ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、古典文学など好きなものについて語るところ。

外部『パレード』感想

外部公演

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『パレード』

作:アルフレッド・ウーリー
作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
共同構想及びブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
演出:森新太郎
主演:石丸幹二堀内敬子

本日、富山で大千秋楽ですね。おめでとうございます。
東京公演が好評で慌てて地元のチケットを買いました。4階席というだいぶ後ろの方でしたが、ほぼセンターだったので、オペラグラスなしで観劇。
好評だった役者はもちろんすばらしかったけれども、個人的に気になっていたのは誰も彼もが紙吹雪に言及しているところ。
なぜ最後に舞う紙吹雪がそれほどまでに印象に残るのだろうと思っていた自分の頬をぶってやりたい。
なんせ初演を見ていないですし、紙吹雪といったら片付けが面倒だから降ってくるにしても最後だと思うじゃないですか。
なんなら最後の最後ですよ。
それなのに、まさか、最初から、山盛りのふりかけみたいに降ってくるんですよ、カラフルな紙吹雪が。
しかもその中、杖をついている人までいる。
滑るのではないかと見ているこっちの方がひやひやするくらい。

かけすぎたふりかけみたいになっている紙吹雪の中、ずっと芝居が進む。
あの紙吹雪が使い回しではないらしいことも公式ツイッターで知りました。気合いが違う。
スカートにまとわりつくし、足は埋もれるし、もうバミリも何もあったものじゃないなと思っていたら、プログラムにも似たようなことが書いてありました。
そりゃそうだよね……舞台装置に挟まることはないのかしら。
盆もくるくる回っていたし、上手からは出たり引っ込んだりの道具はあるし。

史実通りに話が進みますから、ハッピーエンドではないし、もやもやするし、最後はあんまりすぎて泣くかなとも思ったのですが、むしろ泣きたのはルシールがピクニックのために面会に来たときで。
結果として最後の面会となったわけですが、あの唯一にして最高の幸福の場面で泣いてしまった。
あんなに幸せな場面ある?
卑怯だよね?
最初に「子作り」と言い淀んでいたことが、まさかこんな幸せな場面に繋がるなんて、誰が予想しただろう。

連れ去られたレオがラスト、木にぶら下がっている紐を見てもあまり動揺していなかったことも印象深い。
車に乗せられた時点でレオ自身がどうなるのかわかっていて、さらにそれを受け入れていた。
「無駄な抵抗はやめろ」みたいな言葉がよくあるけれども、レオはそういう感じで抵抗はしなくて、それでも最後まで「自分はやっていない」と主張を貫き通した。
静謐な抵抗の場面のように感じられた。

でもこの話、本当に他人事でなくて、今でも人種差別は根強く残っているし、日本ではあんまり人種差別はピンとこない人も多いだろうけれども、最近もニュースにある通り、女性差別をなかなか絶やすことができないのが現状。
人類は変わらず国籍、人種、性別、宗教の違いを乗り越えられない。
そう考えると『サパ』においてブコビッチが「違いをなくして一つになる」という理想を目指した理由も痛いほどよくわかるような気がして辛かった。
もちろんそれではダメなんだけど、こんなつらい現実を目の当たりにしたら、そう考える人が出てきてもおかしくないのではないでしょうか。

役者は安定安心の人材ばかりで、特に男性キャストはそのほとんどが『レ・ミゼラブル』(坂本健児、今井清隆、福井貴一)あるいは『エリザベート』(石丸幹二石川禅)に出演した経験のある人で、芝居、歌ともに水準を超えていたと感じます。
ルーシルを演じた堀内敬子さんは舞台では初見だったと思いますが、彼らと対等に渡り合っていたと思います。
そのルーシルが2幕で言った「そうでなければあなたはバカか臆病者よ」というセリフはこれから積極的に使っていきたいです。
それに対してサリーが「間抜けのファーストレディよりも臆病だけど正直者の元州知事夫人でいたいわ」と言うのも素敵。
出番が多いわけではないけれども、秋園美緒さん、良かったです。

反対に後味悪いという意味で印象に残っているのが「あんなくろんぼ一人逮捕されたところで、民衆の感情は収まらん」という検事(確か)の台詞です。
うわあああ、今でもありそう、こういうこと!と思ったら、わりとリアルに吐き気がしましたね。
正義や真実はどうでもええんかい!ってね。
伊藤詩織さんの話を思い出しました。
あれも胸糞悪い事件です。

ブラックフェイスにしなかったのも良かったと思います。

『パレード』を観劇したその夜に大規模な地震があって、ツイッターにおいて「◯◯人が井戸に毒もった」みたいなクソくだらない呟きを見てしまったときも大変胸糞悪かった。

資本主義の地獄を魅せるミュージカルが『貴婦人の訪問』であるならば、こちらは差別の地獄を魅せるミュージカルだな、と感じました。
だからこそ双方とも再演する価値がある。
我々はまだそれを乗り越えることができていないから。
見るのはつらい。辛いけれども、見なければならない。
そう感じさせるミュージカルでした。