ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

『EXCITER!!』娘役ソロの歌詞変遷

スパークリング・ショー『EXCITER!!』(作・演出/藤井大輔)は2009年に真飛聖桜乃彩音コンビのとき、『外伝 ベルサイユのばらアンドレ編-』と共に花組で初めて上演されたショーである。
その後、2010年(真飛聖、蘭乃はな)、2017年(明日みりお、仙名彩世)、2018年(柚香光、華優希)と繰り返し花組で上演されてきた。
今回注目するのは、主題歌の後、トップ娘役がセンターで歌う場面である。
4回の上演の中で、この場面の歌詞がどのように変わってきたか、ということについて考える。

まず、それぞれの4人の歌詞を以下に紹介する。
なお、聞いて歌詞を起こしたので、多少間違いがあるかもしれない。
そのときはこっそり指摘していただければ幸いである。

桜乃彩音
あの夜の夢が忘れられない
こんなに熱い自分は初めてなの
思いのままに愛せないなら
この世に生まれた意味はない
ah レディの仮面を捨て uh 夜は雌豹にかわる
ah 自由に会い楽しめば 永遠に枯れない花が咲く

【蘭乃はな】
華やかな夜のシンデレラストーリー
こんなに熱い自分は初めてなの
ガラスのハイヒール届けてくれた
夢の始まりのベルが鳴る
ah ルージヌを紅く染めて uh 夜空駆け巡り踊る
ah 一途に愛夢を見れば 永遠に枯れない花が咲く

【仙名彩世】
夢に現れたの白馬のプリンスが
セクシーな瞳で私告げられたわ
君との巡り会い決められたDestiny
これが現実ならI'mシンデレラ
ah もしも夢だとしたら uh 永遠に眠り続けたい
ah 踊り明かすdancing all night
最高に輝くエキサイトジュエリースター

【華優希】
華やかなmidnight party 始まるのラブストーリー
こんなにもドキドキするのは初めてだわ
夢にまで見ていたときめきデビュタント
深夜零時過ぎでも眠らない
ah クールな瞳見つめ uh 薔薇色に頬を染める
ah カッコよすぎてクレイジーラブ
真紅の私はエキサイトプリンセス

桜乃の「こんなに熱い自分」「レディの仮面を捨て」「雌豹」という歌詞は、いわゆる肉食系女子を連想させる。
しかし蘭乃の「シンデレラ」「ガラスのハイヒール」、仙名の「白馬のプリンス」「シンデレラ」、華の「デビュタント」「深夜零時」などのワードは肉食系女子とは正反対のイメージを思わせるワードが並ぶ。
「シンデレラは肉食系女子である」という仮説が成り立たないわけではないが、ここではあくまでもシンデレラは「不幸ながらも自分の生きる世界を祝福し、最後には幸せを手にする女子」と考えたい。
なぜこのような改変が行われたのだろうか。またこの改編は適切だったのだろうか。

桜乃が『EXCITER!!』を演じたのは、2009年である。初舞台が2002年であるので、研8のときである。
新人公演が研7までだと考えると、このとき桜乃は充分にベテランだと言えるだろう。
娘役筆頭として「雌豹」という言葉はふさわしい。
タイトルの「EXCITER」の「刺激する者」の意にも充分適っている。
まさにトップ娘役としての「EXCITER」を表現する歌詞である。

蘭乃は研5のときに『EXCITER!!』に出演した。大劇場トップお披露目公演であることを考慮すれば「シンデレラ」は納得するところもある。
2010年時、月組娘役トップスター蒼乃夕妃は研7で、雪組娘役トップスター愛原実花は研6、星組娘役トップスター夢咲ねねは研7、宙組娘役トップスター野々すみ花は研5でそれぞれ娘役トップスターに就任している。
この中で野々を除くと、蘭乃は確かにトップスター就任が早い方だと言える。
「シンデレラ」という言葉は、このときの蘭乃にはふさわしい。

仙名が『EXCITER!!』に出演したのは、研9のときである。
彼女は新人公演ヒロインの経験こそないものの、94期首席としてダンス、歌、芝居の力を持ち合わせた娘役である。
確かな技量、圧倒的な個性、的確な自己プロデュース力のある彼女がトップスターになることをファンはどれだけ喜んだだろうか。
前任の花乃まりあが研5でトップ娘役に就任していることを考慮すれば、仙名はトップ娘役としては遅咲きであった(ただし、彼女はトップでなくても彼女なりに舞台で咲いていたと考えている)。
花乃まりあが96期生であることを考慮すれば、学年が上である仙名が後任になることは異例の人事でもあった。
ただし、前述したように彼女の舞台人としての力量を見れば、たとえ彼女のファンでなくても、彼女がトップ娘役となることに異論を挟む余地はない。
その彼女が「シンデレラ」と歌い上げるのは、果たしてふさわしいだろうか。
彼女はずっと「白馬のプリンス」を待っていたのだろうか。
仙名が自身のミュージカル・サロンで明かしたようにトップ就任までの道のりは「決して平坦な道」ではなかった。
プリンセス物語の王道といわれる「シンデレラ」は仙名が圧倒的な歌唱力を発揮するのに適切な歌詞であったとは、少なくとも私は考えられない。
仙名の歩んだ宝塚人生は「王道の娘役トップスター」のそれとは明らかに性質が違うからだ。

さて最後に華である。
研6でトップ娘役に就任した華であるが、『EXCITER!!』に出演したときはまだ研5であった。
研4のときに別箱『はいからさんが通る』のヒロインに抜擢されたことを考えると、彼女の宝塚人生を「シンデレラ」にたとえるのは、理解し難いことではない。
演技派としての彼女の今後の活躍も期待している。

以上のように、桜乃、蘭乃、華に関しては歌詞の変更が彼女たちにふさわしく、彼女たちの魅力を引き出すスプリングボードになっているが、仙名については他にもっと彼女の確かな歌唱力で魅せるべき歌詞があったのではないだろうか、と私は考える。

ざっくり言いますと「もっとゆきちゃんの魅力が伝わる歌詞を考えてもよかったのよ!ダイスケ先生!」というところです、はい。