ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

花組『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』感想

花組公演

kageki.hankyu.co.jp

ブロードウェイ・ミュージカル『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
Music and Lyrics by George and Ira Gershwin
Book by Joe DiPietro
Inspired by Material by Guy Bolton and P. G. Wodehouse
潤色・演出/原田諒

最高におもしろかった!
オリジナル版を見ていないので、どこが宝塚の工夫なのかはよくわかりませんでしたが(ジミーの結婚はブロードウェイ版だと4度目ではなく3度目だとか?)とにかくおもしろかった。
だいたいね、開演前からあのピアノ鍵盤の円が期待させるのよ。最高なわけですよ。
舞台装置もすごくおもしろかった。
2つ波のある板が左右にそれぞれ3つずつ、模様はストライプで、曲線と直線のハーモーニーが計算されている。
屋敷の中も曲線の階段、左右非対称のソファ、そこら中が曲線だらけなのに、寝室は緑と白のストライプでベッドも直線。
見事なコントラストだった。
高いかな?と思われるベッドは圧倒的な存在感を放っている。
左右と前に謎の段差がついているし(でもあれがないとベッドの上に登るの大変そう)、クッションがしっかりしているわりには布団は薄そうだし、そもそもベッドは硬そうだし、高いベッドの上でれいはなは仲良くどったんばったんしているし、もうヒヤヒヤものなのですが、とても楽しそうでした。
ブロードウェイミュージカルだと、このどったんばったん歌を歌いながら暴れるシーンで、ジミーはライフルに弾をこめ直しているそうですが、このあとライフルは出てきませんでしたよね?
ブロードウェイではまた出てくるのでしょうか。
とにかくれいはなが楽しく暴れているのを見るのが楽しかったです。
もうそれだけで幸せ。
次でコンビ解消とか本当に信じたくない。
あれだけ言われていた歌に難ありという評価ですが、今のれいはなを聞いてごらん?
その上で同じこと言える?
黒いカラスは白い鳩にはなれないかもしれないけれども、でもなりたい姿に向かって成長するんだよ、だってタカラジェンヌだもの。

舞台装置の良さ、れいはなコンビのすばらしさに加えて良かったのは、あらゆる種類の女性が登場することです。
法律を犯しているけれども自分の仕事に誇りを持っているビリー、自らの美貌とダンスの才能で自分が好きな男と結婚を決意するアイリーン、リッチでハンサムな男を狙うダンサーのジェニー、夫が亡くなってから社会奉仕に自らを捧げる公爵夫人、ブラウン・ベアードが女性なのも良かった。
誰もが自分の仕事を持ち、自己肯定感も高く、1人の人間として自分にプライドを持って生きているのが、本当にとても良かった。
「大切なのは自尊心だよ!」って『雨に唄えば』でも言っていた。

お衣装はところどころ「んん???」となるところがありましたが、みなさんはいかがでしょうか(笑)。
男役さんはスーツにベストに、そりゃ旦那にまでベストを着せる私にとっては眼福だったのですが、娘役の謎のワンピースはいくら下に衣装を着ているからとはいえ、ちょっとあんまりではなかったでしょうか。
太って見えるの、可愛くないの。
あとビリーのベスト姿も謎だった。
そのベスト、前を開けて着るの?
ブルーの模様は何?
ネクタイとベルトは本当にそれでいいの?
まあツッコミどころが満載。
あと個人的にはメイド服もなんか変だったなあという気がする。
チラシのれいちゃんのパジャマ、華ちゃんのピンクドレスはどちらも素敵だったのにー!

プログラムであきらが着ていたお衣装は『20世紀号に乗って』で翔くんが着ていたものでしたね。
ひとこがフィナーレパートで来ていた黒いドレスも『20世紀号に乗って』できぃちゃんが着ていたものとよく似ているような気がします。
同じブロードウェイミュージカルがオリジナルだと使い回しされるものなのでしょうか。
『ME AND MY GIRL』のサリーの髪型とビリーの髪型は確かに似ている、かも?
色は違えど帽子は2人とも被っていますね。
宝塚でいうところのこの2作品を思い出した人は多かったかと。
華ちゃんのサリー、とても見たい。せめてミュージックサロンで歌ってくれないかな、「顎で受け止めて♪」って。

幕開きのジェニーくりすちゃん(音くり寿)。
私はいきなりびっくりしたのよ。
如月みたいな眉なんだもの(笑)。
でもああいうお化粧が流行した時代だったのでしょうか。
『ル・サンク』を見ると、東京では割と普通の眉だったようにも思えます。
公演中も進化するのがすばらしいですね。
ショーガールにはここちゃん(都姫ここ)、みさこちゃん(美里玲菜)がやっぱり私は好みの顔で可愛いなあとつい目で追ってしまいました。
もえかちゃん(若草萌香)なつきちゃん(鈴美梛なつ紀)も最近グッと垢抜けてきたなという印象があります。
バウ公演を見ても思いましたが、下級生がどんどん頼もしくなっていきますね。
これからも花組が楽しみです。

そして酒場の裏で華ちゃんビリー(華優希)登場。
そういう格好なんだwと思いましたが、そんなことよりも喋り出したら、まあその口調!と、これまた宝塚の娘役トップとしては珍しいべらんめぇ調で大変おもしろかったです。
メイド服のときもガニ股でしたが、可愛かったです。
華ちゃん、そういう役をやっても決してタカラジェンヌとしての美しさを失わないの、本当に素晴らしい。
ビリーとれいちゃんジミー(柚香光)が出会うこの場面、酔っ払ってはいるけれども、もうすでにジミーがビリーにメロメロなのがもろわかりで、とても幸せ。
酒に酔っているのではなく、ビリーに酔っているんでしょ!ってツッコミを入れたくなる。
「もしかして僕に一目惚れしちゃった?」とジミーは聞きますが、そりゃあんたのことだ!と思いましたね。
ジミーの視線が熱いのなんのって。
そりゃビリーはジミーの周りにはなかなかいなかったであろうタイプの女性なので、おや?なんか今までの女の子と違うぞ?と興味を持つのはわかる。
それが本気の恋になるのは、現実では難しいだろうけれども、まあミュージカルですからね!

公爵夫人(鞠花ゆめ)も登場から素晴らしいインパクトを残しましたね。
『はいからさん』の如月はあまり歌がありませんでしたが、今回はもう歌うのなんのって、歌っている時間の方が長いのではないかというくらいには歌っていますね。
自由の女神に扮したときは、もうお腹が捩れるかも思ったのですが、男役さん2人に持ち上げられて、そのまま上手に捌けるものだから、さらにびっくり。
そのままはけるの?!男役さんたちもこりゃ大変だわ。

ところ変わってロングアイランド
すでに執事の格好をしたクッキーあきら(瀬戸かずや)がそりゃもう格好いいわけですが(最初に出てきたときは『ワンス』のメインメンバーの幼少期のようでしたものね)、なぜ中のベストは赤白のボーダーなのか。
すごい目立つ。いや、似合っているよ?!むしろそれが似合っているの、すげーよ!!って話なんですけれども。
絶対に使わないはずの別荘に持ち主ジミーとその婚約者アイリーン(永久輝とあ)登場。
アイリーンはブロードウェイによくある「頭は空っぽだけど超絶金髪美女」なのですが(『プロデューサーズ』のウーラのような)これまた憎めないのはひとこの演技力の賜物でしょう。
ひとこって金髪の娘役をやると、なんとなくうらら(伶美うらら)のようにも見えます。
しかしひとこの細さと言ったらありませんね。
普段はしっかり男役だと衣装に覆われていて気がつかないのですが、長い手足の剥き出しになるワンピース を着ると、まあ細いのなんのって。
すごいよね?よくその細さで娘役さんを持ち上げることができるよね?ビックリする細さだった。
ジミーとクッキーが喋っている後ろでは広すぎる舞台を自由に使って動き回って、しかし側転はできないとか本当に愛らしくてすばらしかった。
ひとたび喋ると頭がゆるふわ系であることは間違いないのですが、しかしそんなアイリーンよりもジミーは馬鹿だからな……どうしようもないよ、ジミー。
ロングアイランドの蚊に刺されてもマラリアにはならないよ。

アイリーンが風呂場へ消えたあと、ジミーとビリーが再開しますが、ジミーは全く覚えていないという最低野郎。
基本的にジミーはれいちゃんの顔でなかったら全ての言動が許されないのですが(笑)、「キスしたことない」というビリーに教育目的でキスするのとか、もう本当にどうよ?!
それにしてもビリーは一体いくつくらいの設定なのだろう。
何年くらい前から酒の密売人として働いているのだろう。そんなことも気になりました。

シャワーのシーンは、いかにもブロードウェイミュージカル!という感じでしたね。
あの人海戦術ぶりとふざけた衣装、それなのに上手い歌。
バブルワンピースから真紅の布を巻きつけるあたりは生着替えなのでしょうか。
白い羽がないと危なっかしいったらありゃしない!と思いながら見てきました。
でも最高に愛らしいし、楽しいし、素敵な場面ですね。

ショーガールたちがロングアイランドにまで押しかけてきて、ブロードウェイミュージカルらしい大勢でのタップダンス。
いかにも!って感じでしたね。
れいちゃんのタップダンスは「一生懸命やっている感」がないにもかかわらず、しっかり音が鳴っていて、やはりダンスの人だなあ、と。
ポケットに手を突っ込んで余裕の表情でもピタッと足が床に決まる。すばらしい。

ひとこアイリーンは、ジンジャーとの離婚が成立していなかったことがわかってジミーをなじりますが、「悪魔」「辱め」の単語は取るに足らないビスケットに教えてもらっているにもかかわらず、「屈辱」という言葉は出てくるw
これはジミーとは異なり、マラリアのことを知っていることへの伏線でしょうか?
あと常に膝が曲がっているのも気になります。
そういう演出なのでしょうか。

よく考えなくてもこの取るに足らないビスケットことクッキーがジミーとビリー、デューク(飛龍つかさ)とジェニーについてはかなりの責任があると思うのですが、その責任を被るかのように自分も最終的にはでたらめな恋に落ちるのだから、本当に何がどうなるのか分からないのが人生だな、と。
因果応報ってやつですよ。
しかさ2幕で「ここは失恋クラブじゃない!」っていうけれども、いったい誰のせいでwwwと思いましたよね。
愉快犯ですな、クッキー。そりゃ、あんたは人生楽しかろうよ。

くまのぬいぐるみ、可愛かったですね。
あれ、販売してくれませんかね。買うんですけど。
ジミーのお気に入りのぬいぐるみなのでしょうか。
プロデューサーズ』でいうところの、マックスのブランケットような。
乱闘騒ぎで所長(汝鳥伶)が入ってくるとき、ビリーはクッションで顔を隠しますが、あるときは緑のクッション、またあるときは白いクッション、ときにはこのぬいぐるみで自分を隠します。
舞台写真になっていたのは緑のクッションのバージョンでしたね。
ライブ中継ではジミーと所長の話を聞きながら、クッションにグーパンしていたのが忘れられません。
クッションにグーパンする娘1なんて滅多に見られるものではない。しっかり拝みました。

翌朝のジミーとビリーの曲は『BEAUTIFUL GARDEN』のゆきちゃん(仙名彩世)を思い出しますね。あれ、格好良かったからなあ。
ここのタップダンスはビリーがちょっと一生懸命踊っている感じがあるのですが、ダンスとは別に、演出としてそれは正解でしょう。
ちょっとビリーの方が慣れない感があった方がいいなと思います。
そしてこの曲の終わりに2人はソファでいちゃつくわけですが、よく考えると『DANCE OLYMPIA』でもブルーのワンピースの華ちゃんの手を白いダボダボ衣装のれいちゃんがとったのもベンチでしたし、『はいからさんが通る』は言うまでもなく、華ちゃんの銀橋ソロ前の場面はソファでしたし、このコンビにはソファやベンチ、椅子の類がよく似合う。

別荘に所長やら公爵夫人やらが登場。
公爵夫人は犬のように鼻を動かして、アルコールの匂いを察知する。
クッキーとの「旦那はもう死にました」「そりゃ旦那さんは幸せだ!」みたいなやり取りは出会い頭で衝突したかのようでしたが、その後も「わたくし死んでしまうわ!」「ぜひお手伝いさせてください!」なんていうのもあって、大変に愉快でした。
2幕の「3拍子!」「4拍子!」の掛け合いソングも大変にすばらしかったです。
力量もさることながら、息ぴったりでとても楽しかったです。

1幕終わりの曲はジミーとクッキーが2人でセンターに立っている場面があるのですが、そこでもう感動。
感極まって泣いてしまった。
2番手があきらであることに物申したい人はたくさんいると思うのだけれども、でも素敵なコンビでしょ?素敵なコンビだよね!って思い知らされた。
あの場面がとても好きです。

素敵なレモネードを飲んだ後の公爵夫人の豹変ぶりといったらないのですが、ここでの寝息が豪快なのもおもしろくて。
というのも、冒頭でジミーが立てる寝息は「クーン、クーン」みたいな子犬が泣くような可愛らしいものなのに、公爵夫人という地位のある女性が立てる寝息が「ガーガー」と豪快なのが非常に対照的で、逆だったらなんか違うなと思うこと間違いなしじゃないですか。
演出の妙を感じました。好き。

ジミーはクッキーのことを「僕が知る限り史上最高の執事」と言います。
どこを見てこんなことを思ったのか心底尋ねたい気もしますが、そのあとの作戦の一環として出てきた覆面調査官の2人はもはや『マスカレードホテル』ですな。
ここでもジミーは頭弱い振りを発揮して「ブラウン・ベアード」というべきところを「レッド・ベアード」といい、周囲をぽかんとさせます。
アイリーンよりも頭激弱ぶりを発揮します。
むしろ後半になるとアイリーンは意外と普通の頭の持ち主で、ただちょっとテンションが人と違うだけなんですよね。
ウェディングドレスも素敵だった。
どんだけ長いベールを使っているの?!というツッコミを皆さんはしましたか?わたしはしました。
しかし本当に細いな、ひとこ。

捕まるか捕まらないかの瀬戸際で、照明が落ち、カップルがそれぞれ歌う場面では上でミラーボールまでもが回っており、コメディへの意気込みを感じます。
ライブ中継ではその間ではわからなかったかもしれませんが、回っているんですよ、ミラーボール。
私はミラーボール大好き人間なのだ〜!
所長とアイリーンの場面でも回っていました。
ガーシュインの名曲がここで使われるとはw

で、コメディも佳境に入ったところで、ようやく登場ジミーママ。
ジミーママのまゆみさん(五峰亜季)は最後の最後にしか出てこないけれども、圧倒的な存在感。
さすが72期。貫禄が違う。
で、そのジミーママとマックスが良い仲になって終わるのですが、しーちゃん(和海しょう)の包容力といったら!
すごい頑張っていた。
フィナーレも、芝居の最後まで出ていたからちょっぱやで着替えてセンター3人としてキメてから、また着替えてジミーママと腕を組んで出てくる。
すごい、すばらしい。よくやった!
個人的には神父様の姿がベストでした!

ボートの場面。
ジミーは「大きな家も立派な車もビリーの魅力には敵わない」から「使用人のいない、自分たちのことは自分たちでやる生活」を提案しておきながら、ママから「相続権を取り上げない」と言われた瞬間「正直僕にはそういう生活は無理だと思っていた」と言い、ズッコケましたね。
そしてビリーはジミーの愛の告白を最初は断る。
おそらく住む世界が違うと思ったのでしょう。
けれどもジミーママの正体が分かり、「跡を継いで欲しい」と言われたビリーは、後継者になる決意をする。
ジミーが「僕は大統領にならないと君と釣り合いがとらないね。君は僕を選ぶことで終わりにするんだ」と改めてビリーに告白する。
これがいい。ジミーママの後継者になることとジミーと結婚することは別のことであり、それぞれにビリーに選択肢が委ねられている。
このことがすばらしい。ありがとう。

『ピガール狂騒曲』も概ね好評だったし、賞ももらったので、原田先生の今後の作品も楽しみにしております。
しかしこの作品、わりと出来がいいだけに、本来ならばライブ配信も円盤化も難しかったのではなかろうか。事実『20世紀号に乗って』はどちらもなかったわけですし。
今回版権が取れたということは喜びである反面、やはりブロードウェイもこのコロナによって相当経営難になっているのだなと感じずにはいられません。
これを機に劇団はだいきは退団公演スペシャルとか銘打って『20世紀号に乗って』の版権も改めて交渉してみたらいかがでしょうか。円盤出たら買いますよ?