。

サンマルコ殺人事件、物語の横糸としては必要なのかもしれませんが、いまいちうまく活かせていないような気もします。
このせいでマルコの説明台詞が多くなっているようにも思いますし。
芝居慣れしていない人にとってはちょうどいいのかな。そして警官はヴェネチアに殺されたのではなく、自分に殺されたのでは?と思う。だって強請っていたのはダメじゃないですかw
アルヴィーゼは主人公補正も入りますし、まあ、ヴェネチアに殺されたかなとは思うんですけどね。

月組『桜嵐記』と続いて見たので、心底「男のロマンと忠義は煮ても食えぬ」と思ったものです。
これを本当の男性に演じられた日にゃ、辟易するかもしれんな。『ダル・レークの恋』もそうですが、あれはまたちょっとタイプが違う。
男役の美学!みたいなものにあんまり興味がないらしい私ですが、でも女性が演じる意味ってあるよなあ。
本当に私はこんなところばかり理屈っぽくて、実は宝塚観劇向きではないのでは?と思うくらいなんですが、そこは譲れない。
全国ツアー(とはいえ、3か所しか回っていないですが)のわりにはセットも衣装も豪華で、とくに衣装は『ダル・レークの恋』だったり、『はばたけ黄金の翼』だったり、思い出すものが多く、ファンとしては嬉しい限りです。

ショー『ル・ポァゾン』はビデオ時代に涼風ファンだった私は擦り切れるほど見ましてね……。
どの場面でもかなめがちらついてしまう。もっとも、初観劇はかなめさんには間に合いませんでしたが。
プロローグで世界観の誘導、美しい歌姫の美声、舞台の真ん中にトップコンビ! 最高の構成だよ、何度見てもわくてかする構成だよ。ときめく。全国ツアーにはもってこいですね。
プロローグのともかの歌声がすばらしいのは言うまでもないですが、きわちゃんがここでにこりとも笑わないのが、またよくてですね。
娘役にありがちなトップスターの隣でにこにこしている、という構図、嫌いではないのですが、笑う理由があるか?と思うときもあって、きわちゃんは理由がないときはにこりともしない。愛想笑いをしない。すごい。「ナルシス・ノアール」の場面も然り。
ひたすら真顔でクールにスタイリッシュにきめている。格好良い。好き。こういうトップ娘役がいてもいいじゃなか。強い。ひたすらに強い。なんでもできるスーパー娘役だわ。 『BADDY』の「怒りのロケット」を思い出しました。

ともかが出てくる場面は、ともかしか見ていないし、あみちゃんが出てくると、オペラはあみちゃんをロックオンしてしまうのですが、娘役はほぼ把握したぞ!と思うくらい堪能しました。
りりちゃん、ありすちゃん、くるみちゃん、あやねちゃん、はばまい、娘役ちゃんたちがいっぱいだよ。可愛いよ。
「愛の歓び」では、竪琴の歌姫は夢白あやさんでしたが、ともかにしなかったのは、まあ、わかる。
亜麻色の鬘と薄いピンクの衣装は、あれだけクールな顔立ちのともかには悩ましいものがあったかと思います。
ともかがプロローグや中詰めといったひたすら格好いい場面の歌手起用なのは納得だし、大正解だし、これからもそれでよいと思う。
夢白さん、芝居ではあまり歌わなかったし、劇団としてはここで歌わせたかったのでしょう。
あとこの場面で気になるのは「白馬に乗った王子様が迎えに来る」ときわちゃんは歌うものの、実際には白鳥とともに咲ちゃんが登場しますし、当然白鳥に乗っているわけではなく、なんなら歩いて出てくるだけだし、何が何だかもう……ちょっとチープだよ! もっとなんとかならんのかい!とツッコミがおいつかない。あれ、私だけではないよね?
しかしこの場面ではあみちゃんとともかが組んで踊っているんだなあ。
世界平和の象徴かよ。階段降りも一緒で最高だな。

ともかは『パッションダムール』でも中詰のジゴロの曲を歌いましたが、また歌がうまくなっている。紫のドレスもすごく似合っている。
りりちゃんとくるみちゃんとの3人の組み合わせもよかった。重層感マシマシだし、色っぽいし、最高だった。
ここのはばまいの髪型も可愛かった。娘役ちゃんたちを見るのに、マジで目が足りない。

「ジュテーム」の場面で踊る3つのカップル(はいちゃんとりさ、あみちゃんと夢白、いちかとともか)は「愛のロマンス」の場面でも踊りますが、だったら、ともかのドレスもラベンダーにしてあげて~!と思いました。なぜピンク。
こういうときになんで気が利かないの、劇団。
「ジュテーム」の場面では、ともかの髪飾りが超豪華ですばらしかった。青のドレスも似合っている。ああいうパンチのある色の方が似合うよね! あーん、本当に大切にしてくださいよ~!
そしてせっかくなら組み合わせを変えて踊ってくれても良かったのよ。欲張りですかね。ファンとは欲張りなものです。

男役さんたちも忙しくて、プロローグがきめきめなのはもちろんですが、「若さ、スパークリング!」の場面はもうその名の通り、下級生たちが輝いていた。
あみちゃんにピンクが似合いすぎるので、友人は「花組に行ってしまうのでは?」と言いましたが、やだ、そんなの淋しい……と思う一方で、あわちゃん(美羽愛)とのコンビは見てみたいかも?と業が深いことを思いました。すいません。
組長(奏乃はると)のアルルカンもかわいかった。超キュートだった。見るたびに何か違うことをやらかしてくれたし、滑稽というのがうまい具合に伝わってきて、でも嫌いになれなくて、愛らしかった。さすがだわ。
そして階段降りのまなはる。娘役と一緒でかわいい。娘役に負けないかわいさ。
同じ92期のからんちゃんもそうですが、かわいいなあ。あんまり男役さんに使っていい言葉ではないのかもしれないけれども、そう思ってしまうのです。

上級生の頼もしさも下級生のフレッシュさも堪能できた芝居とショーでした。
大劇場公演が一層楽しみになりました。なんで演目はあれなんだ……という気持ちは今でもありますが、見に行きます。
愛知のあのホールは5階までありましたが、オペラ専用なのか、縦に長く、5階だと後ろのサンマルコ聖堂の映像も見えないので、売り止めにしてもいいかなとは思いましたが、いかがでしょう。
さすがにサイドは見にくいせいか売り止めになってしましたが。
上から見ると、後ろの下級生たちはわかるのですが、さすがに5階だと、大劇場の2階席BB列と同じとはいきませんし。
逆に愛知のホールの2階席は急な勾配の1階席うしろという感じで大変見やすかったです。
座席運にもめぐまれたい今日この頃ですなあ。欲張り~!