ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

星組『エル・アルコン-鷹-』『Ray -星の光線-』感想

星組公演

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グランステージ『エル・アルコン-鷹-』
青池保子原作「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より~
 原作:青池 保子(秋田書店)  脚本・演出/齋藤 吉正

Show Stars『Ray -星の光線-』
作・演出/中村 一徳

開演アナウンスがやけに低い声で、もうここから完全にティリアン入っているな、という感じでしたが、幕開き一発目、ビジュアルもまたかなり初演に寄せてきている印象でした。

初演は大好きな瞳子安蘭けい)とあすか(遠野あすか)でしたが、当時はまだ実家暮らし&受験期だったこともあり、生で観劇はできておりません。
映像で見た記憶はあるのですが、今回の再演を見て「後半、全く記憶にない。いつ終わるんだ?」と思ったので、印象としてはその程度だったのでしょう。
再演するなら「多すぎる録音の心情台詞のカット」「女性が無理やり襲われる場面のカット」「ティリアンの野望の明示」の3つはせめて直してほしいと思っていたのですが、見事にそのどれもが実現していなくて本当にもう……原田先生は一皮剥けましたよ、あなたはいつ剥けるのですかヨシマサ先生……。
今回の再演に向けて分厚い原作を読みましたので、わたしは脳内補完ができましたが、場面はぶつ切りだし、話は飛び飛びだし、キャラクターの気持ちはまあわからんでもないのだが、「でもなんでそう思うの?」「だから何なの?」みたいな虚しい疑問が脳裏を過りまくりましたね。
このあたりの換骨奪胎は小柳先生に弟子入りした方がいいのではないでしょうか。
「七つの海、七つの空を手に入れる」ということはつまりどういうことなのか、「スペインの無敵艦隊の総司令になりなる」とか具体的なこと言ってください。

こっちゃん(礼真琴)は、13年前予科生としてこの作品を見て、えらく感動したという話ですが、本に感動できない以上、役者に説得力があったということでしょう。
噂に聞くところによるとあかさんもお年玉を注ぎ込んで見ていたとか。
「そんないい作品か?」と映像でしか見ていない私は思わず穿った見方をしてしまいますが、生で見た方がおっしゃているのだから、やはり役者がすばらしかったのでしょう。
本はダメだよ、どうにもならん。
プログラムで「13年前予科生として、熱狂してこの作品を見た生徒が今では星組のトップスターになった」とヨシマサ先生のお言葉がありましたが、それを詠んだ時に「あれ、ひっとん(舞空瞳)はまだ102期生だぞ?」と思った私をお許しください。
ひっとんの話では当然ない。こっちゃんの話だよって感じですよね。すいません。

そして私は「海賊が好き」と無邪気に言ってしまう、そういところが実はあんまり得意ではないのだなと思いました。歌もダンスも上手いのは認めるのですけれどもね……。

しかしトップスターがやりたいという作品があることと、その作品が再演に耐えうるものであるかどうかということは全くの別問題ではないでしょうか。
今後もこっちゃんがやりたいと言っていた『ロミオとジュリエット』を上演することが決まっていますが、こちらも娘役の数が少ないという問題は以前から指摘されていたはずです。
まあBOXを買っておいて、ケチつけるなという話でもありますが、逆に言えば、BOXを買ったから文句も言えるのよ!という感じでしょうか。
『1789』ももしかしたらこのコンビで上演されることがあるかもしれません。
そのときはぜひオランプ役はひっとんにしましょう。
そして何よりオリジナルの脚本を待っています。なんのための座付き演出家!
トップスターのやりたい作品の願いはわりと叶えられるのに対して、トップ娘役の願いはなかなか叶えられないことにもなんとなく不満があるのかもしれません。
そう考えると雪組の『ファントム』は、コンビの熱い気持ちが再演にゴーをかけたのでしょう。これもまた再演する価値のある作品かどうかは微妙ですが。

さて肝心の再演ですが、役者という意味ではとてもよくて、ティリアンをやりたくてたまらなかったというこっちゃんはもとより、愛らしくも気高い貴族兼女海賊をのギルダを演じたひっとんも、ラスプーチンとか黒太子とか次の死とかやたらと黒いイメージのある愛ちゃん(愛月ひかる)のレッドはとてもよかった。
それだけに本が……とも思う。何度も言うよ。
同じ紺色のドレスでも、袖から出てくるたびに違う髪型、髪飾りになって、娘役魂が炸裂しているはるこさん(音波みのり)、ティリアンに情報を提供する酒場の踊り子スサーナを演じたあんる姉さん(夢妃杏瑠)、堂々たるエリザベス女王を滑稽味をふまえて演じた副組長なっちゃん(白妙なつ)、レッドを支援する根っからの海賊ブラックを演じたかのんちゃん(天飛華音)あたりが印象に残っています。
ラストの愛ちゃんとかのんちゃんの並びは、おお!これは!よき!と思わず拍手をする勢い。このコンビ、バウや別箱でいかがでしょうか。

ひっとんは、もはや娘役トップスターとして向かう所敵なし!という出立でしたね。
ドレス姿は踊り難かったかと思いますが、エリザベス女王ばりの襟の白いドレス、女海賊として仲間を率いるショッキングピンクのドレス、シリアスな場面で着ている紫のドレス、いまわのきわの黒いドレス、ラストの天国でのホワイトベージュのドレス、どれも本当によく着こなしていました。
髪型もアップスタイル、おろしているスタイル、どれも美しかったです。
どれが一体舞台写真になるのでしょうか。とても楽しみです。どれも欲しいわ!
海軍中佐相手でもひるむことなく、首を取る気満々の強気の女性は大好物です。すばらしい。
だからもっとキャラクターを書き込んでやれよって思いましたよ、余計に。
ただ少し痩せてしまったでしょうか? しっかり食べていますか? 心配しています。
迫力のある歌声、ダンスにはある程度の筋力、脂肪も必要でしょう。

キャプテン・ブラックを演じたかのんちゃんもとてもよかったです。
あの脚本だと、ちょっと出てきてすぐにレッドの味方になってしまい、なんやねんというところはありますが、芝居はとても良かった。
レッドがスペインに亡命するティリアンを追いかけようとするところを止める姿が大変に勇ましかったです。
かのんちゃんは特にお顔が好みというわけではないのですが(すいません)とにかくお芝居から目を離せない役者だなと思っています。
『エルベ』のときのヨーニーがいまだに忘れられないのです。あれはとてもよかった……。

「乙女心がピンクに染まる~♪」の歌詞の破壊力は相変わらずすごいですが、同じボケ担当なら『アーネスト・イン・ラブ』のセシリー嬢が歌う「悪い人」も負けていません。
気になった人はぜひ検索してみてください。
今回の曲に負けず劣らず、ぶっ飛んじゃうような歌詞だからw
1から10までツッコミどころしかない。
ちなみに私は大好きです。

ラストの白いお衣装のティリアンとギルだはTHE宝塚という感じで、また二人が抱き合うわけでもなく、それぞれが自分の足で立っているというのが印象的でしたが、天国ですかね?
天国なんだろうなあ、しかしギルダはともかくティリアンは天国に行けるのかなあ、なんて思ったり……。
ダーティーヒーローを宝塚で上演するのは全く構わないのですが、ラストが難しいのかもしれません。


『Ray』のオープニングでは思わず天寿光希を探してしまいました。いないよって話ですよね。セルフツッコミ。
いや、あの紫のお衣装に金髪のみっきーがあまりにも好きすぎて、つい……なんて罪な人なのだろうか……好き。

ひっとんの曲が増えていたのが嬉しい限りです。
オープニングの「あなたの輝きに彩られ~♪」と歌いだすかと思いきや、愛ちゃんとデュエットで新しい歌詞をいただきました。
そして中詰、謎の霊鳥の場面でも冒頭にピンクの大きなセンスをもってソロをいただきました。
どれも素敵です。こういう変更があるから全ツ版の楽しみはやめられない。
しかしオープニング直後のこっちゃんとひっとんのデュエットソングがなくなったのは残念でした。
あれ、好きだったのにー!
残しても良かったのでは?と全体の構成を見ても思うのですが、いかがでしょうか。
なんでこっちゃんの元気はつらつなソロになってしまったのだろう。
あの曲の振り付けが密だったのがいけないのか……。

はるこさんの鬘がショーでも本当に見応えがあって工夫が凝らされていて、娘役の鏡だなと思いました。
思わず見てしまう。すばらしい。
星娘たちはこういう技術を今の内にきちんと教わっておいてくださいね。受け継いでくださいね。
あとは画面に映らなくても袖て歌っているのがすぐにわかるなつさん。
圧倒的な歌唱力。安心安全信頼の歌唱力。きっと肺活量もすごいんだろうなあ。

肺活量といえば、こちらも負けていないのがことひとのデュエットダンス。
音楽は「星に願いを」でした。
こっちゃんの衣装が赤×黒だから、最初に出てきたときに「ねずみか?」と思ったのですが、曲もディズニーだったので、浦安に思いを馳せた人はおおいことでしょう。
本公演のデュエットダンスよりも好きかもしれません。
しかし一番好きなデュエットダンスは『ロクモ』のときのデュエダンです。
あれはすばらしかった。あんなハイレベルのデュエダンを最初に見せられたらなんていうかもう……言葉がない。
しかしこの二人、踊り終わっても全然息が上がっていない。ぜいぜいしていない。胸が大きく動いていない。すごい。
筋肉の付き方の問題もあるでしょうけれども、肺活量もすごいんでしょうね。

五輪の差し替えは本当によかった。救われた。ありがとう、一徳先生。
そのままだったらどうしようかと思った。
早く中止にならないかな。
一徳先生の作品のフィナーレ冒頭は、例えば『MusicRevolution!-NewSpirit-』の「Such a Nirgt」もそうなのですが、今回の「星にスイング」も配役が変わったり演出が変わったりしても大変好き。
本公演バージョンから好きでしたが、今回のもだいぶ好きです。
ぴーすけとかのんちゃんという配役も私得でありますし、何よりお衣装が好き。
ぴーすけもかのんちゃんもひっとんも後ろのすみれ色のお衣装も全部好き。
要はシルバー系のノーブルなお衣装が好きなんでしょうね。
ひっとんは髪形がフェリシアのようでこれまた可憐。好き。最高。愛らしい。天使。
しかしやはり痩せたのでしょうか。ちょっと首回り、胸回りのすきすき具合が気になりました。ちゃんと食べているかしら……。
とにかく心配です。
貴重な娘役トップスターですから。大切にしてあげてください、劇団のえらい人たち。


本日11月30日は星蘭ひとみの退団日。
袴での儀式もなく、お別れということが寂しくてたまりません。
今までありがとうございました。類稀な美貌が忘れられません。『鎌足』『ロクモ』あたりの採用のされ方が良かったと思っています。
これからの活躍を祈っています。

そして衝撃的な人事の発表もありました。
なんて過激団なの、というしょうもないギャグはさておき、もやもやが残ります。
やはりこれは華ちゃんが残留してくれることが私の唯一の希望ですが、華ちゃんの決断も応援したいジレンマです。言っても詮無きことですね。
来月に控えた『アナスタシア』を見る目がだいぶ変わると思われます。

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』感想

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映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』(現代『Edmon』)
監督・原案・脚本:アレクシス・ミシャリク
主演:トマ・ソリヴェレス

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』を鑑賞。たいへんおもしろかったです。
たくさんの人に見て欲しい映画です。映画館に行くのが怖いという人もいそうですが、これは見て後悔しない作品。
ちなみに『シラノ・ド・ベルジュラック』はもうすぐ星組で開幕予定。

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作中に出てくるムーラン・ルージュ月組『ピガール狂騒曲』の舞台そのものですし、舞台裏の話という観点でも共通のおもしろさがあります。

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言葉だけですが「ダルタニアン」も出てくるので、『All for One』ファンも楽しめるかも。
チェーホフも出てくるので星組『かもめ』の連想も可能です。宝塚らしくない作品と言われがちですが、私は好きです。
しかしこれら宝塚要素を無視しても、とにかくおもしろかった!とすっきり思える映画でした。

1895年、フランスパリ。詩劇作家のエドモンは作品を上演するものの、劇場支配人にはすぐに打ち切りだと告げられる。
才能を信じてくれていた妻もスランプが2年続くと家事や子育てのお金も回らなくなり、心が離れていく。
ある日、俳優で友人のレオが想い人であるジャンヌへの愛の言葉を代弁する。
すると今までのスランプが嘘のように作品のアイデアが浮かんできたエドモンはレオには内密に、レオとしてジャンヌと文通を始める。
四苦八苦ののち作品は完成するものの、個性的すぎる俳優、押しの強すぎる出資者、劇場を使わせないように奮闘する劇場支配人などなど問題は山積み。
シラノ・ド・ベルジュラック』の創作秘話を、作品へのオマージュたっぷりでお届けする2時間映画。

この話を映画にするために15年もかけたという監督の意気込みを感じずにはいられませんでした。
実際にこの映画の制作費が、同じ作品の舞台の収益によっているというのもおもしろい。
というか映画の本を書いたときには出資者が集まらなくて、それを舞台版に書き直したら出資してくれる人が出てくるというのはおもしろいなあ。
監督の多彩な才能を感じずにはいられません。
本人も役者として出演しておりますし。
小説も書いているとか。すごいな。神は二才を与えたもうか。

まずは大好きなキャラクターから。
カフェオノレ亭の黒人店長がしびれる。とにかく痺れる。最初からいい。
最高にクールだね!
「義父が残してくれたのは、カフェと詩を愛する心」という台詞が印象的です。
よい義父だったのね……と出てもいない義父にまで思いを馳せてしまったよ。いい作品だな、本当。
最初に黒人であることを逆に馬鹿にされた彼は、教養のない客はいらないと言わんばかりに、しかし暴力に頼ることなく、自身の深い知識教養によって啖呵を切って、客をやり込め、見事に追い出す。
それを見ている客たちは、拍手で店長を迎える。
その客たちは、当然白人が多いのだけれども、当時のパリでもこういう黒人は受け入れられたのでしょうか。
映画の演出としては大変面白かったのですが、フランスに旅行したときにあからさまな差別を目の当たりにした身としては、当時の差別問題という重い現実を思い出しました。

要所に出てくるキーパーソンなのに、映画のパンフレットには取り上げられておりません。悲しいかな。
調べてみると、どうやらこの役者さんは2019年に亡くなっているようです。
コロナでないといいのですが……コロナでないならいいというわけではありませんが、そんなことが脳裏をよぎりましま。
「芸術家よ、無法者であれ!」と言ってカフェから劇場に進軍を促す場面も素敵でしたし、進軍する様子はさすがフランス革命の国だと思いました。
この場面は映画の公式ホームページの予告でも見られるので、ぜひそこだけでも多くの人に見て欲しい。
芸術家、ひいてはアーティストは無法者、ちょっと反社会的だったり、ちょっと斜に構えたくらいでなければ、やはりおもしろいものは作れないですよね。
なんていうか「総理倶楽部」とか言っている場合ではないのだよ。

もう一人、個人的なキーパーソンは、娼館に出てきた謎のロシア人。
いかにもロシア人という風体で、結核だといい、女遊びはせず、やたらとうまいことを言う。
パリで豪遊できるくらいのお金持ちというところか。
その名もアントン・チェーホフ
そりゃそーだわ!そーだろーね!
うまいこと言うわけだよ!
「嫉妬深い妻に許しをもらうためには?」というエドモンの問いに「もうすぐ死ぬから許して」と答える。
人間はいつか死ぬ。だから嘘ではない、と。
そしてエドモンは『シラノ』のラストシーンを思いつく。
「着想と出会う」とはまさにこういうことなのでしょう。
この映画にはそういう場面が何回も出てきますが、この場面が一番痺れます。
この場面においてチェーホフに「度がすぎるほど楽しんでいる」と言われている友人のロシア人は、しっかりというかちゃっかりというか『シラノ』の初日を観に来ていて、ばっちり感動していました。
感情の起伏が激しいようで(笑)。
チェーホフは特に大きなアクションは起こさないものの非常に満足した様子でした。

自由人が多い映画ですが、個人的にベスト・オブ・自由人はサラ・ベルナールでしょう。
それこそロートレックのミューズですが、このころはもうアメリカでも仕事をしているらしく(アメリカの客はうるさい客、フランスの客は上質な客という考え方に笑ったw)、たまたまフランスに戻ってきていたわずかな時間をエドモンのために割き、エドモンと名優コクランと引き合わせた張本人です。
まあ、時間をつくるだけ作って、引き合わせるその場に自分がいないというところが、自由人が自由人たるゆえんなのですが。
『シラノ』の初日も、招待されていなかったのか、いたけれども忘れていたのかは定かではありませんが、全5幕のうち、最後の幕だけ見に来る。
それもヘアセットの途中でw
「まだ終わっていません!」というスタイリストに対して、「私はこれが気に入っているのよ~」とかいって、出て行ってしまう。自由すぎるだろ。

レオは当然、手紙など送っていないのに「情熱的な手紙をありがとう。最初は顔が気に入っていたけれども、今はあなたの魂が好きよ」というようなことをいうジャンヌに不信感をもつ。
手紙を送っているのはエドモンなのだから。
最初にうっかり男の人と熱いキスをしてしまったあのうっかりレオが、愛するジャンヌのためにラストでは詩の勉強をする。感動。
好きな人のために変わることができるってとても素敵ね。

ラストは熱情的なくちづけ祭りです(笑)。
ジャンヌは『シラノ』の幕が下りた後、レオに熱いキスをします。
しかしそのあとレオがカーテンコールで舞台に戻ると、エドモンにも熱いキスをします。
こういうところがフランス映画っぽいなと思ったわけですよ。
情熱的なフランス女が舌の根も乾かぬうちにというか唇も乾かぬうちに他の男とキスをする(褒めています)。
まあ、前者は愛情のキスで、後者は友情(友愛?)のキスなんでしょうけれども。

これはちょっと私には真似できないなーと思っていたら、ジャンヌが舞台袖から姿を消した後、エドモンの妻・ロズモンドが今度は現れる。
嫉妬深い(と言われている)(少なくとも私はそうは思わなかったぞ、あれくらい普通だぞ)ロズモンドは、しかし冒頭ではとてもエドモンの才能を信じている。
あの場面があって良かったと思うのは、この最後の最後の場面ですですね。
「作品を作ったあなたとあなたの愛人に感謝だわ」と言うような台詞があり、そのままエドモンに熱いキスをします。
一緒に観に行った旦那は「奥さんは結局勘違いしたままだった」と言いますが、私はあながち勘違いではなかったのかなと思います。
作品のミューズというのは聞こえはいいかもしませんが、『シラノ』の幕が降りた後、レオとジャンヌがこれまた熱いキスをしている様子を見ているエドモンのあの眼差しは「作品のミューズってだけか?」と思ってしまいました。
ロートレックサラ・ベルナールの関係も、どうだったんでしょうかね。
ちなみに作中に出てくる『シラノ』のポスターはロートレック風味でありました。
ロズモンドを演じたアリス・ドゥ・ランクザンは私の大好きな映画『婚約者の友人』にも出演しております。

ラストは以上のように4回も熱いキスが繰り広げられる(ちなみに客席でサラがオノレにも熱いキスをしていた)わけですが、そのどれもが女性からのキスというのが衝撃的でした。
すごいよ、フランス女。めっちゃみやびだよ、とんでもない熱量だよ。

劇場の舞台監督の小柄のおじさんは、出てきた最初から迫力あるなーと思っていたら、かなり芸歴の長いお方だったようで。
旦那がその昔、彼が主演を務める作品を見たことがあるようでしたが、ハリウッドにも呼ばれるような名脇役だとか。
『シラノ』の当日、シラノと決闘するはずの役者が見当たらずに、エドモンに「リハーサルを見ていただろ!」と言われる。
この無茶振りが『ピガール狂騒曲』を連想させますが、こちらの映画ではバッチリと演じてくださいます。すばらしい。

コクランの息子役もよかった。
ちょっと愚鈍で、俳優の傍らパン屋のアルバイトもして生計を立てているけれども、名優のパパとしては俳優だけで生計を立てて欲しいらしく、アルバイトにはいい顔をしない。
しかし恐ろしく演技は棒。
それを克服するために娼館に行くのですが、まさかの1度目は失敗。
そういう流れになるだろうことは読めていましたが、失敗するんかーい!と思いました。
けれども、本番直前にどんでん返し。楽屋で!?みたいなところはあるけれども、見事に情感もって台詞をいえる役者になりました。立派である。
このあたりもなんていうかフランス映画っぽい。

日本でミュージカルといえば『レ・ミゼラブル』『エリザベート』あたりでしょうか。
モーツァルト!』を挙げる人もいるでしょう。
どちらにせよ悲劇の方が多いんですよね。
喜劇はあんまりないなあ、と旦那と話しました。
余韻を残す作品があまりうけなくて、1から10まで説明してくれる作品の方が舞台に限らずエンタメにおいてウケてしまうこの国で、喜劇を上演するのは難しいのかもしれません。
1から10まで説明していたら、当然喜劇にならないですから。

しかし繰り返すようであれですが、『総理倶楽部』とか言っている場合ではないんですよ。
キャラクター化して「かわいい」と思われることよりも、実際にその人物がどういう政策を行って、どういう結果を出して、もっといえばどんな非道をはたらいたのかを勉強するのが「学問」でしょう。
学問がないがしろにされる国での喜劇はやはり難しいと思わずにはいられません。

最初にも書きましたが、たくさんの人に見て欲しい映画です。

花組『はいからさんが通る』B日程感想+α

花組公演

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ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る
原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート) (c)大和 和紀/講談社
脚本・演出/小柳 奈穂子

前回の感想はこちら。

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●『はいからさんが通る』B日程

明日が千秋楽!というタイミングで、ようやく花組はいからさんが通る』Bパターン観劇することができました。ありがたや〜なんまいだ〜。
みさこちゃん(美里玲菜)かわいい〜!どこにいてもすぐに見つかるやんけ。
ちょっとお顔がシャープになったかな?
それともお化粧が変わったのでしょうか?
以前とは異なる印象を受けました。
きちんとお食事ができているといいのですが。

みさこちゃんのお衣装まとめ。
女学生は黄色やオレンジの着物に紫の袴。
モダンガールでは紫の帽子に紫のカーディガン。ワンピースは臙脂のクレリック襟。これがたまらんほどソーキュート。
伊集院家のメイドとしても登場し、園遊会では緑のドレスで登場。あわちゃん(美羽愛)と同様『ファントム』のドレスですね。
あわちゃんは下手が多かったけれども、同じ場面に出ていることが多いみさこちゃんは上手が多い印象でした。
女学生の袴はやっぱり着たいところですよねえ、この作品なら。たとえモブだったとしても。お役としてはあと雪の精ですね。

1幕終わり付近、少尉の隊がシベリアに行くことがわかり、号外少年から新聞をもらう場面で、A日程ではあわちゃんとさおた組長が一緒にいましたが、B日程ではさおた組長と一緒にいるのはみさこちゃんでした。
相変わらず父子のような印象。
あわちゃんの方が絶望が深い芝居をしているような気がしますが、もしかしたらロシアに向かう兵士の中に知り合いがいるのかもしれません。

超今更かもしれないですが、伊集院家のメイドがずらりと並んだ後の場面で、卯月と弥生が箒とちりとりで野球しているの、超絶面白いですね。
如月にバレたらきっとあなたたちもご飯抜きっていうところですわ。
メイドも執事も自由だなあwww

全体的に少尉の芝居に抑えが効いているなという変化を感じました。
例えば「ラリサは結核なんだ」と少尉が編集長に語る場面。
静かなトーンになっていて、ああ、少尉はいつかこの質問を誰かにぶつけられるのがわかっていたから頭の中で予め考えていた答えを淡々と述べているのね、と思った。
だからこそ予想外の紅緒逮捕に慌てるダッシュがキレッキレに見える。
こちらの方が好き。緩急の付け方が抜群ですわ。

ラリサが亡くなった場面でも「ラリサぁ!」と叫ぶのではなく、ぐっと彼女を抱き締めて「ラリサ……」という演出になったのがいい。
いつから変わったのだろう。
堪える演出や溜める演出は大事だと思う。
全部バンバン出していったらイケコの『ポーの一族』みたいになってしまう。そういうのがプラスに評価できる作品もあるのでしょうけれども。
これは好みの問題もありましょう。 
ただ、『はいからさんが通る』はラブコメであるだけでなく、大大正デモクラシー日露戦争関東大震災の描き込みを考慮すれば大河ドラマの面も持ち合わせていますから、緩急やメリハリのある舞台を作ることが必要になってくると私は思います。

1幕終わりの白い喪服で紅緒さんが「少尉!」と叫ぶ場面、銀橋にいる少尉がビクッとする演出にも気がつきました。離れていても固い絆で結ばれているようで感動しました。

ちなみにこの日はマチソワをしました。
マチネ公演は幕間のロビーは静かだったのに、ソワレ公演の幕間のロビーはごく普通に皆さんお話しされていたのが気がかりでした。
いや、さすがにマスクはなさっていますが。
考えてみればマチネ公演は友会公演でしたので、本気のファンとはこういうものなのかと実感しました。
もう2度と休演なんぞさせない、という強い意志を感じました。
そうだよね、そうなるよね、わかる。

蘭丸は、花乃屋の乱闘のときはいまいち活躍しきれず、その後現れた少尉にいいところをまるっと全部もっていかれてしまったのですが、狸小路伯爵邸では藤の小道具を使って立派に戦っているのもいいですね。
「臆病だけど、必死だった」の「必死」さが前者よりも後者の場面でいかんなく発揮されていたのがとてもよかったです。
その他、狸小路伯爵邸での乱闘では吉治さんを守るために下手奥ですみれ組の有明が大活躍。
そのあとの大道具がぐるぐる回る場面でも有明は吉治さんと一緒に紅緒さんの心配をしている場面も印象的です。

永久輝せあ扮する高屋敷は「大正時代の森鷗外か、夏目漱石か」と言いますが、『はいからさんが通る』には、森鷗外の『舞姫』を思わせるところがたくさんあります。
少尉の父親がドイツに留学したこと、そこで恋に落ちて、子供ができたこと、あるいは森鴎外自身を連想させるのは、少尉の左遷先が小倉であることでしょうか。
もっとも森鷗外夏目漱石とはそもそも文体や作風が全然違うので、観客にわからせるためとはいえ、あのフレーズはいかがなものかと思うのですが。
結局高屋敷ががいたのは『はいからさんが通る』ですから、大きなリボンと海老茶の袴、ハーフブーツの女学生の画を挿絵とした『魔風恋風』を書いた小杉天外が一番近いかもしれません。

文豪についていうならば、環の「冗談社っていったら、編集長がルドルフ・ヴァレンチノばりの二枚目だっていうじゃない」という台詞も残しておきましょうよ~と思いました。
こちらは文脈に合っているだけでなく、環の教養の高さもわかります。

翌日の千秋楽は無事に幕が上がったようで、感無量です。
配信は残念ながら見ていないのですが、無事に幕も下りたことにどれほど安心したでしょうか。
思えば3月13日に初日を迎えるはずで、15日にマチソワ観劇する予定だったのに、11月14日まで伸びたのは完全に想定外でした。
組子たちはもう1年近くお稽古しているのよね。
そりゃ芝居だって変わるよね。

大劇場公演が円盤になっていることを考えると、スカイ・ステージでの放送が楽しみです。


●華優希、まさかの退団発表

千秋楽の翌日、まさかのトップ娘役である華優希が退団を発表しました。
1時間、印刷室で泣きました。人のいないところで、プリント印刷なら頭を使わずにできるから、ととりあえず駆け込みました。
残業中に泣きながら印刷している女って、怪しいですよね。ホラーや。
翌日は休みたくてたまらなかったけれども、先輩には「明日仕事に来るのよ」と5回も言われましたので、泣く泣く仕事しました。松尾芭蕉ではないけれども、とるものてにつかず。

なぜ今なのか、早すぎるのではないか。大劇場は3本しかやらないのか。
近年だとふうちゃん(妃海風)がトップ娘役として大劇場3本で退団しています。
しかしこれは相手役であるみっちゃん(北翔かいり)と一緒にお披露目をして、添い遂げ退団をしましたので、事情は同じとは言えないでしょう。

他ならぬ華ちゃんが決めたことだから、尊重したい。けれども、どうしても本当にそれで良いの?という疑念が脳裏をよぎる。
もっと色々な華ちゃんが見たかったから、少しでも心残りがあるなら、翌日の記者会見で取り消してくれてもいいとさえ思った。
ミュージックサロンはやるみたいですが、タイトルも演出も未定、日程も曖昧、本当に急だったのかなと思いました。

翌日は、どうして華優希が退団を発表した世界線にしか目覚められなかったのだろう、と心底不思議に思いました。(朝起きて一番、ベッドの中で改めて公式発表を確認した人)

退団発表のあった日は、初演版『はいからさんが通る』を見ながら、華ちゃんの舞台写真を整理していて気がついたのですが、一人の写真もあるけれども、ペアの写真がとても多く手元にあった。
華ちゃん一人でももちろん好きなのですが、誰かと一緒にいる華ちゃん、相手も幸せにする華ちゃんがとてもとても好きなんだなあ。
華ちゃんの娘役芸が好きでした。
芝居の全体のバランスや調和をとるこができる娘役だと思います。
歌やダンスの巧拙の感じ方や芝居の好みは人それぞれでしょう。
ただ、私が好きだった華ちゃんの娘役芸というのは、他の舞台では求められるものではない。
宝塚でしか求められない。
彼女に心ない言葉をぶつけてきた人は、この結果に満足しているのだろうか。
彼女も傷つけて、彼女のファンまでも疲弊させて、それで笑っていられるのだろうか。それって変だよ。虚しいよ。それであなたは幸せになったのか。あなたのご贔屓は?

タカラジェンヌはひと時の夢だ。
誰もが皆、卒業していく。
それはわかっている。
トップスターともなれば、ファンとても卒業が秒読みになるのは覚悟しなければならない。
けれどもこの卒業は、たとえば6年間トップ娘役として堂々たる姿を見せた愛希れいかとも、圧倒的な歌唱力と絆で結ばれた相手役と添い遂げ退団をする真彩希帆とも違う。

退団発表の記者会見では『ダンスオリンピア』の頃から卒業を考えていたという。
この時点ではまだ本公演は『青薔薇』しかやっていた。
その前に『恋アリ』はあったけれども、なんと早いタイミングで考えていたのだろうと愕然とした。
コロナウイルスの影響で『はいからさんが通る』の休演期間に、卒業の気持ちが揺らぐことがあったことも明かした。
どうして揺らいだままでいてくれなかったのだろうとファンとしては勝手に思ってしまうが、この時点で相手役である柚香光に卒業の意思を伝えていたことは大きいだろう。
あまりにも早い。もったいない。

本公演で卒業する場合、多くは集合日に発表されるが、トップスターとトップ娘役は1つ前の作品の大劇場公演が終わった時点で発表するのが通例だ。
今回は東京公演が終わってからの発表であった。
初日が4ヶ月も延び、間に1ヶ月の救援を挟まざるを得なかった『はいからさんが通る』の大劇場公演の後にはとても発表できなかっただろう。

次に予定されている公演『ナイスワーク』はブロードウェイが原作であるため、映画館や楽天でのライブ配信は難しいだろう。
雪組『20世紀号に乗って』と同じように。
こういうときに、なんのための座付きの演出家がいるのだろうとはなはだ疑問に思わずにはいられない。
東京でしか公演がなく、コロナウイルスの影響も考えると、より多くの人に観劇してもらうことは、難しいかもしれない。
私も観られるかどうか、とても観たいけれども、わからない。
たとえ配信があったとしても、今回の宙組『アナスタシア』のように平日だったらきっと観られないだろう。

私はいったいあと何回、宝塚の娘役である華ちゃんを見ることができるのだろう。

月組の時期トップコンビも発表されていない今、花組の時期トップ娘役にまで気を揉まねばならないのはファンとしてはつらいところですが、もしかしたら、娘役不在ということにもなるかもしれません。

月組『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』感想2

月組公演

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JAPAN TRADITIONAL REVUE『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』
監修/坂東 玉三郎  作・演出/植田 紳爾

ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜
作・演出/原田 諒

Aパターンの感想はこちら。

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今回はBパターンの感想です。
まずは『WWT』について。
主題歌「それが宝塚」よりも「雪月花」がじんわり胸に染み入る公演でした。
それは歌手の娘役が変更になったということよりも繰り返し見る中で、主題歌以外にも観劇している私の心に余裕がもてたからだと思うのですが、とにかくここがいい。
Aパターンではきよら羽龍ちゃん、咲彩いちごちゃん、Bパターンでは詩ちづるちゃん、静音ほたるちゃんと、下級生を2分割したことで、まさかの4人分も楽しめることになったわけですが、Aではいちごちゃん、Bではちづるちゃんを応援している私としてはとても嬉しかったですし、技量的にはAもBも眼福ならぬ耳福でございました。
フィナーレでは松本先生が翼のお着物(大好き!)でせり上がってくる場面に同じメロディーで違う歌詞が添えられています。
「花で門出を祝おう」みたいな歌詞が、松本先生のサヨナラショーだなと思わせました。
今度はこちらの歌詞もきちんと聴き取りたいところです。

「雪の巻」「月の巻」「花の巻」とありますが、「花の巻」が一番好みだという話は前回もしましたが、今回もここはとても楽しんで観劇することができました。好きやねん!
れいこちゃん(月城かなと)とおだちん(風間柚乃)の息ぴったりもさることながら、鏡の女を演じる娘役もみな可憐ですばらしい。

幕間中、プログラムを見て改めて思ったのは現在の月組の芸名のひらがな率の高さです。
珠城りょう、美園さくら、月城かなと、とトップ3人が下の名前はひらがなです。
組長も光月るう、名脇役の紫門ゆりや、白雪さち花、輝月ゆうま、春海ゆう、下級生で私が応援している菜々野あり、咲彩いちご、美海そら、詩ちづる、他にもまだまだたくさんいます。
こんなにひらがな率が高いのは月組だけなのでしょうか。
106期生もひらがなの生徒が多いですね。

『ピガール』では、眉上前髪にピンクのブラウスが愛らしいこありちゃん(菜々野あり)やグリーンのスカートがよく似合っているちづるちゃん(詩ちづる)がとにかく眼福でした。
こありちゃんは垂れ目を強調したメイクに変えたのでしょうか。
劇団の中にボーイフレンドとおぼしき人もいるようです。ちょっと、どなたかわからなかったのが残念><
ちづるちゃんはダンスが映えました。さすが主席です。

今回、下級生でもムーラン・ルージュに在籍している踊り子ちゃんたちは、その多くに名前がついています。
AとBでわかれていたとしても。
くらげちゃん(海乃美月)が演じたラ・グリュやじゅりちゃん(天紫珠李)が演じたミスタンゲットが実在の踊り子名前がついていることから、グリーユ(蘭世惠翔、菜々野あり)、ヴィヴィアーヌ(きよら羽龍、詩ちづる)なども実在の踊り子の名前なのでしょうか。
もちろん名前のついていない娘役もいるけれども、男役は全くついていなくて、役名がもらえたことがどれだけ下級生の励みになっただろうかと思うと感無量です。
AとBにわけているからこそ役名をもらえた生徒もいるでしょう。

ただその一方で気になるのは、名前がついているにもかかわらず、あんまりその名前が呼ばれないということです。
ミスは何回か呼ばれていますが、ラ・グリュは一度も呼ばれてはいないのではないでしょうか。
名前ついた役をもらえることは嬉しいことですが、その名前が舞台の中で呼ばれないのは寂しいですね。
それによって個人を特定する観劇者もいるだろうと思うと、やはり名前がついているのなら、1回でもいいので呼んでいただきたいところ。
呼ぶ必要がないのなら「踊り子」でくくっても、もしかしたらよかったかもしれません。

ところで東京公演ではゆりちゃん(紫門ゆりや)のダンサーとしての舞台写真は発売されませんかね。
これがまた大変にストライプのキラキラに負けないゆりちゃんのキラキラ具合に完全にノックアウトなので、何卒……何卒よろしくお願いします……という感じです。
素敵だった。本当に素敵だった。ダンサー紫門ゆりやをみなさんご堪能ください。

マルセル役のまゆぽん(輝月ゆうま)にちゃんと歌があったのも嬉しい。
そう、彼女を歌わせないなんてもったいない。
そして銀橋にまで出てこさせたのはもう大正解だよ、ありがとう原田先生。

フィリップるねぴ(夢奈瑠音)もよかったですね。
どうしようもないご主人様(ウィリー・鳳月杏)だけど、やっぱり見放せないっていうコンビがすごく良かったです。
決闘の場面では台詞がないところでもクスクス笑わせてもらいました。
足の長いご主人様をこれからもよろしくお願いします。
ところで青いお衣装はご主人様がかつてヴァンパネラと対峙していたときにお召しになっていた衣装でしょうか。

エドモン(佳城葵)もすばらしい。
一晩中夜のパリの町を歩き回って帰ってきたときのシャルルとのやりとりは二人の絆の深さを思わせます。
ただの雇い主と労働者ではないことがよくわかる。
「ジャック……」「ジャンヌですよ!」「ジャンヌ!」のやりとりも大好き。
息がぴったりですね。

別にボリスをオペラで追っていたわけではないのですが、ストライプのお衣装でのレヴュー場面で、側転を「できた!」と真顔で喜んでいるボリスがオペラのセンターに突然現れたときにはさすがに笑ってしまった。
個人的な観劇事故というやつです。
隣にいた友人に「どうしたの!?」と思われていたそうです。
いや、だってあれは完全に観劇事故でしょ。おだちんをずっと追いかけていたわけではないタイミングだったからもうびっくりしてしまいましたよ。

いつまでAとBにわかれてやるのでしょうか。
年明け一発目の雪組はどうなるでしょうか。
だいきほのサヨナラ公演ですので、全員でやりたいところですが、冬ということもあり、インフルエンザも怖いですね。
一方でいつまで配信もしてくれるでしょうか。
楽天TVには本当にお世話になっています。
今日も花組はいからさんが通る』はすばらしかったです。
オープニングで一度画面がとまった家の弱小Wi-Fiにはキレましたが、こちらも今後ずっとというわけではないのだろうなあ。

専科の星蘭ひとみの退団も、ようやく受け入れつつあります。
最後に大階段を降りることがないのがないのが、緑の袴姿を拝めないことが、応援していた人間としてはつらいですが、それが彼女の決断なら受け入れることにいたしましょう。

花組『はいからさんが通る』感想

花組公演

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ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る
原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート) (c)大和 和紀/講談社
脚本・演出/小柳 奈穂子

ようやく、よーやく! 私のはいからさんが通り明日。
本来だったら3月の初日あけてすぐに見に行っていたはずなのに、そのあとも何度もチケットをとっても、7月の再開のときの分のチケットさえも、すべて払戻されてしまった私のはいからさん。
私の幻の新人公演チケット。ああ、初の新人公演だったはずなのに。
しかし、とうとう観劇できました。ありがとう、劇団。ありがとう、花組。ありがとう、紅緒さん。
気持ちとしては『BADDY』のスイートハートさんでしたね。「邪魔よ、どいて!」って。
新幹線も地元の電車も終電でしたが、気にしません。
前半はあわちゃん語り、後半が全体の感想です。

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7月の大劇場再開2日目の配信も、大劇場千秋楽の配信ももれなく見ましたので、初演との変更点はなんとなく頭に入っていたのですが、やはり生で見るのは違う。本当に違う。
何が一番違うかっていうと、やっぱり下級生を見ることができる、中心ではないお芝居を見ることができるということでしょう。
今回のMVPはあわちゃんこと美羽愛ちゃんです。
『恋するARENA』のときに見つけて以来、ずっと注目している生徒です。
これがまたとてもよかった。あわちゃんが良かった。
女学生でもメイドでもモダンガールでも何をやっていてもどこにいてもすぐにわかる。
マチネ公演は2階席からとにかくもうずっと彼女を見ていました。
すばらしかった。愛らしかった。キュートだった。最高でした。
どうして彼女のはいからさんが通らないのか、わからない(いや、わかるけど)。
しんどいです。でも一番つらいのはきっと彼女です。

下級生と周縁のお芝居を見よう!と思っていたのに、マチネ公演はうっかりずっとあわちゃんを見ていました。
あんまり他のことは覚えていないくらい彼女のことをずっとオペラグラスで見つめていました。
文字にすると変態みたいで気持ち悪いですね、すいません。
東京公演のプログラムは買わなくていいかな、3月分と7月分の大劇場公演のプログラムをもっているし、と思っていたのですが、あわちゃんが出てきているところを答え合わせするために、マチネ公演の幕間にあわてて買いました。3冊目をお迎えしましたよ。

あわちゃんは、オープニングの女学生では薄いピンク色の振袖に袴姿、頭には紅緒さんばりの大きなリボン、色はすみれ色、浅草の場面や2幕の冒頭のモダンガールではクレリック襟のワンピース(私の大好物)に、丈の長めの上着をはおって、赤いベレー帽をかぶっています。
その他、伊集院家のメイド、雪の精もやっています。
狸小路伯爵低のメイドとしては上手側に出てきます。
ロケットでは上手から登場、一列になったときは下手から三番目です。
パレードのラストでは、大階段一番下、真ん中にいます。
みなさん! ぜひ! ぜひとも! 注目してくださいませ!
バリバリに踊れる娘役です。思いのほか、お着替えが大変そうです。
B日程ではみさこちゃん(美里玲菜)が演じるのでしょうか。こちらも楽しみです。
大劇場のプログラムを見ると、あわちゃんは当初女学生を演じる予定はなかったようなので、日程がわかれたことではいからさんのスタイルができてよかったかなと思います(だって新人公演ないんだもーん><)。

オープニングの女学生はもうとにかくべらぼうに可愛くて、「ああ、彼女が紅緒さんをやるのだったらこんな感じだったのか……」と幻を見せてくれます。
紅緒さんが真ん中で怒られているときも、上手で「ああ、先生の話なんか聞いてられない」って感じであくびしたり、一人だけ列から飛び出したり、後ろでもやんちゃをしております。かわいい。
このとき持っている巾着(当世風にいうとカゴバック?)をずっと両手でもっているのも愛しい。
他の女学生は片手で持ったり、持ち替えたりしているのですが、基本的にあわちゃんは両手もち。
きっと中には大切なものが入っているのでしょう。
例えばご贔屓の写真とかw
女学生にはありがちですよね。今でも職場の机が舞台写真ばかりの私がいうのもあれですが。
はあー! もうー! すごくかわいいんです。

浅草の場面はライブ中継のときにはあまりわかりませんでしたが、思っていた以上に舞台に役者がいましたし、それぞれががいろいろなお芝居をしていて、とても楽しかったです。
あわちゃんはモダンガールとしてモダンボーイのボーイフレンドとおぼしき人と一緒に田谷力三、原信子のオペラを観劇しております。
これまた田谷力三の大ファンのようで、握手をしている時間が長かったです。
そしてそれをモダンボーイにとがめられているようでした。
困らせながら下手にはけるあわちゃんがとてもかわいかったです。紅緒さんやんけ。すてき。

ラスト、紅緒さんと少尉が桜を見上げている場面でも女学生たちは後ろに出てきます。
いちゃついている二人を思わず見てしまうあわちゃん、二人がキスをしたときに「あー!」みたいな顔をするあわちゃん、そしてそれを「見ちゃダメ!」と引き留める都姫ここちゃん、もう二人のやりとりが可愛くてたまらない。
はちゃめちゃに可愛いよ。語彙力がなくなる勢いです。
この二人のシンメトリーとか見てみたいな。
劇団のえらい人! 頼むよ!

伊集院家のメイドはたくさんいるから見つけられない!と思う人もいるかもしれませんが、前髪がある子です。
ここでもとても可愛かったのは、如月が紅緒さんの言動に対して取り乱しているとき、周りの執事やメイドは慌てて如月に近づいて手であおぐのですが、あわちゃんメイドはちゃっかり自分のこともあおいでいます。
そうね、メイドも驚いちゃうよね、あんなもんぺの娘が突然やってきたらね、って感じ。
こういうところを見ると、あわちゃんの紅緒さんも見たかったと思う。
彼女はどうやってもんぺを着たのだろう……(そこかよ)。

1幕終わりの方。ロシアに出兵することを新聞売りの少年が「号外!」と教えてくれる場面では、モダンガールとして登場。
ここではさおた組長と一緒に新聞を見ています。
組長、2幕ではバリバリの悪役なのに、ここではまるであわちゃんと父娘のよう。
ところで新聞売りの少年は宝塚の芝居によく出てくるというツイートを見て、なるほど花売り娘もだな、と思うなどいたしました。

あわちゃんがとても可愛かったです。これからも応援していきたいと思います。


さて、その他に気になるところです。
オープニングの「大正浪漫恋歌」には催涙ガスでも入っているのでしょうか。
「風の誓い」もそうですが、この場面はいつも泣く。涙失くしてこのオープニングは見られない。すごい。
2番の編集長(瀬戸かずや)、鬼島(水美舞斗)、高屋敷(永久輝せあ)、蘭丸(聖乃あすか)、環(音くり寿)のところは戦隊もののようでしたね。
真ん中が女嫌い、けれども一番環が強いというグループになります。
肉弾戦は鬼島で、知力を編集長と高屋敷でわけあい、蘭丸と環が色仕掛要員でしょうか。
おもしろそうです。これはラスボスが紅緒さんのパターンや。

これはもう最初から好きな演出なのですが、環と蘭丸との間に同盟が成立する場面において、徳利をもっているのが環、お猪口をもっているのが蘭丸というのがいいですね。
女性が大きい方をもっているというのが。
実際原作でも環はかなりの酒乱ですし(笑)。べろんべろんになっている姿が見たい人はぜひ漫画を読んでください。
環に関して言えば、初演のしろきみちゃん(城妃美玲)の環が高屋敷をかるーくあしらう感じの扱いをしていたのに対して、おとくりちゃんの環は、ちょっと引いているという感じに変わっていますね。
環に対して「すげー美人!」という編集部員の台詞もカットされていたし(まだいう)、原作に近い演出をしているのは初演なのだろうなあ。なぜ変えたのだろう。
再演版は鬼島とくっつくのも早いですよね。紅緒さんと編集長の結婚式のときにはもすでに仲良しでした。

結婚式といえば、紅緒さんのお父さんと吉次さんが、地震のときに一緒にいましたね。
まったくもう! ちゃっかりさんめ!
父親が吉次さんを先導していて、吉次さんもそれに小さく頭を下げて付き従っているという様子がもう……。
原作好きとしてはたまん。
ありがとう、小柳先生。にくいわね。素敵です。
果たして初演からこういう演出だったのでしょうか。

少尉がシベリアで紅緒さんの写真をみんなに見せて、鬼島が「こ、これはなんというか……」と言葉を濁したときに、「実物はかわいいんだ」という少尉の台詞がありますね。
この台詞を余裕たっぷりに言うのか、それともムキになって言うのか、解釈や好みがわかれるところかなと思われます。
個人的には余裕たっぷりに言ってくれると嬉しいのだけれども。
初演はそうでしたが、今回はちょっとムキになって、しかもそのあと早口になっていましたね。まあ、オタクあるあるですがw
それにしても少尉はいったいどんな写真を見せたのか。
次回の花組の宝塚の殿堂が楽しみで仕方がありません。

話には聞いていた大劇場公演との変更点。園遊会の場面で、蘭丸に怒りをぶつける伊集院伯爵から紅緒さんを守ろうと遠ざけようとする少尉の努力もむなしく、当の本人である紅緒さんは、少尉の足を踏んで「邪魔だ、どけ!」という感じになっていました。
さすが紅緒さん、はいからさんはそうでなくてはいけないね。
まるでバッディでした。素敵です。

それかららいとくん(希波らいと)の力量はすごいですね。下級生の中でもA日程、B日程両方出ているのですが、お芝居がちゃんとできているな、かたいな、という印象を受けました。
将来が楽しみな役者ですね。期待できる子がいるのはよいことであるだけに、新人公演がないのが残念です。
郡舞でもすぐに見つかるというスタイルお化け。

下級生といえばもう一人、都姫ここちゃんもとても愛らしい。
オレンジの振袖はまぶしいばかりで、髪形も大変工夫されている。
おさげやハーフアップの髪形が多い中、まとめ髪をしているので、大変目立つ。
芸者さん、記者さんのところもすぐに見つけることができました。
前回、新人公演もやりましたし、期待の下級生です。あわちゃんと同じ104期!
2幕狸小路伯爵邸では、一番上手にいるのですが、「ほんと、狸の話なんて聞いてられない!」と列からはぐれていくのを、おそらく同社の男の記者だと思われる人に、こらこらと止められています。
あわちゃんの女学生を連想させておもしろい。

1幕終わり、白い喪服で出てきた紅緒さんと黒いドレスの環の対照がとてもいい。
言葉はないけれども、「大丈夫? 無理しないでね」「うん、ありがとう」と話をしているだろうことがジェスチャーだけでわかる。すごい。
環から紅緒さんを抱きしめに行くのもよい。胸アツ。激アツ。同期愛。
このとき下手花道では倒れている少尉をラリサが発見しているのです。
いつせりあがって来たのか、結局わからなかったぜ……。

2幕、少尉が反政府主義者のたまり場になっているカフェの場所を、なぜか監視のついていない高屋敷に聞き出す場面。
いろいろなところに反政府主義者が隠れていますし、上からはさおた組長がじっと二人を見つめています。
もう目で殺すってこういうことをいうのねって感じ。
ここは映像には映らないだろうなあ。
大道具の関係もあり、隠れている反政府主義者たちもいい仕事をしていました。

デュエットダンスも本当にいつ見ても素敵。可愛らしくてこっちがはげそう。
華ちゃん(華優希)が先にしかけて悪戯をして、それをおいかけるれいちゃん(柚香光)みたいな構図が最高すぎてだな……。
先を行く華ちゃんの手を引いて抱きしめるとか本当にもう紅緒さんそのまんまじゃないですか、少尉そのままじゃないですか。貴すぎる……。
こういうデュエットダンスって今まであんまり見たことがなかったような気がするのですが、どうでしょう。
娘役が先に動き出す、というか、男役主導ではないというか。
ちょっと気になるのはれいちゃんが濃い赤リップであるということかな。
少尉と紅緒さんの結婚式だという話だからなあ。
でも郡舞のあとだし、そのあとパレードもあるし、忙しいから、そこまで手が回らないのかもしれません。

高屋敷は自分のことを「大正時代の森鴎外か、夏目漱石か」と言うけれども、この二人の文豪はまったく作風の異なる人なので、一体高屋敷がどういう作風を得意としているのかわからないのですが、書き上げたのが『はいからさんが通る』というのだから、もう完全に大衆小説なのでは?という気もしないではない。
結局二人とは全然違う作品を作り上げる。まあ、これもいいでしょう。
はいからさんの挿絵のあった『魔風恋風』という新聞連載小説は小杉天外、ゾライズムのフランス系と考えれば、ドイツ系の森鴎外とイギリス系の夏目漱石とは確かに違うな、という感じです。

娘役オンリーのダンスシーンがあるのも超絶嬉しいフィナーレ。
男役も出ては来るけれども、娘役のダンスのお相手というよりは、支え程度ですね。
はいからさんが通る』という少女漫画が原作の作品だからこそできることなのかもしれませんが、こういうのが増えるといいなあ。
『Ray』にもありましたよね、ブルーのドレスで娘役が銀橋ずらりというのが。
しかしその一方で、男役1人が娘役をずらーっとはべらせているショーも好きなので、悩ましい。
1本ものだと両方をショーに盛り込むのは難しいのでしょう。

郡舞はみなさん、どちらがお好きなのでしょうか。
タキシードはTHE正統派って感じ。ダンスの花組らしく、そして踊りを得意とするれいちゃんによるクラシカルな宝塚の男役の群舞です。
軍服はなんていうか、もうこれ完全にオタクの好きなやつやなって感じ。
きっと小柳先生が見たいと思うものを詰め込んだのでしょうw
性癖に刺さる人はものすごく刺さると思う。刺さって病むレベルだとさえ思う。
私は映像で見たときはどちらともそれほど刺さらなかったのですが(もともとあまり群舞で刺さらない人)、マチネでタキシードを見たときに「おお! これは!」と気持ちが前のめりになりまして、ぐっと迫るものがあったのですが、軍服はとにかく音楽が改めて心に刺さり、ヴィジュアルも最高で、私は結局どちらかを選ぶことができませぬ……。
ラフマニノフって反則やろって思うし、でも帽子だとお顔が見えないとも思うし、ああ幸せな悩みである。

残りの公演も無事にできることを全力でお祈りいたします……っ!

月組『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』感想

月組公演

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JAPAN TRADITIONAL REVUE『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』
監修/坂東 玉三郎  作・演出/植田 紳爾

ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜
作・演出/原田 諒

 

大変良いものを見せていただきました。
ショーもお芝居もどちらも一定水準を超える作、演出となっており、満足しております。
ツイッターでは、こんな多幸感、『ひかりふる路』『SV』以来なのでは?と呟いたのですが、よく考えたら『エルベ』『エストレ』も2本ともすばらしかったです。
とにかく『雪月花』『ピガール』ともにすばらしく、見終わった後、すぐにチケットを増やしました。
こうやってチケットが増やせるって幸せですね。
前売りで売り切れないのは劇団としては不安かもしれませんが、私にとってはラッキーでした。

『雪月花』、世間では『WTT』と略すそうですが、シンプルな構成、番手に合わせたわかりやすい色違いのお衣装、有名なクラッシック音楽の日本舞踊のためにアレンジなど、どれもよかったです。
特にクラッシック音楽のアレンジはもう玉様の十八番ですから、ベタではあるけれども、ヨシキタ!という感じでした。
ベタな感じが宝塚にも合っているのでしょう。
まあ、私の好みの問題もあるのでしょうけれども、好きなんですよね。玉様も好きなんですよねー。
監修されるというお話を聞いたとき、飛び上がって喜びました。
観劇できて幸せです。
歌が少なかったり、娘役の見せ場が少なかったりすることは残念ですが、飛沫を飛ばさないため、楽屋でソーシャルディスタンスを確保するための対策でもあるのかもしれません。

プロローグでは番手を一気に詰めてきたじゅりちゃん(天紫珠李)、背が高くてどこにいてもすぐに見つけられるまゆぽん(輝月ゆうま)、和物のお化粧が美しすぎるれいこちゃん(月城かなと)、立っているだけで存在感を示すちなつ(鳳月杏)、傍にいるけれども一際輝くゆりちゃん(紫門ゆりや)と、まあどこを見たらいいのやら。
最初からこんな感じでしたが、最後までこんな感じです。
縦一列で並ぶ場面ではまゆぽんの前がアキちゃん(晴音アキ)、後ろがからんちゃん(千風華蘭)ということで、アキちゃんの顔の上からまゆぽんの顔がちゃんと見えるし、まゆぽんがいなくならないとからんちゃんは全く見えないという、なぜその並びにした……という気もしましたが、誰だってまゆぽんの後ろにいたら見えないですよね。

その後の口上はいつもの緑の袴ではなく藤色の和服でした。
こういうのもいいですね。組長がひっぱって歌舞伎さながらの挨拶をしてくれました。
いや、本当にこれ、歌舞伎のまんまなのよね。
玉様がどういう気持ちで見ていたのか、助言をしたのか、気になるところです。

雪の場面では歌舞伎の舞踊「鷺娘」を連想させるようなところもあって、とても好みでした。
玉様の「鷺娘」が好きなんですよね。舞踊の中で一番好きかもしれない。
この公演がサヨナラ公演となる松本先生のすばらしさは言うまでもないですね。
もう少し影の役(昔の恋人? 思い人?)と絡んでもいいかもしれません。
退団したら玉様と組んで、何かやってくれたら、日本舞踊の世界にまた新しい扉が開かれるかもしれません。
ずらりと並んだ赤鳥居に宙組『白鷺の城』を思い出した人は少なくないでしょうが(まるで伏見稲荷のよう)、あの場面にせーこ(純矢ちとせ)が出ていたことは今思うととても貴重ですな。
ダンスも種類が増えてきて、新しいダンスを踊れるようになろうとすると、きっと日本舞踊の時間は音楽学校でも短くなってしまうのだろうな。
音楽学校で、かつては教えていたお琴も、今は時間がなくてカットされたとか。ゆきちゃん(仙名彩世)の三味線もいかにすごかったかということが思い出されます。

月の場面ではずらりと出てきて、冒頭のチョンパとともに圧巻でした。
月の満ち欠けの形はあれでいいのか?という疑問は残りますが、演者たちはすばらしかったです。
出ている人数の割に見せ場のある役者が完全に固定されて、ちょっともったいないような気もしました。
当初の演出からどれくらい変更があったかはわかりませんが、久しぶりの宝塚でコテコテな和物のショーということなのかもしれません。
世界の人間を「ウエルカム」するにはこれくらいコテコテでもいいのかしら。

花の場面では、村上春樹「鏡」を思い出しました。
鏡の向こう側にいる人間が、鏡のこちら側にいる人間を支配しようとするお話です。
鏡というのはそれだけで不思議な存在ですからね。
最初はなんとなく自信なさげな役者、れいこちゃんが鏡に向かって芸事の練習に励んでいると、いつの間にか鏡の方が先に動き出す。
この場面に「くるみ割り人形」がものすごくマッチしている!と個人的には思っていて、印象深い場面となりました。
おだちん(風間柚乃)は『出島小宇宙戦争』でのシーボルトを経て、2回りも3回りも大きくなりましたね。すごい。
これは化けるな、と今更ながら思いました。
認識したのは『AfO』のジョルジュあたりからだったと思われます。
これからの成長が楽しみです。

そして、れいこちゃんが早変わりをしたところで、プロローグと同じ場面に。
もう一度松本先生が登場。尊いですわ、本当に。背中に翼が生えたようなお着物がすばらしかったです。サモトラケのニケのよう。
数えた人がいるようですが、本作品は「ウエルカム」と104回言っているとか。すごいですな、言う方も言われる方も、もちろん数えた方も。
でもどうせならあと2回、106回だと学年と同じになったのでは?と思いました。

 

そして『ピガール狂騒曲』。
シェイクスピアが原作で、原田が脚本ということであまり期待はしていなかったのですが(シェイクスピアは現代では翻案しにくいものも結構ある)(原田は言うまでもない)、とても楽しかったです。
もっともシェイクスピアから拝借したのは生き別れの兄妹がそれぞれ恋に落ちて、出会う(原作は再会する)というところだけだったような気もしますが、読んだのが昔すぎるのでなんとも。
とにかく月組は脇が固い。目が足りない。
ゆりちゃん、れいこちゃん、ちなつ、るうさん(光月るう)、れんこん(蓮つかさ)、まゆぽん、からんちゃん、るねぴ(夢奈瑠音)、やす(佳城葵)ともう芝居心に溢れた人が男役だけでこれだけいる。
さすが芝居の月組と言われるだけはある。
私が男役の群舞で目が足りないと思うのは、月組だけである。これはすごい。

からんちゃんロートレックは、もう本当にロートレックでした。ロートレックなんか絵を描いているか酒を飲んでいるかのどちらかだと思っているので(もちろん両方ということもある)(ロートレックは絵画界の李白)、本当にその2つの演技しかしていないのに、めちゃめちゃおもしろい。
酔っ払っているからの勘違いもあるのだけれども、やはりうまい。
背が小さく見えるようにしていますが、酔っ払っているから真っ直ぐ立てないかのようにも見える。
ムーラン・ルージュのカンカンの場面の後、客が入っていないことをれいこシャルルに指摘されて、「本当だ、空いてる……」と大劇場SS席5列目までに人が入っていない空席を見つめる。
ここ、これからちゃんと人が入るようになったら「嘘つけ! ちゃんと入ってるじゃねぇか!」とか一回言ってくれないかな。そんでもって大きな拍手をしたい。

「お望みのままに」の場面は、本当に芸達者しか出ていないんですよ。おもしろくて当然ですわ。
突然早口で歌い出すれいこシャルル、早口なのに歌詞は全くラップになっていないれいこシャルル、すごい濃厚なオレンジ色のロングコートに負けていないキャラクターがすばらしかった。
そして、それに続く振付師るうさん、衣装部ゆりちゃん、音楽担当ぐっさん(春海ゆう)っていうのがね。
芝居で笑わせてくる。はちゃめちゃに楽しい。
たまきち(珠城りょう)ジャックを捕まえて、わちゃわちゃするところなんかはこれからもっとアドリブが増えていくことでしょう。マジで天才だわ、この配役。
もう君たちがムーラン・ルージュの舞台に立てばいいのでは?
がっぽり稼げるよ?と思いました。
るうさんが初めてジャックを見たときのシーンも大変に印象的でした。憧憬や親愛に性別は関係ないのです。

ちなつのウィリーもものすごーく良かった。
難しい役だと思うのですが、チャーミングに演じてくれて本当に良かった。
ガブリエルの言葉に説得力を持たせるためにはある程度嫌な男、モラハラ男としての言動をしなければならない。
けれどもそれだけだと観客としてはただ不愉快になってしまうだけになってしまう。
やはり、観客は女性が多いですしね。
ちなつのウィリーはその不愉快な気持ちに一切させない。
モラハラ言動がコミカルな場面につながるようになっているからでしょう。
「あいつ、またあんなこと言ってやがるw」みたいな感じで見ることができるから、観客は全く不快にならない。
すばらしい。口で言うのは簡単だけど、きちんとそれをコミカルに演じきれるのはさすがだなと思いました。

まゆぽんマルセルは、ちなつとはまた違った意味で「悪役」を演じなければならないキャラクター。
この「悪役」の種類分けがきちんとできているのもすごい。
彼女たちの持ち味の違いといえば、それもそうなのでしょうけれども、ジャックの敵役となるまゆぽんとガブリエルの敵役となるちなつと悪の分類ができている。
芝居が上手くないとこうはならない。拍手。
本当に面白い空回りだったなあ。
ちゃんと部下の分のチケットも買ってあげるのだろうか。ここもアドリブが進化しそうなところですね。
楽屋のお掃除おばさんヴァネッサ役の夏月都も笑わせてくる。最高。

ムーラン・ルージュの支配人であるシャルルもよかった。
こういう役の場合、踊り子たちを金のなる木くらいにしか思っていないような嫌な人になりがちだけど、そしてあのひげはいかにも悪い人っぽいのですが、シャルルはそうではなくて、ムーラン・ルージュという場所もそこで踊る踊り子たちのことも大切にしているのが伝わってくる。
シャルルとジャック(ジャンヌ)は恋愛だったのか?という声もあるみたいですが、最初は敬愛や親愛だったものが恋愛に変わることはあるだろうし、恋愛にならなかったとしても敬愛や親愛で結ばれているカップルもありかなとは思います。
宝塚ではもっと理想的な男女のラブがみたい!大恋愛が見たい!という人には少し物足りなかったかもしれませんが。
ジャックとしては、最初はちょっと怖いおじさんだった人が、少年のようにひたむきに舞台を愛するシャルルを尊敬していったのだろうし、シャルルとしても、ここで終わりだもうダメだと思ったところで自分の死を引き留めてくれたのがジャックの言葉であったというのは大きいと思います。
2人が歩み寄る様子は、私はちゃんと描かれていたと思っているので満足です。
まあ気になるのは年齢差くらいですかね。
一体ジャンヌはいくつくらいなのだろう。

一方でヴィクトールとガブリエルの方が「お前ら、結局顔が好みだったんかい」みたいな話になりかねないなとも。
ウィリーとしっかりケリをつけて別れることのできるガブリエルですから、たとえ顔が好みであっても性格に難があればすぐに別れる選択肢を選べるだろうことは予想できるので、安心といえば安心です。ガブリエルの女性自立の言葉は今の世にも響きます。嬉しいのやら悲しいのやら。
彼女にウィリーの二の舞になって欲しくないという観客の心もわかりますが、ガブリエルの方が問題ないならヴィクトールをなんとかしなければいけない。
けれども、そもそもヴィクトールの出番が少ない。これが惜しい。
たまきちの男役としての出番が少ないのはね、やっぱり寂しいではないですか。
だからオープニング曲はジャックではなく、いっそヴィクトールとして出て来てもよかったかもしれないです。
からんちゃんロートレックもわりと序盤から出て来ているのだから、2人の会話で『クロディール』に言及したら、ヴィクトールは少なくともガブリエルに対して顔だけではないということがわかるかもしれません。

オープニング曲の前、ウィリー夫妻がムーラン・ルージュから出てくる場面で見たガブリエルのストライプのドレスはすごかったですね。
なんていうかもう本当にさくら(美園さくら)のために作られたドレスであることが一目瞭然。
チラシでは上半身しか見えなかったのですが、全身の姿を見たら震えるね。
顔のパーツがわりと直線が多いので、大変よく似合っておりました。
あれが似合う娘1はあまりいないかもしれない。
みんな、どちらかというと顔のパーツは曲線が多いから。

あとの場面で、ムーラン・ルージュに来ていたウィリーの奥方がとんでもない美貌の持ち主だ!とシャルルが舞台裏で話題にしますが、それなら記者に「相変わらず美人な奥さんですね!」とか言わせたらどうだろうか。
いや、ジェンヌはみんな美人なんだけどね。だからこそ芝居の設定を教えてね、と。
そこでガブリエルが「ありがとう」と応えて、続けて言葉を発しようとすること、自分よりも妻が目立っていることにいらだっているウィリーが「もう、このあたりで!」と切り上げれば、冒頭のキャラクター演出としてはうまい具合に進むのではないかと思われます。
まあ素人目線ですがね。

シャルルれいこちゃんが「この中に真ん中に立てるスターの踊り子がいたらムーラン・ルージュはこんな風になっていない!」みたいなことを言う場面があるのですが、ちょ、おま、それをくらげ姫(海乃美月)の前でのたまうか!と、演技だと分かっていても目を見開いてしまったよ。
うん、わかっているよ、演技だよ。
『ラスパ』大好きです。

おだちん弁護士は、まあすごいよね。パンチ力っていうの?破壊力っていうの?
ショーでも思ったけれども、すごい。
バッカンバッカン会場を沸かせてくれる。ありゃ、本人も楽しいだろうなあ。
どうしてムーラン・ルージュへの潜入捜査で女装をしたのかは謎だけど(そのまま男として入り込むこともできただろうに)(ガブリエルに近づくために女になったのかな?)、それが物語を動かす鍵になる。
別箱ではなく本公演であれだけ重要な役を任されるのだから、別箱で真ん中にくる日もそう遠くないかもしれません。
スターだなあ、本当に。

じゅりちゃんも『夢幻無双』で新人公演ヒロイン、『赤と黒』のマチルドときて、またひと回り大きくなって大劇場に戻って来ましたね。
るうさんに注意されているじゅりちゃんは、『ワンス』の潤花のようでもありました。
月組のこれからの人事も気になりますが、誰がトップでも応援したい。
くらげちゃんの出番がその分減ったかなと思われるのが辛いのですが、じゅりちゃんにも頑張って欲しい。
くらげちゃんも応援しています。
彼女がセンターなのにムーラン・ルージュに客が入らないのはなぜだ。
美しくてどこにいても芝居していてすぐわかる。

下級生はらんぜくん(蘭世惠翔)もいい。すごく目を引く。赤っぽい茶髪のカツラにくるくる丸いお目目が実にキュート。
そしてデカイ。大きい。でもキュート。
フィナーレのありちゃん(暁千星)歌唱場面でもダンサーとして活躍(ありちゃん、歌が上手くなっていましたね)。これからが楽しみな娘役の一人ですな。
どうなるのかなあ、わくわく。
新人公演がないのが辛い。
ちづるちゃん(詩ちづる)もこありちゃん(菜々野あり)もBバージョンに出演のため、舞台上にいないのが残念ですが、やはり初舞台生を全員舞台に上げるためには人数を制限するしかなかったのかなあ。寂しいでござる。
どちらのバージョンが円盤になるのか、東京も下級生は半分に分けるみたいですし、全員が舞台上に立てないのはやはり寂しいですね。
オーケストラも早く復活して欲しいな!

そして見つけた新しい期待の下級生は美海そらちゃん。気がつくと彼女をオペラで追っていることが多かったです。
とても楽しみな104期生です。

星組において金髪の天寿光希、黒髪の瀬央ゆりあならば、月組においては金髪の紫門ゆりや、黒髪の輝月ゆうまで決まりだな、と思いました。すてき!
金髪はロイヤル繋がりで、黒髪は95期つながりですな。
そして私はロイヤルに弱い。
雪組の黒髪は彩凪翔かな。

ちなみに覚えいるアドリブ。
ゆりちゃんがたまきちのサイズを測る場面「足、長っ!」
からんちゃんが墓地でちなつにからむ場面「おめぇ、あし、なげぇな!」
るねぴに近道を教えてもらったちなつ「早く言う!でも大丈夫、足長いから」
あしながまつりでした。みんなあしながおじさん(物理)な感じですかね。

フィナーレの羽はトップがピンク、白、水色でフランス国旗。トップ娘役が水色で2番手がピンク。
こういうとき、娘役がピンクになるところを水色をあてているところがすばらしい。
こういうところからジェンダーフリーにしたいところ。
確か花組の『BG』のパレードも、みりお(明日海りお)がピンクで、ゆきちゃんが紫でしたね。すばらしい。
しかし銀橋挨拶はやはりトップと2番手が最後だった。なぜだ……?
最後にトップコンビを2人銀橋に残して欲しいのだが。あれかな、歩くスピードの問題か?
ドレスは歩くスピードが遅いから最後舞台の真ん中に戻るのが遅れるということなのか?
では、曲をゆっくりめに演奏したらええのではないか?などとぐるぐる考えてしまう。

Aパターン観劇日は、コンプレックスビズとのコラボレーション商品、星組バージョンを髪飾りとしているのですが、キャトルレーヴの店長さんに「素敵ですね」って褒められてしまったのです!
ありがとうございます! ありがとうございます!涙
『グラフ』に掲載されていたトップ娘役のようなアレンジはできませんが。
コテ苦手! 何種類も使い分けているまどか(星風まどか)を初めとする娘役さんたちは心底すごいと思います。

そんなわけで月組、チケットを増やしました。
次の雪組に備えてちょっと控えに、と思っていたのが嘘のようです。
Bパターンも楽しんできます!

雪組『NOW! ZOOM ME!!』感想

雪組公演

kageki.hankyu.co.jp


望海風斗 MEGA LIVE TOUR『NOW! ZOOM ME!!』
作・演出/齋藤 吉正

 

配信BパターンとCパターンの両方を観劇しました。
結果から言えば、もう東京公演は全部Cパターンでもいいのでは?と思うくらい、だいもん(望海風斗)ときぃちゃん(真彩希帆)のコンビがすばらしかったからです。
もっとも、Cパターンを見たときは前日のBパターンを見ていて、全体の流れがわかっていて、楽しむゆとりがあったからかもしれませんが。

基本的にはヨシマサ―!怒、という感じでしたので、先に良かったと思ったところから!
オープニングの「ZUKA!ZOOM UP!!」はダサいwとは思ったものの、まあ時折宝塚はこういうのってあるよねーという感じでした。
こういうクラッシック(笑)なのも、まあ宝塚のお約束のようなものでしょう。
コンサートだから、役作りメイクというよりはみんなヅカメイクで、映像で見るとなかなかに濃いのですが、それもよかったです。宝塚を見ているという感じがしました。

ひまりちゃん(野々花ひまり)がヒロインポジションでとにかくかわいくて愛らしくて正義でした。
だいもんの隣にいても、カリ様(煌羽レオ)の隣にいても、いつだってキュートでした。好き。
というかカリ様×ひまりちゃんって新しいですな。
根っからの悪い男と純情天然ヒロインみたいで最高だな。
ツッコミがひまりちゃんだとなおよい。個人的な好みの話です。

オープニングでは、あゆみお姉さん(沙月愛奈)が下手で男役を率いて踊っているのがとても印象的でした。素敵。
上手では娘役を率いてだいもんが踊っていたので、同期のシンメトリーがすばらしかったです。
悪者女という赤いメガネ、赤いおかっぱ、赤いお衣装という役者の区別がつきにくいときにも、あゆみお姉さんはキレッキレに動いているので、すぐにわかりますね。こういうの、とても大事だと思います。
ところで、だいもんは娘役に囲まれていても「はべらせている」感があまりないのはなぜでしょうか。
例えばみりお(明日海りお)は娘役に囲まれていると完全に「はべらせている」感があるじゃないですか。
カサノヴァだから? でもだいもんだってドン・ジュアンだよ??
娘役と一緒にいるだいもんは「俺の仲間!」という感じで、むしろ男役を率いているときのほうが「はべらせている」感があるような気がします。
こりゃどういうことだ。
素敵なことに変わりはないけどな!

スーツにハットの男役、アシンメトリーのワンピースの娘役も素敵でした。
どこのナイトクラブだ?という感じでしたが、ああいう雰囲気が好きなんですよね、私。
『ワンス』を連想させるようなスーツにハットでした。
裾がアシメというのも大好物だったので、娘役もかわいかったです。みんなかわいい。
だいもんはどの場面にも出てきて、「まだかなー?」と思うことは全くなかったですね。
この場面でも娘役がずらりと出てきたときに後からやってきました。
プログラムを見てもわかるように、だいもんが出ていないのは2幕最初の「アヤナギ先生」の場面だけですな。それはそれですごい。
水分補給と着替えが大変だろうなあ。

まあ様(朝夏まなと)主演の『A Motion』もヨシマサでしたが、ここでは「アサカボーイ」「アサカガール」だったのが「ズームボーイ」「ズームガール」になっていたのもよかったかな。
「ノゾミボーイ」「ノゾミガール」だったらどうしよう、と思っていたところでした。
だったら「エースボーイ」と「エースガール」で良かったのではないかしらんと思ってしまいますが。
両作品ともにメインのお衣装は娘役はスパッツですが、必ずドレス姿の娘役を出してくれるのは嬉しいところです。
まあ、ヨシマサがおっさん感性ばりばりだから、そうなるのでしょうけれども、『MR』でドレス姿に飢えていた身としては、とても嬉しかったです。
今回もピンクのドレスがありましたね。『キラールージュ』の中詰めのような。あの衣装、好きなんだよな。

上手と下手にある「NOW!ZOOM ME!!」の文字が「ノゾミ」と光るのも天才か?!と思いました。
ああいうのを考えるのは大道具さんなのか小道具さんなのか、はたまた演出さんなのか。
多彩でないとやっていけない宝塚の裏方。すばらしい。

あみちゃん(彩海せら)のお化粧がぐんとよくなっていましたねー!
ヅカメイクがより映えるようになっていました。すばらしい。
歌唱力も上がっていた。ステイホーム中も頑張ったことが伺えて、本当に涙がちょちょぎれる。
だいもんと一緒に地元の鹿児島のお祭りで、屋台船に乗って花火を見る計画、とても素敵だと思いました。
だいもんとおでかけプランといえば、カリ様は完全にデートプランでしたね。そのまま使える。

カリ様のダーティーLEOはすばらしかったです。なぜ負けたのかわからない。
本当に格好良かった。ヒゲが最高だった。なんていうか、完全にもう悪役だった。
あの格好良さはやばいね。あふれ出る色気がすごいね。
裏ピースの映像もお茶目だよ。好き。臙脂のベロアの手袋もたまらなかったわ。
もっともなぜコナンの曲だったのかは全くわかりませんが。
コナンってエイリアンは出てこないだろう?

ピンクの髪も素敵だったわよ、カリ様!
だいもんと翔くんとカリ様が並ぶと、もう世の中のすべてを手に入れた感がたまらなかったです。
「え、俺らに落ちない女とかいるの?」みたいな。すげぇな。すげぇよ!
もう黄色い声しか出てこないよ。なんて格好良いんだよ。

ここからはきぃちゃんタイムです。
きぃちゃんが白いドレスのお衣装で、古典的に髪をまとめてアップにしている姿がとてもクラシックな娘役という感じで素敵でした。
歌唱力もさることながら、娘役としての姿勢、スタンスがにじみ出るような歌声に、なんかもう本当に感動しちゃって、涙が止まらなかったよ。
その髪飾りもだいもんに360°パノラマ点検してもらったのかね、素敵な夫婦だよ。
ラプンツェルの曲では途中からだいもんも出てきてデュエット。光の中で振り返って笑顔でいることが稀なだいもん(笑)。
夢々しいデュエット曲が少なかったということからの選曲だそうです。
そうね、デュエットというと「焦燥と葛藤」みたいな戦いソングか、悲しい別れの曲が多かったからね、あなたたち……。

きぃちゃんが「望海さんは私の王子様」と言った後に、観客に向かって「みなさんにとっても望海さんは王子様ですよね」と言ってくれたのがすごいよかった。
私だけの望海さんにしないところがすごいよかったし、きっときぃちゃんもどちらかといえば、こちら側の人間なのだろうと思いました。
「王子様」と「おじさま」と聞き間違えるだいもんはどうかと思ったけれども、あれも照れ隠しだったのかな。
本当はもう! 覚えているくせに! みたいな。
あそこのやりとりのだいきほは多幸感に溢れていたな。
夫婦の会話は家でやれって? 彼女たちにとってここが家なのよ!

感動するのは、きぃちゃんのディナーショーの「ミーアンドマイガール」「顎で受け止めて」が、今回のデュエット曲「ランベスウォーク」の壮大な前振りのように見えるところ。二人で歌う「ランベス」最高でした。
そしてだいもんが自己紹介するとき「雪の中に輝くダイヤモンド」と説明するのですが、これもきぃちゃんがディナーショーで歌った「ダイヤモンドはベストフレンド」を連想させて、すごくよい。
友情というのか、愛情というのか、戦士の絆というか、本当にすばらしい。二人の結束がよくわかる。
そして『エリザベート』の「私が踊るとき」。個人的な好みからいえば、この曲は東宝版の方が好きなのですが、この二人で聞けたことがとても幸せでした。ありがとう!
できればもう1曲、『スカピン』の「あなたこそ我が家」も聞きたかったよ!
だってウエディングを連想させる白いお衣装来ているじゃないの、二人とも! やりましょうよ!
だいきほで『エリザベート』『スカピン』が見たいと思ったことはないのですが、曲を聴くことができて本当によかったです。

トークのお題「トップコンビの素敵なところ」は最高でしたね。髪飾りパノラマ点検という話も素敵でしたが、「のぞみさん」「まあやちゃん」という呼び方の話も、言われてみれば!という感じで改めてこのトップコンビのすばらしさが伝わってきました。
「きぃちゃんは星組? 雪組?からの輸入かな」と、さらりと「昔から知っている女性」というくくりに入れてマウントとってくるだいもん、好きですー><
しかし、恥ずかしいのか、照れ隠しなのか、途中から「私、これ一人で聞いていていいのかな」「どこかで聞いているかな」と繰り返すだいもん。
今回の舞台稽古で「すごい歌唱力」であることを再認識しただいもんが「どこから声出しているの?」ときぃちゃんに聞いたというエピソードもほのぼのしました。
研18になっても、相手が下級生であっても、貪欲に学ぼうとするだいもんの姿勢も拍手ものですね。
ちなみに腰のあたりから声を出している、という回答だったとか。どういうことよw
しかし映像を見ていて思ったのは、歌っているとき、確かにきぃちゃんはお腹のあたりが動いているようにも見えるから、やっぱり喉から声を出しているのではなくて、お腹から声を出しているのよね。すごい。
これはトレーニングの賜物だろう。私も声を使う職業だからボイストレーニングしたいよ。

だいもんのソロ曲リクエストは「ひとかけらの勇気」「かわらぬ思い」「愛の旅立ち」の3曲でしたが、まさか「かわらぬ思い」が聞けるとは思わなかった……すごい感動しちゃったよ。
実はこの曲、ずっと覚えていたのですが、なんの曲だったのか、いまいち思い出せない期間が長くて、今回のステイホーム中に(別にステイホームせずに普通に働いていたのですが)『ブラック・ジャック』だったことが判明したという個人的な経緯もあって、感動しちゃったよ。

最後にきぃちゃんがメインのお衣装で出てきてくれたこともとても良かったです。
髪形も超絶キュートでしたし、ピアスも「NZ」「M」というドデカアルファベットがしっかり映像にも写っていましたよ。溢れだす愛がすばらしい。

とにかくきぃちゃんが出てきてからが本番!という感じで、だったら1幕から出せばいいのではないか?と思うほどでした。
AパターンとBパターンがどれほど違うかはわかりませんが、これはもしかしたら1幕は全部々なのでしょうか。
と、いうことは2幕だけだったら、AもBもCも円盤になるのでしょうか。
そうだといいなあ。とにかく宝塚の曲を歌っているだいもんときぃちゃんが良かったです。


と、いうわけで、思ったよりもたくさん良かったこと、楽しかったことがあってよかったです。
その半分がだいきほの話だから、やはり東京は全部Cパターンでもいいのではないかと思うくらいですが。

あまり話にも出てこなかったことからもわかるように、1幕のバブル、2幕のパロディはなんていうかヨシマサがやりたいことをやっただけという感じがして、とても残念でした。
そもそもプレ退団公演で演出家の先生がやりたいことをやるってどうなんだろう。

これは人によって様々だろうけれども、私はタカラジェンヌが歌う歌謡曲が聞きたいのではなくて、彼女たちが歌う宝塚の曲を聞きたい。
『A Motion』のときは、まあ様の生まれた年代しばりというくくりがあったし、『Delight Holiday』のときも令和になって平成の振り返りという位置づけがあったけれども、なんていうか今回はでたらめでしたし。
なんならバブルの曲でさえないものもあったような。
生まれてさえいなかったはずの派手なバブルのお衣装が似合うのはさすがタカラジェンヌなんだけど、これは観客のターゲットまで絞ってしまうのではないか、と危惧するような場面でした。
そしてまたこの場面が長い。

長いといえば2幕のパロディも無駄に長い。
韓国や台湾でライブ中継されているのに「純日本人」という台詞をトップに言わせるのは心底どうかと思っています。
しかも2回も言わせましたからね。
もとの作品をまともに換骨奪胎さえしておらず、ただ底の浅い笑いをとるためにつなげただけ、圧倒的な歌唱力によってのみ保っている場面だったと思います。
2015年のタカスぺでも雪組は『星逢一夜』と『アルカポネ』のパロディをやりましたけれども、全然質が違いました。
一言でいってしまえば、おちょくるところが間違っているのです。
笑いをとりにいくポイントがずれているというか。
とても見るに堪えられなかった。
唯一、新選組がマシンガン銃をもってヴェルサイユ宮殿を目指すというところだけがうまかったな、と。
感想は人ぞれぞれでしょうけれども、私はこの場面をやるくらいなら、もっと花組時代の曲、宝塚の曲を歌ってくれた方がずっと嬉しかったです。

あと映像がちょっとうるさいような気もしました。まあ大きなホールでやることが前提だったから仕方がないのかもしれませんが。

Aパターンも見る予定ですが、このバブルとパロディは変わらないだろうから、ちょっと見るのがつらいかな、と思っている所存でございます。