ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

月組『今夜、ロマンス劇場で』感想2

月組公演

kageki.hankyu.co.jp東京公演の千秋楽、おめでとうございます。ライブ配信、ばっちり見ました。
まずは本日のライブ配信の感想を軽く。その後、初回に見たときの感想からだいぶイメージが変わったなという作品に関する感想。
それから新人公演も仕事の都合で見られないか!?と思っていたけれども、運良く配信に間に合う時間に帰宅できましたので、そちらのキャスト感想も合わせて書きます。
ちなみに最初の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

ライブ配信は多幸感にあふれたお芝居で大変ほっこりしました。ありがとうございます。軽く感想を羅列します。
からん(千海華蘭)パパが「で、塔子は誰が好きなんだい?」というくだり。今日のアドリブは「今日を逃したら一生聞けないような気がするんだけどなあ」と。そりゃろうだろうね(笑)。
それをうけて塔子がこっそりと本当にはけていく直前小声で「まきのさんです」と答えていたのもよかった。最後だからね、うん。父親が優しかったから、最後の最後に本当のことが言えたのでしょう。可愛い父娘でした。ありがとうございます。
おだちん(風間柚乃)の「あた~まのなかに~♪」は今日はこれまた一段と力が入っていて、コブシがきいていました。まだフィナーレではないよね?って思った。
あとはるうさん(光月るう)もあさひくん(朝陽つばさ)も本当に芝居が好きなんだなと思いました。こういう人が複数いるのが月組の強みです。芝居の月組って感じですよね。たまらん。
「白い月の光に消えるさだめ」ということで、今回もうみちゃん(海乃美月)は『竹取物語』を彷彿させるポジションだったわけですが、そうねえ、こういうクロスオーバーというか現代パロみたいなものは、いずれにせよ『竹取』の系譜なのかもしれません。生まれた世界戦の違う者同士のふれあい。しかし、今みたいな時代だからこそ、そういう話が必要なのかもしれません。
写真の女はおはねちゃん(きよら羽龍)が休演のため、かれんちゃん(結愛かれん)。彼女のダンスはたまらんな。情感あふれていたな。素敵だな。そりゃ抱きしめたくもなる。絶品だったわ。
そして何度見ても思うけど、回想シーンも最高。人海戦術っぽいところがあるから、宝塚ならではの演出でしょう。
蘭くん(蘭尚樹)とこありちゃん(菜々野こあり)のペアが本当に好きなんだ、私。可愛い。バウあたりでコンビ組んで~!
最後の映像に出てくるモノクロれいこちゃん(月城かなと)はちょっとみやちゃん(美弥るりか)を思い出させるような気がしましたが、私だけでしょうか。ラストのキスシーンで、うみちゃんがちょっと背伸びをしているのも可愛かったです。
何はともあれ、最後まで出来てよかったです。お疲れ様でした。ライブ配信の感想はここまで。

さて、初日を見た人が口々に「『桜嵐記』バリに泣くよ!」と言っていたので、期待していたのですが、そうね、そういえば初日はファンが見るものだったわ、と『CH』のときと似たような心境になりました。
予習がてら映画も見ました。初回の感想にも書いたように映画はボロボロ泣いてしまった。
けれども劇場で見たときはラストがわかっていたこともあってか、それほど泣かなかった。
だからてっきり自分は月組の芝居はうまいけど、小柳先生の演出はうまいけど、今回は自分には刺さらなかったのかなと思って、もう一度映画を見たら、なんとビックリ。全然泣けなかった。
その後小説も読んだけれども、こちらはもう全くお門違いも甚だしいし、時間を返してくれと思ったくらいだった。
少なくとも小説は、いわゆる映画オタク青年の夢小説の域を出ず、ラストの方なんかは、美雪になんてこと思わせるんじゃい!と怒りさえわく始末だった。
そう考えれば、幾分か映画の方がマシだったけれども、月組の優れていたところはなんといっても「美雪の事情・背景に触れられている」「美雪に帰る手段がある」というこの二点が非常に際立って見えました。
つまり、ヒロインにはヒロインの世界があり、また彼女には選択肢が与えられている、という設定です。
その上で彼女は「帰らない」という選択肢を選び、健司と一緒に居続ける覚悟を決める。
映画では、美雪に主体性がないことを、綾瀬はるかを着せ替え人形にすることによって、上手にごまかしていたように思います。
それに気がつくと、月組のうみちゃんの美雪は着せ替え人形でもあり、また主体性をもった一人の女性、一人の人間として描かれていたのが非常に印象的でした。
それに気がついてからもう一度劇場に足を運ぶと、なるほど、確かに泣ける人はいるだろうな、と。
さすがに私は『桜嵐記』ほどは泣かなかった、というか、『桜嵐記』が泣きすぎだったんだな、と思い直しました。

ツイッターでは「美雪にもう一曲くれ!」という声を見かけて、なるほど、主体性をもった美雪ならもう一曲あってもいいだろう、というかヒロインなんだからソロ曲2曲あってもいいじゃんかよ、とは思いましたね。
一人でロマンス劇場にいるときの曲が聴きたいなと思いましたが、これだと既存の曲と似た感じになってしまうかな。
いっそ最初の方、映画の中で木の棒を振り回している時代の明るい曲とかがあってもよかったのかもしれません。
三獣士の曲は映画にもありましたし、そこにもう一曲オリジナルソングを入れるのは難しかったのかな。
「レッツ輪廻」ソングも映画そのままでしたものね。
そういえば、「妖怪」なのに「成仏」や「輪廻」という言葉が使われているのはおもしろい。しかも肩には「悪霊退散」で歌詞は「悪魔払い」。西洋東洋問わず怪物系を出せばいいというものではなかろうが、俊藤のスター性がすべてを覆す。力業ですな。
おそらく成仏するのは妖怪ではなく、幽霊だと思うのですが、妖怪は輪廻の輪の中にいるのでしょうかね。
それとも肉体をもたず魂だけが彷徨っているのが幽霊、それに対して妖怪はもとは人間だったのに何らかの形で人間社会から切り捨てられた存在のなれの果て、だから肉体も魂もある、というイメージなのでしょうか。
このあたりは、脚本の勢いとスターのオーラだけで魅せる、細かいことは「邪魔だ、どけ!」というノリの昭和のハチャメチャ映画らしいといえばらしい。

現代の病院の場面ではすでに多くの批判が出ていますが、あれもベースは映画にありますよね。
あくまでも映画では吉川天音だけが三好師長から叱咤されるような言動をとるのに対して、月組では他の看護師にもその態度が伝播していて、おいおいそれは現役の看護師さんに失礼だろ……と思う場面は多々ありました。
血圧や検温を忘れないでくれ……そしてたぶん現場ではそんな簡単に忘れられることではないだろうし、しかもこのコロナの時期ということもあって、忙殺されそうな中、そういう基本的な、オーソドックスな仕事も並行して行っているだろうことを考えるとちょっとアイタタターな感じに見えてしまいました。
どうしたの小柳先生、そういうのはダーイシだけでもうおなかいっぱいだよ、とね。
看護師の衣装も今後問題になってくるでしょう。ナースキャップに白いタイツ、スカートの看護師はどんどん減ってきています。こういうステレオタイプからいかに抜け出すのか、抜け出さなければならないと強く感じました。
映画では確か、少なくとも吉川はナースキャップはなく、パンツスタイルだったような気がします。
ロシアを描くときはロシア帽をかぶせてコサックダンスをさせればいいだろう、というステレオタイプから抜け出しつつあるようですから。

とはいえ、役者はどれも良かったです。
基本的には受け身姿勢の健司を、きちんと説得力を持って主人公として演じきったれいこちゃんはさすがの演技力だった。ぱるくん(礼華はる)もよく頑張ってはいましたが、やっぱりれいこちゃんってすごいなと新人公演を見て、改めて思い直しました。あと、もうちょっと歌に感情が乗るといいね。今はまだ音をあてにいっているような印象がある。頑張れ。
宝塚のヒロインとしてはこちらも破格な偉そうな物言いをする王女美雪は、そりゃもううみちゃんの殺陣も見られるし、いろいろなファッションも見られるし、でもれいこちゃんのことが好きだということがしっかり伝わってくるしでとてもよかった。
新人公演の花妃舞音ちゃんは、今まで名前を存じ上げませんでしたが、歌唱力や愛らしさが弾けていましたね。
殺陣はちょっと心配なところもありましたが、まあ普通は娘役に求められない能力だし、大丈夫かと(笑)。
うみちゃん美雪は殺陣が強そうだから、舞音ちゃん美雪は何をしでかすかわからないから、長物をもつと危ないのだな、という違いもおもしろかったです。
水玉スカートの場面は髪型も本役さんとはっきり変えてきて、探求熱心なんだろうなと思わせました。
ライブ配信では映画館の客として本多の後ろにいるのをしっかり見つけました。キュートな丸顔フェイス。ザ☆娘役という感じですね。これからが楽しみ。ショーでのピックアップが先かな。わくわく。
俊藤龍之介を演じたちなつ(鳳月杏)はそりゃもうさすがの昭和オーラでしたよ。あっぱれでありました。安心と信頼の俊藤。
ところで、ちなつの芸名の「杏」は『ローマの休日』のアン王女からとったと聞いたことがあるような気がしますが、原作映画の中の白黒映画の冒頭を見て、ちなつはどう思ったでしょうか。あれ、まんま『ローマの休日』だったと思うのですが。
新人公演は彩音星凪くん。ちなつが足の長さがウリの俊藤なら、こちらは目力オーラがウリの俊藤でした。歌の不安定さはともかく、台詞もちと聞きにくかったかな、配信だったからでしょうか。大きく育ってくれることを期待します。

圧倒的な歌唱力&女神様オーラのアキちゃん(晴音アキ)のディアナ様に対して、じゅりちゃん(天紫珠李)は圧倒的美貌のディアナ様といったところでしょうか。ヒロインをやった経験が生きているのでしょう、安心して見られました。頼もしい。残念なのは、個人的にあんまり好みでないということくらいです。
ありちゃん(暁千星)演じる大蛇丸は、宝塚オリジナルキャラクター。美雪をめぐって健司と本気の三角関係を見せられたら、たまったもんじゃないな、それは二番手の役目だろうと思っていたので、チャーミングでふざけたお役であったのはむしろ助かったし、恋敵である健司に知っていてもらえて喜んでしまうくらいだから、いわゆる普通の三角関係ではなかったのも良かった。
回を重ねるごとに楽しそうに演じているし、ソロ曲はどう見ても『エリザベート』の「最後のダンス」ですが、まあこれも星組にいってしまうことに対するお餞別なのでしょう。
新人公演では七城雅くん。こちらも認識していないジェンヌさんですが、思わぬ拾いものをしたような気分になりました。
ところどころちょっと弱いところ、小さくみえてしまうところはあるけれども、キャラクターのせいもあってか、いきいきとお芝居をしているように見えて、好感触でした。大きく育ってくれ! 楽しみである。私にしては珍しく男役で期待しちゃう生徒さんでした。
その大蛇丸の従者、雨霧狭霧の二人は本公演ではじゅっちゃんとぱるくん。同期だから、アドリブのネタを考えるのも楽しそうだし、二人とも容赦がない。そしてなぜか奇人変人の大蛇丸が好き。大蛇丸に拾って育ててもらった過去でもあるかい、というような。姉弟のように見える同期二人でした。実際のところはどうなのでしょうかね。
新人公演では、キュートならんぜちゃん(蘭世惠翔)と期待の新人一輝翔琉くん。タンゴはどう見てもらんぜちゃんがリードしているのもおもしろかった。こちらも姉弟のように見えましたが、演技というよりはそれは学年の差によるものでしょう。幼馴染みみたいな設定でありかな。

そしてなんといってもみちるちゃん(彩みちる)演じる塔子はかわいらしく、ザ☆ヒロインという感じで、『CH』とはまた違った味が出ていましたし、好みから言えばこういうキャラクターの方が好きなんだ!とガッツポーズ。嫌味な女にならないように演じるのは難しいでしょうが、私はみちるちゃんには甘いので、オールオッケーです。
新人公演ではこちらも期待のかれんちゃん。垂れ目のかわいらしい雰囲気なのにショーではバリバリに踊るじゃないですか、彼女。そのギャップがたまらないのですが、塔子としての演技もとてもよかったです。
新人公演では人数が少ないから、塔子が雑用仕事をしている場面なんかもあったりして、ちゃんと京映の職員だというのがわかったのはむしろ良かったのかもしれません。もっとも社長令嬢に雑用させるなwという気持ちもありますが。
白いレースの手袋して仕事しているんかい!とツッコミを入れたくなるけれども、二人とも可愛かったからOK。
塔子が京映の社員なのか、それともただの社長令嬢なのか、というのはちょっと芝居の方では曖昧でしたよね。もっとも後者なら父の職場にそう毎回顔出すなよって感じになるかもしれませんが。

こありちゃんは写真の女の役が新人公演では増えましたが、本公演でも新人公演でもセブンカラーズのお役をもらっていて、これがちょっと難しいなと思いました。
小柳先生では他にも『食聖』のときに思ったのですが、同じアイドルグループの中で、別の人間を演じるだけなのはちょっと物足りないかな、と。せーら(星蘭ひとみ)が本公演ではオレンジ担当、新人公演ではピンク担当(本役は小桜ほのか)でしたよね、確か。
本公演と新人公演はやっぱり全然違うお役とまではいかなくても、異なる役がみたいなとわがままだと承知で思ってしまうのです。
その点でいえば、そらちゃん(美海そら)のセブンカラーズのアイドル姿が拝めたのはありがたかったです。感謝の合掌。

場面としてはダイナマイトが輝いて、救急車を呼ぶ場面がなぜか印象に残っています。
本公演と違って、わりと新人公演では俊藤が倒れたことをさめざめ泣いている感じの演技をしている人が多かった中に、一人だけ「クビー!」と言われて泣いている人がいて、この差はwと思ったのですが、本公演はそういう感じではなかったと思います。
よりまとまりのある芝居になったといえるでしょうか。経験値を考慮すると、こういう変化はなるほど、と思わせます。安パイなのでしょうし、実際大人数のみんなで同じ芝居できるはやはり宝塚の強みですから。

今回、月組はいつになく休演者が多く、次回2つに別れるときも休演が続きそうな生徒さんが複数にいるのが気になるところです。
コロナの後遺症でなければよいのですが。舞台人にとっては死活問題でしょう。
ちょうど私が観劇した回で、芝居にいたはずのれんこん(蓮つかさ)がショーではいなくなる、という事件が起きて、そりゃもう心臓が飛び出るかと思いましたよ。東京では復活しているとの由、良かったです。
他の休演者さんたちも早く戻ってくるといいですね。そして戻ってきた公演が退団公演にならないといいのですが……はるこさん(音波みのり)の例があるからな。

『Rain on Neptune』のチケットはなんとか1枚確保してありますが、れいうみな上でタカヤ先生だから複数回みたいなって思っちゃうなあ。そして『ブエノスアイレスの風』は1枚もとれませんでした。
初演を見ていませんが、脚本としてはどうなんでしょうか。余っていたら声をかけてください(笑)。
そして『ギャツビー』の次のべつ箱はちなみちで見たいなあ。