ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

花組『The Fascination!』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp

三井住友VISAカード シアター
忠臣蔵ファンタジー『元禄バロックロック』
作・演出/谷貴矢

井住友VISAカード シアター
レビュー・アニバーサリー
『The Fascination(ザ ファシネイション)!』-花組誕生100周年 そして未来へ-
作・演出/中村一

前回、お芝居の感想だけで8000字超という「誰も読まないよ」案件になったので、ショーの感想とは切り離すことにしました。
今回はショーの感想です。
ちなみに芝居の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

主題歌もめでたくて、メインのピンク衣装も素敵で(裏がボルドーって最高だし、トップ2人がショッキングピンクなのもよい)、オマージュの場面も楽しくて、あらゆるところに花組愛を感じずにはいられない楽しいショーでした。
あおいさん(美風舞良)のおかげでしょうか、コーラスもよくなっていました。退団者の見せ場もよい。
でしたが、とにかく映像がうるさいですね。
一昔前のWindowsスクリーンセーバーのような。
主題歌後、ひとこ(永久輝せあ)が一人で銀橋に残っているところ、中詰のはじめにラベンダーのキラキラドレスで銀橋を渡るまどか(星風まどか)の場面、「心の翼」の直後のエーデルワイス、このあたりが特にうるさく感じられました。
全員がいるところでうるさいと感じるのではなく、少ない人数で歌っているときの方がうるさく感じているので、スターの力が信じられていないような気がしました。
いや、だってひとこが銀橋で歌っているときに、ひとこを見てない人なんていないでしょ?
それはもうひとこのファンかファンでないか、ということは関係ないでしょ?
目の前で歌っているスターさんに興味ないからといって「うわあ!後ろの映像、キレイ」とはならないでしょう。
むしろスターを見ている人からしたら、オペラで見たときの眩しさが気になるのではないでしょうか。
映像演出なんて覚えなくて良かったね、中村B先生……って『Ray』のときも思ったし雪組『ファントム』のときも思いました。

プロローグは忙しかった。まどか、あわちゃん(美羽愛)、かがりり(華雅りりか)、うらら(春妃うらら)、くりすちゃん(音くり寿)、みさこちゃん(美里玲菜)、ここちゃん(椿姫ここ)とただでさえ、追いかけたい娘役スターがたくさんいるのに、そこにしぃちゃん(和海しょう)、まひろくん(帆純まひろ)、はなこ(一之瀬航季)と花組は男役も追いかけたくて、とにかく目が足りない。そろそろ第三の目を開眼しないといけないって本当に思いました。
この衣装がね、いいんだよ。特に娘役のドレス!
薄紅色のドレスかと思ったら、内側は男役のブラウスと同じボルドーっていうね! たまらんね!
あわちゃんのドレスが翻ったとき、感動してしまったよ、良かったよ。ダンスの起用が多くて嬉しい限りです!
ちなみにここのお衣装、ちゃんとまいてぃ(水美舞斗)とひとこの衣装には差があるんですよ。まいてぃの方がキラキラストーンが多いんですよ。
それなのに、なぜパレードではあんなことになったのか……事故……。

クラブの場面はまいてぃと美咲ちゃん(星空美咲)がセンター。
かがりりではないのね、と背筋が震えました。
『銀ちゃん』コンビですね。
このあたりは前の振り分けが結構生きているなと思っていて、後半の「エーデルワイス」も『銀ちゃん』に出ていたつかさくん(飛龍つかさ)と歌いましたものね。
反対にあわちゃんは中詰銀橋で『コルドバ』チームのはなこと歌い、ピアノ・ファンタジィではゆーなみくん(優波慧)と組んで踊りましたものね。ゆーなみくんとは『POR』でもコンビでした。大変お世話になりました。ありがとうございます。
娘役の衣装は『Ray』のプロローグ衣装。雪組全ツでも使われていたような?人気のあるお衣装なのでしょうか。個人的に好きかと聞かれると難しい。
あとプログラムの「バラの紳士」と「ワイン・レディ」という名前は滾る。大変よろしい。

食虫花の場面。
これはただの花と蝶ではダメだったのか……虫(蝶)を食べる花でなければいけなかったのか……?と始終疑問で、ついでに蝶の衣装はもっとあるのでは?とも思ってしまった。
あわちゃん、黄緑でしたね。可愛かった。ここの髪型も可愛かった。
蝶と花の軽やかなワルツとかでも良かったのでは、怪しい場面が続いているのでは、と思ってしまったので、なかなか集中できなかったことが悔やまれる。

ミモザの場面。キター! こういうの、待ってた!って感じでしたね。
しかも、みさこちゃんがピンクと白のフリフリドレスじゃないですか。もう完全にフランス人形。可愛くて仕方がなかった。すごく可愛かった。『ル・サンク』にぜひ入れて欲しい。
しかもみさこちゃんの相手役がラベンダー色の軍服を着たまひろくんではありませんか。これ、最高の組み合わせではないですか?
誰ですか、このコンビを考えたの! あとで体育館裏に来なさい! たくさんお礼をします!!!って感じになりました。幸せだった。多幸感溢れていた。
真ん中のくりすちゃんも気になるのに! まひろくんみさこちゃんコンビばっかり見てしまっていたよ。

中詰はすみれ。まどかの銀橋渡りから始まる。花組のトップ娘役です! よろしくお願いします!
そしてまさかのあわちゃん銀橋渡り。ビックリしましたね。いや、なんていうか、全く想像していなかったし、初日レポは見てなかったし、プログラムも買ってはいたけれども見る余裕もなく初回の観劇だったので、ものすごく驚きましたね。お歌、頑張って……っ! 応援しています!!!
しかもはなこと! つまりこれはなんですか、『はいからさん』新人公演コンビってことでいいですか?!
私は銀橋大好き女なので、軽率にスターたちが銀橋を渡るショーが大好きです。ありがとうございました。
そういう意味では『モアダン』はちと足りなかったのよね……もっとも銀橋を使うことにも慎重になっているのかもしれませんが。

ピアノ・ファンタジィ。良かったですよね〜!
たまらなかった。あすかもノリノリでしたね。もっとはっきり歌詞が聞こえると良かったのですが。
そこからいきなりたくさんの足が見えて、ロケットメンバーの登場。
ロケットの中に入っている美咲ちゃんは確かにお化粧が上手ですね。しかし上手に笑えていないことが気になります。
続く白い紳士(白鍵)7人と黒の淑女(黒鍵)5人のダンスも今の花組で上演するには不足ないメンバーですね。あわちゃんが入っているのもうれしい。
そういえばどこかの場面で、銀橋をスターが渡っているときの舞台であわちゃんがセンターになっているところがあったのもよかった。
マチネ公演はあわちゃんしか見ていなかったから気がつかなかったけれども、ソワレ公演は全体を見たらセンターにいておどろいた記憶があります。ダンスは本当に伸び伸びと自由で笑顔で太陽だわ。素敵。

オマージュ場面「エキサイター」。
これはもうイントロだけで血液が沸騰するレベルだし、歌い出しまひろくんで鳥肌が立つし、銀橋を渡りながらガンガンウインクを飛ばしているし、はちゃめちゃに格好良かったですわ……っ!
マチネは「マジ、ウインクの回数半端ないなー被弾している人、生きているかなー」と思っていたら、ソワレで見事に被弾してしまい、オペラグラスを落としました。みなさん、骨を拾ってください。
あと『オペラ・トロピカル』からの引用もありましたね。「ある愛の伝説」とても良かった。というか、もうそのまま『オペラ・トロピカル』を上演すればいいのでは?とさえ思っているよ。今の花組で。
順みつきさんの『エルベ』と併演だったので、スカステでやっているときについでに見たけれどもおもしろかった。
基本的にはホセとカルメンなんだけど、最後は自由なカルメンがホセを殺すの。見てみたいなあ。
「心の翼」で全員の顔が見えるように階段を使ったり、後方の一部舞台がセリ上がったりしたのは良かった。やはり全員集合だと重なって顔が見えない人が出てきてしまうからね。こういうの、ありがたい。

フィナーレは「エーデルワイス」から。
エーデルワイス」で美咲ちゃんを起用するなら、やはりワイン・レディのセンターはかがりりでも良かったのでは?と思ってしまいました。ファンの皆さん、すいません。お歌は上手い。
そして、まどかセンターの娘役場面はドレスでも良かったのでは? 黒鍵ダンサーでまどかのダルマは見たからもう大丈夫だよ?
『Ray』でもちゃんとひっとん(舞空瞳)にドレスを着せていたじゃない!
『MR』でもきぃちゃん(真彩希帆)にドレスを着せていたじゃない!と思いました。
個人的にドレス好きということもあるのかもしれませんが、私はドレスが見たかった。

男役群舞。この曲なんだっけかなー思い出せない。
お分かりになる人がいらっしゃったら教えていただきたいです。
最後に大階段でれいちゃん(柚香光)を頂点にしてずらっとピラミッドになるの、いいですね〜!
デュエットダンスもここにきてなぜ黄緑? 花ではなくて枝葉のつもりか? それとも初々しさの象徴か?といろいろ考えてしまいましたが、まどかの前が短くて後ろが長いドレスはとてもよかった!
『Ray』でもひっとんが似たような形のピンクのドレスを着ていたので、これは中村B先生の趣味なのでしょうか?
イレギュラー裾のドレスも大変素敵でした。だからこそ、スタンダードな形のドレスを娘役の「エーデルワイス」の場面で見たかったぞ!
『ロミジュリ』のことひとは2人が競技ダンスのメダルを争っているパフォーマンスがデュエットダンスに見える形でしたが、れいまどコンビは2人で金メダルを取りに行っている感じでした。リフトも素晴らしかった。多幸感あふれるわ。

パレードはすでに大きな物議を醸しておりますが、まいてぃのファンでなくてもこれは胸が痛い。
カレンダーも他の組の2番手と同じ扱いで、東上して、チラシに切手入りして、舞台の上でも間違いなく2番手としての役割を与えられ、またそれに応えるパフォーマンスをしていたにもかかわらず、2番手羽根がないというのは、あまりにもあまりで……働かせるだけ働かせておいて、給料据え置き、みたいな?
そんな過酷な現実を夢の国宝塚で見せていいのか?
百歩譲ってVISAが付いているひとこを慮ったというのなら、ひとこのファンに聞いてみるといいよ、この状況を喜んでいるかどうか。素直に喜べるとはとても思えないよ。
95期がどうとかいう問題もあるのでしょうが、では次の星組はどうなるの? 琴ちゃんとせおっちで、せおっちは2番手羽根を背負わないの? 星組ファンにもいらぬ動揺を与えたのではないでしょうか。
どうしても、っていうなら、いっそのことまいてぃもひとこも2番手羽根を背負ってしまえば良かったのです。花組100周年! めでたいから、3番手にも羽根をつけるね!ってそれで良かったのではないの?
スポンサーに忖度する宝塚歌劇団なんて見たくないよ?五輪でコリゴリだったんだけど???
私がまいてぃファンなら劇団に爆破予告状を送りかねないレベルだわ。

あと、エトワールが特別な衣装でないのもダメ。
最終的に舞台に戻ってきたときに周りと同じドレスを着ているのはもちろんいいけれども、一人大階段でスポットライトを浴びるときに周りと同じドレスなんて絶対にダメ。なんでそういうことするの? 花組100周年でめでたいショーではないの? お金ないの? なくてもやりようはいくらでもあったよね???
こういうの、本当に劇団への不信感しか募らないからやめて欲しい。

繰り返し見に行くことになりますが、最後のこれだけはどうにかならんかなあ、とぼんやり考えてしまいます。

花組『元禄バロックロック』感想

花組公演

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三井住友VISAカード シアター
忠臣蔵ファンタジー『元禄バロックロック』
作・演出/谷貴矢

井住友VISAカード シアター
レビュー・アニバーサリー
『The Fascination(ザ ファシネイション)!』-花組誕生100周年 そして未来へ-
作・演出/中村一

とりあえず今回は長くなりましたので、芝居の感想だけです。「元禄バロックロック」って声に出して読みたい日本語ですね!
ネタバレあります。できればネタバレなしで初見を見ることをおすすめします!
私もそれで楽しめたので!

花組、良かった! 良かったよ……っ!
楽しかった〜!だけなら、宙組『シャーロック』と同じですが、現代で上演する意味は花組の方が感じられましたし、星組『柳生』やタカヤ先生の前作『出島』よりもトップコンビの恋愛が描けていましたし、同じ和物と言っても月組『桜嵐記』とは全く違うアプローチを示したことにも、宝塚にとって意味があると思います。
本当、どれもできていないサイトーは修行してきた方がいいのでは?実は次の雪組大劇場公演もちょっと心配なのよね……。

作品が発表されたときも、相変わらずタカヤワールド!と思ったのと同時に、今時『忠臣蔵』?「忠義」?「仇討ち」?と思った人は多いのではないでしょうか。
雪組の『忠臣蔵』を久しぶりに見たときも、これはこれで感動するけれども、これをそのまま演じられたらちょっとかなわないなあ、と思ってしまったのです。
でもちゃんと主人公自身がその疑問を内面化していて、しかも我慢を強いられるのが下々のものだけではなく、ツナヨシ将軍自身も悲しみを乗り越えるというのが本当にイイ!

ビジュアルを見たときからアタリの予感がして、チケットをいつもより多めにとっておいて良かったわ〜。
大道具も衣装も良かったです。
ザ⭐︎大劇場の芝居!という感じの豪華さとテーマとの関連と、興奮しました。
開演前に上手の上の方でカウントダウンが行われるのも手に汗握る。もっとも十進法のカウントだなら手元の時計とは数字が異なる。このあたりも「今から違う世界線に行くぞ!」って感じでたまらない。
真ん中、上手、下手に和物から洋物までそれぞれ違うデザインの時計があり、鎖国をしていない日本というのはこういうところにも表れているな、と。
開演前の映像も幻想的で良かったし、世界観に没入できたから、この使い方はいいな。でもショーでは不要だった。
衣装も『出島』のときは袴がモチーフでしたが、今回は着物ということで、左と右で身ごろの布が異なり、袖と裾には違う布で縁取りがしてあり、袖は袖口に向かって開いていくタイプでとても楽しめました。お衣装部さん、ありがとうございます!

『出島』から引き継がれたと思われる「ヒロインの笑顔」と「科学力(カラクリ)」ですが、タカヤ先生は娘役に何かを背負わせることが得意なのかな、と思いました。
ヒロインが奮闘している、娘役の魅せ方にこだわりを感じます。
宝塚は往々にして男役を魅せる場所ですが、現実の男とは異なる「男役」なるものに寄り添う「娘役」もまた創造の産物であり、タカヤ先生の娘役愛を感じます。ありがとうございます。
ヒロインの笑顔のために頑張るトップスター、けれどもその男役よりも遥かに長い時間奮闘し続けてきたトップ娘役というのがよかった。
ヒロインを守るために男が何度もタイムリープしているのではなくて、愛する男を守るためにヒロインが何度もタイムリープしている。それがとても良かった。
娘役を大切にしているなというのは、例えば町人や賭場の娘たちにも名前が与えられていることからもわかる。

最初はあすか(聖乃あすか)のタクミノカミから。
メサイア』でもこんなポジションでしたね。
この衣装見て、タカヤワールドキター!って思ったよね。全身の血が沸騰するかと思ったよね。
やっぱりアタリ作品は冒頭から違う! ポスターやビジュアルから違う!
上手花道でコウズケノスケ(水美舞斗)とヨシヤス(優波慧)。コウズケノスケは天才科学者だったタクミノカミから時を戻す時計の設計図は奪ったものの、解読できず。
ヨシヤスはツナヨシ(音くり寿)のために解読を急ぐように急かす。
ヨシヤスの風体も良かった……なにあの、銀髪ストレートロン毛。やばい、性癖にささる。
下手花道では、クラノスケ(永久輝せあ)ら赤穂藩士たちが「喧嘩両成敗はどこいった!」とコウズケノスケにお咎めがないことを不満に思っている。
赤穂藩士のまひろくん(帆澄まひろ)、はなこ(一之瀬航季)がよくてですね……いや、本当に華ちゃんのディナーショー『華詩集』から2人が気になって仕方がないんですよ。花組全国ツアーも、ついはなこを追ってしまった。
そして真ん中の時計の下の部分がくるっとひっくり返ってクロノスケ(柚香光)が登場ー! キター!
もう少し派手な登場でもイイかなと思うのですが、カラクリを駆使するという点ではこれでいいのかな、と。
そして圧倒的存在感を放つ大きな時計。
これもうまいなあと思うんですよね。時計なんて小さいもの、映画ならともかく舞台でどうやって映えさせるのだと思ったら、物理的に大きくなっていた。すごい。しかもそれをもったまま剣を振り回す。最高かよ。

そしてオープニング曲。色とりどりのお衣装を着て全員集合。
まどか(星風まどか)の黒髪ストレートパッツン姫カットって考えたの、誰ですか。すばらしい。
姫カットの部分だけ赤を入れたのもいい。あのカツラ、どうやったら似合う人になれるの。前世でどれくらい徳を積んだらいいの……。
ビジュアル発表時から完全にCLAMPXXXHOLiC』の侑子さんやな、モコナ連れているんとちゃうか?って感じだったのですが、謎めいた発言を繰り返すあたりもまさしく。しかし侑子さんよりずっと純粋で素直な普遍的な恋する女の子の代表であった。かわいい。
この主題歌もいいよねえ。『はいからさん』同様一回で覚えられる。帰る道すがら「めぐるめーぐるときー♪」って思わず歌ってしまう。
主題歌終わりでスリの被害に遭うしょうみちゃん(真鳳つぐみ)。
それを時を戻してスリから財布を取り戻した上に、お礼のコインを要求するクロノスケ。
ちっっっさ!!! 器、ちっっっさ!!!って思ったよね(笑)。
こいつ、ロクな奴じゃねぇな!と思ったわ。
「号外だ〜!」と情報を持ってくるヨミウリはらいとくん(希波らいと)。
私にはたかこ(和央ようか)に見える(笑)。雪組忠臣蔵』も皆さん、ぜひ!

場面は賭場へ。ひぇ〜! 誰ですか、しぃちゃん(和海しょう)にあんなイケイケオラオラなキャラクターをやらせたのは!!!
私、聞いてないよ! ドキドキしちゃったじゃない!!! なんなの!!!とまたもや大興奮。
そしてここの場面の娘役ちゃんの、なんと可愛いことよ!うらら(春妃うらら)、ここちゃん(椿姫ここ)、みさこちゃん(美里玲菜)、そして潜入捜査しているあわちゃん(美羽愛)!!!
ちょっと聞いてないわよ〜! クノイチの役だって言っていたじゃない〜! こんなところにも出てくるなんて、聞いてないよ〜! 可愛いよ〜!
キラまどかに「丁?半?」と聞かれるのはなかなか刺激的だなとぼんやり思っていましたが、実際は「黒?白?」でした。惜しい!
「ラッキーこいこい♪」も思わず歌ってしまうわ。歌がいいわ。あとしぃちゃん。
いや、あのわたしはどちらかといえば落ち着いたしっとりしぃちゃんの方が好きで、オラついているしぃちゃんを見ると「あー! お客様! あー! それは! いけませんー!」と手を顔で覆いながらも指の隙間から見てしまうような感じなので、大変美味しくいただきました。やばい、沼にハマりそう。
「ラッキーこいこい」のときに登場するキラは何やら細長い棒のようなものを持っていて、え? ムチ? 真風から教えてもらったの?と焦りましまが、くるりと一回転したときに先に提灯がついているのを見て、一安心しました。
賭場でツヨツヨまどかの鞭を受けるとか、それはそれで何か新しい扉が開かれるような気もしますが、すみれコード的にOKなのかどうかはわかりません。賭場と鞭の組み合わせって怪しいことこの上ないからな。
しかしなぜ提灯だったのかは、よくわかっていません。あの賭場、地下で行われているのかな? あかりが必要なのかな。
クロノスケとキラはすでに顔見知りのようで、博打は当てまくるけれども恋愛はさっぱりなのを笑われる。
互いに名前を明かすところで、既視感を覚えるクロノスケに微笑むキラ。
「デジャヴ」という言葉は魔法の呪文のように不思議な響きを伴ってクロノスケに届く。
そうしてクロノスケは変わり果てた赤穂藩家老のクラノスケと再会する。クロノスケはそのままクラノスケの家へ。

ここからコウズケノスケの屋敷へと場面転換。
1人舞台に残って場を持たせるカエデのあわちゃん。
ひぃ〜! すげ〜! すくにツバキのみさきちゃん(星空美咲)に膝枕されたコウズケノスケがセリ上がりで登場するのだけれども、賭場の女としての顔とクノイチとしての顔を入れ替える、そのタイミングでの場面転換だから、多くの人があわちゃんを見ている。そういう場面を任されることの嬉しさよ……っ!
クラノスケがすっかり腑抜けており、復讐心などこれっぽっちも考えていない様子をカエデがコウズケノスケに伝えると、すかさずツバキは擬態ではないかと疑問を呈す。
しかしもちろんそれが見抜けぬコウズケノスケではない。
カエデはツバキの話を「そんなこと、わたしもわかっとるわい!」という顔をして聞く一方で、コウズケノスケの話を「さすがご主人様ー!」という顔をして聞いている。
顔で演技している。ちゃんと伝わる。あわちゃんの芝居がやはり好きだ!
そしてコウズケノスケの話を聞いているときのあわちゃんの顔がはちゃめちゃに可愛い。何なの、可愛い……。
初日映像でもこのあたりが切り取られていて、あたしゃ嬉しかったよ……っ!

クラノスケの家は随分ボロボロになってしまい、人物の変わりようとともに驚かずにはいられないクロノスケ。
ここのかがりり(華雅りりか)がとてもよい。クラノスケの妻として出てくるのだけれども、とてもいい。コミカルで、可愛くて、豪胆で(笑)。
この作品のMVPをくりすちゃんのツナヨシと争うくらいですが、この場面だけで圧倒的な印象を残したかがりりはやはりすごい、すばらしい。
花組はお姉さん娘役が不足しているように見えるから、とても頼りになります。
「ちょっとそのその辺の魚でもとってきます」と言って去るときまで笑わせてもらいました。演技、うまいなあ。
そして実はクラノスケは仇討ちを諦めていなかったことが観客に明かされ、クロノスケはキラがコウズケノスケの隠し子だと知らされる。

キラの部屋にまっすぐ向かったクロノスケを賭場の女たちがデバガメしているのもおもしろいですが(タカヤ先生の娘役愛を感じる)、そのままクロノスケがキラと「爛れた愛」に堕ちていくというまさかの唐突な展開にお目めが丸くなりました。
「爛れた愛」って奥さん!プログラムに書いてございましてよ!!!

一方エドの大広間ではツナヨシが愛犬を失った悲しみを忘れられず、時を戻す時計を欲している。
「見目麗しい少年将軍」であるツナヨシは、当然くりすちゃんなので、登場から歌う。歌って「だーかーらー♪」の前時の後、突然ロックになる。さすがすぎる。椅子からも降りちゃったよw
「生きとし生けるものを大切にする」と言っておきながら、途中で「せっぷく!」とか言っちゃっているけれども、しかしあの言い方、とんでも無くかわいかったな、という感想しか残らない。配役の妙ですね。うまい。
鎖国をしていない日本という設定なので、外国人も幕府の中に入ることができるらしく、ケンペルは相棒として死なない犬のAIBOをツナヨシにプレゼントする。私は笑えたけれども、AIBOってもはや知らない世代もタカラジェンヌになっているのでは……?と悲しい事実にぶち当たりました。相棒のAIBOwww
ケンペルは「ヨーロッパの学者」とありますが、やはりポルトガル人ですかね……?
鎖国をしていないなら、いっそポルトガルでなくてもいいような気もしますが、そのあたりは曖昧です。
まあとにかくくりすちゃんの可愛さが炸裂して、ケンショウイン(美風舞良)がくんコウズケノスケの元恋人だということがわかる。
2番手ともなると副組長を元恋人とし、トップ娘役を隠し子にし、銀橋で一曲歌っちゃうのね! まいてぃ、おめでとう!という多幸感に溢れていましたよ、この時は。

爛れた愛で堕落した生活を送っているクロノスケは、仲良くキラと賭場を経営。「爛れた愛」とは?とも思いますが、元赤穂藩士として真面目に時計の研究者として生きていたクロノスケにとっては、女と堕落した生活は爛れた愛に他ならなかったのだろうな、と。
いや、だってもっと爛れた愛に溺れちゃった人とかいそうだからね?! ほら、ドンジュアンとかさ!!!
彼に比べるとクロノスケは悠々自適に好きな女の子と暮らしているって感じですかね。可愛いもんよ。
金髪のボブのまどかも可愛いなあ! このやろう!
『出島』でも回想場面のカグヤは金髪ボブでしたね。もっともまどかは青メッシュが入っております。ひたすらに可愛い。
しかしその穏やかな生活もクノイチの乱入、クラノスケの混戦ということでパニックに陥り、なぜか楽しそうにしているキラと共に逃げていく。
あわちゃん、まさかトップスターとの殺陣があるなんて……私、聞いてないよ……身体がよく動くなあ、しなやかだなあ、さすがダンスが得意な子!
そしてここも初日映像に入っていた。ありがとう、劇団さん。

逃げた先で「君の本当の笑顔を見なければいけない」と言うクロノスケに、「一緒に花火を楽しみましょう」と返すキラ。それは二人の、ずっとずっと前からの約束だった。
時計の秘密を知っていて、しかも「私を信じて」というわりに肝心なことを話さないキラにクロノスケは業を煮やす。
花火見物が終わったら、全てを話すと約束するキラは風車を買ってはしゃぎ回り、花火の歌を歌う。
キラが作ったその曲を、なぜかクロノスケは知っていて、続きを歌う。覚えていてくれたことに喜ぶキラは賭場でラッキーの女神をやっていた頃とは全く違う顔を見せる。ただの、恋するあどけない少女だ。とても可愛い。
銀橋で明かされる「大きな時計は実は時を戻していない」、そして本当に時を戻す時計は「キラが作った」という事実から、かつて2人が辿った最初の物語が語られる。

松の廊下の殺傷事件の後、赤穂藩士のスパイとしてコウズケノスケの家に潜入操作に入ったメガネのクロノスケはそこで偶然世の中から隔離して育てられたキラに出会う。
このキラがまた可愛いんだ!完全に箱入り娘って感じの出立ちなんだ! はちゃめちゃに可愛いんだ!
これ、あわちゃんがやるんだよね?! サイコーだよ!!!
最初はコウズケノスケの情報を引き出すために近づいていたクロノスケだが、やがてキラに惹かれていく。
父親以外とまともに顔を合わせたことのないキラは当然、クロノスケに興味津々で、優しい彼に惹かれていく。窓の外から見える花火だけがキラの癒しだった。そして「いつか一緒に外で花火を見ましょう」と2人は約束する。

討ち入りの日、クロノスケはキラにカラクリ時計の設計図を渡して、彼女逃がす。
「自分の願いのために使うんだ。使わなくてもいい」という優しい言葉に背中を押されて、キラは逃げていく。クロノスケはクラノスケたちと無事に仇討ちを成功させ、切腹してしまう。
キラは「自分の願い」のためにカラクリの勉強をし、時を戻す時計をついに完成させる。
そうして何度もクロノスケを助けるために時空を旅する。
クロノスケを助けるためだけなら、松の廊下事件前まで時を戻せばいいだけのことだが、彼女の願いはクロノスケと花火を見ることに他ならない。だからそれはできない。
自分のエゴのために時計を使い続けたキラは時を戻す時計をクロノスケに預ける。そして、私たちが出会わない世界線に行くことを提案する。
これでタクミノカミは死なない。花火を見る約束どころか、2人が出会いさえしない世界に生まれ変わる。
ちょっぴり心は痛むけれども、自分はもう散々時計を使ったというキラの表情が何とも切ない!
うっかり泣いたわ!
キラがクロノスケとの出会いを諦められるのは、クロノスケと花火を見る約束を果たすことができたからなのだろう。
他の世界線では叶えられなかった自分の願いがようやく叶ったところで、キラは時間の檻から解放される。
これだよ!これが泣けるんだよ!!!
相手の願いのために自分を捨てようとするの!本当は花火を一緒に見ることができたこの世界線で同じ記憶を共有しながらクロノスケと生きていき続けたいのに、それをクロノスケの「松の廊下の殺傷事件をなくす」という願いのために捨てるの。なんで健気なの……!
ラクリの勉強だって、血の滲むような努力でやったに違いない。他人から教えを乞うわけにもいかないから、一人で、たった一人でキラは戦って時計を完成させて、そのあとも孤独に戦い続けてきたんだよね!
自分の好きだけが募っていき、相手はいつでも初めましてという顔で近づいてくる。それがどれほど辛かっただろう。まるで『まどマギ』。
それでもキラはクロノスケを救わなければならなかった。救って一緒に花火を見たかった。彼女の願いはそれだけだ。
父であるコウズケノスケに「ツナヨシのポジションにいたのはお前かもしれない」と言われても、にべもなく「そんなものは望んでいない」という。そうだよ、権力を欲しがっているのはいつも男で、そのために争いを起こすのも男で、しかも勝手に死ぬんだもんな?!許せんよな?!女は平穏な日常しか求めていないからな?!
娘役に夢見すぎな設定であるかもしれないけれども、むしろこんなベタなことは宝塚以外でやったら寒気がするだろうと思うから、これでいいの。
あとクロノスケ、コウズケノスケ、クラノスケ、タクミノカミが4人で歌う場面もいいですよね〜!
こういう演出は宝塚以外にもあるけれども、あの華やかさと美しさがまさにザ⭐︎宝塚!って感じがする。

「今度はあなたの願いを叶えて」と渡された本当に時を戻す時計を、しかしクロノスケはあっさりと放り投げて川に捨ててしまう。
困惑するキラに対して「あの部屋から君を解放できたかもしれないけれども、今度は時空の檻に閉じ込めてしまった」とクロノスケは言い、「桜を一緒に見よう」と次の約束まで取り付ける。なんでいい男になったんだ、クロノスケ。
最初にすられた人から小銭を強請った人間と同じとは思えないぞ!
そうして新しい物語を2人で作り上げていく。

クロノスケはクラノスケと接触し、キラはコウズケノスケのもとに一度帰る。それぞれがそれぞれの責任を果たすことで、もう一度会おうと約束する。
クロノスケは仇討ちに必要やお金を持ってクラノスケに協力をすることになり、キラは何度も繰り返してきた時空の中で知ったカエデの思いを上手に誘導し、ケンショウインとコンタクトをとることに成功する。
争いに終止符を打つため、2人は新しい戦いを始める。あわちゃんも登場する。忍者服、可愛い。

討ち入りに乱入するツナヨシは「両者即刻和解し、この国のために努めること」という罰を与える。
刺激的すぎるな。最高だよ。愛犬を失った哀しみをツナヨシ自身も乗り越えた。だからコウズケノスケと赤穂藩士たちに下される罰にはより説得力があるし、現実的だ。
ツナヨシがレッドカーペットから意地でもはみ出さないぞ!という意地を見せるのも可愛い。
ピリオドのキーとなるダイガクの存在はもっと早くから観客に示していても良かったかなと思うのですが(なんなら私はダイガクのいない世界線だと思っていた)、ダイガクの衣装が『義経』であーさ(朝美絢)がフィナーレで着ていた衣装だったので、そちらに意識を持っていかれてしまった。
いや、あれ、好きなんだよね……『柳生』でもかりんたんの衣装が好きだったから、ああいうのに弱いんだ。わかっているさ。

ラストも良かった。
クロノスケが助けた人間から小銭をせびるような人間でなくなっていたのがよかった!真人間になった!
キラと2人で下手の花道からはけていくのもよかった!
『桜嵐記』『柳生』とここ最近、この手のラストが続きますが、良いのです。幸せにハッピーに終わったのはこれだけなのです。よいのです……っ!
ありがとう、タカヤ先生。これはもしかしたら東京も行くかもしれないな。でも同じ時期に月組が大劇場でやっているから難しいかな、行きたいな。

ツイッターでは「次は国際都市ナラで繰り広げられる天平アールヌーボー」というテーマがおもしろいのではないか、という話があり、なるほどおもしろい!と膝を打ちましたが、私としては「宇宙と交信することでミチナガを助けるセイメイ」とか「地獄と現世を行ったり来たりするタカムラ」の話とかもやって欲しいな!と思っています。
金太郎飴みたいに同じように見えるかもしれないけれども、きっとその度に新しい発見をもたらしてくれる! はず!とタカヤ先生のことは信頼できます。本当にありがとう!
ショーの感想はまた後日! あわちゃん、大活躍でしたね!

月組『川霧の橋』『Dream Chaserー新たな夢へー』感想

月組公演

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戸切絵『川霧の橋』-山本周五郎作「柳橋物語」「ひとでなし」より-
原作/山本周五郎
脚本/柴田侑宏 演出/小柳奈穂子

スーパー・ファンタジー『Dream Chaser -新たな夢へ-』
作・演出/中村暁


月組博多座公演、良かったですね〜! 良かったです。
柴田先生の脚本の素晴らしさはもちろん言うまでもないのですが、それを令和の時代になんのストレスもなくキャラクターに共感できる演出をしてくださった小柳先生も天晴れです。さすがだわ! 信頼度高い!
いい話なんだけど、タカラジェンヌにこう言うこと言わせる?みたいなイライラがない。すばらしい。若い演出家の先生たちは見習うといいよ、本当。あと「江戸切絵」というショルダータイトルもおしゃれでよい。

『川霧の橋』の初演については、ビデオが擦り切れるまで幼い頃に見た記憶だけが頼りです。
私はかなめさん(涼風真世)が好きだったので(友人は「ちなつ、よく歌うね?」と言っていましたが、そりゃかなめさんですからね!)、幸さんとお光の話というよりも、半さんとお組の話という認識の方が強くて、お組が亡くなるところなんかは毎回泣いて見ていましたね……ぐすん。

冒頭の火事の場面の後、髪型の綺麗な半さんが「あの火事から変わってしまった」みたいな語り手としての台詞が入りますが、これは一体いつの半さん……? と今更ながら疑問に思いました。
髪型が綺麗だから杉田屋にいた頃?とも思うけれども、「全てが変わってしまった」と言うのは物語を俯瞰しているようにも見える。
ただ物語の後半の半さんは渡職人をしながら、お組を探しているので、髪の毛が伸びっぱなし。
と、いうことはつまり、この語り手としての半さんはもしかすると、もう幽霊なのかもしれない、と思った途端、思わず「はーんさーん!」と心の中で叫びました。
物語のラスト、半さんは懐から包丁らしきものを取り出して、「お光さんの幸せは邪魔させない」と清吉を殺すようなことを仄めかして走り去って行きます。
その走り去っていくとき、ちなつ(鳳月杏)が美しくて長い御御足を見せてくれちゃうものだから、感動的な場面から一気に煩悩の塊になってしまうのですが、よく考えたら清吉を殺したら、半さんも島流しになる、けれども半さん自身はもうお組を見送った以上生きている意味がないわけだから、そのまま自害するのかな、と。なるほど、そうすると幽霊なのも説明がつくのかな。
半さん、あの世でお組と会えるといいね……!

とはいえ、お組は半さんのことをどう思っていたかと言うと、別にどうも思っていなかったというか、「単なる優しい人」止まりだったのだろう、とも思います。
もちろんその優しさはお組にしか向けられない種類の優しさなのですが、お嬢さんのお組はそれに気がつかない。気がつかないというか、そういう自我が育っていない。
油問屋の相模屋の娘として、いずれ親が決めた良い縁談に自分の人生を預けることに疑問がない。そういうものだと思っている。
おいちや番頭にも優しいところを見ると、身分に関係なく優しく人に接することを親から教えられているのだろうけれども、婚姻関係はまた別。
自分と半次との組み合わせは婚姻関係を結ぶという点においては身分が違う。お組のことだから、それをはっきり自覚しているわけではないだろうけれども、なんとなくそう思っている節がある。
『エルベ』のマルギットのような、地に足のついていないお嬢さんという印象がある。
火事の後のお組はさながら、カールと結婚した世界線のマルギットというところだろうか。「金がねぇのは首がねぇのと同じ」ということをカールはわかっていたのでしょう。

娼婦に身を落としたお組と再会した半さんが「その声はお組さん!」となりますが、お嬢さんだった頃のぽややんとした声からドスの効いた低い声に変わってしまったお組を多くの人はお組だと判別できないだろう。
それでも半さんがわかるのは、もちろん愛、愛なんだけど、お組はかつてお嬢さんだった頃の自分を知っている人に今の姿を見られたくない一心で、その愛にはやはり気がつかない。
むしろ一回しか会っていない柳のお甲が鋭く半さんの気持ちを察する。憎いねえ……!
探していた女性が娼婦になってしまった例はいくらもあるだろうが、それを知ってまで声をかけてきて、あまつさえ追いかけてくるような男をお甲は他に知らないから、半さんのことを忘れられなかったのだろうな。

お組は最後まで半さんの気持ちに気がつかないまま天に召される。布団の中のお組とお光のやりとりは、火事の前のように穏やかでありながらも死の気配がもうすぐそこまで来ていることを悟らずにはいられない。
その中でお光が「石にかじりついてでも生きなくちゃ」というのが切ない。
それくらいの気概がある人しか生き残れない時代であるのも辛い。

そんなわけで、半さんとお組の話だけで何故かここまで書いてしまったのですが、もちろん本作はれいこちゃん(月城かなと)とうみちゃん(海乃美月)のトップコンビプレお披露目公演でありました。
本当に本当におめでとう。とても嬉しいです。待ちに待ったコンビです。
れいこちゃんにはうみちゃんしか、うみちゃんにはれいこちゃんしかいないと思っていました。
雪育ちのれいこちゃん、月育ちのうみちゃん、花経験者のちなつ、というトライアングルは、花月雪が好きな私には大変嬉しいことです。期待しかない。
作品が決まったときは、おいおい見るからにプリンスとプリンセスの二人にやらせるにしては、ちょっと土臭くないかい?とも思いましたし、見てみるとやはりその気は完全には拭えませんでしたが、思っていたよりは違和感なく、芝居の月組!という感じでしたね。
小柳先生の力も大きいでしょう。次の『今夜、ロマンス劇場で』も期待しています!

初日付近の感想ではれいこちゃんの固さも目立ちましたが、次第にべらんめぇ調を自分のものとして駆使するようになってからは伸び伸びと自由に演技ができていたということで、とても良かったと思います。
私は杉田郎のべらんめぇ調が好きだなあ。れんこん(蓮つかさ)、良かったわ!
なんといっても初演はみつえちゃん(若央りさ)ですから、きっとアドバイスもいただいたのでしょう。
宝塚歌劇団の卒業生が外部の舞台で活躍するのも嬉しいですが、こうやって内部に残ってくれることにもちゃんと意味があるのだなと思えました。継承ってこういうことを言うんだな、と。
れんこんがベルナールを演じたらおちそうだな、怖い。もっとも『ベルばら』を上演して欲しいとは思わないのですが。

プロローグはいきなり火事の場面。れいこちゃんとうみちゃんの見せ場。
いきなりうみちゃんの体幹が発揮されていて、おいおい、膝立ちしながらどうしてそんなに背中をそらして一旦停止ができるの、すごいね?! と配信ですから声を上げてしまいましまよ、ええ。どういうこと。なんで倒れないの、さすがだわ。腰、痛めないでね。
半さんと離れた後のお光は舞台の真ん中でうずくまり、動けなくなってしまう。
やがてお光は立ち上がり、焦点の定まらないうつろな瞳のまま火事の中をどこかへ彷徨い歩いていく……のですが、ここの! お光の! うつろな瞳が怖いのなんのって。
おそらくもう記憶がないのでしょうけれども、作中には出てこないお光の中にある人間の影の部分、薄暗い部分が凝縮されたような気がして、身震いがしました。怖かった。
演出としては、うずくまったお光がそのままセリ下がっていく方法もあっただろうに、わざわざお光が一人で去っていく場面を描く意味を考えずにはいられません。

お祭りの太鼓、そして歌うれいこちゃん。
「ハアー春は桜の隅田川〜♪」って冒頭から力強くて最高でしたね?!れいこ!ちゃん!!!ってなりました。
お面をつけてうみちゃんと踊るのも素敵だった、可愛かった。
考えてみると、清吉にツバをつけられる前のお光と幸さんのやりとりはここだけなんですよね。
だから微笑ましい。ちょっと物足りない気がするけれども、幼馴染として、気の知れる相手としてお光が幸さんをそれなりに信頼しているのがわかる。
欲を言えば、そういう芝居の場面も欲しかったですが、まあそれは上演時間ってものがありますからね(海坊主か)。

芝居見物のお土産をもらうお光はいつもよりも幸さんとちょっと距離をとろうと思っているから「こんちわー」と棒読みとも取れるような挨拶をしてさっさと家の中に入ろうとしてしまう。
それを幸さんは「おいおい」と止めるて、しかし肝心なことが言えない「朴念仁」なわけで。いや、アキちゃん(晴音アキ)、良かったですよね〜! まだ月組にいてね〜! 専科に行っちゃわないでね〜!
随所で幸さんや半さんを気遣う台詞があるの、たまらない。「半さん、お口が空いていてよ」って小りん姐さんしか言えない台詞だよ……っ!

そして縁談がまとまらなかった幸さんとお光。
杉田屋の女将さんは、本当に善意から「お光を養子に」と言ったのでしょうが、その善意で深くお光の母親が傷ついたことを十分に承知している源六は、この婚姻を認めるわけにはいかなかった。
るうさん(光月るう)の源六、良かったですね! 本当にどんな化粧しているの?! ショーとはまるで別人ね?! となるのも楽しかったです。
コンクリートのない江戸の長屋暮らしですから、こんな風に過去に傷つけられたとしても、近くに住んでいる以上、生きていくためには、協力していかざるを得ない。源六さんがお光の母親と同じように傷ついたとしても、付き合いを断るわけにはいかない。
だから、まさか杉田屋の女将さんも自分の発言がお光の母親を傷つけたなんて夢にも思っていない。
そういう厚かましさを、しかし嫌味なく演じる副組長(夏月都)の芝居力たるや……!
圧巻である。『桜嵐記』でもすばらしかった組長副組長コンビですが、ここでも演技力が光り輝いております。お月様みたい!

かましい演技といえば、京三紗さんもさすがでしたね。
お師匠さんと呼ばれて近所では親しまれている彼女は、祭のときに「杉田屋さん、今日は大きな発表があるんですって? やっぱりご養子とりの」とあんなに大きな声で遠慮なく繊細な話題に触れてくるって、言ってみればものすごく厚かましいわけですが、それでも嫌味がない。
火事のときも「早くに出たのに人に揉まれて」吐息を切らして語る師匠は、その手に大事な商売道具を抱えている。
かましい師匠だけど、それが彼女の誇りだとわかる。
大体あの時代、女が一人で生きていくためには多少厚かましくなければできなかったことだろう。
すばらしい演技だった。江戸の人間の呼吸だった。
そういう意味では、梨花ますみのお常さんも同じ。髪結をしているということで、当時の手に職をつけている女性が息づいている。なんせ「髪結いの亭主は働かない」と言われた時代でしょう。
さすが専科! と膝を叩くと同時に、そういうところに月組から巣立っていったゆりちゃん(紫門ゆりや)やまゆぽん(輝月ゆうま)の今後の活躍を期待しないではいられない。楽しみです。

どれだけ息が苦しくても、狭いご近所付き合いの中で協力して生きていかなければならない。
火事はもちろん、他の自然災害に対しても、木でできた建物はあまりにも頼りなく、「悪い商人が商品を隠して値を釣り上げても黙って見ているくせに、大工の手間賃は厳しく取り締まる」ようなお上はもっと頼りない。
そういう共同体の中で、誰が誰を好いている、という話は筒抜けだというのもわかります。
ちょっと注意してみれば、幸さんがお光を好いていることは誰にでもわかったでしょうし、実際に小りん姐さんや清吉にはわかった。
けれども肝心の本人に伝わっていないのに「俺の気持ちはわかっているはず」とおぼこいお光に迫るのは、ちょっと違うのでは?!とも思うのですが、まああるよね、こういう身勝手なところ。人間だもの、と「朴念仁」ぶりを拝みました。
思えば清吉も「俺の気持ちはわかっているはず」と歌う。それこそまさに知らんがな、って話ですが。若棟梁になれなかった腹いせですからね。
清吉も本当にお光が好きだったのではないか?と思う人もいるようですが、私はそれはないだろうと考えています。
お光の言うように「幸さんに若棟梁の座を奪われた腹いせ」だったと思います。
上方から帰ってきた清吉と所帯をもったお光は「私のことを愛してはいなかったのね」と言います。
あれだけ上方で女遊びをしていた清吉は、おそらくお光に手を出さなかったのでしょう。
お光はいきなり清吉に告白されて、恋に恋していただけ、待っている自分に陶酔していただけということを、よりにもよって所帯をもってから知ることになる。
そして本当に自分を愛してくれていたのは、火事の中、元禄まで助け出そうとしてくれた幸さんに違いない、とはっきり悟る。悟るけれども、すでにそのとき、幸さんの隣にはおよしがいる。

いやあ、小りん姐さんではありませんが、ツギハギのお光と薄紅色の辻ヶ花を着たおよし、それを開放しながら歩く幸さんの場面は本当に「とてもこんな場面、見ていられない」という感じです。
お光がおよしに優しいのも、胃が痛い思いになる。私だったら「そこは私の居場所だ〜!」と言っておよしを刺しそう。もちろんお光がそういう女ではないからこそ、幸さんは好いたのだろうけれども。
辛い。辛すぎる。でも何が人を変えるのかは、わからないじゃないですか、とも思う。ここでお光が豹変しても誰も驚かない。
後の場面でも「清吉が不義理をしていたからおかみさんの弔いにも行けなかったけれど、今度、お線香をあげさせて」とお光は幸さんに言う。
なんで? なんでそんなことが言えるの? 無理じゃない? お線香とかあげられる? 私なら、平気な顔して弔いになんて、とても行けない。
それなのに、お光はそれができる。
狭い長屋暮らしをするとはこういう優しさを持つことなのか……と呆然としてしまった。
現代人はコンクリートを手に入れたことで、この種の優しさを失ってしまったのか、とまざまざ見せつけられました。つらい。胃がよじれるわ。
およしを演じたかれんちゃん(結愛かれん)もはかなげで良かった。ショーではあんなにパワフルに踊るのに、とても儚げでよかった。
儚げだけど小声で聞き取れないということもなく、演技ってこう言うこというんだな、としみじみ。

清吉が亡くなった知らせが来て、お組も亡くなり、半さんの説得で、ようやくお光は幸さんのもとに行く決意をする。
「お組ちゃんの分も幸せにならなくちゃ」という台詞は現代ではなかなか聞けない。
これは幸せの種類が増えたからなのだろうか、とぼんやり。
橋で待つ幸さんのもとに駆け寄るお光はもうつぎはぎの着物ではない。
けれども、およしのような訪問着でもなく、ただの小紋。それがお光らしいのだろうとも思った。
赤い小紋はお常さんから譲ってもらったものなのか、それとも実は幸さんが内密にお光へとお常さんに渡していたお金で買ったものなのか(名代が杉太郎というのがよくて、れいこちゃんにとってのれんこんが、たまきちにとってのゆりちゃん、まゆぽんみたいに見えたのよね)、いずれにしてもその時お光ができる1番いい格好なのだろうし、1番いい表情しているよ、うみちゃん……!
かんざしは、どうだろうなあ。芝居見物で幸さんが買ってきてくれたものなのか、それともそれはもう火事でなくなってしまったのか。
でも今からまた買ってもらえばいいもんね!
とか、呑気なことを考えていたら、「朴念仁」が急に真顔でお光の腕を掴むじゃない?ビックリだよね???
肝心のお光は蛍に夢中だけど、やがて幸さんの抑えきれない愛情に気がついて、なんの衒いもなくその胸に飛び込んでいく。
ああ、なんていいラストなの。
影コーラスのいちごちゃんも良かった。
っていうか、この作品、ほとんどの影コーラスをいちごちゃんが担っていた。『ダル湖』のときもそうでしたね。美声をありがとう。

そんなわけで大変満足できる芝居でした。
作中にはPTSD、ヤングケアラー、セックスワーカー、女の貧困といった現代でも通じる問題点がたくさんあり(嬉しくない)、衆議院議員選挙もあったことから身に染みて感じる部分も多かったです。
特に清吉の「悪い商人が品物を隠して値を釣り上げてもお上は黙って見ているくせに、大工や車間の手間賃は厳しく取り締まる。だからいくら働いたって貧乏から抜け出せない」というのは、本当に他人事ではないと感じたし(嬉しくない)、ありちゃん(暁千星)も迫真の演技だった。
例えば上記のことは今後少しは改善されるかもしれませんが(さらに悪くなるかもしれませんが)、人の生き方、愛のあり方というのは変わらず、普遍的な作品とはこういうことを言うのだなと心底思いました。
月組生、ありがとう。小柳先生、ありがとう。
これからの新生月組がますます楽しみになりました。
れいうみを応援する気持ちが一層強くなりました。

さて、お次はショー。
本公演から、あんまり得意なショーではなかったのですが(トップコンビのサヨナラ公演なのに、たまきちはうみちゃんと踊る場面があるし、さくらはありちゃんと踊る場面があるし、れいうみの場面はないし、なんで???って感じだったのです)、ちゃんと新しくれいうみのショーに生まれ変わっていたなと思います。
なにより最初に階段でれいこちゃんが一人で歌っているのを見て、思わず泣いちゃったからなあ。身震いがしたの。感動しちゃったのよね。真ん中に立っている……っ! て。
ミロンガで、帽子で隠してキスするれいうみが素敵すぎるし(れいこちゃんが不意打ちでうみちゃんに投げキスをしたらしいですが、なぜか見逃した!なぜ!)デュエットダンスはもはや神だった。
これまで見てきたデュエットダンスの中でも5本の指に入るレベルで好き。
れいこちゃんを焦らして、自分は散々踊った後、今度はれいこちゃんに焦らされるうみちゃん、頬を膨らませていて死ぬほど可愛かった。
なんなん?! あれ、思わず声を上げてしまったよ。なんなん?! 可愛すぎん??? やばくない???
うみちゃんのドレスも、すごくいいの。今の海乃美月の大正解!のドレスなの。
スリットをいれるタイプのドレスではなかったけれども、裾が喜んで空中を舞っているのがすごくよくわかる。あのドレス、本当にイイ!
ぜひサヨナラショーで着て欲しい(気が早い)。
当然、舞台写真は買いました!いつ見ても最高だね!

サヨナラショーで着て欲しいといえば、れいこちゃんのオープニング2着目の白にキラキラビジューが沢山ついたプリンス感溢れる衣装も最高だったから是非、ぜひともまた着てくれ着てください! と心の底から思っています。
素敵でした、すばらしかったです。愛しい。
男役群舞の「ふっ!」もすごくよかった。大きかったし、力強かったし、とても好みだった。ありがとう、れいこちゃん。

うみちゃんセンターの赤いドレスで娘役ちゃんズの場面も華やかで大変良かったです。楽しかったです。
またあのドレスも最高なんだよね。
スリットと見せかけた透けた感じの縦線。とても良い。そしていつになったらうみちゃんのスリットは見られるのだろうとも思っています。
あ、いえ、別に足が見たいとかそういう意味ではなく……スリットが入っているドレスを着ていると、いかにも娘役!って感じじゃないですか。普段、あんなスリット入った服なんか見ないからさ。
まさかのショートカットも良かったなあ。
エストレ』のあーちゃん(綺咲愛里)を思い出しましたね。好き。

ゆの(風間柚乃)が歌っていた昭和歌謡のパートはるねぴ(夢奈瑠音)でした。
ジャケットが少し大きいのが気になりましたが、気のせいでしょうか?
あれだったら前のボタンを閉めて着ても良かったのよ〜!というくらい余っていましたね。
お衣装合わせはしたと思うのですが、そのときかりまた細くなっちゃったのかな。ありうる。だってタカラジェンヌは妖精だから。

中詰の和風カンフーも、実は正直よくわからないなと思っているのですが(好きな人、本当にすいません)、最初に出てきた3人が、れいこ、うみ、ちなつの3人だったのはものすごーく良かったと思います。
新しい月組の顔を紹介するぜ!ってね。
トップになるとみんな痩せちゃうけれども、れいこもうみちゃんも今以上に痩せたらパワー不足になりそうで恐ろしいな!と体のラインがわかる衣装だと心配になりますが、カンフーのうみちゃんはまさにそれ。
ちゃんとお肉を食べるのよ……っ!

私としては円盤買いそうだわ〜! どうしようー!って感じです。
なぜならば本日観劇した花組も円盤を買いそうだからです。金欠!

雪組『CTTY HUNTER』新人公演感想

雪組公演 新人公演

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ミュージカル『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-
原作/北条司シティーハンター」(C)北条司コアミックス 1985
脚本・演出/齋藤吉正
新人公演担当/指田珠子

本日は月組博多座公演のライブ配信の日ですね。めでたい。
本当は博多座まで見に行きたいのですが、飛行機が苦手な上に、新幹線で行くとなると公演時間よりも片道時間をかけなければならないのがつらく、その上に仕事が忙しい……忙しい……死ぬほどいそがしい。
あまりにしゃべりすぎて声帯にタコができてしまったらしい。そんなことってあるのね。
そいうわけで夕方まで全力待機の身でございますが(投稿は夜ですが、書き始めたのは昼間だったのです!)、それまでに初めてライブ配信のあった新人公演雪組『CTIY HUNTER』について、書き残しておこうかと。

そもそも新人公演をライブ配信することの賛否もありましたね。
未熟な生徒たちの芝居を電波にのせる必要はない、宝塚の敷居が低くなる、というちょっと私には理解できないことを主張する人もおりましたが(前者は音楽学校を出ていて「未熟」というか? 後者は宝塚の敷居が低くなって何が悪いんだ?とそれぞれ私は思いました)、一方で学年の若い生徒たちにはのびのびとやって欲しいが、ライブ配信があると緊張するのではないかというのは一理あるな、という気はしました。
失敗をしても許される、という言い方は本公演よりも安いとはいえお金を取っている以上、なかなかおおっぴらには言えないでしょうが、それでも、そういう一面もあるのも確かだなと納得できます。

とはいえ、私はもちろん両手を挙げて賛成です。
なんといっても遠征民にとっては嬉しい。18時スタートの公演ですから、挨拶も含めれば終わるのは20時前後。
そこから新幹線にのって、最寄りの駅まで、となると少なく見積もっても2時間はかかる。
帰宅する頃には22時なわけですが、その時間の私はいつもならすでに布団に入っているような有様で、とても気軽に見に行けるものではありません。
もっとも次の花組の新人公演は我らが愛する美羽愛ちゃんがヒロインを演じますので、午後のお休みをいただき、そりゃもう意気込んで見に行きますけれども、翌日の仕事は遅刻もできないだろうから、きっとしんどいだろうな、と今から思っています。
私の体力よ、もってくれ。

そういうわけで、ありがたかった新人公演の配信。もっともこの作品が最初でよかったのかどうかは別の問題でしょうが。
特例でまだ100期が新人公演に残っている最後の公演。これなら月組でもやってくれよ……!と思いましたが、月組の頃はそんなことも議論していられないくらい戦々恐々とした夏でしたものね。仕方が無いのかな。
指田先生はめっちゃ期待できる演出家。『龍の宮物語』も楽しかったです。

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今では最後の涙が姫の涙だと素直に思えます。

さて、前置きが長くなりましたが、とりあえず冒頭のアミック・エンジェルが電話をしている場面だけで、個人的には「もととったな」という感じでした。突然安い女です。あみちゃん(彩海せら)にはめっぽう弱い。
グレーのチェックのベストも最高だな。どうしてその緑のシャツがそんなに似合うの。
あみちゃんの「まじか!」を一生保存しておきたい。
「エキゾチック・ジャパ~ン!」から始まるミックソング、楽しかった……これで燃え附けてもイイかと思った。
後ろのCAにまじって「ミック・エンジェル!」とコーラスしたい人生だった。新人公演くらいならいいでしょ(だめです)。
格好いいし、まじでひれ伏すわ。あみちゃん~! 好き~!
アミックちゃんが自分でいう「モテモテちゃん」はとても信じられるし、なんとなく許せる。そして本当にモテモテちゃん。
もちろん本役あーさ(朝美絢)だって説得力あるのだけれども、アミックの方はマダムキラーっぽい感じがたまりませんね。
ところどころあーさを思い出させつつも(あんまり他のキャラクターは思い出さなかった)、とてもよいミックでした。
楽しかった。一時期品切れだった舞台写真も買いました。ありがとうございます。合掌。家宝です。
あがち・はばまい・あみちゃんの三人のバランスは、思っていたよりもよさそう!と感動しました。
芝居のパートも歌のパートも三人のバランスが三脚のように安定していたのが印象的でした。
悪い顔のあみちゃんものりのりあみちゃんも好きです。
できれば冴羽の弾をよけるシーンも写してやってくれよ~! カメラワーク~!

注目はともか(希良々うみ)の冴子。みちるちゃん(彩みちる)よりも、硬質な警官という感じがたまらない。
その分、槇村に対しても一途に思っているように見えました。ヒューまじで格好良いな。これ、本公演じゃないの?
映像でみると冴子のスリット、やはりすごいな。そしてそんな身体のはらせかたでいいのか、疑問しか出てこない。
すみれコードとは一体なんだったのか。
冴羽あがち(縣千)とのデュエットソングは、もう完全にともかの方が上!って感じが良くにじみ出ていましたね。
ともかの方が歌がうまいから、のせられている感がある。
警察官の制服もよかった。禁欲的だった(なに)。

一方で、ともかの本役を演じたくるみちゃん(莉奈くるみ)はもう超キュート。
「どうしてそんなミニ、履いているんですか?」と香に聞かれるものの、ともかの衣装だからあんまりミニになっていないような気もするのもかわいかった。
本役よりも思いっきりコメディにふっていて、実に楽しそうだった。全国ツアーの『ヴェネチアの紋章』を思い出した。
こういうことをやらせるとピカイチだな。今後が楽しみな生徒の一人です。
「エロい女」も楽しそうにやっていたな~。それでいのか、演出には疑問はありますが。
しかしキャッツ・アイの場面は、カメラが引きすぎて全然わからなくてもったいなかったな。
全体的に後半は全景が多かったような気もします。これもコロナのため、距離を置いて芝居をしているせいなのでしょうか。

はばまい(音彩唯)のショートカットはかちゃさん(凪七瑠海)に似ているなーと。
小顔で、パーツが大きくて、パーツが求心の顎小さめ族とでもいうのだろうか。
オープニングのソロ、さすがですね。あえて欲を言えば「愛を止めないでもう~♪」のあとの「Uh~」みたいなところはやはりきわちゃん(朝月希和)の方が情感こもっている感じがしますが、これも経験でしょう。
歌はうまいし、真ん中に立つオーラもあるし、思えば新人公演のヒロインが初めてだというのが夢のよう。憎きはコロナとその政策だな。
最後のあがち挨拶のときは油断しているのか、やりきった感があったからなのか、棒立ちみたいになっていましたが、それもまた下級生ならではでしょう。

香の兄ははいちゃん(眞ノ宮るい)はやたらと可愛くてやたらと色気のある幽霊だなと思いながら見ていました。
「新宿ショータイム~♪」はかわいい兄妹だったな。
はいちゃんの、立っているだけで漂ってくるようなあの色気ってなんなんでしょうね。
そして最後にやはり新人公演主演をやらせてあげたかったという気持ちは出てきました。
この作品でええんかいっていう話はもちろんあるのだけれども、それでも、ね。

ありすちゃんの美樹もよかったなー。もうちょっと声が聞こえるとさらに良い。本役のりさ(星南のぞみ)の雰囲気はありつつも、こちらも、海坊主との銀橋のシーンは圧巻だった。あの場面、本当に好き。
どうして冴羽と香よりもこのカップルの方が「話」があるのだろうかっていう話ですよね。
全ては脚本のせいでしょう。「ハッピーじゃなければ、エンドじゃない!」というべにあーの標語を思わせるカップルですね。

かせきょー(華世京)の豊もよかったですね。荒削りだけど、全身で芝居しているのがわかるのがいい。
ちょっとチークが濃かったような気もしますが、それはこれから。まずはハートのほうが大事。
化粧の技術は経験でうめられるから。楽しかっただろうな^^

アルマを演じた華純沙那ちゃんは抜擢でしょうか。芝居も歌も安定していて、オーラもあり、舞台度胸もありそうです。
これからが期待できる生徒の一人ですね。
友人の推しである聖海由侑はマサ。おひげをつけていて、私は最初、気がつかなかったけれども、マサが出てきた瞬間、友人から「せいみゆうじゃん!」というひらがなのラインをいただきました。嬉しそうで何より。歌う場面がなくて残念でしたね。
ねこまんまの場面では、すわんちゃん(麻花すわん)がアップで映る。劇団の推しだなーと思いながら、確かに可愛い。

全体的に新人公演の方が「お芝居をしている」感が強かったように思いますし、好みからいえば新人公演の方が好きだったかもしれません。
脚本は、言っていれば「事件はあるけど、芝居はない」ドタバタ劇みたいに見えて、上級生だと良くも悪くも経験と技量があるものだから、それでなんとか魅せられてしまうのだけれども、その技量の分を新人公演は地に足のついた芝居をすることで埋めようとしていたように見えました。
芝居をしていたから、きっとこちらの方が好きなのでしょう。ありがとう、指田先生。

東京公演も千秋楽が迫っており、当初から上がっていた脚本の問題点も、東京公演が始まった頃は問題視されていましたし、東京のお客さんの方がその手の視点は厳しいなと思ったのですが(そしてショーは改善されたのに、芝居は改善されなかったという違いも大きい)、そろそろ一周回って演出家の先生を擁護する声もあがってきました。
サイトーにしては頑張ったとか、品に関しては原作者が「原作のせいだ」といっているではないかとか(それって演出家の役割をどう考えているんだろう?)、あの年代の空気を出すためには仕方が無かったとか。
なるほど、おもしろいな、と一周回る現象自体は楽しんでいるのですが、やはり、私は納得できない派だな、と。
大切なタカラジェンヌたちに何をさせてくれてんねん、と思います。文句言うなら見るなという人もいそうですが、大好きだから文句を言うのです。批判精神をもっていることが近代人の証でしょう。
個人的にキッツいのが、ミックが香おお尻を触るところ(既知の関係だから許されるだろう)とアキが自分からお尻を触らせるところ(そんな女はいない)です。気色悪いなと思って見ています。
以下のブログにも大変共感したので、貼り付けておきます。

blog.goo.ne.jp

東京千秋楽はライブ配信で見る予定です。
改変したショーを楽しみにしています。

星組『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』感想

星組公演

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宝塚剣豪秘録『柳生忍法帖
原作/山田風太郎柳生忍法帖」(KADOKAWA 角川文庫刊)
脚本・演出/大野拓史

ロマンチック・レビュー『モアー・ダンディズム!』
作・演出/岡田 敬二

どこを切ってもセクハラしかない原作を、そのまま宝塚の舞台に乗せてくれちゃったヨシマサへの恨みが募りすぎて、今度はどこを切ってもエログロナンセンスしかない原作が、そのまま舞台に乗っちゃったらどうしようという悩みがつきなかったのですが、そんなことは全くありませんでしたね。
むしろ大野先生、疑って申し訳ありませんでした!
大野先生といえば『エドワード8世』や『白鷺の城』は大好きですが、一方で『NOBUNAGA』や『Bandito』はよくわからんなーと思ってしまい、『阿弖流為』『シラノ』はその中間、好きそうな人がいたら見せてあげたいなという感じですかね。
あんまり期待していなかったのに友会が友達になってくれてSS席なんて当ててくれたもんだから、いそいそと出かけたのがもう2週間前の話。
慌ただしくて感想も書けたものではなかった。仕事が恨めしい。

そんなわけで、良かったですねー。
何が良かったって、あくまで十兵衛は堀一族の女たちの復讐の手助けをする「だけ」なんですよ。
最後は女達に手を下させる。それは千姫の願いでもありましたし、しびれたなあ。
てっきり虹七郎は十兵衛が殺しちゃうかも?と思ったけれども、足の腱を切って動けなくなったところを、堀一族の女たちに斬られまくる。いっそ、爽快。
七本槍のメンバーは一人一人は強いかもしれないけれども、七人の女が作戦をもって力と知恵を出し合って戦う前には倒れ行くしかない。これがシスターフッドってやつや……おばあちゃんが言ってた……と思いましたね。感動。

その七本槍はせおっち(瀬央ゆりあ)演じる虹七郎がセンターなわけですが、このお衣装、私には『BLEACH』の死神の衣装にしか見えなくてですね……いや、あのポニーテールもよかったです。
残忍な人殺しなのに、花まで挿しちゃってまー可愛いことw
で、ビジュアル的にずるいなーと思ったのがかりかりんたん(極美慎)演じる銀四郎の衣装ですよ。
何、あの義経の幼少期みたいな衣装!? 一人だけカラフルだし、平安時代かよ!とツッコミが入りそうな優雅なお衣装だし。
お顔に入っている傷だけが、その残忍さの唯一の証みたいになっているの、ずるくないですか? ずるいですよね?
そんなのずっと見ていたくなるからやめてー!? 惚れてまうやろー!?という感じでした。
ああいう衣装、駄目なの、私、弱いの、好きなの……。くっそ!!
一人で十兵衛が乗り込んできたときも、銀四郎は怖い顔してないんですよね。冷たくせせら笑っている。
隣で虹七郎が厳つい、難しそうな顔をしている横で、白い歯を見せて笑っている。完全に相手を見下していて、相手にする気もさらさらないって感じ。たまらんわ~~~!
おかげでショーもかりんたんを割と見ていました。時すでに遅し、という気もする。

あかさん(綺城ひか理)の廉助は、あんなボタンの着物、めっちゃ目立つでしょー!?と最初に思わず笑ってしまった。
そしてまさかの気孔使い。武器が無くても戦える。歌ったら当然うまい。なるほど、武器がなくても戦えるわけだ。
虹七郎や廉助にとって、自分たちの「真の主」とはゆらの子であるのに、その子を母体ともども斬ってしまうのが銀四郎という皮肉よ……七本槍は決して一枚岩ではない。
七本槍は、衣装替えがなかったのは残念だったかもしれませんが、あれと同じモチーフでもう一着それぞれに作るのは、それはそれで難しいかも……となりました。

さて、そんな七本槍を束ねるのが愛ちゃん(愛月ひかる)の芦名銅伯。
自分の顔よりも大きいのでは?と思うような骸骨を縫い付けた着物は、ヨッ!厨二の頭領!という感じなのですが(やめなさい)、彼が十兵衛に殺されるのなくて、本当によかった……っ! GJ大野先生!
もうね、二番手が退団する作品で、トップに斬られるってめっちゃ辛いんですよ、個人的に。
夢現無双』も『アウグストゥス』も辛かった。みやちゃん(美弥るりか)もあきら(瀬戸かずや)も最後なのにそれえええ?!という感じだった。
もっとも琴ちゃん(礼真琴)と愛ちゃんはずっとそういう敵対するお役が多かったとは言え、その集大成だから斬られてもいっか☆とは思えなくてですね……だから、愛ちゃんが双子の片割れと共に滅んでいくのは美しかった。
美しいといえば、回想に出てくる銅伯黒髪ヴァージョンも大変に美しかった。

第十一場Aにおいて、千姫は、銅伯の命運が天海大僧正と同じであるならば、徳川幕府安泰のために復讐を諦めてくれ、というようなことをお千絵に言う。そしてまた後から出てきた天海大僧正も同じようにお千絵を諭す。
けれども次の場面で、天海大僧正は自らの手で自らの命を絶つ決意をし、実行に移す。
この間に何があったのか、深くは描かれていないけれども、きっと諦めきれなかったお千絵が説得を試みたのではないかなーと勝手に思っています(原作を読んでいないのでわかりませんが)。
そのお千絵の説得に千姫天海大僧正の心が動いたのなら、いいな、って。

私はあんまり宝塚にラブを求めないタイプだと思っていたのですが(それよりも脚本の善し悪しが気になるタイプ)、今回思いの他琴ちゃんとひっとん(舞空瞳)の絡みが少ないのはやはり気になって仕方がない。
もっともチャンバラよりもラブが見たいというのはあるのかもしれませんが。
『出島小宇宙戦争』はラブはないけれども、大劇場公演でなかったからあまり気にならなかったのかもしれません。そういう意味で次の『元禄バロックロック』はちゃんとラブがあるといいのですけれども。
ひっとんもお衣装は一着だけだったしなあ……淋しい。
あとひっとんのキュートな丸顔が失われつつあるような気がするのが辛い。もっと食べていいのよ。
ラスト、舞台上でゆらが舞い、十兵衛が銀橋で「俺だけが弔える女がいる」と言うのは良かったですねー!? あれは痺れた。
ああいう痺れがもう少し作中で欲しかったのやもしれません。
ゆらがスコーンと十兵衛に落ちたことに違和感のある人もいるようですが、私はあんまり気になりませんでした。
そりゃ自分のことを手駒としか思っていない父親や元恋人なんかに囲まれて育ったら、他者のためにあれだけ無我で尽くせる十兵衛に落ちるのもわかるような感じがするのよ、私には。
自分を損得勘定で見ない男、それが十兵衛だけだった。それは彼女にとっては悲劇だけれども、だからこそ彼女は十兵衛に恋する。
で、十兵衛の方はどうなのさ?という感じはある。

沢庵和尚と多聞坊のコンビ、良かったですね~。まさか『龍の宮物語』の竜神とその弟がこんなコメディコンビになるなんて、一体だれが夢見たでしょうか!
みっきー(天寿光希)もかのんちゃん(天飛華音)もおもしろかったです。
沢庵は銅伯と天海大僧正の命運が同じであることを知り、やはり千姫と同じように十兵衛を説得しようとする。するのだけれども、あの言い方がなんていうかもう……w
自分の説得なんて聞かないことがわかりきっているあの諭し方、なんなんですかね? おもしろくなっちゃうじゃないですか。
後から「きっとお前はそう言うだろうと思った」みたいなこと言いますが、クサいのよ、芝居がw
一方で、一生懸命十兵衛の影武者を演じる多聞坊。涙ぐましい努力よ……。さぞ怖かっただろうね、虹七郎にあんなに睨まれて……よく頑張ったね、坊や、という感じでした。
かのんちゃんはこちら側の路線で行くのでしょうか。紅さんの香りがしますが、『食聖』の新人公演も良かったもんね。
今回は今までのキャラクターとは違う十兵衛ですし、はてさて新人公演、どうなることやら。楽しみです。チケットないけど。

主題歌はほぼ十兵衛一人で歌うのですが、十兵衛が歌っている後ろに七本槍がくると、十兵衛が七本槍のラスボスに見えるのもおもしろい上に、「叫べ 叫べ」とか「燃やせ 燃やせ」とか2回目のフレーズは影ソロだったり、別の人が歌ったりしそうなものなのに、全部琴ちゃん一人で歌っているのは笑った。要は歌がうまいんだな、納得。

なっちゃん(白妙なつ)の千姫はさすがだし、その養女くらっち(有沙瞳)の天秀尼も良かったです。
ずっと尼の格好というのは淋しい気もしますが、他のキャラクターもわりと衣装少ないしね。歌もあったし、良かったでしょう。
最後に堀一族の女たちがこの天秀尼の東慶寺で亡き一族の男たちを弔いたいと言ったのも良かったです。
これで「このまま会津を乗っ取ろう!」という話にならないのは、さすが女たちよ……と涙ぐみました。

さて、お次はショーの感想。
まあね、歌がね、うまいんだよね、うん、わかっていたよ。さすがです、琴ちゃん。
プロローグ、四食カラー一列で、動きは体育の集団行動を連想させながらも、表情はもうみんなにっこにこで、この舞台の下はもちろんだけど、上にもヅカオタしかいないな!と思いましたね。すごいわ。みんな憧れのあのシーンに出られるのが嬉しくてたまらんのやね。
そういう感情がビシバシ伝わってくる。おめでとう。みんなよかったね。

愛ちゃんの全てがよい。最初のオレンジもいいし、薄紫もいいし、キャリオカもいいし、ルドルフのような白い軍服もいい。
ことなこのデュエットダンスで「アシナヨ」を歌うときのお衣装もよい。愛ちゃん! 愛ちゃん!となる。
銀橋にもたくさん出る。私はあんまりロマンチック・レビューが得意ではないのだけれども、今回は愛ちゃんのためにそれで良かったと心の底から思える。
もういっそのことサヨナラショーで『うたかたの恋』をやればいいと思うんだ、私。
別にあれは「今までやってきた作品」だけではなくて「憧れのあの曲」も歌ってもいい場所でしょ、彼女の宝塚人生がわかればいいんだからさ。

かのんくんがこれまたイイ。
この子、本当に踊っているときの表情や身体のキレが抜群にイイのよねー!
ほのちゃん(小桜ほのか)との並びも良かった。すごく良かった。うわわあああ!ってなってしまった。
レヴュー本見たときは「もうちょっとなんか、言葉のセンスはどうにかならんのかいw」と思ったけれども、このダンス力と引き換えに失ったものがあるんだな、と素直に思いました。
ほら、タカラジェンヌって画伯が多いし、画力と交換で光るものがあるよね、って思うからさ。

ひっとんも可愛いの連続で幸せでした。
ピンクのスーツっぽい衣装(しかしあの襟はなんとかならんのかな)、ちょっと民族っぽいドレス(ダンディズムとは?とは思いましいたが)、キャリオカのファー付きドレス(最高だな! 天才だな!)、ラテンの赤のドレス(舞台写真、絶対に欲しい)、デュエットダンスの青のドレス!(しかしなぜひっとんだけ歌わせないのだ!?)どれも良かった……ハア!素敵!

間奏曲(1)の愛ちゃんの場面はさ、もう涙なしでは見られないよね……あの薄紫の衣装もいいし、歌詞もいいし、愛ちゃんもいいし、銀橋渡るし、私はSS席に座っているし……で、もう最高のオンパレードだった。
間奏曲(2)の「ビューティフル・ラブ」は娘役ちゃんたちの場面。シトラスかよ!みたいな衣装でくらっち(有沙瞳)とほのちゃんがダブルセンターでやってくる。ここで見つけたかわいこちゃん、澄華あまねちゃんを、どうぞよろしくお願いします!
ピンクのドレス、はちゃめちゃに似合っていたなあ……。
間奏曲(3)はせおっち!オン・ステージ!って感じでしたね。生き生きとしていました。あのパステルのグリーンが似合うってすごいな。パーソナルカラー? なにそれ? 色がこっち来い!みたいね。素敵。

「ゴールデン・デイズ」は、白い愛ちゃんも素敵だったのですが、娘役ちゃんたちのドレスも良かったですね。
別にオリジナルってことはないんですが、「これは『ファントム』、あれは『はいからさん』、こっちは『壬生義士伝』」とかドレスをオペラで追いかけるのが、楽しかったです。
そしてみんなバッスルドレスを着ているけれども、一際目立つくらっち。さすがである。オーラが違う。
「ハード・ボイルド」は『ダンディズム!』といったらこれだろ!という場面ですからね。
そりゃ楽しく見ましたよ。堪能しましたよ。何度も言うけれどもSS席、ありがとうございました。毎回当ててくれてもいいんだよって思いましたね。
稽古場でひっとんが歌っていたりしないかしら。「俺が抱き お前が抱く 一瞬の永遠」って。ひっとんにも歌ってもらいたい歌詞ですね。

私はショーにおいて、一つの場面が長いのはあんまり得意ではないのですが、今回はあんまり気にならなかったかな。
星組はあんまり気になる下級生がいないということもあるのかもしれません。
少人数で見たいのは、やっぱり下級生に注目したいからなのでしょう。
あとは、岡田先生はそろそろロマンチック・レビュー決定版みたいなのを出したらどうだろうか。
オリジナルはもうしんどいのはわかっているからさ。なんか新しいのが出る度に「でもこれってつぎはぎ?」と思うのも、なんだか淋しいので、お元気なうちによろしく!

ホイホイされて追いチケしましたので、今週末も行ってきます。
今度こそ殿堂にも行ってくるぞ!

保健所の指定しない「濃厚接触者」になった話

ファイザーワクチン1回目摂取は、摂取部位の痛みしかなく、無事に終わった感じでした。熱も36.8以上にならなかった。
なんなら摂取翌日は仕事させられたしね!これなら観劇できたわ!というレベルです。
夫は2回目より1回目の方が軽かったし、本当に副作用といっても様々ですね。

さて、タイトルの通りです。
少し前ですが、保健所の指定しない「濃厚接触者」になりました。
それだけなら別に何も書き残すことはないのですが、そのときの周りの反応が気がかりだったので、ちょっと筆を取ります。
結論から言うと「少しくらい仕事休んでも許容し合える社会にしてくれ」ということです。

仕事の関係で、職場以外で研修を受けることになりました。
研修自体はオンラインでもできるのですが、オンラインで研修をした同僚の話を聞くとあまりにも馬鹿馬鹿しくて(その人はパワーポイントを全部スマホで写真撮って、それを見ながらテストを受けていた。誰でもできるやんけ、適正関係ないやん)コロナの危険性は多少あるものの、やっぱり対面で研修を受けたいなと思い、対面研修を選びました。
あらゆる研修場所と内容を比較しただけあって、資料が送られてきたときは思わず読み耽ってしまうほどおもしろかったのです。
仕事しているよりも研修を受けていた方が楽しいだろうなとさえ思いました。
場所も、職場の半分くらいの時間で言えるところで、朝も帰りも楽だった。時間外勤務がないって最高。

研修を受けていた頃は「犬も歩けば感染者に当たる」みたいな時期で、5日連続新しい感染発覚者が4桁を超えるような日が続いていました。
発覚は月曜日のお昼。
金曜日の午後に1時間ほど距離をとってマスクをしたまま6人でグループ討議したメンバーのうち5人が集められ、来ていないその1人が金曜日の夜に発熱、陽性だと知らされました。
当時の保健所の基準はザックリ言うと「マスクを取って15分以上一緒にいた」場合、濃厚接触者になる、というようなものでした。状況にもよるでしょうが、もっとも想定されやすいのは、やはり食事時でしょう。
ただ、私たち6人は上記の通り「マスクをしたまま」一定の距離を保っていました。だから濃厚接触者にはあたらない、と思ったのですが、ところがどっこい、そうではありませんでした。

保健所の基準とはまた別に、会場側が常日頃採用している基準によれば「グループ討議をしたら濃厚接触者」ということになっているのです。
そして濃厚接触者には「2週間の自宅待機のお願い」がされました。
保健所よりも厳しい基準ですが、多くの人が出入りする場所ですし、それも仕方がないかな、と思いました。
会場から提示された「お願い」も、確かに厳しいけれども、最長の潜伏期間を考えれば、人命には変えられないからな、という思いで、予定されていた仕事を依頼することや遊ぶ約束のキャンセルなどが脳裏をよぎりました。
遊ぶ約束に関しては、楽しみにしていたけれども、仕方がないや、と。
仕事の方は周囲に仕事を頼むのは気が重いけれども、まあなってしまったものは仕方がないでしょ、と。
観劇の予定が入っていなかったのは幸いでした(もっとも自宅待機を命じられた2週間後の翌日は観劇日であった)(そして実は月曜日の前日は観劇予定でしたが、観劇を諦めていた。結果的には大正解だった。ナイス判断!)。
私は会場側が去年、一生懸命考えて作ったであろう基準を自分が勝手に変えることはできないと思いましたし、会場側はその厳しい基準のために大多数の人間が出入りする中でもクラスター(集団感染)発生していないと言っているし、念には念を、という気持ちはよくわかる。人命には変えられないから。
保健所が認定しない、会場基準の「濃厚接触者」だから、PCR検査をしてもらえないのは腹が立ったけれども、普段出入りしている人ならともかく、研修のためだけにやって来た外部の人間のためだけに考えていないところがあるのもね、みんなこのヘルジャパンで忙しく働いている傍らで研修してくださっているのだから仕方ないよね。

せっかくの機会だから買っただけで読んでいない本や見ていないBlu-rayを消化するか……と、粛々と2週間の自宅待機の予定を考えていたのは5人中、なんと私1人だけだった。
ワクチンを2回打った人でさえ、それはちょっと……みたいな雰囲気だった。いや、打ったからこそ、なのかな?
ちなみに私はこの時点で1回目さえ打てていないし、メンバーの中にも予約は取れているが、打てていない人が多かった。

「子供の幼稚園が閉鎖になる。そうすると他の親御さんにも迷惑がかかる。専業主婦の人が使っている幼稚園ではないのだ」
「来月からの仕事は休めない。どうしてくれるんだ」
「お願いベースなら、拘束力はないってことですよね?」
「濃厚接触者の基準が保健所より厳しいのはありえない」
「今週、職域でワクチンを打つ予定だったのに、どうしたらいいんだ」
などなど。まあまあ、みなさん立派な社畜ですこと。
さすがヘルジャパン。
一つずつツッコミ入れてもいいですか?

「子供の幼稚園が閉鎖になる。そうすると他の親御さんにも迷惑がかかる。専業主婦の人が使っている幼稚園ではないのだ」
わかるよ、わかる。他の親御さんに迷惑がかかるんだよね。でも、ウイルスを持っている子供が園に通うことの方がよっっっぽど迷惑だと思うんだ!
どうやら子供の家族に濃厚接触者がいたら、その時点で閉園、附属の幼稚園だから、他の校種も閉鎖になるから困る!というのだけど、なんだ、その厳しすぎる基準。むしろそっちを疑うという方法はないのか?
どれくらい敷地が近いのかわかりませんが、マスクしたままなら討議を一緒にやっても問題ないと言っておきながら、他の校種まで閉鎖する必要はあるのか?という疑問は浮かばないのか。
あと専業主婦を見下したような物言いもちょっと気になるのよね。
わかるよ、働きたくないんでしょ、本当は。わかる。
でも職場にも隠したいというのはいくらなんでも無理があるよ。いくら正規職員ではないからといってもね。……という言い方をすると、非正規を馬鹿にしているように聞こえるかな。
でも職場に伝える義務は、そこで働いている以上あるだろ。

「来月からの仕事は休めない。どうしてくれるんだ」
わかるよ、わかる。私たちの仕事は今月と来月では仕事の量が全然違うものね。
なんなら、今月はちょっと余裕があるから研修を受けに来ているんだものね。わかるよ。
わかるけれども……!そんなの!会場に言わないで、自分の上司(管理職)に言えよ!
それはもはや会場の責任ではない。
私だって心配だし、むちゃ大事な会議もあるんだけど、でもあとで取り返すしかなくない?
ちょっと日程ずらしてもらうしかないって思っていたよ?
だって人命には変えられないでしょ……っ!

「お願いベースなら、拘束力はないってことですよね?」
お願い聞かない気満々やな。
会場の管理下にある人間なら拘束力を持たせた発言ができるのだろうけれども、私たち部外者を拘束するほどの力は会場側も自分たちにはないと思っているのよね。
聞かなくていいなら、私だって遊ぶ約束だけは果たしたいよ。
仕事だけして遊ばないのが最悪のパターンだよ。
リスク冒してまで働きたいですか?
私は絶対に嫌。遊んでいて感染するほうがマシ!
っていうか、そういうこと、布マスクをしながら言う?
発言と行動がちぐはぐなんだよ!怒

「濃厚接触者の基準が保健所より厳しいのはありえない」
場所の特性に合わせて、場所毎に多少基準が違うのも仕方がないことでしょう。
むしろ、保健所の基準よりもゆるい場所があったらそっちの方がビックリだけど。

「今週、職域でワクチンを打つ予定だったのに、どうしたらいいんだ」
そんなことは病院に言ってやれよ……っ!
会場に言われたってわかるわけ、ないだろうが!
なんなの?バカなの?

その後、5人で離れて座ってマスクしたまま「作戦会議」とやらに参加させられたのですが(それがそもそもハイリスクだと何故気が付かないのか?)。
どうやら皆さん、とても働きたいらしい。
仕事に穴を空けると鬼のように怒る同僚や上司がいるのか?と疑ってしまうほどには働きたいらしい。
私は全く働きたくなかった。
大人しく2週間の自粛のお願いを聞く気満々だった。
ちなみに私が陽性者の方がウレタンマスクだったことを指摘しても「でもそんなに飛沫は飛ばなかったし!」とか言っちゃうのね。
人の唾の大きさとウイルスの大きさって全然違うことがわかっていない。
ウレタンマスク禁止の学校や劇場もあるのに、そういうことを知らないのか、知っていて目を背けるのか。
挙げ句の果てに「あの人、あんまり喋らなかったし」と記憶の美化(捏造)を行い始め、しかもそれを共有させようとする。人間って怖いなと思った。
職場に連絡しないで済む方法を模索する人もいたけれど、いやそれはさすがにまずいでしょ、と別の人が言うとシュンってなっていた。まずいに決まっているだろうが。
結果としては「上司への報告の仕方次第」みたいなところに落ち着いて、みんなで連絡先を交換して30分くらいでお開きになったかな。

お開きになった後すぐ職場に連絡したけれども「会場側が過敏になっているだけ。問題ないから研修明け予定日から出勤して」と管理職からは言う。
すげーな、この危機管理能力のなさ。1から10までがーばがば。もっとも「今、検査したら、無自覚の陽性者がわんさか出るに決まっているから、検査しないに越したことはない」とか言っちゃうような管理職だからな……信じられない。アンビリーバボー。
「オンラインにしておかないから〜」とかなんとか言われなくてよかったけれども。そんなこという暇がないくらいに迫り来るその後の対応で頭がいっぱいだったのだろう。結局何の対応したのかよくわからない有様だったけどな。
他のメンバーの中にも、職場に連絡したら「出勤していいよ。むしろなんでその程度で濃厚接触者?」「そんなことで濃厚接触者認定していたらキリがない」みたいな反応だったらしい。なんでやねん。ツッコミが追いつかねぇよ。
中世ジャップランドは人命を大切にしないのだな。

私が1番残念だったのは残りの研修が課題に変わってしまったこと。
講義、受けたかったなあ。せっかく自腹で3諭吉も出すのだし(ほとんど講習名言ってる)。
私、やっぱり勉強するの好きなんですよ。
これも命あっての、というところだから仕方がないのだけれども。

仕事を急には休めない。
たったこれだけのことが、どれだけの波紋を呼んでいるのか。
たかだかこれだけのせいで、どれだけの人間が不要なリスクを負っているのか。
まざまざと考えさせられた出来事でした。
仕事くらい、ゆるく休みたい。
気分が乗らない日もある。雨の日は憂鬱だ。
学校での皆勤賞に大きな価値や意味づけを行わなくてもいいのでは?
みんなで我慢大会する国から脱しようよ。
有休消化率9割目指そうよ。2割も使えていないんですけど……。

これは最近聞いたことですが、ある市町村の中学ではクラスで感染者が確認された場合、保健所が「濃厚接触者なし」と判定しても、同じクラスの生徒はPCR検査を自治体がお金を出して受けさせるそうな。
そうして1人とか2人とか陽性になるみたいだから、やはり保健所の基準ももう少し何とかならないものかなとは思う。
というか、ワクチン接種がスムーズに行えて、ワクチン・パスポートも普及して、街の至る所でPCR検査受けられて、結果がメールで送られてきて、陽性でも保健所からたんまり食べ物が届いて、そういう生活は本当にできないのだろうか、と諸外国が羨ましくなる。

花組『哀しみのコルドバ』『Cool Beast!!』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp

ミュージカル・ロマン『哀しみのコルドバ
作/柴田侑宏
演出/樫畑亜依子
パッショネイト・ファンタジー『Cool Beast!!』
作・演出/藤井 大介

全国ツアーも無事に千穐楽を迎えられて何より!
しかし私の感想記事は全く間に合っていなくて最低だな! 9月当初は鬼のように忙しいのだよ、ワトスンくん……(作品違う)。
お芝居は言わずと知れた柴田作品『哀しみのコルドバ』。私はどちらかと言うと『琥珀色の雨に濡れて』の方が好きで、母親が多分ヤンさん(安寿ミラ)主演のビデオをもっていたと思うのだけれども、あまり記憶にはなく、やはり最近の雪組ちぎみゆ(早霧せいな・咲妃みゆ)コンビの再演が印象に残っております。
とはいえ、みゆちゃんはとても好きなのですが、なんといってもちぎさんをそれほど買っていなかったというか、苦手であったこともあり、着眼点は専らリカルド・ロメロ役のだいもん(望海風斗)でした。
しかしロメロってこの芝居では、そうね、たしかにヒロインのエバを主人公のエリオと取り合い、決闘未遂までするものの、なんとなく私の萌えポイントには刺さらなくて、作品全体としてそれほど興奮した記憶がありませんでした。

けれども、今回はジーンと来ちゃったなあ、というのが素直な感想です。
この作品のオチであるエリオとエバは実は腹違いの兄妹でした、というのは、大事な設定ではあると思うのですが、実は話の肝はまた別のところにあるのではないかなと、ずっと思っていて、ただそれが何なのかよくわからないから、ぼんやり見るしかなかったような気もするのですが、今回は「時間を前に進めようとして行き止まりになったエリオ」と「時間を後ろに戻そうとして行き止まりになったエバ」の対比が見事で、なるほど!と膝を打ったのでした。パーカッションやで。
マタドールとしての栄光を手にしながらも驕ることなく、恩師の娘を婚約者とし、何一つ不自由ないエリオはエバと再会して、自分の意思で未来を決めようと行動する。エバと結婚しようとする。
もちろんエバもエリオと結婚しようとするのだけれども、それはあくまでも失くした時間を取り戻そうとする行動であり、無邪気さは子供のようでさえあり、かつての幸せな2人に戻ろうという強い気持ちに押されているようでした。
エバがエリオが相手であっても素直に明るい未来を思い描けないのは、淑女になるための修行を重ね、シルベストルと結婚し、しかし若いうちに未亡人になり、その後も引くて数多だっただろう中からリカルドの恋人ないしは愛人となり、散々人生の苦渋を舐めてきたからなのでしょう。そしてそれらはエリオがぶつかりようもない不幸ばかりで。
赤いドレスで最初に登場するエバが一番大人で、理性的で分別のある大人に感じられました。反対にエリオは純粋少年のまま大人になっていたところ、エバとの再会を経て、ぐっと大人になったと見えました。

マタドールとしての栄光の道を諦め、エリオ・サルバドールという一人の男として、エバと生きることを決めたエリオは、ロメロと決闘をしようとする。
けれども、決闘をする意味がなくなる真実を聞かされ、呆然としてします。
彼はもう「エリオ・サルバドール」として生きていくことができないと知ってしまうからだ。
だから残るのはマタドールとして生きることなんだけど、こちらもまた道が続いていないことがわかっている。
次の舞台が彼の最後の舞台であるからだ。
決闘未遂のあとのエリオには「いかに生きるか」という問いはない。空っぽだ。
その問いを「いかに死ぬか」に生まれ変わらせたのは、ロメロがエリオから銃を受け取りながら言う「君はスペインの誇るマタドールだ」というような台詞。
そう、エリオにはもう死しかないし、しかも「マタドールとしての死」しか残されていないのだ。
愛する人の死を目の前に突きつけられたエバとしては、たまったもんじゃないだろうが、でもエリオはああするより他に仕方がなかった……と思わせる演技でした。

追加されたロメロがエバにプロポーズする場面は、私にはあまりよくわからなくて、そもそもスペインはカトリックの国だろう、再婚はダメなのでは……?とうっすら思ったのですが、しかしプロポーズするくらいロメロが本気だったからこそ、コルドバでエリオとエバの逢瀬を知ったときには、ビンタするんですよね。
雪組ではだいもんロメロがエバにキスをしようと顎をくいと持ち上げてからのビンタだったから、屈折した愛情を感じずにはいられませんでしたが、今回のロメロさんは直球の愛情だったのですね。
とはいえ、私自身がカッシーの意図を汲めたとも思えないので、カッシーごめん、というか、その場面、本当に必要でしたか、という感じです。

圧巻だったのは、アンフェリータ役のくりすちゃん(音くり寿)でしょう。
劇場の音響設定がよくなかったのでしょうか、あんまり台詞が聞き取れないなと思う中、くりすちゃんの台詞や声はしっかり聞こえて、もはやこれはくりすちゃん仕様になっているのではないか?と思うほどでした。
あそこのホール、音響がそんなに悪かった記憶はないのですが、設備が変わったのか、はたまた人が変わったのか、とにかく音が良くなかった。
「エル・アモール」の四重奏もくりすちゃんがとても良かったですね。歌い出しが彼女で、いやはや本当にすばらしかった。
一足早く地元公演を見ていた友人は「オペラグラスを忘れたが、音くり寿はわかった」というくらいですから、くりすちゃんは偉大。
ちなみに「エル・アモール」で上手かられいちゃん(柚香光)、まどか(星風まどか)、ひとこ(永久輝せあ)の並びは、「THE新生花組!」という感じがしました。これはこれでよい。
今回はせっかく地元で公演するから!と意気込んで、宝塚初見の人や普段はあまり宝塚を見ない人の分のチケットもとったのですが、全員が「アンフェリータがよかった」と口をそろえていいます。
お役としても絶妙で、観客に嫌われることが多いポジションなのに、エリオのこともエバのことも恨みもせず、呪いもせず、聖人のようであり、またその父親であるアントンも聖人なものだから、説得力があり、すばらしい父娘でした。万歳。っていうかしぃちゃん(和海しょう)の安定感が半端ない。すごい。
カッシーの演出なのか、それとも音響のせいなのか、エリオもロメロもわりと控えめな演技をしているというか、冷静さが際立つ演技だっただけに、エリオがエバママに銃をつきつけながら「言うんだ!」と迫る場面は、光りました。

期待の星であるあわちゃん(美羽愛)は主人公エリオの妹ソニア役。ありがたい。役がつくことはありがたい。
オープニングや夜会の衣装は前回の雪組のソニアと同じでしたが、コルドバでの日常服は『ファントム』3人娘のうちのピンクのバッスルドレスで、これがとてもいい。
個人的にとても好きなドレスということもあるのだけれども、雪組のオレンジのドレスがあまり得意でないこともあって、こちらのあわちゃん、とても可愛いです。ソーキュート。
もっとも今回は『ルパン』からの衣装も多かったように思います。まどかのお衣装は何着か、ちゃぴ(愛希れいか)が着ていましたよね?
まどかはピンクも赤もよく似合うよ、ようこそ花組へ!って感じになります。
祭りの場面ではフェリーペ(優波慧)と二人で踊っており、おお『POR』再び!という感じになりました。
オープニングでは、キリッとした凜々しい表情でキレのあるダンスを披露しておりまして、やはり彼女はダンスの人だと確信するのと同時に、こんなカッコいいみたいなこと、いつの間にできるようになったの、とても素敵じゃない……っ!とこじらせました。はー最高。
いつかのグラフで憧れの人に「仙名彩世」と「朝美絢」を並べていたので、きっとゆきちゃんを見本とするところがあったのだろうなあ、と勝手に思いました。

ところでフェリーペはゆうなみくんではなく、はなこ(一之瀬航季)では駄目だったんでしょうか……。
いや、伯爵の役が駄目だったわけではないのですが、新人公演ができなくなり、もっとはなこに出番を!と思ってしまうのです。
『華詩集』を見てからというものの、ほってぃ(帆純まひろ)も気になっているので、華ちゃん(華優希)の男役の魅力を引き出す力はすごいと思わずにはいられないのですが、『華詩集』以降、はなこのこともかなり気になっているんですよね。
丸顔で、がたいがいいこともあってたまきち(珠城りょう)に似ているな、と思う節はあるのですが、ショーもはなこばかり見ていた自覚はある。
けれども、今まで好きになった数少ない男役さんたちとは大分タイプが違うことも確かである。
フェリーペっておいしい役だと思うんですよね。
アンフェリータに対して「あなたが寄り添える風や林がある」という台詞があるじゃないですか。
あれ、「林」なの、とても素敵なんですよ。普通こういうときは「木」がある、もしくは「森」があるだと思うのです。
前者なら、直球で自分のことを示しているだろうし、後者なら自分の心の広さを暗示しているようでもあるし。
でも「林」なんですよね。「徐かなること林の如く」の「林」。まさに「徐かなる」「静かなる」なんですよ、フェリーペの役どころって。おいしい。
だからこそ、はなこにやって欲しかったなーという気がするのです。えんえん。

ショーの方は、大劇場で見たときには「ちょっと品がないのではないか? 華ちゃんのラスト、これで本当にいいんか?」と思っていたし、まどかがやることに対しても「おいおい、華ちゃんのラストのショーを、こんなに早くまどかでやるのかよー! 泣いて見られんよー!」と思っていたけれども、『シティハンター』を見た後だったから、思ったよりもまどか仕様になっていたからか、とにかく4月よりは心穏やかに見ることができました。いや、あの中詰はよくわからないな、とは思っていますが。
華ちゃんが紫であったところの衣装が全てまどかピンクに変わっていたのが救いだったのは違いないでしょう。
これが華ちゃんピンクで、まどか紫だったら、「まどかー! それ、宙組カラーやでー!」となったかもしれないので、これが反対だったのもよかった。そこまで計算しているのかどうかはよくわかりませんが。
まどかと蝶の場面、とてもよかった。華ちゃんのときも好きだったけれども、まどかの場面もすんなり見られてよかった。
華ちゃんの方が生きる気力を失っているように見えるのは、やはり退団仕様だからか。

何よりも言及したいのは、やはり新場面「だまされないわ」ソング。
どうやら元ネタがあるようですが、私は知らず、結局どの曲なのかもいまだによくわかっていないのですが(わかる人がいたら教えて欲しい)、著作権が危ないとかなんとか……それはそれで淋しい。
それまでの世界観どうした!? あれ、可愛いお花ちゃんは野獣に騙されちゃったの!? 謎ソングの上にダサいね!? でも可愛いから全部チャラね!! みたいな怒濤のスピードで頭の中に感想が流れきて、それはまるでニコニコ動画のコメントのようでもあり、勢いでひねり潰された感じのあるあの場面、もはやわけがわからないけれども、まどかとリベリ二人のために円盤化してね。残してね。曲もだよ。劇団頼むよ。
いや、本当に可愛いよね、あの三人。まどか、あわちゃん、初音夢ちゃん。あの並び。最高だわ。
「なんて残酷な人ねー♪」と歌っているまどかの隣で、「ホントよねー」という表情のあわちゃん、はちゃめちゃに可愛い。私はあわちゃんになら騙されてもいいよ?

ナイトクラブの場面ではずっとはなこを見ていました。
格好いいし、笑ってもくれるし、真剣でもあるし、キレキレで踊るし、最高だな、はなこ。
しぃちゃんの隣にいることも多くて一石二鳥でした。好き。しぃちゃんはこの場面とか郡舞の場面は「うっはw 切れ長のお兄さんw イケイケw 好きw」と安心して見られるのですが、プロローグのキンキラ衣装とか中詰の衣装を着ているところを見ると「あー! あー! お客様! オラつきすぎです! 落ち着いてくださーい!」と私の心の中の店員が叫び出す。
オラつくしぃちゃんを見ると不安定になる謎。
しっとり大人な雰囲気のしぃちゃんが好きなんだな、うん。そういうわけで、白燕尾のしぃちゃんも好きです。はなこも好きです。
どうでもいいですが、肉をもらったあすか(聖乃あすか)の「わおーん!」という吠える声が、あすかの台詞の中で一番よく聞こえるっていうのは、ちょっとまずいんじゃないですかね……あすかももうちょっと歌えると、花組の戦力として安心できるんだけど。うう。『花男』の類とかは好きだったんだけどなー。

噂の女ベスティアの場面は、相手がひとこになったこともあり、どうしても『ナイスワーク』を思い出してしまった。
いや、『ナイスワーク』が好きすぎるんですよね、私。
そしてまさかの脇の下が見える仕様の衣装に変更されているとは……ダイスケの趣味ですか?
ポーの一族』と『花より男子』を観劇済の友人はこの場面に一番驚いた、と言っていました。
そしてマチネ観劇後に「もう一回見たい!」というので、ソワレのチケットを探し、無事にマチソワしました。
バイタリティ、すごいな。

みんな大好きジョバイロ場面は、本当に目がいくつあっても足りないんだけど、ついあわちゃんを見てしまう。
くりすちゃんの後ろにいるときは、くりすちゃんも一緒にオペラグラスに入っています! この場面、本当に好き。
男役一人娘役総踊りハーレム→男役郡舞→デュエットダンス。この流れ、すばらしい。途切れないのがいい。同じ曲のアレンジ違いで続ける演出が好き。男役群舞は『デリュー』のオープニングのようなカラーリングではありますが、私はこのカラーが好きなのでよし。そして白を黒に変えると、あら不思議『BG』と同じ色味になりますね。結局この色が好きなんだよ、私。
そして、デュエットダンス、素敵でした。
ある日のデュエットダンスでは、れいまどの顔が近くて、二人の目が合っているときは、まどかはにっこり笑って柔らかい表情であるのに、自分のほうを見ていないれいちゃんを見つめるまどかの表情が完全に女豹!みたいな感じでした。格好いい!
この場面のまどかの髪飾りも天才的に可愛いんだ。なんて手先が器用なんだ、信じられない……すごい……さすが……。

こちらのあわちゃんはリベリで、最初の最初に舞台に登場する大事なお役。
髪型は大劇場版の方が好みのような気もしますが、何事もチャレンジするのはとても大事だし、大劇場のときよりものびのびと演じているように見えてとても良かったです。
相変わらず中詰ジャングル場面の謎衣装は着こなしているし、ロケットはキュートだし、ジョバイロは色っぽいし、パレードの黒金は華やかな衣装に負けないスーパー笑顔だし、最高ですわ。
パレードの黒金は、プロローグの衣装とイメージが似通っていますが、あわちゃんはリベリでずっと白いお衣装だったからとても新鮮。そして大人可愛いをしっかり演出している。
ジョバイロの髪飾りも可愛かったなー。本当に手先が器用。素晴らしい。
ちと歌が弱いかな、と思わないではないので、あとはお歌を頑張るんだ! 踊れて歌える娘役になるんだ! 応援しているぞ!
『元禄バロックロック』で新人公演リベンジになるといいんだけれども。
みさこちゃん(美里玲菜)もショーでは活躍。あのヒョウ柄の謎衣装は完全にダイスケ先生の趣味だと思っていますが、髪型が天才的に可愛かった。
そして背が高い。見栄えがする。彼女もこれから活躍が期待できる娘役ですね。劇団さん、頼みますよー!

次の花組は『元禄バロックロック』と『The Fascination!』の二本立て。
先日行われた制作発表ではショーのお衣装でしたが、こういうときは芝居のお衣装のことが多かったと思うのですが、どうでしょう。
タカヤ先生、もしかして脚本があんまり進んでいないとか、そういうことは、ない、ですよ、ね……?とちょっと心配になるものの、ピンクと白のお衣装がすばらしすぎて、そんなことは吹き飛んだ。
まいてぃ(水美舞斗)とひとこが二人とも出席していたので「おい、これはまさか二番手、まだ秘密です、とかそういうことではないだろうな……?」と劇団を疑ったりもしているのですが、しかし記事を見る限りは楽しそうで何より。
新人公演も行われると思うのですが、あわちゃんのリベンジはともかく、はなこのリベンジはどうだろう、期待できるのかな。
月組『桜嵐記』では前作『ピガール狂騒曲』で新人公演の主演が決まっていた二人がそのままスライドし、特例として100期生も登場していましたが、星組は特例が発表されていませんし、厳しいかな……。はなこにチャンスをあげたいのですが、『華詩集』でやったからいいじゃん、とか簡単に思って欲しくないのですが、駄目かな、どうかな、とりあえず劇団には要望を出すけれども、はなことあわちゃんのコンビとか私得でしかない上に、少なくとも大劇場の新人公演は観劇できる日程だから、何としても行きたい!と思っているんですけど、あの、はなこを、はなこをどうかよろしくお願いします。