ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

雪組『蒼穹の昴』感想

雪組公演

グランド・ミュージカル『蒼穹の昴』~浅田次郎作「蒼穹の昴」(講談社文庫)より~
脚本・演出/原田諒

予習するタイプのオタクなので、原作を読んでから挑みましたが、まずはフィナーレの感想から。
歌唱指導のそらくん(和希そら)のすばらしさたるや……っ!
キラキラがたくさんついた赤いお衣装で眩しい! 独特な声色のお歌! 銀橋でのステップ! 下手花道からセリ上がり、上手花道まで全く油断することができない表情! たまんねぇな!
一本物の歌唱指導といえば、先日の月組グレート・ギャツビー』でちなつ(鳳月杏)の通り、二番手のお役目であることが多いですが、宙組『アナスタシア』ではずんちゃん(桜木みなと)が務めたように二番手がお芝居のラストに登場していると、三番手が担うこともあり、あーさ(朝美絢)の歌唱指導が見たかったような気もしますが、そらくんの歌唱指導もキラッキラでたまらんかったので、これはこれでおかわりしたくなるタイプでした。ありがとう、原田先生。ありがとう、そらぴ。
主題歌をなめらかに歌って銀橋を移動するのですが、ロケットのお嬢さんたちが舞台に現れ、音楽のテンポが変わると、上手の銀橋でまた軽やかにステップを踏んでいらっしゃる……っ! なんたることか……っ! 可愛すぎる! ずっと見ていたい!
ロケットのお嬢さんたちも見なければいけないので、もう目が足りなくて大変でしたよ。はばまい(音彩唯)、さなちゃん(華粋沙那)、すわん(麻花すわん)みんな可愛いぜ~! 目が幸せ。眼福。
ロケットのお衣装の襟がちょっとずれてしまいがちなので、何かで止めてあげられるといいのですが。
いや、お衣装そのものは可愛いんですけどね! 今までにあんまりない感じのゴージャス☆チャイナ!って感じで新鮮で良いです。
ロケットも目が足りない、目が足りないと思いながらずっと見ていました。今回は真ん中周辺が娘役で上下にひろがるに従って身長が高くなるスタイルでした。

そして胡弓の調べで出てきたフィナーレの紳士……っ! 金の羽織! ゴージャスな扇子! か、かっこよすぎんだろ~~~!!!
今回の男役群舞が久々に刺さりました、こりゃいかん、こりゃいかん。おかわりしたい。ここだけずっと見ていられる。
まさかのかちゃさん(凪七瑠海)が登場でビックリしちゃったし、最初の階段付きでは、かちゃさん別格扱いで、あーさとそらぴとあがた(縣千)が並んでいたのに対して、プログラムはかちゃさんの前にあーさの名前がきていて、「これは……っ」と息をのむ展開ですが、このフィナーレ、めっちゃいいね。
金の羽織で華々しいけれども、中は黒でシックに決めているから、これまた映えるんだな、金が! そして扇子! 『GC』でも扇子だったじゃねぇか! つい先日の話だぞ!と思っていたけれども、なんのその。全然使い方が違うの。っていうかこちらの方が明らかに扇子が大きいよね? 男役しか持たないからかな? 迫力があって、もう超好きー!ってなりました。
衣装が天才的だった。すごかった。お芝居でも今回は目に見えて衣装にお金がかかっているし、プログラムにも「素材は現地・中国で仕入れました」みたいなことが書いてありましたので、おお!と思いました。しかし衣装や大道具、小道具はもちろん大事だけど、脚本にもっと金かけてくれよ、オリジナル書くための取材旅行とかさせてやってよ!とも思いました(いつものこと)。
咲ちゃん(彩風咲奈)、あーさ、そらぴの真ん中三人がすばらしいのは言うに及ばず、はいちゃん(眞ノ宮るい)がね! あーさの隣にいるはいちゃんがね! 一体どこに隠していたの、その金髪!みたいな状態になっていて、天寿光希のデジャブでした。
眼帯をしていないパレードの黒牡丹も最高だったよ、はいちゃん。
それから、なぜか私のオペラの中にどの場面でも飛び込んでくるかりあん(星加梨杏)ね。ビックリするレベルで、私のオペラはしっかり彼女をキャッチする。別にプログラムを事前に見て、どの場面に出てくるか確認しているわけでもないのにね?! 気になるなって思ってオペラで見るとかりあんなんですよ! すごくないですか!? 驚きですよね!? 京劇もすごいよかったですよね!
まなはる(真那春妃と)、あすくん(久城あす)、おーじくん(桜路薫)も安定だし、すごいね? 雪組、すごいね??? 群舞でも目が足りないよ???
友人が好きな聖海由侑もばっちり発見しました。この子も可愛い感じだな。スターアングルが足りないこと間違いなし。

そして、上級生娘役の出番~!!! 待ってました~!!! 階段降りでひまり(野々花ひまり)と夢白あやがシンメで降りてきたときは感動した。ひまり!!! ちゃん!!! 待ってました!!!(芝居で出番少なすぎやろ~!!!)
嬉しい、次のトップ娘役と決まった人と対等になって階段降りてくる姿見て、めっちゃ嬉しかった、感動した。ありがとう原田先生。
そしてこの娘役の衣装も可愛いんだな~! 陶磁器みたいなイメージなのかな。白いお衣装に青の柄が入っていて、なんともいえないドレスになっている。素敵。すばらしい。百億点満点。
娘役がずらっと階段を降りてくるというその姿もすばらしい。拍手喝采。スタオベする。
そして、なぜか同じ生地の燕尾姿で出てきたあーさ。オーラはすごいんだけど、なぜ、同じ生地~!? とはてなマークが飛び交った。いや、ここはシンプルに真っ白でよかったのでは? しかし娘役を屈服させるオーラは消えることなく、副組長(千風カレン)やあいみちゃん(愛すみれ)といった上級生娘役を手玉にとっていました。すごい。美しい。絵になる。
最後はあーさが真ん中で娘役が円になって膝をつくんだけど、これが! また! どこの絵画だよ!っていうね。計算されつくした一枚の完璧な絵! そういえば原田先生は『メサイア』でも真ん中あたりで天草四郎が民衆を励ますときの場面は絵画のようでした。うまいな。もうずっとショーを作っていてほしいな、原田先生。
ともか(希良々うみ)も素敵でした。お芝居では、これまた全然出番がなくて泣くかと思いましたが、凜々しい姿を拝見して、胸がいっぱいになりました。これで最後のはおりん(羽織夕夏)もばっちり確認。今から退団を取り消してもいいのよ~! えーん!
りなくる(莉奈くるみ)、ありすちゃん(有栖妃華)も可愛かった。素敵だった。彼女たちにも出番をもっとくれ……。
二番手男役が娘役に囲まれるという場面はありがちですが、『FF』では記憶がないので(あんまり好きなショーではなかったこともあり……)、あーさも少しずつ通過儀礼をこなしている感じがしますね。歌唱指導、楽しみにしていますよ!(しかし芝居とショーの二本立ての方がもっと期待しているよ、劇団)
あと無理を承知でいえば、あーさも階段から降りて出てきた方がより格好良かったよ!

そしてさきちゃんきわちゃん(朝月希和)の最後のデュエットダンス……淋しい、淋しすぎる。今からでも撤回してよって思うくらい淋しい。どうして三作って決めちゃうの? その間に良い作品が回ってくるという保証はないのに……うう、近年稀に見る大人コンビで芳醇な香りのするデュエットダンスが好きでした、今回も最高でした。
まずね? 階段を二人で手をつないで降りてくるの。最高でしょ? これだけでもう、原田先生、ありがとうってなるよね。
そして階段で一度、舞台上で二度目、最後に銀橋で三度目、きわちゃんはさきちゃんに支えてもらいながら身体を後ろに反るんだけど、これがまた美しいんだな……っ! なんだよ、それ……っ! 誰にでもできる娘役芸ではありません。魅せる反りになっているのがすばらしいんだよ、雪組娘役で一体誰がこれを引き継ぐというのよ、本当みんなちゃんと学んでね、あの曲線美!
きわちゃんがさきちゃんに正面から抱きつくところも5回くらいあって、後ろからそっと抱きつく回数を含めればもっとくっついていて、もうー! いちゃいちゃしてー! もっとして~~~!!!となりましたね。
リフトも清く優しく美しく、すばらしかったです。こんなリフト、なかなかお目にかかれないよ~! スピード重視ではなくて、あくまで美麗さが重視されている感じ、わかりやすい華やかさはないかもしれないけれども、本当に二人が信頼し合っているのが伝わってきて、もうたまんねぇな!って感じなんですよ。
お衣装もおそろいでよかった。デュエットダンスは男役は燕尾で娘役がドレスということもあるけれども、二人ともおそろいの青のお衣装で。すごくすごく多幸感にあふれていた。幸せだった。幸せすぎて泣く。もっとこのコンビを見ていたかった、ずっと見ていたかった、せめてオリジナルの良質な脚本で二人の芝居が見たかったとどれだけ思ったことか……っ! 聞いているか、劇団!!!
カゲソロのはおりんもありがとうございました!

パレード。エトワールは副組長。すばらしかった。圧巻だった。さすがだった。素敵だった。うう……っ、なんでやめちゃうの……ぐずぐず。
まさかシャンシャンもってノリノリの伊藤博文が見られる日が来ようとは……なとりさん(汝鳥伶)さすがですわ。本物の伊藤博文でしたわ。なんなら冒頭の酒屋の主人も私はすごく好きでした。あの冒頭の場面がすごくいいよね、お芝居!
さきちゃんきわちゃんあーさは特別仕様のお衣装で、これまた金がかかっているな!と。雪国にでもいくんかい、というマントは舞台の上では暑くないのだろうか、と別の心配さえしてしまう。
シャンシャンは思いの外、普通のシャンシャンでした。もっとチャイニーズになるかと思いましたが、赤い薔薇の中にろうそくが立っている、まあ『ベルばら』なんかでよく見る形でしたね。『ベルばら』が俄に盛り上がっていますが、宝塚ではやらなくていいからね。

そういうわけでフィナーレがAからFまでたんまりと、これまた非常に楽しませてもらいました。ありがとう。
原田先生にはぜひショーを作っていただきたい。きわちゃんのサヨナラショーも彼が演出をするのでしょう。これは楽しみですね。
劇団は原田先生にショーを依頼するといいですよ。なんせショー作家が不足していますからね。いつまで中村Bとダイスケで回していくつもりなの。
ショーがあることが宝塚のオリジナリティの一つでもあるから、ここんとこ、よろしくね!

さて、お芝居はというと……いや、重厚な人間ドラマを魅せてもらいましたよ。なんせ専科から六人出演していただいていますしね。
もういっそあの六人で、京三紗ヒロインの別作品が一本作れるでしょう。そのレベルの人たちでしたよ。すばらしい。それがすばらしいことは間違いない。
しかし、私は、あの娘役キラーなので……雪組娘役にあまりにも少なくないですかね……あの、すいません、だって……あ、あ……とカオナシのような気分になりました。原作を読んで、配役発表を見たら、想像がつくといえば、つくのですが、それにしたってあまりにも、あんまりで……。
もちろん原田先生なりに気を遣っただろうことは、紫禁城の最初の場面でずらーと娘役ちゃんたち女官が階段付きになっていることをを考慮すればわかるのですが、一本物であったことも手伝って、私は物足りませんでした。
兵士たちのなかにともかやひまりがいるのも見つけましたが、そういう問題ではないでしょう。
もっとも、阿片窟で、そらくん順桂と絡みがあることはともかにとっては嬉しかったことだと思われますが。
要は私が求める宝塚向きの作品ではなかったということでしょう。「宝塚らしさ」が何を指すのかは難しく、人によって違うと思いますが、重厚な人間ドラマだけではやはり「宝塚らしい」とは思えないのよね……。

あと一番気になったのはミセス・チャンがトーマスではなく、載沢とくっつくようなラストになっていたことでしょうか。
西太后からミセス・チャンは自由を与えられたにもかかわらず、結局宮廷の人間と一緒になるの? そもそも載沢は酒場で西太后についてあることないこと記者たちに吹聴していたのに、そんな軽薄な人間と一緒になるの? 原作での格好良いミセス・チャンはどこいった……と呆然としてしまいました。
それともあれかな、西太后について変な噂を立てられないように、ミセス・チャンが見張っている、という設定なのかな。うーむ……。自由な女がジャン―ナリストと恋に落ちるって、いいなと思ったんですが。
これはもちろん演じている夢白やさんちゃん(咲城けい)にはなんの非もないことです。脚本の問題でしょう。
西太后とミセス・チャンのやりとりが原作で好きだったのが、かえって仇になったようま感じがあります。

原作を読んでから臨んで、かえって仇になったかなと思うのは、ラスト近くで春児が「白太太がおいらに嘘をついていたのなんて、わかっていた」という場面ですかね。
なんせ、原作ではあのなが~い道のりを経て、ようやく出てきた言葉じゃないですか。なんなら、新聞連載だった当時は毎日どうなるか読者はわくわくしていて、ようやっと出てきた台詞じゃないですか。
もちろんあーさにはその長い道のりを感じさせる演技力がないわけではありません。ただ、やはり2時間半におさめようとすると、スピーディにならざるを得ないので、「そ、そんな、あっさりー!?」みたいな感じになってしまったことは否定できません。
好きな場面が出てきたのは嬉しかったのですが(そして、ここがカットされるとも思っていませんでしたが)、それだけに舞台では軽く見えてしまったのが残念。これはかえって原作を読まずに臨んだ方がよかったかもしれません。

ラスト、春児は港への道のりを早足で行く。その舞台装置の豪華さ、そして船への転換のすばやさはすばらしかった。白い船員の衣装を着た生徒たちが装置を動かしていたと思われますが、その船員の衣装で舞台に出るのはその1回だけ。転換のためだけに衣装があるのってすごいな……いや、『明日への指針』とかの使い回しだろうけれども、それにしても。
船に乗る文秀は弁髪を切り落とした後。隣にいる玲玲は、今までとは異なった西洋風のドレス。二人の日本への亡命は決して明るいものではないはずなのに、なんとなく希望が見えるのも、どうなんでしょう。ちょっと宝塚に寄せすぎたような気もします。
そのせいか、船を見て『SUPER VOYGER』みたいだなとか、『霧深きエルベのほとり』のラストみたいだな、と余計なことが脳裏を過ってしまいました。

もういっそのこと、西太后をきわちゃんが演じて、文秀さきちゃんとバチバチやりとりをした方が楽しかったのかもしれませんが、これも言うても詮無きことですな。
玲玲のきわちゃん、可愛かったし、どんどん垢抜けていく、きれいになっていく姿はすばらしかったです。お衣装もいろいろあってよかったかな。二幕ですわっち(諏訪さき)の譚嗣同と市場に買い物に行って、突然告白されて、逃げた後、急に戻ってきたのは何事かと思いましたが、これは脚本の問題です。
あーさももちろんうまい。汚れた姿で昴を探しているときと、京劇で黒牡丹に鍛えてもらっているとき、そして西太后付きの宦官になったときでそれぞれ大きさが違って見える。物理的には変わりようがないのだけど、オーラの大きさというのかな。西太后付きの宦官のときなんか、まろやかさみたいなものも加わって、春児に余裕が出てきたのもわかる。すごいなあ。
蘭琴との絡みは見たかったような気もするけれど、彼のラストが悲惨なので、ないならないで、それも正解かもしれません。私は原作で彼のラストが一番重たかったよ……。

順桂のそらくんは阿片窟にやってきて、これが雪組の神髄ですよ、ようこそ!みたいな気分にはなりましたね。あの場面、阿片窟だという説明めいたものは一切舞台の上ではないのですが、見ている客はしっかりあれが阿片窟だとわかる。すごい。偉大なるだいもん(望海風斗)の力を感じました。
そしてそのあとテロ。お~これもどこかで見たような。そらくんは『神々の土地』でもテロルを起こす側でしたね。
眼鏡姿が見られなかったのが残念でした。今からでも間に合うよ、原田先生。

これから原作を読む人にお勧めするのは、登場人物の名前を中国名で読むことですかね。私は「ぶんしゅう」「じゅんけい」と読んでいたので、うっかりすると誰!?みたいなことになります。お気をつけを。プログラムのふりがなを一生懸命覚えました(笑)。
プログラムといえば、あんまり今までにない感じの表紙も新鮮でした。東京公演がどうなるか、楽しみですね。
そしてきわちゃんのラスト公演。全日程、無事にできますように。