ゆきこの部屋

宝塚やミュージカル、映画など好きなものについて語るところ。

2020年観劇振り返り

今日が仕事納めの人も多いのでしょうか。お疲れ様です。
私は一足先に仕事を納め、ぐーたら過ごしています。
ぐーたらついでに今年の観劇を振り返りました。
ちなみに、2019年観劇振り返りはこちら。

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花組 Grand Festival 『DANCE OLYMPIA』-Welcome to 2020-(作・演出/稲葉 太地) 1回
月組 デジタル・マジカル・ミュージカル 『出島小宇宙戦争』(作・演出/谷 貴矢) 1回
星組 幻想歌舞録 『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』(作・演出・振付/謝 珠栄)、Show Stars『Ray -星の光線-』(作・演出/中村 一徳) 5回
月組 ミュージカル・ロマン 『赤と黒』-原作 スタンダール-(脚本/柴田 侑宏、演出/中村 暁) 1回
雪組 ミュージカル 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』(脚本・演出/小池 修一郎 ) 4回
宙組 『FLYING SAPA -フライング サパ-』(作・演出/上田 久美子) 3回
宙組 オリエンタル・テイル 『壮麗帝』(作・演出/樫畑 亜依子) 1回
雪組 ミュージカル・ロマン『炎のボレロ』(作/柴田 侑宏、演出/中村 暁)、ネオダイナミック・ショー『Music Revolution! -New Spirit-』(作・演出/中村 一徳) 1回
雪組 望海風斗 MEGA LIVE TOUR 『NOW! ZOOM ME!!』(作・演出/齋藤 吉正) 3回
専科・雪組公演 凪七瑠海コンサートロマンチック・ステージ『パッション・ダムール -愛の夢-』(作・演出/岡田 敬二) 1回
花組 ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』(原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート)(c)大和 和紀/講談社)(脚本・演出/小柳 奈穂子) 7回
月組 JAPAN TRADITIONAL REVUE 『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』(監修/坂東 玉三郎、作・演出/植田 紳爾)、ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜(作・演出/原田 諒) 4回
星組 『エル・アルコン-鷹-』~青池保子原作「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より~(原作:青池 保子(秋田書店))( 脚本・演出/齋藤 吉正)、Show Stars『Ray -星の光線-』(作・演出/中村 一徳) 1回
星組 ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック』(脚本・演出/大野 拓史) 1回
宙組 三井住友カードミュージカル『アナスタシア』(潤色・演出/稲葉 太地) 2回
※ライブ中継を含めた回数

※宝塚以外
『ロカビリー☆ジャック』(作・作詞・楽曲プロデュース/森雪之丞)(演出/岸谷五朗) 1回

37回のうち、宝塚以外が1公演しかないのが嫌でも目立つ。
『ロカビリー☆ジャック』も年の始めの方だったことを考えれば、コロナ以降、宝塚以外の観劇をしていなかったということですね。
ライブ中継が始まったおかげで、回数そのものは去年よりも少ないものの激減!という感じではない。
けれどもなーやっぱり生で観劇したいしなー。
3~7月までの5ヶ月もの間観劇しなかったのなんて、何年ぶりだろう。
少なくとも大学生のときにだってこんなことなかったぞ。

回数としては『はいからさんが通る』が最多の7回ですが、人生初の新人公演がなくなったうつろな気持ちは一生忘れられないだろうなと思っています。
「うらみ」ではなく「うつろ」です。劇団がそう判断したことも、よくわかるから。
オーケストラと新人公演が戻ってくる日が待ち遠しいです。

最近、オシゴトの関係で『はいからさんが通る』を何度も繰り返し見たり、原作を読んだりしているのですが、やはり私は原作が好きなんだなーということをしみじみ感じました。
環と鬼島の番外編『鷺草物語』は是非ともバウホールあたりで見たいです。
編集長の番外編『霧の朝 パリで』も見たいのです。あの美形を女性にはやれないといった作者の言葉が今でも忘れられないのです(笑)。

作品として良かったなあと思うのは、宙組『サパ』と月組『WWT』『ピガール狂騒曲』です。
上記の作品は宝塚初心者にも自信をもって勧められる作品です。

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来年は『fff』『桜嵐記』と退団公演×うえくみ先生の組み合わせが2本もあり、今いる5組のトップスター10人の顔ぶれが夏までに半分以上変わるという激動の年になりそうですが、コロナ、てめぇだけはおとなしくしてろよ?

それではみなさん、ごきげんよう。よいお年を!

星組『シラノ・ド・ベルジュラック』感想

星組公演

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ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック
脚本・演出/大野 拓史

今更な感じですが、とてもおもしろかったので、ライブ中継を見ながらとったメモをもとに、ざっくりした感想をば。
基本的に「みっきー!」としか言っていません。天寿光希の芝居が知っていたけれども、すばらしかった。相変わらず……。
ちなみに併せてこの映画をおすすめしておきます。

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登場早々からいかにも「悪い人」のオーラがぷんぷんのみっきー。
もちろんそれはお衣装もあるのだろうけれども、目つきというか視線というか。ねっとりした目線がね、もうすごーくわかりやすく悪い人。素敵。悪い人エンジン、全開。
画面にうつるみっきーが悪い人で、そしていちいち格好良い。好き。
最近だと『龍の宮物語』もばりばりの「悪い人」でしたね。

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単調すぎだという人もいるようですが、私はとにかく場面転換が少ないのがストレスなく見ることができて、良かったです。
大劇場はともかくとして、別箱で場転が多いのは割と集中力が切れてしまいがちだからダメなのよね、私……。
もともとフランスの喜劇で、全5幕、ほぼ原作通りに進み、ゆったりした感じがフランスの優雅さというかエスプリというか、それらが助長に感じる人もまあいるだろうけれども、私は概ね良かったかなという感想です。
1幕は劇場→菓子屋→バルコニー、2幕は戦場→修道院という見事にわかりやすい5幕ですな。
大道具も工夫が凝らされていて、1幕の終わりのバルコニーの場面で使った階段の向きをかえると、確かに違った場所であるように見えて、2幕では戦地として使われていました。絶妙だな。

いきなり主人公が出てくるのではなく、世界観や周りの状況の提示から始まるタイプのお芝居で、リニエール(朝水りょう)が「皮肉屋の小汚い詩人」として出てくるのですが、うまいなあ……見せ場が序盤しかないのがもったいないくらいです。
「小汚い」ってレベルが難しいですよね、特にタカラジェンヌはみんなきれいな人が多いからさ。

そしてヒロインのロクサーヌ(小桜ほのか)がこれまたすばらしくキュート。
ツイッターでもつぶやいたのですが、時折みゆちゃん(咲妃みゆ)に見えることがあって、「あ、芝居がうまいんだな」と思いました。
ガツンと体育会系の今の星組ですが、丁寧に芝居をつくる人も多いんだな、ということに改めて気がつかされます。
ほのちゃんに関して言えば、圧倒的なヒロイン力とでもいいましょうか、娘役芸といいましょうか、美しかったですね。
本当になぜ次の演目が『ロミオとジュリエット』なのだろう……あの娘役の出番が全然ないことで有名な……寂しい。

菓子屋のきわみくん(極美慎)は、菓子屋なのに踊り出す、踊りがキレキレ。菓子屋なのに……。
ラストの場面は15年後という設定だったと思いますが、お衣装は変わらず。
別は故ということもあり、お衣装にはそれほど時間や予算を割けなかったのでしょうか。
せめてもう1着くらいあってもよかったのでは?と思ってしまいました。まあほのちゃんも喪服入れて4着だから仕方が無いのか。
「パンをつくるしか能が無い」と言われてしまいますが、この「パンを作る能力」が2幕では活躍します。

最初は白いドレスがよく似合っているほのちゃん、全然しゃべらないのね……と思っていたら、2回目に出てきたときには、わりと早々歌い始めて、そしてうたうめえ!ってなった。常識ですね、はい。
シラノと菓子屋で会う場面でお召しになっていたピンクのドレスは『異人たちのルネサンス』でまどか(星風まどか)が着用していたものでしょうか。
ちょっとベロアっぽい感じのあのドレス、とても好きなので、またお目にかかれて嬉しかったです。
3回目に出てきたときはもういきなり歌っていたしな。ブルーのドレス、かわいいな。
真珠のイヤリング、ネックレスと、ブレスレットもよくお似合いでした。部屋に入って出てきたらアクセサリー変わっていてびっくりしたけどな。これぞ娘役魂。
2幕で羽織っていたマントは『1789』でちゃぴトワネットがフェルゼンと密会するときに着ていたものかな。派手。

音寧姉さんはロクサーヌの侍女ということでしたが、ちょっと滑稽な感じでしたね。
どういう役作りなのwと思いながらも、生真面目な感じが愛らしかったです。
ドレスは『ひかりふる路』でみちるちゃんが着ていたお衣装かな。

1から10まで悪い人、格好いい人であるみっきーは目をカッ!と見開いた様子が大変に印象的ですし、マントさばきが美しいですし、本当にため息が出てくるレベル。
「今日はお別れに言いに来た」とか、ほんとうに仕草がまるっと伊達男!
むしろロクサーヌはどうしてあの熱烈な投げキッスをうけても惚れないのだろう……なぞだぞ。
1幕終わりでは無事にクリスチャンと結婚式を挙げる。

2幕ではロクサーヌがただのエスプリ好きのお姫様であるだけではなく、愛する人のためなら危険もおかさないタイプのお姫様であることもわかる。格好良いな。
そしてクリスチャン瀬央にかなり力強い対応をします。ひざまずいていながら、絶対にクリスチャンの手を離さない。
熱烈に語っている手紙を書いたのがクリスチャンでないことを知らずに手紙のお礼を必死に言うロクサーヌ
ここでようやくクリスチャンはシラノの気持ちに気がつく。しかし気がついてすぐに彼は砲弾に倒れる。
原作ものということもあろうが、物語の構造としては無駄がなくて大変よろしい。

夫がなくなったということで、ロクサーヌ修道院へ。
14、5年経った後ということらしいですが、落ち着いたほのちゃんの演技がこれまたすばらしかった。舌を巻く。
俗世のあらゆるしがらみから解き放たれた今のロクサーヌは、ド・ギッシュ伯爵を許すほどの大きな心の持ち主。
「許す」ということに関して、とても器が大きいな、と。こういう女性が描けるのがすばらしい。
そしてロクサーヌが手紙の本当の主に気がついて、シラノの死をもってエンド。
「どうしてその尊い秘密を今になって明かそうと思ったのですか」という台詞が好き。「尊い秘密」っていいな。

理事(もう理事ではないけれどもw)は、やっぱり声がなー><
主演となると台詞も増えるし、今回なんて口から生まれてきたかのようnエスプリ上手な役ということもあって、苦しかったかな。
公演期間が短いのはむしろ幸いだったかと。声はかれていくものですから。

フィナーレのみっきーがまさかの金髪でなくてびっくりしました。
長髪だったということもありましょうが、おお!新鮮!と思いました。最近フィナーレやショーでは金髪が多かったですから。
『龍の宮物語』のときも、え、一体どこに隠していたの?その金髪!!みたいな反応をしてしまったくらいなので。
きわみくんがマジやんちゃなのは再認識したのですが、それにしても娘役が少ないな。
音寧姉さんがセンターなのは、まあそうなるだろうけれども、そうか『エル・アルコン』チームにそんなに娘役をとられていたのか……と唖然。
デュエットダンスのほのちゃんの白いドレス姿は女神でしたね。ちょっと物足りない感じはありましたが、美しかったです。

星組は音波みのり、有沙瞳の両名の活躍も応援したいところですが、今回はほのちゃんのこれからの活躍も同じくらい願っております!

余談ですが、雪組のトップコンビプレお披露目が『ヴェネチアの紋章』『ル・ポァゾン』に決まりましたね。
古き良き宝塚の再現への期待が高まります。咲ちゃんは『炎のボレロ』に続いて柴田作品ですが、似合いそう。
この夏に『ヴェネチアの紋章』を見返して、ちょうど花組のれいはなで見たいなと思っていたところでした。
ええ、はかない夢となりましたがね……。

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一方で朝美氏主演のバウ+東上も決定。東上は故郷に錦の御旗を立てることになりましょう。
しかし朝美主演のバウとかチケット争奪戦がこれまた激しそうですね。
きむしん先生は『アーネスト・イン・ラブ』『蘭陵王』はよかったのですが、個人的に『リッツホテル』で原作との解釈違いを起こしてからちょっと微妙なのですが、うまく行くといいですね。
お相手は誰がつとめるのでしょうか。個人的にはみちるちゃんかひまりちゃんがいいなあ。おとなしく発表を待ちます。

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宙組『アナスタシア』感想

宙組公演

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三井住友カード ミュージカル『アナスタシア』
潤色・演出/稲葉 太地

アーニャ役であるまどか(星風まどか)がとにかくすばらしかった……っ!
さすが、タイトルロールなだけはあるよ!
なんで彼女のソロ曲があんなにも少ないかわからないよ!
お芝居も歌もダンスも、そしてデミトリ役の真風に寄り添うという娘役芸も本当にすばらしかった。
なんでこの二人のデュエットダンスを見るのが最後になるの……?ともう意味がわからなかった。
この二人のデュエットダンスで泣いたことなんて一度もなかったのに、思わず涙がほろりと。
とてもいいコンビに成長したのにね……っ!

海外ミュージカルものということで、初日の幕が開く前から予想できていたことではありますが、やはり役が少なくてもったいない……><と思う役者はたくさんいましたね。
やはり宝塚歌劇団という場所は「誰が演じている」ということも一つの楽しみとして提供されている場所でもありますから。
しかしそんな中でもみねりちゃん(天彩峰里)の少女時代のアナスタシアは幕開きから、もうべらぼうに可愛い。最高に可愛い。
そりゃマリア皇太后の1番のお気に入りになるわけだよ!と納得させられるし、マリア皇太后の威厳がありつつも孫娘を可愛がる様子が本当にすばらしくて……。
『神々の土地』では「兄ではなくアレクサンドラです!」「とにかくアレクサンドラはそう信じているようで……」と冒頭でアレクサンドラを批判しまくっていた副組長(美風舞良)がアレクサンドラ皇后役というのもおもしろくて、冒頭ではくすりと笑ってしまいました。
マリア皇太后との仲も相変わらず悪いようで、アナスタシアにオルゴールがプレゼントされたことを知るやいなやものすごい勢いで「今の時代に必要なのは、オルゴールではなく、お祈りです!」とキッパリと言い放つ姿に「陛下を守るのは神ではない!」と私の中のドミトリーが叫びました。すいません、『神々の土地』オタクなもので……。
父親に向かって「私は大公女、アナスタシア・ニコラエヴァナ・ロマノフよ!」と言い切る少女アナスタシアを演じたみねりちゃんがとにかく愛らしかったです。ラブリー。ソーキュート。

『神々の土地』関連で言うなら、最後に近い場面、マリア皇太后デミトリに「あなたを誤解していたのかもしれません」と言ったとき「そういう人生なんで」みたいな返答をしたときは、フェリックスううううう!!!!!と思いました。
あの人も誤解されやすい人ですよね。とっても友達思いなのに。デミトリ―思いというべきか。
なんといっても麗しのイレーネを救うために「ご自分のレンブラントを全部ボリシュヴィキに渡した」というくらいですから。
冒頭でデミトリがユスポフ家の劇場で暮らしていることがわかったときよりもときめきました。

ららちゃん(遥羽らら)がアレクセイで、そらくん(和希そら)がリリーという発表を見たときは、「なぜ娘役に女性の役を、男役に男性・少年の役を与えないのだ……?」とも思ったのですが、ららちゃんのアレクセイも、リリーのそらくんもすばらしかったです。
ららちゃんは2幕でしゃべったときに大変声が愛らしかったですね。
「秘密を教えてあげるよ。僕、もうすぐ死ぬんだ」「君は誰?」「そんなバカな!自分が誰かわからないなんて」みたいな台詞だったと思います。
台詞の真意はちょっと意味不明だな……と思いながら正直聞いていたのですが、声が大変すばらしかった。可愛い。

デミトリの悪友役である秋音光、紫藤りゅう、瑠依薪世、鷹翔千空の四人は、第1幕第6場でデミトリとアーニャの関係をからかったすぐあとの場面で、ロマノフの男性として早着替えで再び登場するのですが、これがまたすばらしい。
美しい青年貴公子になって白い軍服のお衣装で出てくる。早着替えがすばらいしこともさることながら、すぐに役を変えられる彼女たちもすばらしい。
そしてわかっていたことではありますが、このメンバーだとしどりゅーに目がいく。
しどりゅー、あの、芝居をしているときは「昔から宙組にいました」みたいな感じなのに、どうしてフィナーレのパートだと星男になって観客をあおるのですか……もう……すき。
スチール写真が白い軍服のお衣装でないのが残念だ。残念極まりない。

個人的にはデミトリと一緒にある女の子をアナスタシアに仕立て上げて一攫千金を狙うパートナーが、実はボリシュヴィキのスパイでした、みたいね展開の方が盛り上がるような気もするのですが、そうするとさらに役が少なくなってしまうのがまた難しいところですし、オリジナル版を踏襲している以上、そうできないのは仕方がないのかもしれません。
でもヘラヘラしながらデミトリの相棒やっているききちゃん(芹香斗亜)が実は冷酷なスパイでした、みたいな2面性、見てみたくないですか?
私はとっても見てみたいです。

第1幕、パリ行きの列車に乗る場面はやけにシリアスで、りんきら(凛城きら)演じるイポリトフ伯爵が歌い出す。
時計の針が動く演出は印象的ですが、あまりにもシリアスで、そのままみんなが列車に乗っていくものだから、てっきりここで1幕が終わるのかと思うほどでした。
アナスタシアを見て伯爵が「神のご加護がありますように」と言うのも印象深く、伯爵は一目見ただけで実は彼女がアナスタシアであることを見抜いたのではないかと思うほど。
もっともここで1幕は終わらず、紆余曲折を経て、パリの風景を見下ろして終わるわけですが。
この終わり方も結構好きで、パリの風景を見に行ったはずのアーニャが歌うためだけに戻ってきたように見える演出はなんとかして欲しいのですが、デミトリとアーニャがパリの風景を見下ろしながらせり上がっていく上手からグレブという魔の手が近づいていることを暗示するのは美しかったです。

ダイヤモンドの存在を明かしたことでロシアを出国できることになったのですが、アーニャに「本当に信頼できる人にしかこの存在を教えてはいけない」と言った看護婦はおそらくアーニャの正体を知っていたのだろうなあ、となんとなく思いました。
アーニャという名前を与えたのも彼女でしょう。
個人的にはキーパーソンだと思っているのですが、これ以上話を膨らませるわけにもいかないのかな。

ラストのデミトリの「俺は手を伸ばしても届かない人を愛し続けることはできない」という台詞はとても素敵ですね。少年少女時代に実はパレードで目が合っていた、というエピソードはいかにも宝塚が好きそうな感じですが、あの場面は芝居の中にはないにもかかわらず、目に浮かぶようで……好き。
実は1幕にフラグが立っていたことには2回目に気がついたことでしたが、あのパレードで手を振る美しいアナスタシアとそれを薄汚れた少年デミトリが見ている様子が想像できて、とても好きです。
ここはいい演出でした。

ちょっと残念だったのは舞台装置かな。
第2幕のバレエを見る場面、あの舞台装置はセンターの席からでないとよく見えないかと。
上手と下手のボックス席に座るデミトリとアーニャ、マリア皇太后とリリー、そしてその奥の枠の中で繰り広げられる「白鳥の湖」は上手からはちょっとよく見えない部分が多く、しょぼんとなりました。
とはいえ、本公演だから舞台装置を大がかりにしたい気持ちもわかりますし、難しいですね。
そんなことより優希しおんくんのロットバルトは最高でしたね。ノリノリじゃねぇの!
なんでジークフリートに負けるかがわからんくらい格好良かったです。しびれました。

ただ2幕頭の橋と坂の舞台装置はとてもよくて、後ろにいる生徒もよくわかる。
下級生がよくわかるのはとてもいい。
アーニャが橋の名前を答えるときはブックレット?観光本?を見ずに言って、「昔、聞いたことがある気がする」みたいな台詞が挟まってもいいかなと思いましたが。

そしてだいぶ残念だったのが脚本ですかね……。
細かいこというようで本当に申し訳ないのですが、文章を構造的に読むのが仕事なものでどうしても気になる職業病だと思っていただければ。
2回見たから「アーニャはデミトリたちに会ってから、本当に自分がアナスタシアだと思っていたこと」「デミトリの幼少時代のたった一度のお辞儀の意味」の2つを理解できたのですが、いまいち演出が足りないと思うのです。
ちゃんとその言葉が観客の印象に残るような演出が欲しいかなーそんなに尺はとらなくてもいいからさ。
後者は歌詞にも入っているはずなのに、なんだか印象に残らないんですよね。

2回見てもわからなかったのは「アーニャはいつ自分がアナスタシアだと確信したのか」「マリア皇太后はなぜアーニャの部屋を訪れたのか」の2つですかね。
デミトリもアーニャも、もしかしたら本物のアナスタシアかも?と疑念を抱いたのは、おそらくオルゴールをアーニャが難なく開けたタイミングだと思いますし、デミトリが確信したのは、「皇女様」といって白いお衣装同士でひざまずいた場面だと思うのですが(しかしここの演出もなんか印象に残らない。役者の力量だけでインパクトを残しているような気がする。音楽や照明をカットアウトにしたらどうだろう)、アーニャ自身はいつ確信したのかさっぱりわからず、ホテルでマリア皇太后と対峙しているとき突然アナスタシアだった頃の記憶をぺらぺらと流暢にしゃべりだすから、一瞬私は置いてかれてしまいました。
あ、記憶戻っていたのね、みたいな。

マリア皇太后もそもそもなぜアーニャに会う気になって、わざわざ自分でホテルまで足を運んでのはか全くわからなかったわ。
会う気になったらなら、もう一度呼び寄せればいいのでは? なぜ自分できた? いや、皇太后だよ???みたいな疑問が。
そもそもバレエの時点で「おや?」と思っているわけだし、1度目で会ってあげてもいいような流れでしたが、それを裏切ってくるのはよくある方法かと思うのですが、そのあとのデミトリがマリア皇太后にぶつけた言葉にそれほど説得力があるようにも思えず、マリア皇太后の心変わりの理由もよくわかりませんでした。
「最初はアナスタシアに仕立て上げようと思ったけれども、今は本物のアナスタシアだと確信しています。だから会ってください」とストレートに言えばいいものを、なんだかよくわからないことを長々としゃべって背を向けたという感じになっているのがなんとも。
もちろん現実にそういう場面になったら、あたふたしてよくわからないことを述べるということはあるかもしれませんが、これ、お芝居ですからね……?

ラストはたたみかけるように意味がわかないところが多く、記者会見するといいながら「あなたの彼は?」と言って、マリア皇太后はアナスタシアから離れていくし、突然グレブがどこからともなく現れて「ここの警備はどうなっているんだ?」と思わざるをえないし(少なくともマリア皇太后が近くにいるような場所の警護ですよ?)、グレブは殺せないままなのはわかるとして、「財産を受け継ぐ者としてアナスタシアを発表する日」であるといって、おや、記者会見とは違う日なのか?同じ日なのか?と思って、時間軸が行方不明のまま、橋の場面でアーニャとデミトリが再会、ダンスして完!って、ええええええと思ってしまいました。
おとぎ話だからこれでいのか? ふんわり雰囲気わたがしみたいなラストでした……全くわからんかった……。

台詞でもかみあっているのかないのかよくわからない場所がいくつかありました。
マリア皇太后とアナスタシアの写真撮影のあと「誰もあなたの発言を否定しないようになるわ」「そんなのおかしいわ」「ところであなたの彼は?」というようなやりとりがあったと思うのですが、んんん?どういうこと???と思いましたし、2幕冒頭の橋の場面でも「バスタブのお湯は残しておいてよ!」「気をつけろよ」「うん」というデミトリとアーニャのやりとりも、なんか一言足りないような……ともやもやしました。
壬生義士伝』のときも脚本に赤ペン先生したいわ……と思ったけれども、今回も思ってしまった。
稲葉先生ってショーのイメージが強いからな。
最近の芝居だと『WEST SIDE STORY』もあるけれども、やはり海外ミュージカルなのね。
『WSS』そのものを私はあんまりかってないからな……。

第2幕はリリーが大活躍ですが、ヴラドに再会したリリーの反応も実は私はあんまりよくわかっていないのですよ。
死んだと思っていた元恋人が生きていて、わざわざ会いに来たという事実に対して、「過去の異物」と思っているのか「会いに来てくれて嬉しい」と思っているのか、その両方で揺れ動いていてもいいのですが、芝居野中では変化には要因が必要で、揺れ動いている要因がよくわからないな……と。
うれし恥ずかし、というわけでもないし、完全にコケにしているわけでもなさそうですし。
「あなたが愛したリリーかしら?」というのも突き放すために言っているのか、今の私も愛してくれるかしら?というニュアンスで言っているのか、どっちだろう……。

男女のやりとりでいえば、バレエを見に行くためにきれいに着飾ったデミトリの蝶ネクタイを、これまた大変美しいお衣装に早着替えして出てきたアーニャが直してあげようとしているのを、デミトリは嫌がるけれども、そのすぐあとに腕を組むように示す。
いちゃいちゃしたいのか、したくないのか、どっちやねん。

あと、気になることといえば冒頭でアナスタシアがベッドにオルゴールを取りに来る場面。
完全にゴリンスキーと鉢合わせているのに、アナスタシアは無事なんですよね……。
最初、ゴリンスキーがグレブの父親かと思ったのですが、グレブの父親はロマノフ一家を銃殺した後、「己を蔑んで死んだ」と母親は言ったというくらいですから、違うんでしょうね。
グレブパパとゴリンスキーは同僚で、同じようにロマノフ一家の処刑に立ち会ったけれども、前者は「己を蔑んで」、後者はいまだに新政府の役人として、生き残りのロマノフを追っている、といったところでしょうか。
自分が殺し損ねた娘を自分で片付けるのではなく、かつての同僚の息子に頼むってどういう心境なんでしょう。
ゴリンスキーは繰り返しグレブに「父親の意志を継げ」といいますもんね。
グレブ自身も「信じている彼の誇りを」と歌う。
実は父親、精神でも病んだのでは?と勘ぐってしまうな。

それから宙組に詳しい方にお聞きしたいのですが、本日A日程のフィナーレのパレード、トップスターたちが銀橋挨拶する前の段階で、上手の花道にいる、右から数えて2人目の頭身おばけの男役さんはどなたでしょうか……10秒に一回くらいウインクしていて、私も見事に被弾したのですが……。
マチネ公演でドキドキしたのですが、おもわずソワレ公演でもオペラグラスで見ていたところ、やはりしゃんしゃんを持ちながら、ウインクを飛ばしまくっていたので、これは自分を見ていると思った人には手当たり次第ウインクしているな?と思っていたところ、オペラ越しで再び被弾しました。
プログラムを見ても全くわからない……スタイルで覚えているからか……。

あと気になった下級生は、ネヴァクラブのギャルソンヌのお嬢さんを演じた愛未サラさんとロケットの一番上手で小さい身長ながらも輝いている栞菜ひまりちゃんのお二方の娘役です。
サラさんはもともと美人だなーと思っていたのですが、歌って踊っている姿はとても美しかったです。
ひまりちゃんは、160センチない中、一生懸命なのが大変に愛らしかったです。
個人的には山吹ひばりちゃんも応援しているのですが、今回はA日程だったので、残念ながらお目にかかれませんでした。残念!
AとBにわかれてもプログラムの最後のページの下級生さんたちは本当に少ししか出番がなくてかわいそうだな……。
次の生田先生、頼むよ!

フィナーレの曲は『NZM!!』の第1幕最後の「ノゾミ~♪」に聞こえた気もしますが、私だけかしら。

星組『エル・アルコン-鷹-』『Ray -星の光線-』感想

星組公演

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グランステージ『エル・アルコン-鷹-』
青池保子原作「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より~
 原作:青池 保子(秋田書店)  脚本・演出/齋藤 吉正

Show Stars『Ray -星の光線-』
作・演出/中村 一徳

開演アナウンスがやけに低い声で、もうここから完全にティリアン入っているな、という感じでしたが、幕開き一発目、ビジュアルもまたかなり初演に寄せてきている印象でした。

初演は大好きな瞳子安蘭けい)とあすか(遠野あすか)でしたが、当時はまだ実家暮らし&受験期だったこともあり、生で観劇はできておりません。
映像で見た記憶はあるのですが、今回の再演を見て「後半、全く記憶にない。いつ終わるんだ?」と思ったので、印象としてはその程度だったのでしょう。
再演するなら「多すぎる録音の心情台詞のカット」「女性が無理やり襲われる場面のカット」「ティリアンの野望の明示」の3つはせめて直してほしいと思っていたのですが、見事にそのどれもが実現していなくて本当にもう……原田先生は一皮剥けましたよ、あなたはいつ剥けるのですかヨシマサ先生……。
今回の再演に向けて分厚い原作を読みましたので、わたしは脳内補完ができましたが、場面はぶつ切りだし、話は飛び飛びだし、キャラクターの気持ちはまあわからんでもないのだが、「でもなんでそう思うの?」「だから何なの?」みたいな虚しい疑問が脳裏を過りまくりましたね。
このあたりの換骨奪胎は小柳先生に弟子入りした方がいいのではないでしょうか。
「七つの海、七つの空を手に入れる」ということはつまりどういうことなのか、「スペインの無敵艦隊の総司令になりなる」とか具体的なこと言ってください。

こっちゃん(礼真琴)は、13年前予科生としてこの作品を見て、えらく感動したという話ですが、本に感動できない以上、役者に説得力があったということでしょう。
噂に聞くところによるとあかさんもお年玉を注ぎ込んで見ていたとか。
「そんないい作品か?」と映像でしか見ていない私は思わず穿った見方をしてしまいますが、生で見た方がおっしゃているのだから、やはり役者がすばらしかったのでしょう。
本はダメだよ、どうにもならん。
プログラムで「13年前予科生として、熱狂してこの作品を見た生徒が今では星組のトップスターになった」とヨシマサ先生のお言葉がありましたが、それを詠んだ時に「あれ、ひっとん(舞空瞳)はまだ102期生だぞ?」と思った私をお許しください。
ひっとんの話では当然ない。こっちゃんの話だよって感じですよね。すいません。

そして私は「海賊が好き」と無邪気に言ってしまう、そういところが実はあんまり得意ではないのだなと思いました。歌もダンスも上手いのは認めるのですけれどもね……。

しかしトップスターがやりたいという作品があることと、その作品が再演に耐えうるものであるかどうかということは全くの別問題ではないでしょうか。
今後もこっちゃんがやりたいと言っていた『ロミオとジュリエット』を上演することが決まっていますが、こちらも娘役の数が少ないという問題は以前から指摘されていたはずです。
まあBOXを買っておいて、ケチつけるなという話でもありますが、逆に言えば、BOXを買ったから文句も言えるのよ!という感じでしょうか。
『1789』ももしかしたらこのコンビで上演されることがあるかもしれません。
そのときはぜひオランプ役はひっとんにしましょう。
そして何よりオリジナルの脚本を待っています。なんのための座付き演出家!
トップスターのやりたい作品の願いはわりと叶えられるのに対して、トップ娘役の願いはなかなか叶えられないことにもなんとなく不満があるのかもしれません。
そう考えると雪組の『ファントム』は、コンビの熱い気持ちが再演にゴーをかけたのでしょう。これもまた再演する価値のある作品かどうかは微妙ですが。

さて肝心の再演ですが、役者という意味ではとてもよくて、ティリアンをやりたくてたまらなかったというこっちゃんはもとより、愛らしくも気高い貴族兼女海賊をのギルダを演じたひっとんも、ラスプーチンとか黒太子とか次の死とかやたらと黒いイメージのある愛ちゃん(愛月ひかる)のレッドはとてもよかった。
それだけに本が……とも思う。何度も言うよ。
同じ紺色のドレスでも、袖から出てくるたびに違う髪型、髪飾りになって、娘役魂が炸裂しているはるこさん(音波みのり)、ティリアンに情報を提供する酒場の踊り子スサーナを演じたあんる姉さん(夢妃杏瑠)、堂々たるエリザベス女王を滑稽味をふまえて演じた副組長なっちゃん(白妙なつ)、レッドを支援する根っからの海賊ブラックを演じたかのんちゃん(天飛華音)あたりが印象に残っています。
ラストの愛ちゃんとかのんちゃんの並びは、おお!これは!よき!と思わず拍手をする勢い。このコンビ、バウや別箱でいかがでしょうか。

ひっとんは、もはや娘役トップスターとして向かう所敵なし!という出立でしたね。
ドレス姿は踊り難かったかと思いますが、エリザベス女王ばりの襟の白いドレス、女海賊として仲間を率いるショッキングピンクのドレス、シリアスな場面で着ている紫のドレス、いまわのきわの黒いドレス、ラストの天国でのホワイトベージュのドレス、どれも本当によく着こなしていました。
髪型もアップスタイル、おろしているスタイル、どれも美しかったです。
どれが一体舞台写真になるのでしょうか。とても楽しみです。どれも欲しいわ!
海軍中佐相手でもひるむことなく、首を取る気満々の強気の女性は大好物です。すばらしい。
だからもっとキャラクターを書き込んでやれよって思いましたよ、余計に。
ただ少し痩せてしまったでしょうか? しっかり食べていますか? 心配しています。
迫力のある歌声、ダンスにはある程度の筋力、脂肪も必要でしょう。

キャプテン・ブラックを演じたかのんちゃんもとてもよかったです。
あの脚本だと、ちょっと出てきてすぐにレッドの味方になってしまい、なんやねんというところはありますが、芝居はとても良かった。
レッドがスペインに亡命するティリアンを追いかけようとするところを止める姿が大変に勇ましかったです。
かのんちゃんは特にお顔が好みというわけではないのですが(すいません)とにかくお芝居から目を離せない役者だなと思っています。
『エルベ』のときのヨーニーがいまだに忘れられないのです。あれはとてもよかった……。

「乙女心がピンクに染まる~♪」の歌詞の破壊力は相変わらずすごいですが、同じボケ担当なら『アーネスト・イン・ラブ』のセシリー嬢が歌う「悪い人」も負けていません。
気になった人はぜひ検索してみてください。
今回の曲に負けず劣らず、ぶっ飛んじゃうような歌詞だからw
1から10までツッコミどころしかない。
ちなみに私は大好きです。

ラストの白いお衣装のティリアンとギルだはTHE宝塚という感じで、また二人が抱き合うわけでもなく、それぞれが自分の足で立っているというのが印象的でしたが、天国ですかね?
天国なんだろうなあ、しかしギルダはともかくティリアンは天国に行けるのかなあ、なんて思ったり……。
ダーティーヒーローを宝塚で上演するのは全く構わないのですが、ラストが難しいのかもしれません。


『Ray』のオープニングでは思わず天寿光希を探してしまいました。いないよって話ですよね。セルフツッコミ。
いや、あの紫のお衣装に金髪のみっきーがあまりにも好きすぎて、つい……なんて罪な人なのだろうか……好き。

ひっとんの曲が増えていたのが嬉しい限りです。
オープニングの「あなたの輝きに彩られ~♪」と歌いだすかと思いきや、愛ちゃんとデュエットで新しい歌詞をいただきました。
そして中詰、謎の霊鳥の場面でも冒頭にピンクの大きなセンスをもってソロをいただきました。
どれも素敵です。こういう変更があるから全ツ版の楽しみはやめられない。
しかしオープニング直後のこっちゃんとひっとんのデュエットソングがなくなったのは残念でした。
あれ、好きだったのにー!
残しても良かったのでは?と全体の構成を見ても思うのですが、いかがでしょうか。
なんでこっちゃんの元気はつらつなソロになってしまったのだろう。
あの曲の振り付けが密だったのがいけないのか……。

はるこさんの鬘がショーでも本当に見応えがあって工夫が凝らされていて、娘役の鏡だなと思いました。
思わず見てしまう。すばらしい。
星娘たちはこういう技術を今の内にきちんと教わっておいてくださいね。受け継いでくださいね。
あとは画面に映らなくても袖て歌っているのがすぐにわかるなつさん。
圧倒的な歌唱力。安心安全信頼の歌唱力。きっと肺活量もすごいんだろうなあ。

肺活量といえば、こちらも負けていないのがことひとのデュエットダンス。
音楽は「星に願いを」でした。
こっちゃんの衣装が赤×黒だから、最初に出てきたときに「ねずみか?」と思ったのですが、曲もディズニーだったので、浦安に思いを馳せた人はおおいことでしょう。
本公演のデュエットダンスよりも好きかもしれません。
しかし一番好きなデュエットダンスは『ロクモ』のときのデュエダンです。
あれはすばらしかった。あんなハイレベルのデュエダンを最初に見せられたらなんていうかもう……言葉がない。
しかしこの二人、踊り終わっても全然息が上がっていない。ぜいぜいしていない。胸が大きく動いていない。すごい。
筋肉の付き方の問題もあるでしょうけれども、肺活量もすごいんでしょうね。

五輪の差し替えは本当によかった。救われた。ありがとう、一徳先生。
そのままだったらどうしようかと思った。
早く中止にならないかな。
一徳先生の作品のフィナーレ冒頭は、例えば『MusicRevolution!-NewSpirit-』の「Such a Nirgt」もそうなのですが、今回の「星にスイング」も配役が変わったり演出が変わったりしても大変好き。
本公演バージョンから好きでしたが、今回のもだいぶ好きです。
ぴーすけとかのんちゃんという配役も私得でありますし、何よりお衣装が好き。
ぴーすけもかのんちゃんもひっとんも後ろのすみれ色のお衣装も全部好き。
要はシルバー系のノーブルなお衣装が好きなんでしょうね。
ひっとんは髪形がフェリシアのようでこれまた可憐。好き。最高。愛らしい。天使。
しかしやはり痩せたのでしょうか。ちょっと首回り、胸回りのすきすき具合が気になりました。ちゃんと食べているかしら……。
とにかく心配です。
貴重な娘役トップスターですから。大切にしてあげてください、劇団のえらい人たち。


本日11月30日は星蘭ひとみの退団日。
袴での儀式もなく、お別れということが寂しくてたまりません。
今までありがとうございました。類稀な美貌が忘れられません。『鎌足』『ロクモ』あたりの採用のされ方が良かったと思っています。
これからの活躍を祈っています。

そして衝撃的な人事の発表もありました。
なんて過激団なの、というしょうもないギャグはさておき、もやもやが残ります。
やはりこれは華ちゃんが残留してくれることが私の唯一の希望ですが、華ちゃんの決断も応援したいジレンマです。言っても詮無きことですね。
来月に控えた『アナスタシア』を見る目がだいぶ変わると思われます。

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』感想

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映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』(現代『Edmon』)
監督・原案・脚本:アレクシス・ミシャリク
主演:トマ・ソリヴェレス

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』を鑑賞。たいへんおもしろかったです。
たくさんの人に見て欲しい映画です。映画館に行くのが怖いという人もいそうですが、これは見て後悔しない作品。
ちなみに『シラノ・ド・ベルジュラック』はもうすぐ星組で開幕予定。

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作中に出てくるムーラン・ルージュ月組『ピガール狂騒曲』の舞台そのものですし、舞台裏の話という観点でも共通のおもしろさがあります。

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言葉だけですが「ダルタニアン」も出てくるので、『All for One』ファンも楽しめるかも。
チェーホフも出てくるので星組『かもめ』の連想も可能です。宝塚らしくない作品と言われがちですが、私は好きです。
しかしこれら宝塚要素を無視しても、とにかくおもしろかった!とすっきり思える映画でした。

1895年、フランスパリ。詩劇作家のエドモンは作品を上演するものの、劇場支配人にはすぐに打ち切りだと告げられる。
才能を信じてくれていた妻もスランプが2年続くと家事や子育てのお金も回らなくなり、心が離れていく。
ある日、俳優で友人のレオが想い人であるジャンヌへの愛の言葉を代弁する。
すると今までのスランプが嘘のように作品のアイデアが浮かんできたエドモンはレオには内密に、レオとしてジャンヌと文通を始める。
四苦八苦ののち作品は完成するものの、個性的すぎる俳優、押しの強すぎる出資者、劇場を使わせないように奮闘する劇場支配人などなど問題は山積み。
シラノ・ド・ベルジュラック』の創作秘話を、作品へのオマージュたっぷりでお届けする2時間映画。

この話を映画にするために15年もかけたという監督の意気込みを感じずにはいられませんでした。
実際にこの映画の制作費が、同じ作品の舞台の収益によっているというのもおもしろい。
というか映画の本を書いたときには出資者が集まらなくて、それを舞台版に書き直したら出資してくれる人が出てくるというのはおもしろいなあ。
監督の多彩な才能を感じずにはいられません。
本人も役者として出演しておりますし。
小説も書いているとか。すごいな。神は二才を与えたもうか。

まずは大好きなキャラクターから。
カフェオノレ亭の黒人店長がしびれる。とにかく痺れる。最初からいい。
最高にクールだね!
「義父が残してくれたのは、カフェと詩を愛する心」という台詞が印象的です。
よい義父だったのね……と出てもいない義父にまで思いを馳せてしまったよ。いい作品だな、本当。
最初に黒人であることを逆に馬鹿にされた彼は、教養のない客はいらないと言わんばかりに、しかし暴力に頼ることなく、自身の深い知識教養によって啖呵を切って、客をやり込め、見事に追い出す。
それを見ている客たちは、拍手で店長を迎える。
その客たちは、当然白人が多いのだけれども、当時のパリでもこういう黒人は受け入れられたのでしょうか。
映画の演出としては大変面白かったのですが、フランスに旅行したときにあからさまな差別を目の当たりにした身としては、当時の差別問題という重い現実を思い出しました。

要所に出てくるキーパーソンなのに、映画のパンフレットには取り上げられておりません。悲しいかな。
調べてみると、どうやらこの役者さんは2019年に亡くなっているようです。
コロナでないといいのですが……コロナでないならいいというわけではありませんが、そんなことが脳裏をよぎりましま。
「芸術家よ、無法者であれ!」と言ってカフェから劇場に進軍を促す場面も素敵でしたし、進軍する様子はさすがフランス革命の国だと思いました。
この場面は映画の公式ホームページの予告でも見られるので、ぜひそこだけでも多くの人に見て欲しい。
芸術家、ひいてはアーティストは無法者、ちょっと反社会的だったり、ちょっと斜に構えたくらいでなければ、やはりおもしろいものは作れないですよね。
なんていうか「総理倶楽部」とか言っている場合ではないのだよ。

もう一人、個人的なキーパーソンは、娼館に出てきた謎のロシア人。
いかにもロシア人という風体で、結核だといい、女遊びはせず、やたらとうまいことを言う。
パリで豪遊できるくらいのお金持ちというところか。
その名もアントン・チェーホフ
そりゃそーだわ!そーだろーね!
うまいこと言うわけだよ!
「嫉妬深い妻に許しをもらうためには?」というエドモンの問いに「もうすぐ死ぬから許して」と答える。
人間はいつか死ぬ。だから嘘ではない、と。
そしてエドモンは『シラノ』のラストシーンを思いつく。
「着想と出会う」とはまさにこういうことなのでしょう。
この映画にはそういう場面が何回も出てきますが、この場面が一番痺れます。
この場面においてチェーホフに「度がすぎるほど楽しんでいる」と言われている友人のロシア人は、しっかりというかちゃっかりというか『シラノ』の初日を観に来ていて、ばっちり感動していました。
感情の起伏が激しいようで(笑)。
チェーホフは特に大きなアクションは起こさないものの非常に満足した様子でした。

自由人が多い映画ですが、個人的にベスト・オブ・自由人はサラ・ベルナールでしょう。
それこそロートレックのミューズですが、このころはもうアメリカでも仕事をしているらしく(アメリカの客はうるさい客、フランスの客は上質な客という考え方に笑ったw)、たまたまフランスに戻ってきていたわずかな時間をエドモンのために割き、エドモンと名優コクランと引き合わせた張本人です。
まあ、時間をつくるだけ作って、引き合わせるその場に自分がいないというところが、自由人が自由人たるゆえんなのですが。
『シラノ』の初日も、招待されていなかったのか、いたけれども忘れていたのかは定かではありませんが、全5幕のうち、最後の幕だけ見に来る。
それもヘアセットの途中でw
「まだ終わっていません!」というスタイリストに対して、「私はこれが気に入っているのよ~」とかいって、出て行ってしまう。自由すぎるだろ。

レオは当然、手紙など送っていないのに「情熱的な手紙をありがとう。最初は顔が気に入っていたけれども、今はあなたの魂が好きよ」というようなことをいうジャンヌに不信感をもつ。
手紙を送っているのはエドモンなのだから。
最初にうっかり男の人と熱いキスをしてしまったあのうっかりレオが、愛するジャンヌのためにラストでは詩の勉強をする。感動。
好きな人のために変わることができるってとても素敵ね。

ラストは熱情的なくちづけ祭りです(笑)。
ジャンヌは『シラノ』の幕が下りた後、レオに熱いキスをします。
しかしそのあとレオがカーテンコールで舞台に戻ると、エドモンにも熱いキスをします。
こういうところがフランス映画っぽいなと思ったわけですよ。
情熱的なフランス女が舌の根も乾かぬうちにというか唇も乾かぬうちに他の男とキスをする(褒めています)。
まあ、前者は愛情のキスで、後者は友情(友愛?)のキスなんでしょうけれども。

これはちょっと私には真似できないなーと思っていたら、ジャンヌが舞台袖から姿を消した後、エドモンの妻・ロズモンドが今度は現れる。
嫉妬深い(と言われている)(少なくとも私はそうは思わなかったぞ、あれくらい普通だぞ)ロズモンドは、しかし冒頭ではとてもエドモンの才能を信じている。
あの場面があって良かったと思うのは、この最後の最後の場面ですですね。
「作品を作ったあなたとあなたの愛人に感謝だわ」と言うような台詞があり、そのままエドモンに熱いキスをします。
一緒に観に行った旦那は「奥さんは結局勘違いしたままだった」と言いますが、私はあながち勘違いではなかったのかなと思います。
作品のミューズというのは聞こえはいいかもしませんが、『シラノ』の幕が降りた後、レオとジャンヌがこれまた熱いキスをしている様子を見ているエドモンのあの眼差しは「作品のミューズってだけか?」と思ってしまいました。
ロートレックサラ・ベルナールの関係も、どうだったんでしょうかね。
ちなみに作中に出てくる『シラノ』のポスターはロートレック風味でありました。
ロズモンドを演じたアリス・ドゥ・ランクザンは私の大好きな映画『婚約者の友人』にも出演しております。

ラストは以上のように4回も熱いキスが繰り広げられる(ちなみに客席でサラがオノレにも熱いキスをしていた)わけですが、そのどれもが女性からのキスというのが衝撃的でした。
すごいよ、フランス女。めっちゃみやびだよ、とんでもない熱量だよ。

劇場の舞台監督の小柄のおじさんは、出てきた最初から迫力あるなーと思っていたら、かなり芸歴の長いお方だったようで。
旦那がその昔、彼が主演を務める作品を見たことがあるようでしたが、ハリウッドにも呼ばれるような名脇役だとか。
『シラノ』の当日、シラノと決闘するはずの役者が見当たらずに、エドモンに「リハーサルを見ていただろ!」と言われる。
この無茶振りが『ピガール狂騒曲』を連想させますが、こちらの映画ではバッチリと演じてくださいます。すばらしい。

コクランの息子役もよかった。
ちょっと愚鈍で、俳優の傍らパン屋のアルバイトもして生計を立てているけれども、名優のパパとしては俳優だけで生計を立てて欲しいらしく、アルバイトにはいい顔をしない。
しかし恐ろしく演技は棒。
それを克服するために娼館に行くのですが、まさかの1度目は失敗。
そういう流れになるだろうことは読めていましたが、失敗するんかーい!と思いました。
けれども、本番直前にどんでん返し。楽屋で!?みたいなところはあるけれども、見事に情感もって台詞をいえる役者になりました。立派である。
このあたりもなんていうかフランス映画っぽい。

日本でミュージカルといえば『レ・ミゼラブル』『エリザベート』あたりでしょうか。
モーツァルト!』を挙げる人もいるでしょう。
どちらにせよ悲劇の方が多いんですよね。
喜劇はあんまりないなあ、と旦那と話しました。
余韻を残す作品があまりうけなくて、1から10まで説明してくれる作品の方が舞台に限らずエンタメにおいてウケてしまうこの国で、喜劇を上演するのは難しいのかもしれません。
1から10まで説明していたら、当然喜劇にならないですから。

しかし繰り返すようであれですが、『総理倶楽部』とか言っている場合ではないんですよ。
キャラクター化して「かわいい」と思われることよりも、実際にその人物がどういう政策を行って、どういう結果を出して、もっといえばどんな非道をはたらいたのかを勉強するのが「学問」でしょう。
学問がないがしろにされる国での喜劇はやはり難しいと思わずにはいられません。

最初にも書きましたが、たくさんの人に見て欲しい映画です。

花組『はいからさんが通る』B日程感想+α

花組公演

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ミュージカル浪漫 『はいからさんが通る
原作/大和 和紀「はいからさんが通る」(講談社KCDXデザート) (c)大和 和紀/講談社
脚本・演出/小柳 奈穂子

前回の感想はこちら。

yukiko221b.hatenablog.com

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●『はいからさんが通る』B日程

明日が千秋楽!というタイミングで、ようやく花組はいからさんが通る』Bパターン観劇することができました。ありがたや〜なんまいだ〜。
みさこちゃん(美里玲菜)かわいい〜!どこにいてもすぐに見つかるやんけ。
ちょっとお顔がシャープになったかな?
それともお化粧が変わったのでしょうか?
以前とは異なる印象を受けました。
きちんとお食事ができているといいのですが。

みさこちゃんのお衣装まとめ。
女学生は黄色やオレンジの着物に紫の袴。
モダンガールでは紫の帽子に紫のカーディガン。ワンピースは臙脂のクレリック襟。これがたまらんほどソーキュート。
伊集院家のメイドとしても登場し、園遊会では緑のドレスで登場。あわちゃん(美羽愛)と同様『ファントム』のドレスですね。
あわちゃんは下手が多かったけれども、同じ場面に出ていることが多いみさこちゃんは上手が多い印象でした。
女学生の袴はやっぱり着たいところですよねえ、この作品なら。たとえモブだったとしても。お役としてはあと雪の精ですね。

1幕終わり付近、少尉の隊がシベリアに行くことがわかり、号外少年から新聞をもらう場面で、A日程ではあわちゃんとさおた組長が一緒にいましたが、B日程ではさおた組長と一緒にいるのはみさこちゃんでした。
相変わらず父子のような印象。
あわちゃんの方が絶望が深い芝居をしているような気がしますが、もしかしたらロシアに向かう兵士の中に知り合いがいるのかもしれません。

超今更かもしれないですが、伊集院家のメイドがずらりと並んだ後の場面で、卯月と弥生が箒とちりとりで野球しているの、超絶面白いですね。
如月にバレたらきっとあなたたちもご飯抜きっていうところですわ。
メイドも執事も自由だなあwww

全体的に少尉の芝居に抑えが効いているなという変化を感じました。
例えば「ラリサは結核なんだ」と少尉が編集長に語る場面。
静かなトーンになっていて、ああ、少尉はいつかこの質問を誰かにぶつけられるのがわかっていたから頭の中で予め考えていた答えを淡々と述べているのね、と思った。
だからこそ予想外の紅緒逮捕に慌てるダッシュがキレッキレに見える。
こちらの方が好き。緩急の付け方が抜群ですわ。

ラリサが亡くなった場面でも「ラリサぁ!」と叫ぶのではなく、ぐっと彼女を抱き締めて「ラリサ……」という演出になったのがいい。
いつから変わったのだろう。
堪える演出や溜める演出は大事だと思う。
全部バンバン出していったらイケコの『ポーの一族』みたいになってしまう。そういうのがプラスに評価できる作品もあるのでしょうけれども。
これは好みの問題もありましょう。 
ただ、『はいからさんが通る』はラブコメであるだけでなく、大大正デモクラシー日露戦争関東大震災の描き込みを考慮すれば大河ドラマの面も持ち合わせていますから、緩急やメリハリのある舞台を作ることが必要になってくると私は思います。

1幕終わりの白い喪服で紅緒さんが「少尉!」と叫ぶ場面、銀橋にいる少尉がビクッとする演出にも気がつきました。離れていても固い絆で結ばれているようで感動しました。

ちなみにこの日はマチソワをしました。
マチネ公演は幕間のロビーは静かだったのに、ソワレ公演の幕間のロビーはごく普通に皆さんお話しされていたのが気がかりでした。
いや、さすがにマスクはなさっていますが。
考えてみればマチネ公演は友会公演でしたので、本気のファンとはこういうものなのかと実感しました。
もう2度と休演なんぞさせない、という強い意志を感じました。
そうだよね、そうなるよね、わかる。

蘭丸は、花乃屋の乱闘のときはいまいち活躍しきれず、その後現れた少尉にいいところをまるっと全部もっていかれてしまったのですが、狸小路伯爵邸では藤の小道具を使って立派に戦っているのもいいですね。
「臆病だけど、必死だった」の「必死」さが前者よりも後者の場面でいかんなく発揮されていたのがとてもよかったです。
その他、狸小路伯爵邸での乱闘では吉治さんを守るために下手奥ですみれ組の有明が大活躍。
そのあとの大道具がぐるぐる回る場面でも有明は吉治さんと一緒に紅緒さんの心配をしている場面も印象的です。

永久輝せあ扮する高屋敷は「大正時代の森鷗外か、夏目漱石か」と言いますが、『はいからさんが通る』には、森鷗外の『舞姫』を思わせるところがたくさんあります。
少尉の父親がドイツに留学したこと、そこで恋に落ちて、子供ができたこと、あるいは森鴎外自身を連想させるのは、少尉の左遷先が小倉であることでしょうか。
もっとも森鷗外夏目漱石とはそもそも文体や作風が全然違うので、観客にわからせるためとはいえ、あのフレーズはいかがなものかと思うのですが。
結局高屋敷ががいたのは『はいからさんが通る』ですから、大きなリボンと海老茶の袴、ハーフブーツの女学生の画を挿絵とした『魔風恋風』を書いた小杉天外が一番近いかもしれません。

文豪についていうならば、環の「冗談社っていったら、編集長がルドルフ・ヴァレンチノばりの二枚目だっていうじゃない」という台詞も残しておきましょうよ~と思いました。
こちらは文脈に合っているだけでなく、環の教養の高さもわかります。

翌日の千秋楽は無事に幕が上がったようで、感無量です。
配信は残念ながら見ていないのですが、無事に幕も下りたことにどれほど安心したでしょうか。
思えば3月13日に初日を迎えるはずで、15日にマチソワ観劇する予定だったのに、11月14日まで伸びたのは完全に想定外でした。
組子たちはもう1年近くお稽古しているのよね。
そりゃ芝居だって変わるよね。

大劇場公演が円盤になっていることを考えると、スカイ・ステージでの放送が楽しみです。


●華優希、まさかの退団発表

千秋楽の翌日、まさかのトップ娘役である華優希が退団を発表しました。
1時間、印刷室で泣きました。人のいないところで、プリント印刷なら頭を使わずにできるから、ととりあえず駆け込みました。
残業中に泣きながら印刷している女って、怪しいですよね。ホラーや。
翌日は休みたくてたまらなかったけれども、先輩には「明日仕事に来るのよ」と5回も言われましたので、泣く泣く仕事しました。松尾芭蕉ではないけれども、とるものてにつかず。

なぜ今なのか、早すぎるのではないか。大劇場は3本しかやらないのか。
近年だとふうちゃん(妃海風)がトップ娘役として大劇場3本で退団しています。
しかしこれは相手役であるみっちゃん(北翔かいり)と一緒にお披露目をして、添い遂げ退団をしましたので、事情は同じとは言えないでしょう。

他ならぬ華ちゃんが決めたことだから、尊重したい。けれども、どうしても本当にそれで良いの?という疑念が脳裏をよぎる。
もっと色々な華ちゃんが見たかったから、少しでも心残りがあるなら、翌日の記者会見で取り消してくれてもいいとさえ思った。
ミュージックサロンはやるみたいですが、タイトルも演出も未定、日程も曖昧、本当に急だったのかなと思いました。

翌日は、どうして華優希が退団を発表した世界線にしか目覚められなかったのだろう、と心底不思議に思いました。(朝起きて一番、ベッドの中で改めて公式発表を確認した人)

退団発表のあった日は、初演版『はいからさんが通る』を見ながら、華ちゃんの舞台写真を整理していて気がついたのですが、一人の写真もあるけれども、ペアの写真がとても多く手元にあった。
華ちゃん一人でももちろん好きなのですが、誰かと一緒にいる華ちゃん、相手も幸せにする華ちゃんがとてもとても好きなんだなあ。
華ちゃんの娘役芸が好きでした。
芝居の全体のバランスや調和をとるこができる娘役だと思います。
歌やダンスの巧拙の感じ方や芝居の好みは人それぞれでしょう。
ただ、私が好きだった華ちゃんの娘役芸というのは、他の舞台では求められるものではない。
宝塚でしか求められない。
彼女に心ない言葉をぶつけてきた人は、この結果に満足しているのだろうか。
彼女も傷つけて、彼女のファンまでも疲弊させて、それで笑っていられるのだろうか。それって変だよ。虚しいよ。それであなたは幸せになったのか。あなたのご贔屓は?

タカラジェンヌはひと時の夢だ。
誰もが皆、卒業していく。
それはわかっている。
トップスターともなれば、ファンとても卒業が秒読みになるのは覚悟しなければならない。
けれどもこの卒業は、たとえば6年間トップ娘役として堂々たる姿を見せた愛希れいかとも、圧倒的な歌唱力と絆で結ばれた相手役と添い遂げ退団をする真彩希帆とも違う。

退団発表の記者会見では『ダンスオリンピア』の頃から卒業を考えていたという。
この時点ではまだ本公演は『青薔薇』しかやっていた。
その前に『恋アリ』はあったけれども、なんと早いタイミングで考えていたのだろうと愕然とした。
コロナウイルスの影響で『はいからさんが通る』の休演期間に、卒業の気持ちが揺らぐことがあったことも明かした。
どうして揺らいだままでいてくれなかったのだろうとファンとしては勝手に思ってしまうが、この時点で相手役である柚香光に卒業の意思を伝えていたことは大きいだろう。
あまりにも早い。もったいない。

本公演で卒業する場合、多くは集合日に発表されるが、トップスターとトップ娘役は1つ前の作品の大劇場公演が終わった時点で発表するのが通例だ。
今回は東京公演が終わってからの発表であった。
初日が4ヶ月も延び、間に1ヶ月の救援を挟まざるを得なかった『はいからさんが通る』の大劇場公演の後にはとても発表できなかっただろう。

次に予定されている公演『ナイスワーク』はブロードウェイが原作であるため、映画館や楽天でのライブ配信は難しいだろう。
雪組『20世紀号に乗って』と同じように。
こういうときに、なんのための座付きの演出家がいるのだろうとはなはだ疑問に思わずにはいられない。
東京でしか公演がなく、コロナウイルスの影響も考えると、より多くの人に観劇してもらうことは、難しいかもしれない。
私も観られるかどうか、とても観たいけれども、わからない。
たとえ配信があったとしても、今回の宙組『アナスタシア』のように平日だったらきっと観られないだろう。

私はいったいあと何回、宝塚の娘役である華ちゃんを見ることができるのだろう。

月組の時期トップコンビも発表されていない今、花組の時期トップ娘役にまで気を揉まねばならないのはファンとしてはつらいところですが、もしかしたら、娘役不在ということにもなるかもしれません。

月組『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』感想2

月組公演

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JAPAN TRADITIONAL REVUE『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』
監修/坂東 玉三郎  作・演出/植田 紳爾

ミュージカル『ピガール狂騒曲』〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜
作・演出/原田 諒

Aパターンの感想はこちら。

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今回はBパターンの感想です。
まずは『WWT』について。
主題歌「それが宝塚」よりも「雪月花」がじんわり胸に染み入る公演でした。
それは歌手の娘役が変更になったということよりも繰り返し見る中で、主題歌以外にも観劇している私の心に余裕がもてたからだと思うのですが、とにかくここがいい。
Aパターンではきよら羽龍ちゃん、咲彩いちごちゃん、Bパターンでは詩ちづるちゃん、静音ほたるちゃんと、下級生を2分割したことで、まさかの4人分も楽しめることになったわけですが、Aではいちごちゃん、Bではちづるちゃんを応援している私としてはとても嬉しかったですし、技量的にはAもBも眼福ならぬ耳福でございました。
フィナーレでは松本先生が翼のお着物(大好き!)でせり上がってくる場面に同じメロディーで違う歌詞が添えられています。
「花で門出を祝おう」みたいな歌詞が、松本先生のサヨナラショーだなと思わせました。
今度はこちらの歌詞もきちんと聴き取りたいところです。

「雪の巻」「月の巻」「花の巻」とありますが、「花の巻」が一番好みだという話は前回もしましたが、今回もここはとても楽しんで観劇することができました。好きやねん!
れいこちゃん(月城かなと)とおだちん(風間柚乃)の息ぴったりもさることながら、鏡の女を演じる娘役もみな可憐ですばらしい。

幕間中、プログラムを見て改めて思ったのは現在の月組の芸名のひらがな率の高さです。
珠城りょう、美園さくら、月城かなと、とトップ3人が下の名前はひらがなです。
組長も光月るう、名脇役の紫門ゆりや、白雪さち花、輝月ゆうま、春海ゆう、下級生で私が応援している菜々野あり、咲彩いちご、美海そら、詩ちづる、他にもまだまだたくさんいます。
こんなにひらがな率が高いのは月組だけなのでしょうか。
106期生もひらがなの生徒が多いですね。

『ピガール』では、眉上前髪にピンクのブラウスが愛らしいこありちゃん(菜々野あり)やグリーンのスカートがよく似合っているちづるちゃん(詩ちづる)がとにかく眼福でした。
こありちゃんは垂れ目を強調したメイクに変えたのでしょうか。
劇団の中にボーイフレンドとおぼしき人もいるようです。ちょっと、どなたかわからなかったのが残念><
ちづるちゃんはダンスが映えました。さすが主席です。

今回、下級生でもムーラン・ルージュに在籍している踊り子ちゃんたちは、その多くに名前がついています。
AとBでわかれていたとしても。
くらげちゃん(海乃美月)が演じたラ・グリュやじゅりちゃん(天紫珠李)が演じたミスタンゲットが実在の踊り子名前がついていることから、グリーユ(蘭世惠翔、菜々野あり)、ヴィヴィアーヌ(きよら羽龍、詩ちづる)なども実在の踊り子の名前なのでしょうか。
もちろん名前のついていない娘役もいるけれども、男役は全くついていなくて、役名がもらえたことがどれだけ下級生の励みになっただろうかと思うと感無量です。
AとBにわけているからこそ役名をもらえた生徒もいるでしょう。

ただその一方で気になるのは、名前がついているにもかかわらず、あんまりその名前が呼ばれないということです。
ミスは何回か呼ばれていますが、ラ・グリュは一度も呼ばれてはいないのではないでしょうか。
名前ついた役をもらえることは嬉しいことですが、その名前が舞台の中で呼ばれないのは寂しいですね。
それによって個人を特定する観劇者もいるだろうと思うと、やはり名前がついているのなら、1回でもいいので呼んでいただきたいところ。
呼ぶ必要がないのなら「踊り子」でくくっても、もしかしたらよかったかもしれません。

ところで東京公演ではゆりちゃん(紫門ゆりや)のダンサーとしての舞台写真は発売されませんかね。
これがまた大変にストライプのキラキラに負けないゆりちゃんのキラキラ具合に完全にノックアウトなので、何卒……何卒よろしくお願いします……という感じです。
素敵だった。本当に素敵だった。ダンサー紫門ゆりやをみなさんご堪能ください。

マルセル役のまゆぽん(輝月ゆうま)にちゃんと歌があったのも嬉しい。
そう、彼女を歌わせないなんてもったいない。
そして銀橋にまで出てこさせたのはもう大正解だよ、ありがとう原田先生。

フィリップるねぴ(夢奈瑠音)もよかったですね。
どうしようもないご主人様(ウィリー・鳳月杏)だけど、やっぱり見放せないっていうコンビがすごく良かったです。
決闘の場面では台詞がないところでもクスクス笑わせてもらいました。
足の長いご主人様をこれからもよろしくお願いします。
ところで青いお衣装はご主人様がかつてヴァンパネラと対峙していたときにお召しになっていた衣装でしょうか。

エドモン(佳城葵)もすばらしい。
一晩中夜のパリの町を歩き回って帰ってきたときのシャルルとのやりとりは二人の絆の深さを思わせます。
ただの雇い主と労働者ではないことがよくわかる。
「ジャック……」「ジャンヌですよ!」「ジャンヌ!」のやりとりも大好き。
息がぴったりですね。

別にボリスをオペラで追っていたわけではないのですが、ストライプのお衣装でのレヴュー場面で、側転を「できた!」と真顔で喜んでいるボリスがオペラのセンターに突然現れたときにはさすがに笑ってしまった。
個人的な観劇事故というやつです。
隣にいた友人に「どうしたの!?」と思われていたそうです。
いや、だってあれは完全に観劇事故でしょ。おだちんをずっと追いかけていたわけではないタイミングだったからもうびっくりしてしまいましたよ。

いつまでAとBにわかれてやるのでしょうか。
年明け一発目の雪組はどうなるでしょうか。
だいきほのサヨナラ公演ですので、全員でやりたいところですが、冬ということもあり、インフルエンザも怖いですね。
一方でいつまで配信もしてくれるでしょうか。
楽天TVには本当にお世話になっています。
今日も花組はいからさんが通る』はすばらしかったです。
オープニングで一度画面がとまった家の弱小Wi-Fiにはキレましたが、こちらも今後ずっとというわけではないのだろうなあ。

専科の星蘭ひとみの退団も、ようやく受け入れつつあります。
最後に大階段を降りることがないのがないのが、緑の袴姿を拝めないことが、応援していた人間としてはつらいですが、それが彼女の決断なら受け入れることにいたしましょう。