ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

花組『哀しみのコルドバ』『Cool Beast!!』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp

ミュージカル・ロマン『哀しみのコルドバ
作/柴田侑宏
演出/樫畑亜依子
パッショネイト・ファンタジー『Cool Beast!!』
作・演出/藤井 大介

全国ツアーも無事に千穐楽を迎えられて何より!
しかし私の感想記事は全く間に合っていなくて最低だな! 9月当初は鬼のように忙しいのだよ、ワトスンくん……(作品違う)。
お芝居は言わずと知れた柴田作品『哀しみのコルドバ』。私はどちらかと言うと『琥珀色の雨に濡れて』の方が好きで、母親が多分ヤンさん(安寿ミラ)主演のビデオをもっていたと思うのだけれども、あまり記憶にはなく、やはり最近の雪組ちぎみゆ(早霧せいな・咲妃みゆ)コンビの再演が印象に残っております。
とはいえ、みゆちゃんはとても好きなのですが、なんといってもちぎさんをそれほど買っていなかったというか、苦手であったこともあり、着眼点は専らリカルド・ロメロ役のだいもん(望海風斗)でした。
しかしロメロってこの芝居では、そうね、たしかにヒロインのエバを主人公のエリオと取り合い、決闘未遂までするものの、なんとなく私の萌えポイントには刺さらなくて、作品全体としてそれほど興奮した記憶がありませんでした。

けれども、今回はジーンと来ちゃったなあ、というのが素直な感想です。
この作品のオチであるエリオとエバは実は腹違いの兄妹でした、というのは、大事な設定ではあると思うのですが、実は話の肝はまた別のところにあるのではないかなと、ずっと思っていて、ただそれが何なのかよくわからないから、ぼんやり見るしかなかったような気もするのですが、今回は「時間を前に進めようとして行き止まりになったエリオ」と「時間を後ろに戻そうとして行き止まりになったエバ」の対比が見事で、なるほど!と膝を打ったのでした。パーカッションやで。
マタドールとしての栄光を手にしながらも驕ることなく、恩師の娘を婚約者とし、何一つ不自由ないエリオはエバと再会して、自分の意思で未来を決めようと行動する。エバと結婚しようとする。
もちろんエバもエリオと結婚しようとするのだけれども、それはあくまでも失くした時間を取り戻そうとする行動であり、無邪気さは子供のようでさえあり、かつての幸せな2人に戻ろうという強い気持ちに押されているようでした。
エバがエリオが相手であっても素直に明るい未来を思い描けないのは、淑女になるための修行を重ね、シルベストルと結婚し、しかし若いうちに未亡人になり、その後も引くて数多だっただろう中からリカルドの恋人ないしは愛人となり、散々人生の苦渋を舐めてきたからなのでしょう。そしてそれらはエリオがぶつかりようもない不幸ばかりで。
赤いドレスで最初に登場するエバが一番大人で、理性的で分別のある大人に感じられました。反対にエリオは純粋少年のまま大人になっていたところ、エバとの再会を経て、ぐっと大人になったと見えました。

マタドールとしての栄光の道を諦め、エリオ・サルバドールという一人の男として、エバと生きることを決めたエリオは、ロメロと決闘をしようとする。
けれども、決闘をする意味がなくなる真実を聞かされ、呆然としてします。
彼はもう「エリオ・サルバドール」として生きていくことができないと知ってしまうからだ。
だから残るのはマタドールとして生きることなんだけど、こちらもまた道が続いていないことがわかっている。
次の舞台が彼の最後の舞台であるからだ。
決闘未遂のあとのエリオには「いかに生きるか」という問いはない。空っぽだ。
その問いを「いかに死ぬか」に生まれ変わらせたのは、ロメロがエリオから銃を受け取りながら言う「君はスペインの誇るマタドールだ」というような台詞。
そう、エリオにはもう死しかないし、しかも「マタドールとしての死」しか残されていないのだ。
愛する人の死を目の前に突きつけられたエバとしては、たまったもんじゃないだろうが、でもエリオはああするより他に仕方がなかった……と思わせる演技でした。

追加されたロメロがエバにプロポーズする場面は、私にはあまりよくわからなくて、そもそもスペインはカトリックの国だろう、再婚はダメなのでは……?とうっすら思ったのですが、しかしプロポーズするくらいロメロが本気だったからこそ、コルドバでエリオとエバの逢瀬を知ったときには、ビンタするんですよね。
雪組ではだいもんロメロがエバにキスをしようと顎をくいと持ち上げてからのビンタだったから、屈折した愛情を感じずにはいられませんでしたが、今回のロメロさんは直球の愛情だったのですね。
とはいえ、私自身がカッシーの意図を汲めたとも思えないので、カッシーごめん、というか、その場面、本当に必要でしたか、という感じです。

圧巻だったのは、アンフェリータ役のくりすちゃん(音くり寿)でしょう。
劇場の音響設定がよくなかったのでしょうか、あんまり台詞が聞き取れないなと思う中、くりすちゃんの台詞や声はしっかり聞こえて、もはやこれはくりすちゃん仕様になっているのではないか?と思うほどでした。
あそこのホール、音響がそんなに悪かった記憶はないのですが、設備が変わったのか、はたまた人が変わったのか、とにかく音が良くなかった。
「エル・アモール」の四重奏もくりすちゃんがとても良かったですね。歌い出しが彼女で、いやはや本当にすばらしかった。
一足早く地元公演を見ていた友人は「オペラグラスを忘れたが、音くり寿はわかった」というくらいですから、くりすちゃんは偉大。
ちなみに「エル・アモール」で上手かられいちゃん(柚香光)、まどか(星風まどか)、ひとこ(永久輝せあ)の並びは、「THE新生花組!」という感じがしました。これはこれでよい。
今回はせっかく地元で公演するから!と意気込んで、宝塚初見の人や普段はあまり宝塚を見ない人の分のチケットもとったのですが、全員が「アンフェリータがよかった」と口をそろえていいます。
お役としても絶妙で、観客に嫌われることが多いポジションなのに、エリオのこともエバのことも恨みもせず、呪いもせず、聖人のようであり、またその父親であるアントンも聖人なものだから、説得力があり、すばらしい父娘でした。万歳。っていうかしぃちゃん(和海しょう)の安定感が半端ない。すごい。
カッシーの演出なのか、それとも音響のせいなのか、エリオもロメロもわりと控えめな演技をしているというか、冷静さが際立つ演技だっただけに、エリオがエバママに銃をつきつけながら「言うんだ!」と迫る場面は、光りました。

期待の星であるあわちゃん(美羽愛)は主人公エリオの妹ソニア役。ありがたい。役がつくことはありがたい。
オープニングや夜会の衣装は前回の雪組のソニアと同じでしたが、コルドバでの日常服は『ファントム』3人娘のうちのピンクのバッスルドレスで、これがとてもいい。
個人的にとても好きなドレスということもあるのだけれども、雪組のオレンジのドレスがあまり得意でないこともあって、こちらのあわちゃん、とても可愛いです。ソーキュート。
もっとも今回は『ルパン』からの衣装も多かったように思います。まどかのお衣装は何着か、ちゃぴ(愛希れいか)が着ていましたよね?
まどかはピンクも赤もよく似合うよ、ようこそ花組へ!って感じになります。
祭りの場面ではフェリーペ(優波慧)と二人で踊っており、おお『POR』再び!という感じになりました。
オープニングでは、キリッとした凜々しい表情でキレのあるダンスを披露しておりまして、やはり彼女はダンスの人だと確信するのと同時に、こんなカッコいいみたいなこと、いつの間にできるようになったの、とても素敵じゃない……っ!とこじらせました。はー最高。
いつかのグラフで憧れの人に「仙名彩世」と「朝美絢」を並べていたので、きっとゆきちゃんを見本とするところがあったのだろうなあ、と勝手に思いました。

ところでフェリーペはゆうなみくんではなく、はなこ(一之瀬航季)では駄目だったんでしょうか……。
いや、伯爵の役が駄目だったわけではないのですが、新人公演ができなくなり、もっとはなこに出番を!と思ってしまうのです。
『華詩集』を見てからというものの、ほってぃ(帆純まひろ)も気になっているので、華ちゃん(華優希)の男役の魅力を引き出す力はすごいと思わずにはいられないのですが、『華詩集』以降、はなこのこともかなり気になっているんですよね。
丸顔で、がたいがいいこともあってたまきち(珠城りょう)に似ているな、と思う節はあるのですが、ショーもはなこばかり見ていた自覚はある。
けれども、今まで好きになった数少ない男役さんたちとは大分タイプが違うことも確かである。
フェリーペっておいしい役だと思うんですよね。
アンフェリータに対して「あなたが寄り添える風や林がある」という台詞があるじゃないですか。
あれ、「林」なの、とても素敵なんですよ。普通こういうときは「木」がある、もしくは「森」があるだと思うのです。
前者なら、直球で自分のことを示しているだろうし、後者なら自分の心の広さを暗示しているようでもあるし。
でも「林」なんですよね。「徐かなること林の如く」の「林」。まさに「徐かなる」「静かなる」なんですよ、フェリーペの役どころって。おいしい。
だからこそ、はなこにやって欲しかったなーという気がするのです。えんえん。

ショーの方は、大劇場で見たときには「ちょっと品がないのではないか? 華ちゃんのラスト、これで本当にいいんか?」と思っていたし、まどかがやることに対しても「おいおい、華ちゃんのラストのショーを、こんなに早くまどかでやるのかよー! 泣いて見られんよー!」と思っていたけれども、『シティハンター』を見た後だったから、思ったよりもまどか仕様になっていたからか、とにかく4月よりは心穏やかに見ることができました。いや、あの中詰はよくわからないな、とは思っていますが。
華ちゃんが紫であったところの衣装が全てまどかピンクに変わっていたのが救いだったのは違いないでしょう。
これが華ちゃんピンクで、まどか紫だったら、「まどかー! それ、宙組カラーやでー!」となったかもしれないので、これが反対だったのもよかった。そこまで計算しているのかどうかはよくわかりませんが。
まどかと蝶の場面、とてもよかった。華ちゃんのときも好きだったけれども、まどかの場面もすんなり見られてよかった。
華ちゃんの方が生きる気力を失っているように見えるのは、やはり退団仕様だからか。

何よりも言及したいのは、やはり新場面「だまされないわ」ソング。
どうやら元ネタがあるようですが、私は知らず、結局どの曲なのかもいまだによくわかっていないのですが(わかる人がいたら教えて欲しい)、著作権が危ないとかなんとか……それはそれで淋しい。
それまでの世界観どうした!? あれ、可愛いお花ちゃんは野獣に騙されちゃったの!? 謎ソングの上にダサいね!? でも可愛いから全部チャラね!! みたいな怒濤のスピードで頭の中に感想が流れきて、それはまるでニコニコ動画のコメントのようでもあり、勢いでひねり潰された感じのあるあの場面、もはやわけがわからないけれども、まどかとリベリ二人のために円盤化してね。残してね。曲もだよ。劇団頼むよ。
いや、本当に可愛いよね、あの三人。まどか、あわちゃん、初音夢ちゃん。あの並び。最高だわ。
「なんて残酷な人ねー♪」と歌っているまどかの隣で、「ホントよねー」という表情のあわちゃん、はちゃめちゃに可愛い。私はあわちゃんになら騙されてもいいよ?

ナイトクラブの場面ではずっとはなこを見ていました。
格好いいし、笑ってもくれるし、真剣でもあるし、キレキレで踊るし、最高だな、はなこ。
しぃちゃんの隣にいることも多くて一石二鳥でした。好き。しぃちゃんはこの場面とか郡舞の場面は「うっはw 切れ長のお兄さんw イケイケw 好きw」と安心して見られるのですが、プロローグのキンキラ衣装とか中詰の衣装を着ているところを見ると「あー! あー! お客様! オラつきすぎです! 落ち着いてくださーい!」と私の心の中の店員が叫び出す。
オラつくしぃちゃんを見ると不安定になる謎。
しっとり大人な雰囲気のしぃちゃんが好きなんだな、うん。そういうわけで、白燕尾のしぃちゃんも好きです。はなこも好きです。
どうでもいいですが、肉をもらったあすか(聖乃あすか)の「わおーん!」という吠える声が、あすかの台詞の中で一番よく聞こえるっていうのは、ちょっとまずいんじゃないですかね……あすかももうちょっと歌えると、花組の戦力として安心できるんだけど。うう。『花男』の類とかは好きだったんだけどなー。

噂の女ベスティアの場面は、相手がひとこになったこともあり、どうしても『ナイスワーク』を思い出してしまった。
いや、『ナイスワーク』が好きすぎるんですよね、私。
そしてまさかの脇の下が見える仕様の衣装に変更されているとは……ダイスケの趣味ですか?
ポーの一族』と『花より男子』を観劇済の友人はこの場面に一番驚いた、と言っていました。
そしてマチネ観劇後に「もう一回見たい!」というので、ソワレのチケットを探し、無事にマチソワしました。
バイタリティ、すごいな。

みんな大好きジョバイロ場面は、本当に目がいくつあっても足りないんだけど、ついあわちゃんを見てしまう。
くりすちゃんの後ろにいるときは、くりすちゃんも一緒にオペラグラスに入っています! この場面、本当に好き。
男役一人娘役総踊りハーレム→男役郡舞→デュエットダンス。この流れ、すばらしい。途切れないのがいい。同じ曲のアレンジ違いで続ける演出が好き。男役群舞は『デリュー』のオープニングのようなカラーリングではありますが、私はこのカラーが好きなのでよし。そして白を黒に変えると、あら不思議『BG』と同じ色味になりますね。結局この色が好きなんだよ、私。
そして、デュエットダンス、素敵でした。
ある日のデュエットダンスでは、れいまどの顔が近くて、二人の目が合っているときは、まどかはにっこり笑って柔らかい表情であるのに、自分のほうを見ていないれいちゃんを見つめるまどかの表情が完全に女豹!みたいな感じでした。格好いい!
この場面のまどかの髪飾りも天才的に可愛いんだ。なんて手先が器用なんだ、信じられない……すごい……さすが……。

こちらのあわちゃんはリベリで、最初の最初に舞台に登場する大事なお役。
髪型は大劇場版の方が好みのような気もしますが、何事もチャレンジするのはとても大事だし、大劇場のときよりものびのびと演じているように見えてとても良かったです。
相変わらず中詰ジャングル場面の謎衣装は着こなしているし、ロケットはキュートだし、ジョバイロは色っぽいし、パレードの黒金は華やかな衣装に負けないスーパー笑顔だし、最高ですわ。
パレードの黒金は、プロローグの衣装とイメージが似通っていますが、あわちゃんはリベリでずっと白いお衣装だったからとても新鮮。そして大人可愛いをしっかり演出している。
ジョバイロの髪飾りも可愛かったなー。本当に手先が器用。素晴らしい。
ちと歌が弱いかな、と思わないではないので、あとはお歌を頑張るんだ! 踊れて歌える娘役になるんだ! 応援しているぞ!
『元禄バロックロック』で新人公演リベンジになるといいんだけれども。
みさこちゃん(美里玲菜)もショーでは活躍。あのヒョウ柄の謎衣装は完全にダイスケ先生の趣味だと思っていますが、髪型が天才的に可愛かった。
そして背が高い。見栄えがする。彼女もこれから活躍が期待できる娘役ですね。劇団さん、頼みますよー!

次の花組は『元禄バロックロック』と『The Fascination!』の二本立て。
先日行われた制作発表ではショーのお衣装でしたが、こういうときは芝居のお衣装のことが多かったと思うのですが、どうでしょう。
タカヤ先生、もしかして脚本があんまり進んでいないとか、そういうことは、ない、ですよ、ね……?とちょっと心配になるものの、ピンクと白のお衣装がすばらしすぎて、そんなことは吹き飛んだ。
まいてぃ(水美舞斗)とひとこが二人とも出席していたので「おい、これはまさか二番手、まだ秘密です、とかそういうことではないだろうな……?」と劇団を疑ったりもしているのですが、しかし記事を見る限りは楽しそうで何より。
新人公演も行われると思うのですが、あわちゃんのリベンジはともかく、はなこのリベンジはどうだろう、期待できるのかな。
月組『桜嵐記』では前作『ピガール狂騒曲』で新人公演の主演が決まっていた二人がそのままスライドし、特例として100期生も登場していましたが、星組は特例が発表されていませんし、厳しいかな……。はなこにチャンスをあげたいのですが、『華詩集』でやったからいいじゃん、とか簡単に思って欲しくないのですが、駄目かな、どうかな、とりあえず劇団には要望を出すけれども、はなことあわちゃんのコンビとか私得でしかない上に、少なくとも大劇場の新人公演は観劇できる日程だから、何としても行きたい!と思っているんですけど、あの、はなこを、はなこをどうかよろしくお願いします。