ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

外部『カーテンズ』感想

外部公演

www.curtains-musical2022.jp

『カーテンズ』
脚本/ルパート・ホームズ
作曲/ジョン・カンダ―
作詞/フレッド・エッブ
原作/ピーター・ストーン
追加歌詞/ジョン・カンダー&ルパート・ホームズ
演出/城田優

いかんせん席が悪かった……すぐ前は空席だったのですが、もう一つ前がこれまた座高の高い男性の方で、しかも隣の女性とオペラグラスを共有しているのか、しょっちゅう頭が横に動くし、椅子が小さいのか、観劇中も座り直すものだから上半身がよく動いて、これはとても……見にくかった……地味にストレスでした。
ついでにいえば右後ろのおじさんのいびきと左後ろのおばさんたちの話し声も勘弁してほしかったし、左隣のふくよかなおばさん集団たちは椅子へのおさまりが悪いのか、荷物がはみだしてくるし、もうなんだかもう。
久しぶりに外部公演を見に行ったのですが、チケット代をけちってB席にしたために客層が悪かったのでしょう。ちょっと集中できなかったな。
宝塚にももちろんマナーの悪い客はいますが、気になるのは、携帯電話やスマートフォン関連とコロナ期間になってからの幕間のおしゃべりくらいで、さすがにここまでひどいことは珍しいかな、と。
もっとも劇場もよくなくて、座席前通路がとても狭い上に、席が小さい。宝塚の大劇場が快適すぎるんだよな。東京、てめぇはダメだ。

芝居自体はおもしろいのでしょうけれども、個人的に一番盛り上がったのは、城田がアドリブで『エリザベート』の「闇が広がる」の「闇が広がる~人は何も見えない~♪」を歌ったときに、あさこ(瀬奈じゅん)が続けて「誰かが叫ぶ~♪」を続けて歌ったところです。
毎回違うのか、それともこういうお決まりなのかはわかりませんが、とにかくここが一番テンションが上がったのですが、でもそれじゃダメでしょう。中の人ネタ、あるいは時事ネタでしか盛り上がれないのは脚本が弱い証拠だと思います。時代や役者に左右されないで笑うことができる会話を描くのが脚本家の真骨頂でしょう。

芝居の縦軸である殺人事件も、3人殺された中で、犯人が1人ではない、しかも共犯でもない、というのはおもしろかったと思うのですが、メインの殺人犯が外部の人間というのは、ミステリーとしてちょっとずるいような気もしました。
だからこそ、共犯ではないもう1人の犯人がいるとわかったときはわくわくしましたし、こちらが本編なのでしょう。
殺人動機も最初に明かされる犯人の動機がくだらなすぎて、ミステリとしてはどうしようもないのですが、2人目の犯人の動機はしっかりしていて、納得しかねぇ……と思ってしまった。
ミステリーオタクではないので、ミステリーの質が高いのかどうかはよくわからないのですが、共犯でない内部の犯人げもう1人いるという設定は本当におもしろかったです。クリスティに似たような話があるのかな。

城田優は演出兼主演というポジションですが、これって意外と難しいと思うんですよね。
私は、少なくとも芝居に関しては、演出と出演者は完全に別の方がいいと思っています。映画はカメラを通して観客と同じ視点で役者の自分を演出家の自分が客観的に見ることができますが、演劇はそれができないからな。
鏡はあっても、それは観客と同じ視点にはなり得ませんし、役者と演出家に求められるものは違うから、どちらもできる人がいるのはわかるけれども、どちらも同時にできる人は希有でしょう。
チョフィという役は誰が演じても楽しいおもしろい役でしょう。城田が演じたからおもしろい!というポイントは特になかったのは残念。

女の子役のニキやバンビの芝居の中のポジションはおもしろかったのですが、役者が二人ともいまいちだったかな……演劇界はもう安直に坂道アイドルを演劇役者にするのはいかがなものかと。チケットはそれで売れるのでしょうけれども、チケットが売れればいいという問題ではないでしょう。
バンビの役の子もずっと怒っている、怒鳴っている印象があって、ダンスはうまいのだけれども、芝居にメリハリがないというか……ラスト、ボビーに手を貸すところは脚本としては唐突でしたが、演技はよかったかな。

とはいえ、大御所の安定感は抜群でした。カルメン役の原田薫、アーロン役の岸祐二、そしてなんといってもジョージア役のあさこですよ!
あさこのジェシカ、本当によかった。圧倒的な存在感。あれじゃ、劇中劇の中でもニキはかすむだろうに……。
彼女のスター性が非常に輝いていました。すばらしい。
もはや彼女のことしか覚えていないレベル。芝居としてそれでいいかどうかは、また別の問題でしょう。

プログラムは、メインキャストは長めのコメントが、アンサンブルキャストについては「出演にむけてのコメント」「好きなナンバーやシーン」「一番好きなミュージカル」の3つの質問に答える形でコメントが掲載されていましたが、メインキャストにもこの3つの質問は聞いてやれよ、と思いました。
そしてあんまり文章がうまくない人もいるので()、形式をそろえたほうが、そこはごまかせたのではないかなと思います。まあ、そういう人はタカラジェンヌにもいるけどね。
あとプログラムが2000円なのは外部公演としては普通なのでしょうが、トートバックがそれよりも安い1500円だったのは笑いました。公演グッズとして、ステーショナリー系以外で、プログラムよりも安いものがあっていいのかどうか。このあたりは完全に宝塚に飼い慣らされているだけかもしれませんが。

外部公演を見たときに「これ、宝塚ならどうなるかな」というのは、あんまり考えないのですが、今回はわりと積極的に考えちゃいました。やはり少し物足りなかったのでしょうか。
上演するなら宙組かな。チョフィが真風涼帆、ニキが潤花、ボビーが芹香斗亜、別箱だったら桜木みなとでもいけるでしょう。カルメンは専科から五峰亜季にきてもらいたいところです。
ジョージア役が悩むところですが、本当に宙組に今、お姉さん娘役が不足しているんだなと実感して、別の意味でしんみりしてしまいました。

花組『冬霞の巴里』のマチネ公演を見たあと、こちらの芝居に駆け付けたのも、タイミングとしては微妙だったかもしれません。前者が震えるようなゾクゾク復讐劇に対して、こちらはブロードウェイが原作のサスペンスコメディミュージカルでしたから、温度差で風邪をひきそうでした(笑)。
翌日は大千秋楽、チケットが余っているようだったのが気がかりですが、無事に終わったみたいで良かったです。