ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

月組『出島小宇宙戦争』感想

月組

デジタル・マジカル・ミュージカル『出島小宇宙戦争
作・演出/谷 貴矢
公式ホームページはこちら。

kageki.hankyu.co.jp

先に言っておくとフィナーレが神。
これで細かいところがチャラにできるくらい神。
でもリンゾウの心変わりは早すぎる><

劇団☆新感線みのある『銀魂
公演概要、チラシ、ポスターが発表されたとき、みんな思った「銀魂www」「劇団☆新感線www」「大江戸ロケットwww」という感想は一生語り継がれるだろうし、カグヤという役名の人が傘を振り回していたことも語り継いでいくべきことでしょう。
別に戦いで傘をメインで使ったわけではないので、必要な設定かどうかは怪しいですが。

コラージュ作品か?と思いきや、それだけでない明るくポップな楽しさもあって、近年私が見た中では星組の『GOD OF STAR』に近いかな、という印象。
カゲヤス(鳳月杏)とカグヤ(海乃美月)はラストくっつくわけではないけれども、救いようのない悲劇でどうしようもないという感じは全然しないし、2人とも自分で選んだ納得できる道という感じ。
色々ツッコミどころはあるけれども、基本的には楽しくずっと見ることができました。
ツッコミどころに関しては、なんていうか話の核心近くにありすぎて、タカヤ先生しっかり!というよりも、むしろああやっぱり芝居作るのって難しいなあって思いました。
最後はちゃんと宝塚のお芝居になっていたと思います。

1回しか見られないし、撮影が入っていたので(スカステ放送分? 円盤化するの?)、なるべくオフオペラで全体を見たかったのだけれども、やっぱり気になるところはオペラで見ちゃいましたね。

どのあたりが「戦争」なの?と思う人もいるかもしれませんが、なんていうか「生きること」は「戦い」だなと思いました。
何を信じるのかは人それぞれ、何を信じたいかも人によって違う。
願いや希望やロマンがあるけれども、あまりにも自分が見たいものだけ見ている人とはちょっとまともな話ができそうにないし。
案配としては難しい。
ロマンがあっていいね、は物語の中だけなのか。
実害が伴わないロマンって、現実世界のどこかにもあると信じたいのだが。
カゲヤスもカグヤも信じたいものしか信じない、とかそういう極端な性格でなかったのがよかったのかもしれません。

ちゃらんぽらんなちなつがとにかく良かった!!!


●一幕はとにかく楽しい
ドキドキワクワク次になにが起こるのだろう?と一幕はとにかく楽しくて、期待もできて、見ていて飽きない。
オープニングも楽しい。ひたすらに楽しい。なにも考えずにただひたすらに娯楽!エンタメ!っていう感じ。
大道具も最高。不思議な感じがよく出ている。
大からくりっていうのかな。セリ下がりもあって、よき。
近年ありがちな映像の背景がスカステ放送されるときに綺麗に写るといいのだが、それはちょっと心配。
お衣装も非常に凝っていて、太さの違う白黒ストイラプと着物だったり、黄色の着物に緑の袴と一見普通なんだけど、レースの帯だったり、小さめのお帽子を斜めにかぶって着物と合わせたり、着方も彩りも様々で、大変楽しいです。
あーん、お着物で行けばよかった!と思うほど。

さちか姉さん(白雪さち花)、ぐっさん(春海ゆう)、やす(佳城葵)の3人はさすが!という感じ。
それぞれ2役ずつでしたけれども、鏡合わせのような役になっていて、大変素晴らしかったです。
耳が尖っていて、二本ツノの生えた宇宙人なら、確かにあまり、悪さしなさそうですね(笑)。
『BADDY』のまゆぽんの絵でございました。

ぶっ飛んでいるシーボルト風間柚乃)もそのスゴツヨメイド(蘭世惠翔)も、裏に何かありそうと思わせるけれども、まあとりあえず楽しい。
すっげー変人だけど、とにかく面白おかしくて楽しい。
この2人でスピンオフ作品がいけるのでは???と思うくらい濃い2人だった。
メイドは台詞がなかったように思うけれども、喋れないという設定でもあったのかしら。
元男役というだけあって、スゴツヨメイドという設定に説得力が増し増しでしたわ。

死んだはずのタダタカ(光月るう)もわりと結構自由に頻繁に出てくる。
陽気で愉快な師匠である。酒と月と地図が好き。
始終、楽しそうに演技していて、大変よろしい。
地図に月の言葉でラブレター書いちゃうロマンチスト。
確かに自分の墓に自分が書いたライブレター供えられたら成仏できねぇなw
主演なのでは?と思うくらい登場してきていたわ。
まあ、カグヤの想い人だしな。

海ちゃんは2人とは対照的にひたすらに美しい。
ずっと美しく笑っていらっしゃる。
前作でカゲヤスと夫婦やっていたんですよね?
演技力、あっぱれである。
登場したときシーボルトやカゲヤスに「じゃじゃ馬」とか言われているけれども、あの威厳はそんな言葉で収まりきらない。
あの不適な大胆さといい、地図を狙うけれども全然憎めないあの笑顔といい、見た目相応の人間ではないことが初めから明らかである。
もちろんこのときはまだカグヤが本当に月の人間とはわかっていないから2人がそう評するのはわかるけれども、それだけじゃねぇぞって観客にフラグを立てている海ちゃんは最高である。
アンナ・カレーニナ』とはまた違った美しさが堪能できる。

こありちゃん(菜々野あり)とちづるちゃん(詩ちづる)もひたすらに可愛い。
ほとんど出ずっぱり。
目の保養。かわいい。
こありちゃんの方がお辞儀のときに膝を深く曲げている。愛おしい。

●話の核心は師匠の死
リンゾウ(暁千星)が弟弟子のカゲヤスと道をわかつことになったのは、ヌイノスケ(英かおと)に「タダタカを殺したのはカゲヤス」と聞かされたから。
だからリンゾウはカゲヤスの持っている地図を狙っているし、ヌイノスケは地図をロシアに売り込んで、日本がロシアの俗国になった暁には総督として帰国、やがて独立を目指す夢見るダニ。

もともとリンゾウはカゲヤスに思うところがあったのでしょう。
師匠のタダタカはカゲヤスの父を尊敬していて、タダタカにとってカゲヤスは弟子である前に尊敬する人の息子だった。
リンゾウはただの弟子でしかなかった。
それを「依怙贔屓」とリンゾウは言う。
心の中にモヤモヤがずっとあったのだろう。
個人的にはカゲヤスが言うように依怙贔屓とはちょっと違うのでは?と思うけれども、兄弟子である自分よりも優先して大切に扱われているカゲヤスに思うところがないわけではないリンゾウの気持ちはわかる。

師匠を殺したのがカゲヤスだと、カゲヤス本人の口から聞いたリンゾウはこれで思い残すことはないとカゲヤスを撃つ。
ここで一幕が終わる。

人間には寿命があり、これは変えられない。
月の都の人間には寿命がない。
永遠の命、というよりも人間の寿命からみたらほぼ永遠にみえる、くらいだと思っていますが。
星の寿命が「◯億光年」とか言われてもピンとこない。これはほぼ永遠とよんでいいだろう。
夏目漱石の『夢十夜』「第一夜」に出てくる「百年」みたいなもの。
とにかく月の住人からしたら人間なんて一瞬しか生きていない。
いくら月にある不死の実を食べたとて、人間界でそれを使ったら逆に猛毒になる。
その設定はわかる。
でも月の波長云々で薬として使えることもある。
この設定がよくわからなかった。
御都合主義やろwww
だったらカゲヤスが生死をさまよっている間にカグヤが一度カゲヤスを次の世界に連れて行って、そこで蓬莱の玉の実を使って、地球に戻ってきた、とかじゃあかんのか?
まあ、そうすると本当にカゲヤスが師匠殺しの犯人になるからダメなんでしょうけれども、なんか、もっとこう、さあ……。

そして明かされるカグヤの正体。
随分あっさりとした演出で、いいの?ねぇ、それでいいの?ここ、大事なところじゃないの???となりましたが、なんとなくこれは仄めかされていたからいいの、か?
「そっちの話の方がヘビー」とカゲヤスに言わせるわりには演出はライトなんだよね。
しかしもっともツッコミを入れたいのはこの次の場面である。

●リンゾウ、それでいいの?
生き返ったカゲヤスに対してリンゾウは再び銃を向ける。
わかる。
リンゾウが真相を知ってカゲヤスに向けた銃口を下ろす。
わかる。
リンゾウに真相を教えるのは、カゲヤスではなくてカグヤ。
わからん。
リンゾウはそれであっさり納得してしまう。
わからんぞ!!!

おまっ!あれほど!こだわっていたのに!どこの誰とも知れぬ女の言ったことをそんなに簡単に信じてええんかい?!今、剣を交えている相手はカゲヤスやで?!というところですかね。
あの『GOD OF STAR』の料理全然してないけど、大丈夫?!っていうツッコミと似ている(それでいいのか)。

リンゾウはタダタカを殺したのはカゲヤスだと信じ込んでいる。それは半分くらい正しいのだけれども、それを信じ込むことによってカゲヤスと決定的に道を分かつことになったというのに、リンゾウにとってはぽっと出てきた素性の分からぬカグヤが真相を告げてあっさりそれを信じるってどうなのよ……そこは「部外者はすっこんでろ!」とか「お前には関係ねぇ!」とか「黙ってろ!解釈違い!」、まずはワンクッションあった方が良かったのでは?
そして最終的にはちゃんとカゲヤスの口からリンゾウに真実を伝えようよ(まあ、あれを真実と呼ぶのならば、という程度ですが)。

この場面は音楽や光による演出も弱かったかなー。
話の大事な場面だと思うのですが。
ただひらすらにここが惜しい。

●カグヤの真名
カグヤは初め、「タキ」という名でシーボルトのビジネスパートナー(笑)として紹介されて登場する。
元は長崎の遊女というが、なんかそれもだいぶ怪しい設定である。
セックススパイか?とも思ったけれども、そういうわけでもないらしく。
別になくてもいい設定だったとは思うけれども。

カゲヤスに本名を聞かれたとき「どうせ『タキ』は本名じゃないんだろ」と言われて、彼女は「カグヤ」と答える。
ここから「タキ」という名はほとんど出てこなくなるのですが、あとから「カグヤ」というのは、「月から地球に送られるスパイに代々受け継がれる名」ということが明かされる。

では、カグヤの真名とは?
ラスト、それをカゲヤスが彼女に聞けばもっとまとまりがあったのではないかと思います。
ほら、やっぱり真名って大事なんだと思うよ。
『20世紀号に乗って』でもあったじゃない。
一巡りして、やっぱり「タキ」が本名でもいいけれども、違う名前の方がロマンがあるなあ。
一人に三つも名前を与えるのも芝居としてはあまりよくないのかもしれないけれども。

ただ、最後にカゲヤスとお別れするときはセリで下がっていくのはちょっとねぇ……。
天井の月の世界に帰るのだからイメージとしては上がるではなかろうか。
できないのはわかっているから、もう少し誤魔化した演出があってもよかったのでは?

「月」がモチーフのお話ということもあり、ベートーヴェンの「月光」が挿入曲として使われましたね。
最近では『群盗』でも使われていました。
ちなみに『群盗』の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

今年の夏は雪組ベートーヴェンを題材にした芝居もうえくみ先生が担当されますし、こんなところでベートーヴェンの偉大さを知ってしまった……という感じです。
宝塚を見ていると毎年どこかでお会いになる方の一人ですな。

●フィナーレが神
繰り返し言うが、フィナーレが神。
フィナーレで細かいところがチャラにできるくらいフィナーレが神。
とにかくフィナーレの幕あき、海ちゃんがセンターで、娘役を率いているという、それだけで気持ちとしては爆竹拍手。
別箱なのに、娘役のナンバーがあることも最高。
お衣装が、海ちゃん→シルバー、他の娘役→黒と、ひときわ目立つ演出になっていたのも素敵。
こありちゃんもちづるちゃんもゆうきちゃんもドレス着ていても一瞬でわかるな?!すげーや!
これでいちごちゃんが加わったら、私、月組の下級生見るのに目が足りない。

ちなつが出てきてデュエットダンス。
最高。指の先まで美しい。
ちなつの包容力が海ちゃんの溢れんばかりの美しさを大きく抱きしめてくれている。
ダンスとしてのレベルも高い。
ちなべーやれいうみとはまた違った良さがある。
みんな違ってみんないい。
最後のポーズもすごくいい。大好き。
1回見ただけではとても目が追いつかない。好き。

男役がずらーと出てきて、すぐに海ちゃんがはけるかと思いきや、もう少しちなつと踊ってからさらっとはける。
とにかくフィナーレで舞台にいる時間の長い海ちゃんという演出が神オブ神。
隈取りしているゆりや(紫門ゆりや)はオフオペラで捉えることができます。
堅物でみんなに遊ばれる役が非常にキュートでした。
ただ二幕、シーボルトに対する評価が180度あっさりかわるあ大衆に向かって「あいつら、無責任すぎないか?」という言葉は全日本国民の心に刺さるべき言葉だと思う。
最近ゆりやはこういう警察とか主上側の役が多いね。
鎌足』でみっきー(天寿光希)が演じたみたいな自由な語り部というのもできそうな気がするのだが。
そしておもしろそうなのだが。
劇団さん!頼むよ!!!

ちなみにタカヤ先生なら『アイラブアインシュタイン』は好き。『義経妖狐夢幻桜』は苦手でした。