ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

『ロカビリー☆ジャック』感想

『ロカビリー☆ジャック』
作・作詞・楽曲プロデュース/森雪之丞
演出/岸谷五朗

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なんの予習もせずに観劇。

●2幕が最高におもしろい!
1幕はプロローグが個人的にはちょっと物足りなかったのと、台詞や歌声に対してオーケストラの音が大きすぎると感じたこともあってなかなか芝居に入り込めなかったのですが(しかし、それでも吉野圭吾が出る場面は見逃さなかった)、2幕は最高におもしろかったです。
迫力のあるダンス場面で引き込まれたこともあり、楽しかったです。そう、まるで『ダンス・オブ・ヴァンパイア』。ダンス最高。
裁判の場面は、予算のない高校演劇の小道具の参考にさえなった(笑)。なるほど、椅子の座面を背中にくっつけたり、机を首から下げたりすればいいんだな、と。あれは高校生が見るといい。

時代は1950年代。宝塚雪組で上演中の『ワンス』の冒頭の時間軸と近いかと。
ラジオを聴きながら踊っていたのはロックだった。
野球の中継が聞きたいファット・モーを思い出す。

ビル(海宝直人)がジャック(屋良朝幸)のこと好きすぎて、これはどこかの同人誌で見たことがあるやつだぞ?と思いながら見ていました。失礼千万だな。
まあ端的にいうと、差別のニュアンスのないホモってやつですかね。
海宝くんは去年の『イヴ・サンローラン』が素敵だったけれども、まさにこちらもそういう役どころでしたね。マリウスも実はアンジョラスと?みたいな(ありません)。
嘘はもちろんいけないけれども、「愛のある嘘」はどうだろう。人を傷つけないための優しい嘘。
嘘をつかないに越したことはないけれども、誰にも迷惑かけず、かつ嘘をつかれた相手が幸せであり、嘘であることを絶対にみやぶられない、もしくはみらぶられても幸せが続く、そういう条件がないと難しい。
だからやっぱり嘘はつかないほうがいい。
でも去年買った着物の数は旦那に言えない。
嘘は良くないんだけどね。わかってはいるんだけどね。欲望には逆らえないw

2幕になってから「悪魔」は実は演技だったことがわかりますが、1幕からほのめかしてもいいのかなあと思ったり思わなかったり。

男が男の悪魔と契約して、女が女の悪魔と契約して、女が男のせいで捕まってってこれ、『デスノート』で見たやつや!となりました。
物語の構造としては妥当なんでしょうね。
だから小道具の使い方とか、ちょっとした笑いとか、中国人のおじいさんに変装しているジャックとかが大切になってくるのでしょう。

ソファも気が利いていた。斜めにカットして、上に被せる布を変えることで場面転換をはかるとか予算のないところは積極的に真似しよう(そればっかだな)。
それから犬がいい。舞台は動物使うの、難しいけれども、うまい演出でした。

●お衣装がいい
ルーシー(昆夏美)の黄色の花柄スカート、ピンクの花柄スカートはもちろん可愛かったのですが、それだけでなく、黄色に黒リボンのワンピースやベティ(真瀬はるか)の青に赤のアクセントが効いたワンピースやサマンサ(平野綾)の緑と青の衣装は、原色や!ドーン!!!という感じで、レトロっぽくて素敵でした。

悪魔のお衣装も非常に凝っている。
黒着せておけば、あとは吉野圭吾の演技力でどうとでもなりそうなものなのですが、契約の姿勢が遠目でもわかるように黒の上から銀色のパンツはかせたり、ブロードウェイの場面では悪魔の衣装もマイナーチェンジしていたり。
凝っているなーと思わずにはられませんでした。素敵。

●ルーシーかわいい
1幕終わりにようやくルーシーがデビューして、いや長い1幕だったな、気持ち的に、と思ったのですが、2幕の超絶キュートなルーシーはやはり冒頭に持ってきて正解だったのか。
芸が凝っているなと思ったのは、黄色のワンピースで歌うルーシーをカメラが囲む。そのカメラ映像が下手側のパネルにモノクロで映る。
いやはや芸が細かい。すばらしい。
逃亡は、歌詞の感じから、そういう振付なのかと思ったらまさかのほんまものの逃亡でしたね。
しかし昆ちゃんはそのおかげで床を転がれる女優になりました(笑)。

捕まった後も、目隠ししているのに悪魔の吉野圭吾にあの身長差で頭突きしまくるというすばらしい演出。
なるほど、これはよく練習したのだろうなあ。

ラスト、本物の魔女を引き継いだような姿もたいへん可愛らしかったです。
わたしは昆ちゃんをジュリエットのときから見ているから、本当に大きくなったね……と感動してしまう。
もともと可愛らしい感じの雰囲気を持った人でしたが、歌も演技も見るたびに伸びていることが実感できるのが嬉しい。

●魔女と悪魔とタップダンス
もはやこの人たちについては、わたしが語るまでもないと思うのですが、実力派というのはこういうことを言うのか〜としみじみ思い知らされました。
手押し車を2回でおしている謎のおばあさんが魔女なのですが(そしてこの謎めいた場面があるからこそ、こちらは本物であることがわかる)、それを最後に馬体の真ん中にぽつんと置く演出もよかった。
なぜ魔女がここで引退しようと思ったのかはよくわかりませんでしたが、魔女の姿とおばあちゃんの姿とのギャップがすばらしいので、ノーカウントになるでしょう。

1幕終わりの乾杯直前に突如始まる魔女と悪魔のタップダンス。
ちなみに魔女はおばあちゃんの姿のまま。
腰曲げて踊るの、大変だっただろうなあ。
ダンスはちんぷんかんぷんのわたしですが、非常に感動するタップダンスでした。


東京、福岡、愛知とめぐり、愛知は1日平日限りにもかかわらず、千秋楽。
平日千秋楽ならもう少し日程を増やして欲しいなあと思う。
あとは最後に言い残すことがあるとするならば、テッド(青柳塁斗)はもっと筋肉見せても良かったよ!