ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

花組『はいからさんが通る』B日程感想+α

花組公演

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ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る
原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート) (c)大和 和紀/講談社
脚本・演出/小柳 奈穂子

前回の感想はこちら。

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●『はいからさんが通る』B日程

明日が千秋楽!というタイミングで、ようやく花組はいからさんが通る』Bパターン観劇することができました。ありがたや〜なんまいだ〜。
みさこちゃん(美里玲菜)かわいい〜!どこにいてもすぐに見つかるやんけ。
ちょっとお顔がシャープになったかな?
それともお化粧が変わったのでしょうか?
以前とは異なる印象を受けました。
きちんとお食事ができているといいのですが。

みさこちゃんのお衣装まとめ。
女学生は黄色やオレンジの着物に紫の袴。
モダンガールでは紫の帽子に紫のカーディガン。ワンピースは臙脂のクレリック襟。これがたまらんほどソーキュート。
伊集院家のメイドとしても登場し、園遊会では緑のドレスで登場。あわちゃん(美羽愛)と同様『ファントム』のドレスですね。
あわちゃんは下手が多かったけれども、同じ場面に出ていることが多いみさこちゃんは上手が多い印象でした。
女学生の袴はやっぱり着たいところですよねえ、この作品なら。たとえモブだったとしても。お役としてはあと雪の精ですね。

1幕終わり付近、少尉の隊がシベリアに行くことがわかり、号外少年から新聞をもらう場面で、A日程ではあわちゃんとさおた組長が一緒にいましたが、B日程ではさおた組長と一緒にいるのはみさこちゃんでした。
相変わらず父子のような印象。
あわちゃんの方が絶望が深い芝居をしているような気がしますが、もしかしたらロシアに向かう兵士の中に知り合いがいるのかもしれません。

超今更かもしれないですが、伊集院家のメイドがずらりと並んだ後の場面で、卯月と弥生が箒とちりとりで野球しているの、超絶面白いですね。
如月にバレたらきっとあなたたちもご飯抜きっていうところですわ。
メイドも執事も自由だなあwww

全体的に少尉の芝居に抑えが効いているなという変化を感じました。
例えば「ラリサは結核なんだ」と少尉が編集長に語る場面。
静かなトーンになっていて、ああ、少尉はいつかこの質問を誰かにぶつけられるのがわかっていたから頭の中で予め考えていた答えを淡々と述べているのね、と思った。
だからこそ予想外の紅緒逮捕に慌てるダッシュがキレッキレに見える。
こちらの方が好き。緩急の付け方が抜群ですわ。

ラリサが亡くなった場面でも「ラリサぁ!」と叫ぶのではなく、ぐっと彼女を抱き締めて「ラリサ……」という演出になったのがいい。
いつから変わったのだろう。
堪える演出や溜める演出は大事だと思う。
全部バンバン出していったらイケコの『ポーの一族』みたいになってしまう。そういうのがプラスに評価できる作品もあるのでしょうけれども。
これは好みの問題もありましょう。 
ただ、『はいからさんが通る』はラブコメであるだけでなく、大大正デモクラシー日露戦争関東大震災の描き込みを考慮すれば大河ドラマの面も持ち合わせていますから、緩急やメリハリのある舞台を作ることが必要になってくると私は思います。

1幕終わりの白い喪服で紅緒さんが「少尉!」と叫ぶ場面、銀橋にいる少尉がビクッとする演出にも気がつきました。離れていても固い絆で結ばれているようで感動しました。

ちなみにこの日はマチソワをしました。
マチネ公演は幕間のロビーは静かだったのに、ソワレ公演の幕間のロビーはごく普通に皆さんお話しされていたのが気がかりでした。
いや、さすがにマスクはなさっていますが。
考えてみればマチネ公演は友会公演でしたので、本気のファンとはこういうものなのかと実感しました。
もう2度と休演なんぞさせない、という強い意志を感じました。
そうだよね、そうなるよね、わかる。

蘭丸は、花乃屋の乱闘のときはいまいち活躍しきれず、その後現れた少尉にいいところをまるっと全部もっていかれてしまったのですが、狸小路伯爵邸では藤の小道具を使って立派に戦っているのもいいですね。
「臆病だけど、必死だった」の「必死」さが前者よりも後者の場面でいかんなく発揮されていたのがとてもよかったです。
その他、狸小路伯爵邸での乱闘では吉治さんを守るために下手奥ですみれ組の有明が大活躍。
そのあとの大道具がぐるぐる回る場面でも有明は吉治さんと一緒に紅緒さんの心配をしている場面も印象的です。

永久輝せあ扮する高屋敷は「大正時代の森鷗外か、夏目漱石か」と言いますが、『はいからさんが通る』には、森鷗外の『舞姫』を思わせるところがたくさんあります。
少尉の父親がドイツに留学したこと、そこで恋に落ちて、子供ができたこと、あるいは森鴎外自身を連想させるのは、少尉の左遷先が小倉であることでしょうか。
もっとも森鷗外夏目漱石とはそもそも文体や作風が全然違うので、観客にわからせるためとはいえ、あのフレーズはいかがなものかと思うのですが。
結局高屋敷ががいたのは『はいからさんが通る』ですから、大きなリボンと海老茶の袴、ハーフブーツの女学生の画を挿絵とした『魔風恋風』を書いた小杉天外が一番近いかもしれません。

文豪についていうならば、環の「冗談社っていったら、編集長がルドルフ・ヴァレンチノばりの二枚目だっていうじゃない」という台詞も残しておきましょうよ~と思いました。
こちらは文脈に合っているだけでなく、環の教養の高さもわかります。

翌日の千秋楽は無事に幕が上がったようで、感無量です。
配信は残念ながら見ていないのですが、無事に幕も下りたことにどれほど安心したでしょうか。
思えば3月13日に初日を迎えるはずで、15日にマチソワ観劇する予定だったのに、11月14日まで伸びたのは完全に想定外でした。
組子たちはもう1年近くお稽古しているのよね。
そりゃ芝居だって変わるよね。

大劇場公演が円盤になっていることを考えると、スカイ・ステージでの放送が楽しみです。


●華優希、まさかの退団発表

千秋楽の翌日、まさかのトップ娘役である華優希が退団を発表しました。
1時間、印刷室で泣きました。人のいないところで、プリント印刷なら頭を使わずにできるから、ととりあえず駆け込みました。
残業中に泣きながら印刷している女って、怪しいですよね。ホラーや。
翌日は休みたくてたまらなかったけれども、先輩には「明日仕事に来るのよ」と5回も言われましたので、泣く泣く仕事しました。松尾芭蕉ではないけれども、とるものてにつかず。

なぜ今なのか、早すぎるのではないか。大劇場は3本しかやらないのか。
近年だとふうちゃん(妃海風)がトップ娘役として大劇場3本で退団しています。
しかしこれは相手役であるみっちゃん(北翔かいり)と一緒にお披露目をして、添い遂げ退団をしましたので、事情は同じとは言えないでしょう。

他ならぬ華ちゃんが決めたことだから、尊重したい。けれども、どうしても本当にそれで良いの?という疑念が脳裏をよぎる。
もっと色々な華ちゃんが見たかったから、少しでも心残りがあるなら、翌日の記者会見で取り消してくれてもいいとさえ思った。
ミュージックサロンはやるみたいですが、タイトルも演出も未定、日程も曖昧、本当に急だったのかなと思いました。

翌日は、どうして華優希が退団を発表した世界線にしか目覚められなかったのだろう、と心底不思議に思いました。(朝起きて一番、ベッドの中で改めて公式発表を確認した人)

退団発表のあった日は、初演版『はいからさんが通る』を見ながら、華ちゃんの舞台写真を整理していて気がついたのですが、一人の写真もあるけれども、ペアの写真がとても多く手元にあった。
華ちゃん一人でももちろん好きなのですが、誰かと一緒にいる華ちゃん、相手も幸せにする華ちゃんがとてもとても好きなんだなあ。
華ちゃんの娘役芸が好きでした。
芝居の全体のバランスや調和をとるこができる娘役だと思います。
歌やダンスの巧拙の感じ方や芝居の好みは人それぞれでしょう。
ただ、私が好きだった華ちゃんの娘役芸というのは、他の舞台では求められるものではない。
宝塚でしか求められない。
彼女に心ない言葉をぶつけてきた人は、この結果に満足しているのだろうか。
彼女も傷つけて、彼女のファンまでも疲弊させて、それで笑っていられるのだろうか。それって変だよ。虚しいよ。それであなたは幸せになったのか。あなたのご贔屓は?

タカラジェンヌはひと時の夢だ。
誰もが皆、卒業していく。
それはわかっている。
トップスターともなれば、ファンとても卒業が秒読みになるのは覚悟しなければならない。
けれどもこの卒業は、たとえば6年間トップ娘役として堂々たる姿を見せた愛希れいかとも、圧倒的な歌唱力と絆で結ばれた相手役と添い遂げ退団をする真彩希帆とも違う。

退団発表の記者会見では『ダンスオリンピア』の頃から卒業を考えていたという。
この時点ではまだ本公演は『青薔薇』しかやっていた。
その前に『恋アリ』はあったけれども、なんと早いタイミングで考えていたのだろうと愕然とした。
コロナウイルスの影響で『はいからさんが通る』の休演期間に、卒業の気持ちが揺らぐことがあったことも明かした。
どうして揺らいだままでいてくれなかったのだろうとファンとしては勝手に思ってしまうが、この時点で相手役である柚香光に卒業の意思を伝えていたことは大きいだろう。
あまりにも早い。もったいない。

本公演で卒業する場合、多くは集合日に発表されるが、トップスターとトップ娘役は1つ前の作品の大劇場公演が終わった時点で発表するのが通例だ。
今回は東京公演が終わってからの発表であった。
初日が4ヶ月も延び、間に1ヶ月の救援を挟まざるを得なかった『はいからさんが通る』の大劇場公演の後にはとても発表できなかっただろう。

次に予定されている公演『ナイスワーク』はブロードウェイが原作であるため、映画館や楽天でのライブ配信は難しいだろう。
雪組『20世紀号に乗って』と同じように。
こういうときに、なんのための座付きの演出家がいるのだろうとはなはだ疑問に思わずにはいられない。
東京でしか公演がなく、コロナウイルスの影響も考えると、より多くの人に観劇してもらうことは、難しいかもしれない。
私も観られるかどうか、とても観たいけれども、わからない。
たとえ配信があったとしても、今回の宙組『アナスタシア』のように平日だったらきっと観られないだろう。

私はいったいあと何回、宝塚の娘役である華ちゃんを見ることができるのだろう。

月組の時期トップコンビも発表されていない今、花組の時期トップ娘役にまで気を揉まねばならないのはファンとしてはつらいところですが、もしかしたら、娘役不在ということにもなるかもしれません。